読み方 : きむかせつ
帰無仮説【null hypothesis】
概要
帰無仮説とは、統計的仮説検定において、従来の理論や前提が正しいとする仮説。検定に当たって便宜上立てられる仮説で、今回集めたデータがこの仮説を覆すことができるかどうかを検定手順に従って確かめる。

「効果がない」「差がない」「関係がない」といった状況を前提とする仮説で、観測されたデータに含まれているように見える効果や差、関係は偶然生じただけだと考える。一方、研究者がデータを通じて主張したい仮説は「対立仮説」(alternative hypothesis)と呼び、「効果がある」「差がある」「関連がある」ことを前提とする仮説である。
一般的な統計的検定では、帰無仮説が正しいと仮定したときに、今回得られたデータが偶然生じる確率を計算する。算出された確率値(p値)が非常に小さければ、この結果が偶然生じたと考えるのは無理があることになり、帰無仮説は棄却され対立仮説が採択される。偶然ではないと判断する基準(閾値)を「有意水準」と呼び、通常は1%や5%が用いられる。検定の結果は有意水準と共に「帰無仮説は危険率5%で棄却された」といったように表現する。
例えば、新薬が疾患に効果があるかを症例データを集めて検証したい場合、帰無仮説は「新薬には効果がない」で、対立仮説は「新薬には効果がある」となる。新薬には効果がないと仮定したときに、新薬の投与によって症状が改善した症例数が偶然生じる確率を算出する。これが有意水準を下回り、例えば確率0.1%でしか起こらない数だとすれば、得られたデータは帰無仮説よりも対立仮説に対して整合的だと結論づけることができる。
(2025.12.11更新)