ブラックボックス 【black box】
概要
ブラックボックス(black box)とは、利用者が内部構造や動作原理を知らなくても支障がない設計の装置やソフトウェア、システムなどのこと。また、対象の内部構造などが分からないことを前提として、入力と出力のみに着目する考え方。ソフトウェアを含む現代の工業製品の大半はその利用者にとってブラックボックスとなっており、内部の実装や仕組みの詳細を知らなくても、利用方法や操作方法さえ知っていれば望んだ通りに利用できるようになっている。
製品やシステムの開発者や生産者にとっても、部品や構成要素の一つ一つの内部の詳細を熟知している必要は必ずしも無く、他の要素との連結や機能の利用を行うための規約や仕様、特性や制約などが分かっていれば十分であることが多い。この場合、個々の要素はある種のブラックボックスとして扱われる。
また、機械などの人工物だけでなく、人間や組織の営みについても、その仕組みや工程、原理などが外部から不明である状態を比喩的にブラックボックスということがある。業務の進め方や意思決定の過程を個人や内部の少数しか知らず、外部からはどうなっているのか分からない状態などを指す。
分野によっては、ブラックボックスと対比して、内部構造や動作原理が分かっているもの、また、対象の内部構造や詳細な実装などに立ち入って検討する考え方のことを「ホワイトボックス」(white box)という場合がある。
ブラックボックス化
設計や構造の詳細が分からなくなること、あるいは、第三者に分からないようにすることを「ブラックボックス化」という。意図せずいつの間にか起こってしまう場合と、他者に対して意図的に行う場合がある。
市場環境の変化や技術の進展などに伴って、前の時代に製造されていた製品の設計や構造の詳細、製造法などを熟知した技術者が途絶えてしまう場合がある。製品は残っていて利用されていても、新たに製造したり内部構造に立ち入って修理や改造することはもはや誰にもできず、製品が意図せずブラックボック化してしまった状態と言える。
また、企業秘密や軍事機密などを保護するため、製品の内部構造や重要な部品の動作原理などを第三者に解析されないよう、調べにくい状態にすることもブラックボックス化という。部品に封印を施して分解できないようにしたり、強引に開けようとすると破壊される機構を組み込んだりする。