読み方:マイシン

MYCIN

概要

MYCINとは、1970年代に米スタンフォード大学で開発された、感染症の原因となった細菌と処方すべき抗生物質を推定する人工知能システム。初期のエキスパートシステムの成功例としてよく知られる。
MYCINのイメージ画像

感染症が疑われる患者の症状を入力すると、原因と推定される細菌と確信度、処方する抗生物質の種類と患者の体重に合わせた処方量、その診断の根拠をリスト化して出力する。なぜこの診断に至ったのか、なぜこの要因は考慮しなかったのか、など医師からの質問にも答えることができる。

情報の入力は問診のようにプログラムが次々に行う質問に医師が答えていく対話的な方式で行い、質問に対して「はい」「いいえ」、あるいは簡単な単語や数字を答えるだけでよい。医師からの質問は自然言語の文章(英文)で行うことができる。

MYCINは比較的単純な推論エンジンを備え、細菌感染症について500前後の推論規則をデータ化した知識ベースを持っている。規則は専門家から聞き取った診断基準を元に作成された。当時、推論エンジンと知識ベースが明確に分離したエキスパートシステムは画期的で、その後の同様の推論システムのモデルとなったとされる。

MYCINはスタンフォード大学医学部で試験され、診断結果の65%が適切であると評価された。これは5人の医学部教員の42.5%~62.5%とほぼ同等の成績だった。しかし、MYCINは性能上の問題ではなく、診断にコンピュータの判断を用いる倫理面や法的責任の問題、患者や症状の情報を逐一すべてタイピングしなければならない不便さ、MYCINが稼働する当時のミニコン(中型コンピュータ)を医療現場に導入する困難さなどから、実用に供されることはなかった。

(2025.9.9更新)

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