エキスパートシステム 【expert system】

概要

エキスパートシステム(expert system)とは、ある分野の専門家の持つ知識をデータ化し、専門家のように推論や判断ができるようにするコンピュータシステム。1970~80年代の人工知能(AI)研究から生まれた応用分野の一つである。

例えば、医師が診断に用いる知識を一定の形式でデータとして表現し、推論エンジンと呼ばれるプログラムに読み込ませる。これに対して患者が訴える症状をデータとして入力すると、知識データに基づいて推論をい、医師がうのと似たように診断結果を出力する。結果は一つに特定して返答する場合もあるが、複数の候補を確度の高さなどと共に提示するシステムが多い。

人間の持つ知識それ自体は高度に複雑で、様々な形態の情報の集合として表されるが、エキスパートシステムではこれを「○○ならば××である」といった単純な条件やルールに分解し、特定のデータ形式によって表現する。規則はデータ構造として表され、推論エンジンプログラムの論理構造からは切り離されている。これによりエンジン開発知識ベースの作成を分離することができ、また、知識ベースを交換することで同じエンジンで様々な分野の推論をうことができる。

1980年代のいわゆる第2次AIブームで盛んに研究・開発されたシステムだが、実際の専門知識をルールの集合として表すのが当初の想像以上に困難(一見互いに矛盾するルール群の扱いなど)であったことや、現実の問題は極めて複雑で例外が多く、期待したほど実務的な状況での成果が上がらなかったことから失望が広がり、AI研究は再び下火になっていった。

(2018.11.14更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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