ニッチ 【niche】
概要
ニッチ(niche)とは、隙間、裂け目、くぼみ、適所、得意分野などの意味を持つ英単語。ビジネス分野では、特殊なニーズに基づく小規模な市場のことを「ニッチ市場」という。元来は像などを飾るために壁に設けられた壁龕(へきがん)を意味する語だったが、生物学で個々の生物種が生態系の中で占める地位や役割を意味する用語(生態的地位とも訳される)となり、さらに転じて、経済分野で特定の需要や客層が形成する市場のことをニッチと呼ぶようになった。
日本語の外来語としては、生物学における術語の用法を除けば、一般的には経済におけるニッチ市場のことを指すことが多い。これは既存の大きな市場で供給される製品やサービスでは満足できない特殊なニーズを持つ少数の需要者が形成する小さな市場である。
ニッチな製品やサービスの市場は絶対的な規模が小さいため、最大限に事業を成長させても大きな売上や利益は得られず、スケールメリットも見込みにくい。隣接する大市場で戦う大企業や業界上位企業にとっては魅力に乏しく参入しづらい市場である。
しかし、裏を返せば需要に対して供給が乏しく、強力な競合相手も少ないため、価格競争が起こりにくく割高な製品でも受け入れられる余地があり、収益率は高めやすい。特定分野に特化した小規模事業者やベンチャー企業にとっては魅力的な市場である。
一般的なニッチ市場の例としては、様々な製品分野における高級品(ラグジュアリー)市場や、人生の一時期にしか必要ない冠婚葬祭や子育てに関連する市場、少数の人しか興味のないマイナーな趣味やスポーツに関連する市場などが挙げられる。自動車市場における高級車やスポーツカーの市場、航空機市場における軍用機の市場など、大きな市場の一部がニッチ市場となっている例もある。
(2023.11.17更新)