フェムトセル【femtocell】
概要

移動体通信網では、基地局が電波を送受信できる範囲を生物の細胞になぞらえて「セル」(cell)と呼ぶ。通常の屋外基地局のセルは半径数百mから数kmに及ぶが、フェムトセルは半径10m程度と極めて小さく、家屋内やオフィスの一室、フロア程度をカバーする。この数値は目安であり、実際の範囲は設備や電波環境によって変わる。
「フェムト」(femto-)は国際単位系(SI)の接頭辞の一つで、10のマイナス15乗、すなわち1000兆分の1を意味する。極めて小さいセルであることに由来する呼び方である。利用者が自宅に設置する形態が代表的だが、事業者が企業や店舗に設置する場合もある。こうした小型基地局は「スモールセル」(small cell)と総称される基地局の一種であり、フェムトセルはその中でも最も小規模なものを指す。
フェムトセルの基地局は、家庭やオフィスに引き込まれた光ファイバー回線などをバックホール(中継網)として、携帯電話会社(キャリア)のコアネットワークに接続する。3G以降の携帯電話は高い周波数帯を使うため電波の直進性が高く、屋内には届きにくいが、基地局が室内の間近に置かれることで通信・通話品質の向上が見込める。
また、フェムトセルは通信を小規模なセルへ分散するため、通常の広域基地局(マクロセル)の負荷を軽減できる。キャリアにとっては、一般の基地局にかかる設備負担が軽くなり、フェムトセルの普及が進めば基地局増強のコストを抑えられるという期待もあった。
フェムトセルはかつて3Gや初期のLTE環境において、携帯電話会社から個人や法人向けに広く提供されていた。しかし近年では、家庭内Wi-Fiの高速化やWi-Fi経由の通話技術の普及、高密度なスモールセルの整備が進んだことで、個人宅向けの新規受付や運用は縮小・終了する傾向にある。現在は法人向けオフィス対策や高層ビル内部の局所的なエリア補完手段としての位置付けが主流となっている。