AIファイル【Adobe Illustrator file】
概要

画像を点の座標と、それを結ぶ線や面を表す数式のパラメータの集合として記録するベクター形式の画像ファイルである。写真のような画素の集合であるラスタ形式(ビットマップ形式)とは異なり、拡大や縮小を行っても輪郭が滑らかなまま保たれる。
塗りつぶしの色や特殊効果、レイヤー、文字などの描画情報や編集情報もあわせて記録される。このため、どのような表示サイズや印刷サイズであっても精細な画質を保つことができるほか、Illustratorで再度開いて個々の図形や文字を編集し直すことも可能である。複数のアートボードを含むデータも1つのAIファイルとして保存できる。
内部データは、Illustrator固有の編集情報を保持する「PGF」(Portable Graphics Format)と呼ばれる独自形式が土台となっている。Illustrator 9(2000年)以降は、これに加えてPDF形式のデータも組み込む二重構造が標準となっており、ファイルの先頭がPDFのヘッダーで始まる仕組みになっている。
保存時に「PDF互換ファイルを作成」を選択すると、Illustrator独自のPGFデータがPDFファイルの内部に格納される形になる。これにより、Adobe Acrobatや他社のPDF閲覧ソフト、CorelDRAWやInkscapeといった他社製のベクター画像編集ソフトでもファイルを開いたり内容を確認したりすることが可能となり、Illustratorのない環境でも一定の互換性が確保される。ただし、レイヤー構成や編集履歴などIllustrator固有の情報を完全な形で扱えるのはIllustrator自身のみであり、他のソフトで開いた場合はPDF部分のみが読み込まれ、独自データは反映されない。
「PDF互換ファイルを作成」を無効にして保存すると、ファイルサイズは小さくなるものの、PDFとして開けなかったり、配置画像の埋め込みが行われなかったりするなど、他のアプリケーションとの互換性が下がる場合がある。逆にこのオプションを有効にすると、他の環境での閲覧性は高まるがファイルサイズは大きくなる傾向にあるため、用途に応じて選択する必要がある。
完成したデザインを他の環境で表示・印刷したり、Webで利用したりする場合には、PDFやSVG、PNG、JPEGなど目的に応じた形式へ書き出すのが一般的である。Illustratorで編集を続ける間はAIファイルとして保存し、用途が決まった段階で必要な形式へ書き出す運用が広く行われている。