読み方 : ベクトルじこかいきモデル

ベクトル自己回帰モデル 【VARモデル】 vector autoregressive model

概要

ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)とは、過去の複数の項目の状態が互いに影響しあって来の状態が決まる時系列の現象をモデル化したもの。経済活動や気象など現実の様々な現象をモデル化することができる。

解説 過去の自身の状態と外部からの影響で現在の状態が決まる現象をモデル化したものを「自己回帰モデル」(ARモデル:arutoregressive model)という。単純な自己回帰モデルは状態を一つの変数で表すが、ベクトル自己回帰モデルはこれを拡張し、複数の変数からなるベクトルで状態を表す。

ある時点tにおけるモデルの状態を表すベクトル Xt が直前(t-1)の状態 Xt-1 のみに依存する場合、定数項 c と係数(パラメータ)の行列 A1、外的要因による影響 εt を用いて Xt=c+A1Xt-1+εt と記述することができる。ベクトルがk個の変数で表される場合、変数間の影響を表すために係数Aは定数をk×k個並べた行列となる。

直前だけでなくp回前までの状態に依存する場合、p個の係数行列 A1Ap を用いて各回の影響を線形に足し合わせ、Xt=c+A1Xt-1+A2Xt-2+…+ApXt-p+εt = c+i=1pApXt-i+εt と記述できる。

自然界や人間界には、複数の要因が互いに影響を与え合って時系列に変化を引き起こす現象が多数ある。例えば、天候の変化は各地点における気温、温度、湿度、風力、風向、日照などの様々な要因が互いに影響し合って生じる。ベクトル自己回帰モデルはこのような複雑な状況をモデル化するのに役立つ。

単変量の自己回帰モデルは主にその変数の将来の予測に用いられるが、ベクトル自己回帰モデルは予測だけでなく複数の変数間の関係の解析にも用いられる。例えば、ある変数が別の変数に影響を与えているかどうかを調べたり(グレンジャー因果検定)、ある変数に生じた変化が時間経過に従って他の変数にどのように波及するかを調べたり(インパルス応答解析)することができる。

(2025.10.1更新)