基本情報技術者単語帳 - ハードウェア
ハードウェア
コンピュータ本体や内部の装置、周辺機器などの物理的な実体を伴う装置や機器、およびその部品、部材のこと。それ自体には形がないソフトウェアと対比される。
コンピュータの場合、処理装置や記憶装置、入出力装置、電子基板、ケーブル類、筐体などの部品や部材、およびその総体として物理的実体としてのコンピュータのことをハードウェアという。「ハード」と略されることも多く、「HW」「H/W」などの略号で示されることもある。
これに対し、コンピュータプログラムやデータなど、それ自体は物理的な実体を伴わない要素のことを「ソフトウェア」(software)と総称する。ソフトウェアの記録や伝送、表示や実行には必ず何らかのハードウェアが必要となる。
コンピュータ以外の分野でも、施設や設備、機器、部品、資材といった物理的実体をハードウェアと呼ぶことがあり、付随する非物理的な要素と対比する文脈で用いられる。例えば、劇場の建物や設備をハードウェア、そこで催される公演をソフトウェアと呼んだり、教育機関の校舎や備品をハードウェア、提供される教育プログラムをソフトウェアと呼んだりすることがある。
英語の “hardware” の原義は金物、金属製品という意味で、機械や生活用品などについて、木製のものなどと対比して金属製であることを表す言葉だった。現代では金属製かどうかはあまり重視されず、工具や冶具、装置、設備、資材、軍用装備品などを広く総称する言葉として用いられることが多い。
論理回路
デジタル信号を処理して論理演算や記憶などを行うための電子回路。単純な論理演算を行う回路を膨大な数組み合わせればCPU(MPU/マイクロプロセッサ)のような複雑な装置を作ることができる。
二状態のいずれかを取るデジタル信号を入力および出力とする論理素子を配線で結び、様々な論理演算や記憶を行う回路を構成する。信号の状態は論理的には2進数の「0」と「1」、あるいは真偽値(真理値/ブール値)の「真」と「偽」に対応し、物理的には電圧の高低で表すことが多い。高電圧を「真」や「1」に対応付ける方式を「正論理」、逆を「負論理」という。
論理素子は「論理ゲート」(logic gate)とも呼ばれ、何らかの論理演算を行う機能を持った単体の素子である。一つ以上の入力を取り、所定の演算を行って一つの信号を出力する。実際の電子回路上では抵抗やトランジスタなど複数の電子部品を組み合わせて実装される。図で表す際の記号には標準規格があり、MIL記号やJIS記号などがよく用いられる。
基本的なゲートとして、否定(NOT)演算を行う「NOTゲート」、論理和(OR)演算を行う「ORゲート」、論理積(AND)演算を行う「ANDゲート」、排他的論理和(XOR)演算を行う「XORゲート」、否定論理和(NOR)演算を行う「NORゲート」、否定論理積(NAND)演算を行う「NANDゲート」などがある。複雑な挙動の論理回路もほとんどがこれらの組み合わせで構成されている。
<$Fig:logic|center|false>現在の入力のみから出力を決定する回路を「組み合わせ回路」(combinational logic)と呼び、加算を行う加算器のように演算を行う回路などが該当する。一方、内部に状態を持ち、過去の入力で変更された現在の内部状態と入力を組み合わせて出力を決定する回路を「順序回路」(sequential logic)という。フリップフロップ回路(ラッチ回路)やカウンタ回路などが該当する。
AND回路 【AND gate】
基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力がいずれも「H」(Hight:高電圧)のときのみ出力が「H」となり、それ以外の場合は出力が「L」(Low:低電圧)となるもの。論理積(AND)演算を行う回路である。
正論理の場合、入力の両方が「H」のとき出力が「H」となり、片方あるいは両方が「L」のとき出力が「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット論理積(ビットAND)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のAND演算を行うことができる。
現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。AND回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路(のみ)の組み合わせでAND回路を構成することができる。
OR回路 【OR gate】
基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力のいずれもが「L」(Low:低電圧)のときに出力が「L」となり、それ以外の場合は出力が「H」(High:高電圧)となるもの。論理和(OR)演算を行う回路である。
正論理の場合、入力の片方あるいは両方が「H」のとき出力が「H」となり、両方「L」のときのみ出力が「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット論理和(ビットOR)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のOR演算を行うことができる。
現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。OR回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路(のみ)の組み合わせでOR回路を構成することができる。
NOT回路 【NOT gate】
基本的な論理回路の一つで、一つの入力と一つの出力を持ち、入力の逆の状態を出力するもの。論理否定(NOT)演算を行う回路である。
入力が「H」(High:高電圧)なら出力は「L」(Low:低電圧)、入力が「L」なら出力は「H」となる。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット否定(ビットNOT)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のNOT演算を行うことができる。
最も基本的な論理ゲートの一つで、様々なデジタル回路の構成部品として用いられる。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。NOT回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路を用いてNOT回路を構成することができる。
NAND回路 【NAND gate】
基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力が両方「H」(High:高電圧)のときのみ出力が「「L」(Low:低電圧)となり、それ以外の場合は出力が「H」となるもの。論理積(AND)の結果を反転(NOT)した否定論理積(NAND)演算を行う回路である。
正論理の場合、入力の片方あるいは両方が「L」のときに出力が「H」となり、両方「H」のとき「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビットNAND演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のNAND演算を行うことができる。
現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。
「機能的完全性」(functional completeness)を備え、AND回路やOR回路、NOT回路などの基本的な論理ゲート、あるいは加算器などのより複雑な回路を含め、任意の論理回路はNAND回路のみの組み合わせで実装できることが知られている。また、他の論理ゲートより少ない半導体素子(トランジスタなど)で実装できるため実用上もよく利用される。
フリップフロップ回路
最も基本的な構造の論理回路の一つで、二つの状態のいずれかを保持することができるもの。“flip-flop”とは「パタパタ」あるいは「ぎったんばっこん」に相当する擬音語で、出力値が入れ替わる様子をシーソーに例えたものとされる。
現在の入力と共に過去の入力も利用する順序回路の一種で、二つの状態を「0」および「1」に対応付け、1ビットの値を保持する記憶回路として利用される。通電が途絶えると状態が失われる揮発性の素子であり、永続的なデータ保存などには使えない。
最も有名な「RSフリップフロップ」は、R(Reset:リセット)とS(Set:セット)の二つの入力、QとQの二つの出力で構成される。内部はRとSのそれぞれにNOR回路、あるいはNOT回路とNAND回路の組み合わせが接続されており、それぞれ相手方の出力とRあるいはSが入力となり、出力がQとQとなる。
RとSの入力を(0,1)にするとQとQの出力は(0,1)、(1,0)としたときは(1,0)となり、QとQは必ず逆の値となる。入力がいずれも0のときは前回変更されたときの状態を維持するため、記憶素子として利用することができる。出力を変化させたいときだけR、Sに値をセットする。
フリップフロップを大量に並べてメモリ装置としたものをSRAM(Static RAM:スタティックRAM)と呼び、DRAMに比べてリフレッシュ動作が不要で高速に動作するという利点がある。CPU内部でデータを保持するレジスタやキャッシュメモリなどにも応用されている。回路構成により、RS型以外にも「JKフリップフロップ」、「Dフリップフロップ」(D:Delay)、「Tフリップフロップ」(T:Toggle)などの種類がある。
正論理 【ハイアクティブ】
デジタル回路で情報を表現する方法の一つで、電圧レベルが高い状態(H:High)に「1」や「真」(true)を、低い状態(L:Low)に「0」や「偽」(false)を対応付ける方式。負論理の対応関係を逆転させたもの。
デジタル回路では信号線を流れる電流の電圧に閾値(敷居値)を設け、これより高い電圧と低い電圧を2つの状態に対応付けて1ビットの信号を伝達する。高電圧の状態に2進数の「1」や論理値の「真」を対応付けるのが正論理である。
正論理は人間が理解しやすいため電子回路の説明などでよく用いられるが、実際の回路の設計では逆の対応関係を用いる負論理を採用したり、正論理と負論理を混在させることもある。正論理での論理和(OR)回路は負論理として用いると論理積(AND)回路になるという性質があり、OR回路はAND回路になる。NAND回路とNOR回路も同様に入れ替わる。
負論理 【アクティブロー】
デジタル回路で情報を表現する方法の一つで、電圧レベルが低い状態(L:Low)に「1」や「真」(true)を、高い状態(H:High)に「0」や「偽」(false)を対応付ける方式。正論理の対応関係を逆転させたもの。
デジタル回路では信号線を流れる電流の電圧に閾値(敷居値)を設け、これより高い電圧と低い電圧を2つの状態に対応付けて1ビットの信号を伝達する。低電圧の状態に2進数の「1」や論理値の「真」を対応付けるのが負論理である。
対応関係が逆のものは「正論理」(positive logic/アクティブハイ)と呼ばれ、論理学的にはいずれを用いても違いはない。人間の直感としては電源が高い状態が1や真である正論理の方が分かりやすいが、半導体素子の電気的な特性から電圧の高い状態と低い状態が対称でない場合があり、負論理の方が都合が良いこともある。
真理値表 【真偽表】
ある論理回路や論理式について、考えられるすべての入力の組み合わせと、対応する出力を一つの表に書き表したもの。
真理値(ブール値/真偽値)は論理演算などで用いられる値で、「真」(true)と「偽」(false)の2値のいずれかを取る値である。コンピュータ上ではすべての情報を「1」と「0」を並べた2進数で表すため、真と1を、偽と0を対応付けて論理回路で様々な処理を行う。
真理値表は論理演算の入力値と出力値の対応関係を図に表したもので、一般的な形式では表の左側の列に入力を、右側の列に出力をそれぞれ並べる。各行に入力の組み合わせと、その時の出力を記入していく。各項には「1」(あるいは「真」「Truth」「T」)か「0」(あるいは「偽」「False」「F」)のどちらかを記入する。
行数
<$Fig:truthtable|right|true>入力が1つ(NOT演算)の場合は入力「0」と「1」の2行で表され、入力が2つの場合は「0-0」「0-1」「1-0」「1-1」の4行となる。同様に、3入力では8行、4入力では16行というように、2の入力数乗が表の行数となる。
列数
ある特定の論理演算の結果を示す場合は出力は1列となるが、複数の異なる演算について結果を比較するために、それぞれの演算ごとに列を用意する(列名部分に演算内容を記述する)場合もある。論理回路の動作を示す表の場合には、出力の数だけ列を用意し、それぞれの演算結果を書き込んでいく。
フィードバック制御
システムを制御する手法の一つで、出力を入力の一部として投入し、制御に反映させる方式。制御対象の状態を一定に保つ仕組みなどによく用いられる。
システムは入力に基づいて出力を決定するが、フィードバック制御では出力そのものや、出力によって生じた制御対象の変化などを測定し、入力として与える。出力の内容は直前の出力の結果を反映して変化する。この仕組みは機械などの制御システムだけでなく、生体メカニズムなどにも見られる。
例えば、ヒーターで対象物の温度を一定に保つ装置を制御する際、入力として対象物の温度の測定結果を与える。これにより、温度が規定を下回ったらヒーターの出力を上げ、規定を上回ったら一時停止するといった制御を行い、温度を一定に保つことができる。
一方、出力や結果を入力として用いずに、あらかじめ設定されたモデルに基づいて状態を予測して出力を決定する方式を「フィードフォワード制御」(feedforward control)という。検知可能な外乱による影響に対して、フィードバック制御はその影響が実際に出てからしか対処できないが、フィードフォワード制御は影響を事前に予測して先手を打つことができるため、フィードバック制御を補完するように組み合わせることが多い。
PWM 【Pulse Width Modulation】
信号などをパルス電流に変調するパルス変調方式の一つで、一回のパルス周期に含まれるオンの時間とオフの時間の比率を変化させることで量を表現する方式。
短時間に電流のオンとオフを頻繁に切り替えるパルス電流で信号を表現する方式の一つで、一定の周期でパルスを構成するが、一つのパルスの中で電流がオンの時間が長ければ大きな量を、短ければ小さな量を表す。幅の異なるパルスを連続して送ることで、信号を伝達したり電力を増減させたりすることができる。
一回のパルス周期の時間幅の中で、オンの状態(電圧が高い)の割合を「デューティー比」(duty ratio)という。例えば、デューティー比が60%であればオンの状態でパルスが始まり、6割の時間が経過した時点でオフに切り替わる。これにより最大値の6割の値や量を伝達できる。
PWM制御は制御性が高く細かな制御が可能なほか、電圧が最大か最小のみで中間の状態を用いないため損失が少なく効率的である。半導体制御のインバータやヒーター、モーターなどの電力制御に用いられるほか、電子機器の音源回路の動作原理の一つとして利用されることもある。
ダイオード
電子部品や半導体素子の一種で、電流を一方向にしか流さない作用を持つもの。最も基本的な素子の一つで、様々な用途に用いられる。通電すると発光する性質を持つものを特に発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)という。
アノード(anode:陽極)とカソード(cathode:陰極)の2つの端子があり、アノードからカソードへは電流を流すが、反対方向へは電流を流さないという性質がある。
発光ダイオード (LED:Light Emitting Diode)
電圧を加えると光を放つダイオードを発光ダイオードという。P型半導体とN型半導体を接合したPN接合を持ち、P型側の陽極(anode:アノード)を正、N型側の陰極(cathode:カソード)を負とする順方向の電圧をかけると、接合面で正孔と電子が結合して発光する。 このような発光現象をエレクトロルミネッセンス(EL:Electro-Luminescence)という。
レーザーダイオード (LD:Laser Diode)
電流を流すとレーザー光を発振する半導体素子をレーザーダイオードという。
p型半導体とn型半導体を組み合わせた素子で、順方向に電圧を加えるとp型の内部を正孔がn型に向かって、n型の内部を電子がp型に向かって移動する。接合面で電子と正孔が結合する際に発光する。接合面はわずかな厚みを持つ層(発光層、活性層)で、両端が光を反射する材質になっており、発生した光が両端を増幅しながら往復し、レーザー発振が起きる。
発光の原理はLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)と同じだが、LEDは生じた光がそのまま外部に放射されるのに対し、ダイオードでは発光層内を反射して位相の揃ったレーザー光となる点が異なる。
薄膜ダイオード (TFD:Thin Film Diode)
ガラスなどでできた基板の上に、極薄い膜状のダイオードを敷き詰めたものを薄膜ダイオード(はくまくダイオード、TFD:Thin Film Diode)という。
液晶を利用した表示装置などに使われるもので、同じく薄い膜状に形成したトランジスタである薄膜ダイオード(TFT:Thin Film Transistor)とよく比較される。TFD液晶はTFT液晶に比べコストや消費電力では優れたが輝度や色の再現性では劣ったため、TFTの低価格化により次第に廃れていった。
トンネルダイオード (エサキダイオード)
量子トンネル効果を利用したダイオードをトンネルダイオード(tunnel diode)またはエサキダイオード(Esaki diode)という。
順方向に電流を流すと、トンネル効果により、ある電圧領域では電圧をかけるほどに流れる電流量が少なくなるという「負性抵抗」が現れる。これを用いた発振回路や増幅器は従来のトランジスタをはるかにしのぐ優れた性能を発揮する。
1957年に江崎玲於奈氏らが発明したもので、1973年にはその功績に対して、アイバー・ジェーバー(Ivar Giaever)氏、ブライアン・ジョセフソン(Brian D. Josephson)氏と共にノーベル物理学賞が授与された。
LED 【Light Emitting Diode】
半導体素子の一種で、電流を流すと発光するダイオードのこと。少ない電力で強い光を発することができ、照明や表示装置に広く応用されている。
電流を特定の一方向にのみ流す性質(整流作用)を持つ電子素子を「ダイオード」(diode)というが、LEDは電流を流すと発光する性質を持つ。1962年に米電気工学者ニック・ホロニアック(Nick Holonyak, Jr.)によって発明された。
構造と原理
p型半導体とn型半導体を接合したpn接合を持ち、p型側の陽極(anode:アノード)を正、n型側の陰極(cathode:カソード)を負とする順方向の電圧をかけると、接合面で正孔と電子が結合して発光する。 このような発光現象を「エレクトロルミネッセンス」(EL:Electro-Luminescence)という。
材料によって発光色が異なり、初期には赤やオレンジ、1972年には緑色LEDが開発されたが、1989年にそれまで困難だった青色LEDが実用化された。これにより赤・青・緑の光の三原色が揃い、これらの組み合わせで白色を含む任意の色を作れるようになったため、一気に用途が拡大した。
特徴と用途
LEDは白熱電球や蛍光灯など他の発光装置・器具に比べ、小型化が容易、衝撃に強い、長寿命、構造が単純、大量生産しやすい、明滅の切り替えが高速、発光効率が高い(同じ電力なら明るい、同じ照度なら発熱や消費電力が少ない)、光に含まれる波長が極めて偏っている、高温の環境に弱いという特徴がある。
当初は電気製品の電源などの状態を点灯によって示すインジケータ(表示灯)としてよく用いられたが、高輝度化や白色光の実現により、近年では電球や蛍光灯に代わる照明用途、大型の電光掲示板、コンピュータのディスプレイ装置や液晶テレビなどのバックライトなどとしても広く普及している。
トランジスタ
電流の増幅やスイッチの働きをする半導体素子の一つ。単体の素子として様々な電気製品、電子機器に用いられるほか、集積回路(IC)における基本的な素子の一つとして微細なトランジスタが大量に用いられている。
いくつかの構造・動作原理のものがあるが、単にトランジスタといった場合は「バイポーラトランジスタ」(bipolar transistor)と呼ばれる種類の素子を指すことが多い。これはN型半導体とP型半導体をN-P-NあるいはP-N-Pの順に互い違いに並べた構造になっている。
この両端のNまたはPに繋がる電極をそれぞれ「エミッタ」(emitter)および「コレクタ」(collector)、間に挟まれた半導体に繋がる電極を「ベース」(base)という。エミッタとベースの間に電流を流すと、エミッタとコレクタの間にその何倍も大きな電流が流れる。
この原理を利用して、エミッタ-ベース間に信号を流してコレクタから増幅された信号電流を取り出したり(増幅作用)、エミッタ-ベース間で微弱な電流のオン・オフを切り替えることにより、エミッタ-コレクタ間で大きな電流のオン・オフを制御することができる(スイッチング作用)。
なお、2つN型でP型を挟んだ構造のものを「NPN型トランジスタ」、2つのP型でN型を挟んだものを「PNP型トランジスタ」という。N型は電荷を運ぶキャリア(担体)が電子、P型は電子の欠落(正孔)という違いがあり、前者の方が移動速度が速いため、NPN型の方が広く利用されている。
また、ソース(source)、ゲート(gate)、ドレイン(drain)の3つの端子を持ち、ゲート端子に電圧をかけることによってソース-ドレイン間を流れる電子または正孔(ホール)の流れを制御する方式のトランジスタを「電界効果トランジスタ」(FET:Field Effect Transistor)あるいは「ユニポーラトランジスタ」(unipolar transistor)と呼び、半導体集積回路などによく用いられる。他にも光信号によって電流を制御する「フォトトランジスタ」(photo transistor)など様々な方式がある。
トランジスタは1948年にアメリカのベル研究所でジョン・バーディーン(John Bardeen)氏、ウォルター・ブラッテン(Walter H. Brattain)氏、ウィリアム・ショックレー(William B. Shockley Jr.)氏の3人の物理学者によって発明された。初期には電子機器における真空管を置き換え、また、テレビやラジオの受信機などにも広く用いられた。
集積回路 【IC】
高度な機能を持つ電子部品の一つで、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオードなど、多数の微細な電子部品を一つの基板の上で連結し、全体として複雑な処理を行ったり、大量のデータの記憶を行ったりできるもの。形態が数cm角程度の小片であるため「チップ」(chip)と呼ばれる。
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)やマイクロコントローラ(MCU)、メモリ、センサー、電源回路など様々な種類があり、電子機器の中枢部品として広く利用されている。回路の集積度の高いものをLSI(Large Scale Integration)、VLSI(Very LSI)、ULSI(Ultra-LSI)などと分類していた時代もあったが、現代ではLSI以外の呼称はほぼ廃れている。
一般的なICはシリコン(Si:ケイ素)などの半導体でできた数mmから数cm角のチップの表面に、数十万個から多いもので10億個以上の微細な半導体素子と、それらを結ぶ金属配線が実装されている。素子や配線は印刷や写真の手法に由来する光学的な焼付処理(フォトリソグラフィ)によっていっぺんにまとめて形成されるため大量生産に適している。
チップは樹脂などでできた外殻(ICパッケージ)に封入され、その周囲や裏面などに規則正しく並んだ金属端子で外部と接続される。用途に応じて電子基板(プリント基板)の所定の位置に組み付け、あるいははんだ付けされ、電子機器の一部として機能する。
主なICの種類
ICには大きく分けてデジタル信号を扱うデジタルICとアナログ信号を扱うアナログICがあり、デジタルICにはデータや信号の処理を行うためのロジック系ICと、データの記録に用いられるメモリICがある。
アナログICには各種のセンサーや変換回路、増幅器、無線信号処理といったアナログ信号処理用のICと、電源・電力制御を行うための電源ICなどがある。デジタルとアナログの両方の信号用の回路を内蔵したミックスドシグナルICもある。
ロジックとメモリ、デジタルとアナログなど複数の異なる種類の回路を混載し、単体でひとまとまりの大きな機能(機器の制御など)を提供するよう設計されたICを「システムLSI」あるいは「SoC」(System-on-a-Chip)などという。
また、汎用品(汎用IC)か特注品(カスタムIC)かによる分類、一枚のチップで完結した構造(モノリシックIC)か複数のチップや電子部品の複合構造(ハイブリッドIC)かによる分類など、いくつかの分類法がある。
ロジックIC
ロジック系のICは主にデータの演算や変換、処理、伝送、別の装置の制御などの機能を論理回路として実装したIC製品である。MPUやASSP(特定用途向け標準品)のようにメーカーが機能や仕様を決めて設計する汎用品(既製品)と、用途や組み込み対象ごとに個別に設計されるASIC(特定用途向けIC)に分かれる。
コンピュータの心臓部に当たるマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)やデジタル機器の制御装置であるマイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)、デジタル信号処理に特化したDSP(Digital Signal Processor)、コンピュータグラフィックス関連の演算処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)などの種類がある。
MPUやMCUなどは内部に一時的なデータ保管のための記憶素子を内蔵した構成が一般的で、I/O制御といった従来は別のチップに分かれていた様々な機能や役割が統合されるようになってきているため、単純なロジック系ではなくシステムLSI/SoCに分類されることもある。
チップ製造時には特定の機能は与えられておらず、開発者が内部の論理回路の構成をデータとして与えることで機能するようになる「プログラマブル」(programmable)なICもある。方式や回路規模によってPLD(Programmable Logic Device)、CPLD(Complexed PLD)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの種類がある。
ちなみに、「汎用ロジックIC」といった場合は、MPUなど規格や設計があらかじめ決まっている汎用製品という意味ではなく、NANDゲート、フリップフロップ回路といった単機能の論理回路を単体のICチップとして実装した製品のことを指す。
メモリIC
メモリ系のICは主にデータの記録に用いられるもので、コンピュータやデジタル機器の主記憶装置(メインメモリ)や内蔵プログラム(ファームウェアなど)の記録、永続的なデータ記憶装置(ストレージ)などとして用いられる。
大きく分けて、任意に読み書きが可能な「RAM」(Random Access Memory)と、使用時には記録済みデータの読み出ししかできない「ROM」(Read Only Memory)に分かれる。前者は電源を落とすと内容が失われる「揮発性メモリ」、後者は通電状態に左右されず常に記録内容が維持され続ける「不揮発性メモリ」である。
RAMは記憶素子の内容を維持するために一定間隔で再書き込み動作(リフレッシュ)を行う必要がある「DRAM」(Dynamic RAM)と、リフレッシュしなくても記憶が失われない「SRAM」(Static RAM)に分類される。前者は消費電力は大きいが低コストで高密度化(大容量化)しやすいためコンピュータのメインメモリに使われる。後者は高速性や省電力性が必要な組み込み用途などで使われる。
ROMは製造時に内部の回路に固定的に信号を記録し、以降は内容を変更することができない(現在ではこれをマスクROMと呼ぶ)。しかし、技術の進展でチップ製造時にはデータを記録せず、開発者が特殊な装置でデータを記録する「PROM」(Programmable ROM)が発明された。PROMがさらに発展し、内容の消去と再書き込みを繰り返し行うことができる「EPROM」(Erasable Programmable ROM)が生まれた。
さらに、すべての処理をコンピュータなど(読み出しを行う)機器に装着した状態のまま実行できる「EEPROM」(Electrically Erasable Programmable ROM)に改良され、さらに制御方式や書き換え性能などを向上させた「フラッシュメモリ」となった。フラッシュメモリはUSBメモリやメモリーカード、SSDなどの形で、従来の磁気ディスクや光学ディスクに代わって主流のストレージ装置として急速に普及している。
LSI 【Large-Scale Integration】
半導体の小片の表面に微細な電子部品や配線を大規模に集積した装置。歴史的にはIC(集積回路)のうち素子の集積度が数千ゲート(数万トランジスタ)かそれ以上のものを意味したが、現代では単にICの同義語、言い換え語として用いられるのが一般的。
集積回路(IC:Integrated Circuit)とは、トランジスタや抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの多数の微細な電子部品とそれらを結ぶ金属配線を一枚の半導体基板の上に一体的に形成し、全体として複雑な機能を持たせたチップ(小片)状の電子部品である。
デジタル信号の処理や記憶などが可能で、マイクロプロセッサ(MPU/CPU)やマイクロコントローラ(MCU)、メモリ、センサー、電源回路など様々な種類があり、コンピュータや電子機器の中枢部品として広く利用されている。
SSI/MSI/LSI
1960年代初頭に発明された初期のICは素子が数個程度のシンプルな構造だったが、1970年頃になると新たな製造技術などにより素子の集積度が飛躍的に向上し、一枚のチップに積載された部品の数で製品の世代やカテゴリーを表すようになった。
概ね論理ゲートの数が100~1000程度のものを「MSI」(Medium Scale Integration:中規模集積回路)、これを超え10万ゲート位までのものを「LSI」(Large Scale Integration:大規模集積回路)と呼ぶようになった。このとき同時に、初期の小規模なチップに「SSI」(Small Scale Integration:小規模集積回路)という区分を与えて後続世代と区別するようになった。
VLSI/ULSI
1980年代に入ると製造技術の微細化の進展で更に大きな規模の回路が生産できるようになり、ゲート数が10万を超えるものを「VLSI」(Very Large Scale Integration)、100万を超えるものを「ULSI」(Ultra-Large Scale Integration)と呼ぶようになった。
2000年頃になると100万ゲートを超えるチップが開発されるようになるが、次第に回路規模による細かな区分は意識されなくなり、ULSIを超える区分は用いられなかった。
現代のLSI
現在では「LSI」の語はほとんどICと同義語のように使われるようになり、「高い集積度」という本来の意味合いはほぼ喪失している。ICの言い換え以外で「LSI」の呼称を一般的に用いるのは、複数の機能を一枚のチップに混載した「システムLSI」程度で、これも「SoC」(System-on-a-Chipの)という呼称に置き換えられつつある。
VLSI 【Very Large Scale Integration】
IC(集積回路)の歴史的な分類の一つで、一枚の半導体チップに10万以上の電子部品などを集積した製品のこと。現代では集積度に関わらず単にICやLSIの言い換え、同義語として用いられることが多い。
集積回路(IC:Integrated Circuit)とは、トランジスタや抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの多数の微細な電子部品とそれらを結ぶ金属配線を一枚の半導体基板の上に一体的に形成し、全体として複雑な機能を持たせたチップ(小片)状の電子部品である。
1960年代の初期のICは一枚のチップに素子が十数個程度の単純な構造だったが、部品や配線の微細化、集積度の向上が急激に進み、回路規模によって製品を分類するようになった。素子数が数百程度のものを「MSI」(Medium Scale Integration:中規模集積回路)、数万程度のものを「LSI」(Large Scale Integration:大規模集積回路)と区分し、初期のチップは「SSI」(Small Scale Integration:小規模集積回路)と呼ばれるようになった。
1980年代には10万を超える素子を集積したチップが製造できるようになり、VLSIと呼ぶようになった。その後、集積度が100万を超えるチップを指す「ULSI」(Ultra-Large Scale Integration)という呼称も考案されたが、次第に回路規模で名称を区分する意義が失われ、今日では回路規模によらず単に複雑で大規模なICチップという意味でVLSIという用語を用いる。
FPGA 【Field Programmable Gate Array】
内部の論理回路の構造を何度も繰り返し再構成できる半導体チップ(PLD:Programmable Logic Device)のうち、回路規模が数万ゲート以上に及ぶ大規模で複雑なもの。
通常のIC/LSIでは、設計者が作成した回路図に基いて製造時に固定的に論理回路を形成し、製造後にこれを変更することはできないが、FPGAは製造後に外部から設計情報を送り込んで任意の論理回路を構成することができる。何度も繰り返し書き換えて動作を変更することもできる。論理回路の設計には「VHDL」や「Verilog HDL」など、通常のICの設計にも使われるハードウェア記述言語(HDL:Hardware Description Language)が用いられることが多い。
FPGAに特定の処理を実装すると、汎用のマイクロプロセッサを用いてソフトウェアにより同じ処理を行う場合に比べ圧倒的に高速に実行することができる。また、一つのチップ内に独立に動作する複数(しばしば多数)の回路ブロックを設けることで、汎用チップでは大規模なシステムが必要となる極めて並列度の高い処理も比較的容易に実装できる点も大きな特徴である。
特定の処理を実行する論理回路を実装したICチップには「ASIC」(Application Specific IC)もあるが、これは製造時に固定的に回路を形成するもので、消費者向け電子機器など大量生産する場合には一個あたりの製造コストはASICの方が低くなるが、例えば企業内の特定の業務のために数十台、数百台のコンピュータに組み込むといった用途ではFPGAのほうが低コストとなる。
また、FPGAは回路データを作成すれば即座にチップに実装して実行してみることができるが、ASICは通常の半導体製造工程で生産されるため設計が完了してから製品が完成するまで最短で数週間かかるという違いもある。電子製品の開発・試作段階ではFPGAを用い、本生産時には同じ回路設計でASICを製造するといった使い分けが行われることもある。
プログラム可能な半導体チップは1970年代から研究・開発されてきたが、現在FPGAとして分類される製品群の直接の祖とされる製品は1985年にザイリンクス(Xilinx)社が発売したXC2064であると言われる。同社はFPGA市場の先駆者として長年トップシェアを誇り、ライバルのアルテラ(Altera)社(2015年にマイクロプロセッサ大手のインテル社が買収)と市場を寡占してきた。