PostScriptフォント【CIDフォント】Type 1フォント
概要
PostScriptフォント(CIDフォント)とは、図形をベクター形式で定義できるページ記述言語のPostScriptを、フォントの字形の表現に応用したデータ形式。Type 1フォントやOCFフォント、CIDフォントなどの種類がある。米アドビ(Adobe)社が開発したアウトラインフォントのためのファイル形式で、対象文字集合や表現形式の異なる様々な形式を含む。表示や印刷を行うには「Adobe Type Manager」(ATM)という同社製ソフトウェアを導入する必要があったが、後にWindowsやMac OS(Mac OS X/macOS)が標準で対応するようになり不要となった。
1990年代を中心に対応フォントが各社から販売され、主に当時の(旧)Mac OS環境で印刷物の制作(DTP)用途に用いられた。2000年代になるとWindows環境で標準的に用いられた「TrueType」(トゥルータイプ)と統合され、後継の「OpenType」(オープンタイプ)に取って代わられた。
CIDフォント (CID-keyed font)
PostScriptフォントの形式の一つで、日本語を含む多言語の文字に対応するため各字体に2バイトの「CID」(Character ID)と呼ばれる識別番号を割り当てて管理する方式。異体字の収録やPDFへの埋め込み対応、カーニング(文字詰め)情報の収録など新機能も追加された。
日本語を含む様々な言語の文字の一つ一つにCIDを割り当て、各言語の文字コードとの対応関係を「CMap」(Character Map)と呼ばれるデータで管理する。一つの字体データに対して複数のCMapを用意することで、様々な文字コード環境から同じようにCIDフォントを呼び出して利用することができるようになる。
日本語環境のPostScriptフォントとして最もよく普及した形式だが、現在ではAdobe社によるサポートも終了している。CIDに相当する仕組みはTrueTypeフォントやOpenTypeフォントにも用意されており、そちらでは字体の識別番号を「GID」(Glyph ID)と呼ぶ。
Type 1フォント (PostScript Type 1)
初期のPostScriptフォントの主要な形式の一つで、アルファベットや数字、一部の記号文字など、いわゆる1バイト文字コードで表される文字集合のためのファイル形式。多くの欧文フォントがこの形式で提供された。
3次ベジェ曲線で表現されたアウトライン形式のフォントデータを格納することができ、小さいサイズや低解像度で字形が歪むのを補正するためのヒンティング機能をサポートする。
OCFフォント (Original Composite Font)
初期のPostScriptフォントのうち、日本語を含む2バイト文字を収録可能にしたファイル形式の一つ。日本語文字を収録したPostScriptフォント形式として最初に普及した。
Type1フォントが1バイト(256文字)で表現できる範囲の文字しか収録できなかったため、複数(多数)のType1フォントのデータを一定の形式で連結し、一つのファイルにまとめることで2バイト文字(最大65,536文字)を収録可能にしている。アウトラインデータの表現形式などはType1フォントに準じる。