CPUクーラー 【CPU cooler】 CPUファン / CPU fan
概要
CPUクーラー(CPU cooler)とは、コンピュータの筐体内部に取り付けられたCPU(MPU/マイクロプロセッサ)を冷却し、熱による破損や誤作動を防止する装置。送風機(ファン)を含む装置は「CPUファン」とも呼ばれる。金属製の板状や棒状の部材を高密度に配列したヒートシンクをプロセッサ上面に密着するように固定し、これに小型のファンで空気を送り込んで放熱を促す構造の製品が多い。ヒートシンクのみを用いる場合や、ファンのみを用いる場合もある。ヒートシンクに上から空気を送り込むタイプの製品をトップフロー型、横から空気を送り込むタイプをサイドフロー型という。
プロセッサ表面とヒートシンクの微小な隙間を埋め、熱伝導率を向上させるために、密着面にねばねばしたグリス剤(放熱グリス)を塗布することもある。熱をCPU表面から別の場所に移動させるため、ヒートパイプやペルチェ素子などを補助的に用いる場合もある。
大型コンピュータやパソコンの上位機種などでは、筐体内部に配線したパイプなどに冷却水を循環させ、プロセッサに密着させたヘッド部で水に熱を移動させて、ラジエーターによって筐体外に放熱する水冷式のCPUクーラーが用いられることもある。
シリコングリス (シリコーングリス:silicone grease)
潤滑剤(グリス/グリース)の一種で、有機ケイ素化合物重合体を用いたものをシリコングリス(シリコーングリス)という。ITの分野ではICチップなどの放熱のために用いられ、マイクロプロセッサ(CPU/MPU)などと放熱器具(CPUファンやヒートシンクなど)の間に塗布される。
ICパッケージのカバーとファンなどの底部は共に金属であるため、直接取り付けると密着させても極めて微細な隙間が発生し、熱の移動を妨げる。熱伝導率の高いシリコーンを油脂状に加工したものを塗布して隙間を埋めることで、速やかに熱を移動させることができるようになる。
ペルチェ素子 (Peltier device)
異なる金属の接合部に電流を流すと一方からもう一方へ熱が移動する「ペルチェ効果」を利用した電子部品をペルチェ素子という。コンピュータ内部のICチップの冷却などによく用いられる。
一般的な構造は3つの電極の間にp型とn型の半導体を一つずつ挟んだもので、n型側から直流電流を流すと真ん中の電極が吸熱、両端が発熱し、電流の方向を反転すると逆の効果が現れる。これを利用して、二つの熱交換器(金属板など)の一方に真ん中の電極が、もう一方に両端の電極が接するようにして一方から他方へ熱を移動させる。
半導体チップの一種であるため、ヒートポンプなど大掛かりな装置に比べ極めて小型・軽量であり、動作音や振動も発生しない。コンピュータ内部のCPU(マイクロプロセッサ)やGPU(グラフィックスプロセッサ)の排熱装置、ワインセラーの冷却装置などで用いられる。
また、放熱・吸熱を容易に反転でき精密な温度制御が得意なため、温度を一定に保つ必要がある水槽などの温度調整装置にも利用される。一方、冷却性能に対する電力効率は悪く、素子が消費した電力に相当する熱も放熱側に排出され高温になりがちといった難点もあり、他の冷却装置が使える状況では選択されない。
冷却ファン (空冷ファン)
機器や装置に風を吹き付け、あるいは外部へ排気することにより廃熱を取り去る送風機を冷却ファン、空冷ファンなどという。
金属のフレームにモーターと羽根を納めた形状で、電源が投入されると自動的に回りだし、風を起こして熱を外部に排出する。機器の筐体の外装に取り付けて内部の熱気を外に換気するためのものと、内部のマイクロプロセッサやビデオカードなど電子部品に密着させて個別に冷却するためのものの2種類がある。
水冷パソコン (水冷式コンピュータ)
ICチップなどの発熱部品の冷却に、循環する水を用いるものを水冷パソコン(水冷式コンピュータ)という。水以外の液体の冷媒を含む総称として液冷(式)と呼ばれることもある。
水冷ユニットはチップに装着するジャケット、液を循環させるポンプ、外部に放熱するためのラジエータ、これらの間をつなぐホースなどから構成され、安いものならパソコンパーツ店などで数万円で入手できる。水冷パソコン自体を販売している業者もある。
これに対し、空気に対して自然放熱することや、ファンで空気を送って冷却することを「空冷(式)」と呼ぶ。空冷は装置が簡易で安価なため水冷(液冷)より一般的に用いられる。水冷(液冷)は極めて高性能で発熱の大きな機種や、動作音を極限まで抑えて高い静音性を実現したい場合などに用いられる。