MPEG-DASH 【Dynamic Adaptive Streaming over HTTP】
概要
MPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)とは、Web上で動画や音声のストリーミング配信・再生を行なうためのプロトコル(通信規約)およびデータ形式の一つ。ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の合同委員会がMPEG標準の一環として2012年に標準化(ISO/IEC 23009)した。Webコンテンツの伝送に用いられるHTTP(Hypertext Transfer Protocol)を動画データの配送に応用し、ライブ放送など終わりの決まっていない映像コンテンツを配信と同時に視聴するストリーミングを可能とする。
配信側では圧縮に用いたコーデックや再生設定、各セグメントのURLや再生順を記したXML形式の設定ファイル(MPDファイル:Media Presentation Description)を用意する。動画や音声はMP4形式やMPEG-2 TS形式の短いファイル(メディアセグメント)に分割され、Webサーバ上に配置される。
クライアントは再生したいコンテンツのMPDファイルを取得し、各セグメントを順番にWebサーバに要求、届いたファイルを順序通りに組み立ててストリーミング再生する。複数の映像を切り替えて再生したり、環境に応じて適切な解像度や品質の映像を選択して受信(ABR:Adaptive Bit Rate)することもできる。
MPEG-DASH自体は動画や音声の圧縮符号化形式(コーデック)を定めておらず、クライアント側にはMPDファイルで指定されたコーデックを用意する必要がある。配信データはHTTPで伝送されるファイルであるため、大規模な事業者はCDN(コンテンツデリバリネットワーク)を用いて効率的に配送することができる。
同種の技術として米アップル(Apple)社の「HLS」(HTTP Live Streaming)や米アドビ(Adobe)社の「HDS」(HTTP Dynamic Streaming)などがあるが、MPEG-DASHは国際標準のMPEGの一部であり特定企業の意向や製品仕様に依存せず、異なるメーカー間の相互運用性が高い。
(2023.11.6更新)