肖像権 【image rights】
概要
肖像権(image rights)とは、自分の容姿、容貌を写した写真や映像を勝手に公表されない権利。日本では明文で規定した法律は無いが、民法上の不法行為などとして肖像権侵害が認められる場合がある。自分についての情報を勝手に公開されないプライバシー権(人格権の一部)としての性質と、芸能人など容貌に経済的な価値がある場合に、無断で商業的に利用されないパブリシティ権(財産権の一部)としての性質がある。
日本では肖像権そのものを規定した法は無く、肖像権の侵害が刑事事件として扱われることはないが、憲法の幸福追求権や民法の人格権、財産権の侵害として、民事で差止請求や損害賠償請求が認められた判例はいくつも存在し、実質的な権利としてある程度確立している。
このうち、無名の一般人の肖像については主に人格権、プライバシー権が問題となり、インターネットで誹謗中傷を受けるなど肖像の公開・利用によって受忍限度を超える精神的苦痛を受けた場合などに公表の差し止めや損害賠償が認められている。
また、著名人の肖像については主に財産権、パブリシティ権が問題となり、無断で肖像を著作物や製品の広告や包装などに用いて利益を得るなどした場合には、差し止めや賠償が認められることがある。著名人の場合でも、週刊誌が勝手にプライベートの姿を隠し撮りし公表するなどプライバシー権の侵害が争われる事例は存在する。
ちなみに、競走馬のパブリシティ権が争われた、いわゆる「ダービースタリオン事件」の控訴審判決(2002年東京高裁)では、著名人のパブリシティ権は自然人(人間)の人格権に根ざして派生的に生じた権利であるとされ、(この事件で争われた競走馬のように)人間以外の有名な生き物や無生物を写した肖像には肖像権は存在しないとするのが通説となっている。
(2021.10.22更新)