マルチテナント【multi-tenancy】マルチテナンシー
概要

マルチテナント環境では、互いに無関係な複数の利用者が同じプログラムやサーバなどの資源を共有しながら利用する。各利用者はアカウント名やユーザーID、所属組織などの資格情報によって識別され、システム上には専用のデータ領域や設定項目が割り当てられる。他の利用者のデータや設定にアクセスすることはできず、論理的に分離された状態で運用される。
利用するソフトウェアの機能や操作画面そのものは全利用者で共通であり、事業者があらかじめ用意した仕様をそのまま使う形になる。このため個別の事情に応じた柔軟な機能拡張や大幅なカスタマイズを行うことは難しい。また、同一の基盤を大勢で共有する性質上、特定の利用者の負荷増大が他の利用者の性能に影響を及ぼす可能性もあり、専有環境のような性能保証は基本的に行われない。
事業者が単一のシステムをまとめて管理できるため、運用や保守の効率が高く、利用者側も専用設備の構築が不要になる。導入費用を抑えつつ短期間で利用を開始でき、ソフトウェアの更新や機能追加も事業者によって一括して実施されるため、常に同じバージョンの環境を利用できる。実際のサービスでは、資源の使用量を制御したりデータを厳密に分離したりする仕組みが組み込まれている。
マルチテナント方式は主に一般消費者向けサービスや、コストを抑えて迅速に導入したい中小企業向けのネットサービスで多く採用されている。一方、システムを単一の利用者や組織が専有して利用するような設計や構造のことを「シングルテナント」(single tenancy)という。利用者ごとに独立したシステム環境が用意されるため、他者の利用状況による性能変動がなく、独自のカスタマイズも加えやすいが、構築費用や運用負担は大きくなる傾向がある。
近年では仮想化技術やコンテナ技術の発展により、物理的なサーバなどの設備は複数の利用者間で共有しつつ、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションの階層からは個別の独立したシステムに見えるように制御する、両者の特徴を組み合わせた運用形態も普及している。