不気味の谷 【uncanny valley】

概要

不気味の谷(uncanny valley)とは、人間の心理現象の一つで、ロボットなどの人工物の造形を人間の姿に近づけていくと、かなり似てきた段階で急激に強い違和感や嫌悪感が惹起される現象のこと。

人間に似せた造形や所作のロボットを人間に見せると、まったく人間味の無い機械的な状態よりも人間らしさが高まっていくに連れて好意や共感、親しみも向上していくことが知られている。

ところが、ある一定以上に人間に近づいたロボットは一転して違和感や嫌悪感、気味悪さを感じさせるようになり、親近感が急激に低下する。さらに人間に近づけていくと違和感は解消され、以前にも増して高い親しみが得られるようになる。

これを横軸に擬人性、縦軸に親近感としてグラフに図示すると、高い擬人性のゾーンに突如として谷型の落ち込みが見られるため、「不気味の谷」と呼ばれるようになった。同様の現象は人形や3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)、仮想現実VR)などでも起きるとされ、人間だけでなく動物を模した人工物で生じるとする研究もある。

不気味の谷現象は1970年にロボット工学者の森政弘氏が発見、提唱し、科学的な厳密性を巡って長年に渡って議論の的となってきた。2010年代に入り、カリフォルニア大学サンディエゴ校のアイシェ・サイギン(Ayse P. Saygin)准教授、インディアナ大学のカール・マクドーマン(Karl F. MacDorman)准教授らの研究により、現象自体は確からしいことが分かってきたが、詳しい理由や機序などは不明である。

(2020.10.6更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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