メンタリング【mentoring】

概要

メンタリングとは、人材育成手法の一つで、豊富な経験や知識を持つ支援役が、経験の浅い被支援者に対して、対話を通じたキャリア形成や精神的なサポートを行うこと。業務指導に留まらず、自律的な成長を促す点に特徴がある。
メンタリングのイメージ画像

直接的な指導や教育ではなく、「メンター」(mentor)と呼ばれる支援者が、「メンティー」(mentee)と呼ばれる被支援者に対して一対一の対話を通じてケアやサポートを行う。メンターはメンティーに寄り添い、悩みや相談に対して共に考え、気付きを与えるよう振る舞う。

ビジネスにおけるメンタリングでは、他部署の先輩社員など、直属の上司ではない人間がメンターを務める「ナナメの関係」を採用することが一般的である。これには、日々の業務評価や利害関係が絡む直属の上司には相談しづらい悩みや、将来への漠然とした不安を解消しやすくする狙いがある。

業務に必要な具体的な手順やスキルを教えるOJT(職場内訓練)が「仕事の遂行」に焦点を当てるのに対し、メンタリングは「人の内面とキャリア」に焦点を当てる。メンターは規範、模範となる良き先輩(ロールモデル)として振る舞い、メンティーの精神的な支えとなりながら、組織への適応やモチベーションの維持を支援する役割を担う。

メンティーは対話を通じて視野を広げ、自らのキャリアを主体的に描くきっかけを得ることができる。一方で、支援する側のメンターにも、後輩への指導を通じてマネジメント能力や傾聴力が向上するという「相乗効果」が期待できる。

導入の目的は組織によって様々だが、特に新入社員の「リアリティショック」(理想と現実のギャップ)による早期離職の防止や、男性優位組織における女性管理職の育成などに有効とされている。企業によっては、単なる悩み相談の場ではなく、組織全体の対話文化を醸成し、相互学習を促進するための戦略的な取り組みとして位置付けられる場合もある。

(2025.11.22更新)