DSD 【Direct Stream Digital】 ダイレクトストリームデジタル / 1ビットオーディオ
概要
DSD(Direct Stream Digital)とは、音声信号をデジタルデータに変換(A/D変換)する方式の一つで、量子化ビット数を1ビットとし、代わりに極めて高いサンプリング周波数を用いる方式。SACD(Super Audio CD)などで用いられている。一般的な音声のA/D変換では「パルス符号変調」(PCM:Pulse Code Modulation)が行われ、短い均等な時間間隔で繰り返し音圧を計測(サンプリング)し、計測値を離散値(整数のような段階的な値)に置き換える量子化を行ってデジタルデータの列で表す。
このとき、1秒あたりの計測回数をサンプリング周波数、値の段階の数をビット数で表したものを量子化ビット数という。例えばCD(コンパクトディスク)ではサンプリング周波数44.1kHz(毎秒44100回)、量子化ビット数16ビット(65,536段階)で変換を行う。
DSDでは量子化ビット数は1ビットであり、記録される値は「0」と「1」のいずれかである。代わりにサンプリング周波数を極めて高く取り、最も一般的な「DSD64」方式の場合はCDの64倍にあたる2.8224MHz(毎秒282万2400回)のサンプリングを行う。より高い周波数を用いる「DSD128」「DSD256」などもある。
得られたビット列の意味合いはPCM方式とは異なり、元のアナログ信号の波形は「0」と「1」の密度の違いとして表現される。このような変調方式を「パルス密度変調」(PDM:Pulse Density Modulation)と呼び、その有力な実装方式である「ΔΣ変調」(デルタシグマ変調)の名称で代表されることもある。
極めて高い周波数により時間分解能が高く、音のタイミングの正確性はPCM方式よりも明らかに高いとされる。また、PCM方式に比べ変換回路の構成をシンプルにすることができ、カバーする音声周波数の帯域が同じならデータ量を抑えることができる(同じデータ量ならより高周波の音まで記録できる)。
(2022.6.5更新)