ATOK
概要

起源は1982年発表の日本語処理システム「KTIS」にさかのぼる。1985年発売のワープロソフト「一太郎」に搭載されたことで日本語変換機能が広く使われるようになり、後に単体でも販売されるようになった。
国産IMEとして初期から変換精度の高さに定評があり、長文作成や専門文書を扱う機会の多い利用者から支持を得てきた。携帯電話や家庭用ゲーム機、カーナビゲーションシステムなどの組み込み機器向けに、あらかじめ搭載される専用モジュールも開発されてきた。
日本語入力では、読みを漢字に置き換えるだけでなく文脈に応じた変換候補の選択が必要である。ATOKは複数の文節をまとめて変換する「連文節変換」を早くから採用し、辞書や変換アルゴリズムを改良してきた。現在も入力履歴を利用して変換候補を調整する仕組みを備え、利用者ごとの入力傾向に合わせた変換を行うほか、誤字脱字の指摘や文法チェック、同音異義語の意味表示など文章作成を支援する機能も搭載している。
かつてはパッケージ版やダウンロード版による売り切り型の販売が主流だったが、2018年以降は月額または年額のサブスクリプション形式である「ATOK Passport」に一本化された。このサービスにより、Windows、macOSやAndroid、iOSといった複数のOS間で最新の辞書データや入力環境を共有できる。
クラウド辞書による推測変換や文章校正、辞典検索などの機能も提供されており、2026年2月公開の最新版「Tech Ver.36」ではARM版Windows 11への対応が実現したほか、生成AIを活用した文章作成アシスタント「ATOK MiRA」も搭載された。用意された指示文を選ぶだけで、文章のリライトや提案を受けられる機能である。
2026年9月には、Windows、macOS、Android、iOSの4つのOS間で変換辞書の学習情報や確定履歴、登録単語などを一元的に同期できる「ATOK Sync One」の提供も始まった。これにより、パソコンとスマートフォンなど複数の端末で共通した入力環境を利用できるようになった。
Windowsの「Microsoft IME」やmacOSの「日本語入力プログラム」など、オペレーティングシステム(OS)製品にIMEが標準搭載されるようになり、変換精度も年々改善される中、以前ほどの普及率ではなくなったものの、辞書の充実度や変換精度の高さから古参ユーザーを中心に根強い支持を受け続けている。