ベクタ 【vector】 ベクトル

概要

ベクタ(vector)とは、「方向と大きさ」のように、互いに独立な複数の異なる値の組み合わせとして表される量のこと。それぞれの値が何を意味するかは分野によって異なる。

「ベクトル」表記はドイツ語の “Vektor” に由来し、古くからこの概念を用いている数学や物理学で多く見られる。「ベクター」あるいは「ベクタ」表記は英語の “vector” に由来し、IT分野などで多く見られる。

可変長配列

プログラミングなどの分野では、1次元の配列変数として表現できる、同じ型のデータを一列に並べたデータ構造のことをベクタと呼ぶ場合がある。これと対比して、単体の値や変数のことは数学の用語にならって「スカラ」(scalar)と呼ぶ場合がある。C++言語やJavaなどでは、要素数を後から増減できる可変長配列を扱うことができるクラスのことをベクタ(vector/Vector)という。

ベクトル演算

並列処理の一種で、一列に並んだ一定の数の複数の値に対して同時に同じ演算を行うことを「SIMD」(Single Instruction Multiple Data)あるいは「ベクトル演算」という。

このような処理に適した論理回路を実装したマイクロプロセッサ(CPU/MPU)を「ベクトル型プロセッサ」、そのようなプロセッサで構成されたコンピュータを「ベクトル型コンピュータ」(ベクトル計算機)という。

かつてはスーパーコンピュータの高速化手法として期待されたが、適用場面が限られプログラミング手法が特殊なことからあまり普及しなかった。現在ではGPU(Graphics Processing Unit)が3次元グラフィックス処理の高速化を行う手法として特定の演算のみをベクトル的に処理する方式が広まっている。

ベクタ画像

画像処理の分野で、画像を点の座標とそれを結ぶ線や面の方程式のパラメータ、および、塗りつぶしや特殊効果などの描画情報の集合として表現する方式を「ベクタ画像」(vector image)、「ベクタグラフィックス」(vector graphics)などという。

対義語は「ビットマップ」(bitmap)あるいは「ラスタ」(raster)で、これは画像を色のついた点(ピクセル、ドット)を縦横に規則正しく敷き詰めて画像を表現する形式である。

(2019.6.28更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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