VHDL【VHSIC Hardware Description Language】
概要

構文はプログラミング言語のALGOLやAdaに近く、強い型付けを採用している。信号や変数のデータ型を厳密に指定する必要があり、データ幅の不一致や不正な型変換は誤りとして検出される。この厳格さにより、記述の自由度が高いVerilog HDLなどと比べて学習の負荷は大きくなるが、意図しない回路の生成や設計ミスを防ぎやすいという利点がある。ミッションクリティカルなシステムや大規模な回路設計に適した言語とされる。
抽象度の選択肢としては、回路の動作そのものを記述する「ビヘイビアレベル」、信号の流れを記述する「データフローレベル」、部品間の接続を記述する「構造レベル」などがある。これらを組み合わせることで、開発初期にはシステム全体を大まかにモデリングし、後の工程で段階的に詳細な回路設計へ落とし込んでいく進め方が可能になる。ハードウェアにおける並行動作を表現するため、並行文やプロセスといった仕組みも備えている。
検証には「テストベンチ」と呼ばれる記述を用いる。設計した回路に入力信号を与え、出力や内部の動作が仕様通りかをシミュレーションで確認する仕組みであり、実際の半導体やFPGAへ実装する前に論理的な誤りを検出できる。この検証機能により、製造工程に進む前段階で不具合を解消しやすくなっている。
1981年、米国防総省主導のVHSIC計画の中で開発が始まり、1987年にIEEE 1076として標準化された。その後も改訂が重ねられ、2019年に発行されたIEEE 1076-2019では、従来は別規格だった各種ライブラリパッケージが本体規格へ統合されたほか、検証記述用の言語であるIEEE Property Specification Language(PSL)も取り込まれた。2023年には、これを採用したIEEE/IEC 61691-1-1も発行されている。
アナログ回路とデジタル回路が混在するシステムを扱うことができる拡張仕様の「VHDL-AMS」(Analog and Mixed-Signal)も標準化されており、IEEE 1076.1-2017として規定されている。VHDLは現在も宇宙開発や防衛、航空、車載システムなど、高い信頼性が求められる分野を中心に、半導体やFPGAの設計現場で活用され続けている言語である。