qmail
概要
qmailとは、電子メールをサーバ間で転送・配送するMTA(メール転送エージェント)の一つ。ダニエル・バーンスタイン(Daniel J. Bernstein)氏が開発し、パブリックドメインソフトウェア(著作権放棄)として公開されている、1997年に初版が公開され、当時MTAの事実上の標準だったsendmailの持つ問題点を踏まえて開発された。sendmailは多機能な反面、設定ファイルの書き方が複雑で難しく、度重なる機能拡張でプログラムが複雑化して保安上の欠陥が多発、大量のメールを処理する際の性能低下も激しいとされていた。
qmailは個々の機能ごとにプログラムを分割(モジュール化)し、保守性の向上および個々の機能に関するセキュリティを強固にしている。機能ごとに個別の設定ファイルを用意し、設定ファイルの書き方も容易になっている。性能も大幅に向上しており、特にメーリングリスト運用など同時に多数のメッセージを扱う際に顕著であるとされる。
開発者のバーンスタイン氏は堅牢なソフトウェアの開発でよく知られ、qmailにセキュリティ上の脆弱性を発見した者には500ドル(後に1000ドルに引き上げ)の賞金を提供すると宣言しているが、現在までに賞金を得たものは現れていない。
発表当初からソースコードが公開され自由に使用できるが、一般的なオープンソースライセンスのような利用条件が提示されていなかったため、その人気の高さの割にはソフトウェアパッケージやLinuxディストリビューションなどへの収録は進んでいなかった。2007年にはパブリックドメイン(著作権放棄)が宣言され、自由に取り扱えるようになった。
(2022.7.7更新)