読み方:サイクプロジェクト

Cycプロジェクト

概要

Cycプロジェクトとは、人間が持つ常識を一定の形式でデータ化し、コンピュータが自動処理できるようにするプロジェクト。ルールベースの人工知能で常識に基づく推論ができるようにすることを目指している。

1970~80年代にルールベースの手法に基づくエキスパートシステムや機械翻訳システムなどが開発されると、極狭い範囲の語彙や推論規則を与えてその範囲内で用いることはできるが、実用化しようとすると常識の欠如によってうまく機能しないことが明らかになってきた。

Cycプロジェクトでは普通の人間なら知っているような様々な概念と、概念の間の関係性を一定の記述形式に基づいて列挙した知識ベースを構築し、システムへの入力に含まれる常識を認識できるようにする。例えば、「動物は必ず死ぬ」「人間は動物である」という常識があれば、「太郎は人間である」という入力から「太郎はいずれ死ぬ」という推論が可能となる。

歴史

Cycは米コンピュータ大手および半導体大手からなる産業コンソーシアムMCC」(Microelectronics and Computer Consortium/後に ~ Corporation に改名し、こちらの方が有名)のプロジェクトの一つとして1984年に開始された。成果は様々な人工知能システムの知識ベースの一部として活用する構想だった。

MCCは2004年に解散したが、Cycはプロジェクトを率いたダグラス・レナート(Douglas Lenat)氏が設立したサイコープ(Cycorp)社に引き継がれ、その後も知識ベースの拡充が継続された。Cyc知識ベースから一部を抜き出して構成した「OpenCyc」や、自然科学研究システム向けの「ResearchCyc」を公開するなど、同社は現在でも事業を継続中である。

(2025.9.9更新)

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