クリームスキミング 【cream skimming】 チェリーピッキング / cherry picking
概要
クリームスキミング(cream skimming)とは、インフラ、通信、交通など公共性の高い産業分野で、事業者が収益性の高いサービスや地域、顧客のみを選別して他を切り捨て、市場を「いいとこ取り」すること。特に、規制緩和で参入した新規事業者によるそのような振る舞い。例えば、路線バスの新規参入事業者が、最も需要の高い「ドル箱路線」に、最も混雑する平日朝夕ラッシュ時のみ運行するといった形で参入するような場合をこのように呼ぶ。
路線バスは輸送密度の低い路線や時間帯もある程度運行を維持することで公共交通ネットワークとしての利便性や公益性を担保できるため、従来は事業者に高収益路線のある程度の独占や寡占を認める代わりに収益性の低い路線や時間帯も「抱き合わせ」で維持するよう規制されてきた。
このような市場に規制緩和や撤廃で野放図なクリームスキミング的参入や事業転換を容認すると、高収益路線は参入が相次ぎ過当競争で一社あたりの収益が低下してサービス品質や労働環境の悪化が進む一方、収益の低下した既存事業者は低収益路線を維持できず撤退や運行本数の削減を余儀なくされ、地域の交通ネットワークの崩壊を招く場合がある。
同じような構図は電力、水道、通信、放送のように全国や地域内一律のユニバーサルサービスが求められる分野や、鉄道や航空のようにネットワークとしての価値や意義がある分野、教育、医療、福祉、保険など平等性が求められる分野などで見られる。
語源は、様々な成分でできた牛乳の原乳から、最も美味しくて高価な生クリーム部分だけをかすめ取る、という意味の英語表現である。
(2018.11.11更新)