MHS 【Message Handling System】 X.400シリーズ勧告 / MOTIS / Message-Oriented Text Interchange Systems / X.400
概要
MHS(Message Handling System)とは、1980年代に策定された電子メールの標準規格の一つ。いわゆるOSI標準の一環として定められたものだが、インターネットではIP(Internet Protocol)をベースとする電子メール規格群が普及したため、ほとんど利用されなかった。1984年に、現在のITU-T(国際電気通信連合・電気通信標準化セクタ)の前身であるCCITT(国際電信電話諮問委員会)が初版の規格を勧告した。1988年の改訂版でISO(国際標準化機構)による電子メール標準の「MOTIS」(Message-Oriented Text Interchange Systems)と仕様が共通化された。ITU-T側では「X.400」シリーズとして、ISO側では「ISO/IEC 10021」として標準化されている。
CCITT/ITU-TとISOが1980~90年代に推進していたコンピュータネットワークの標準規格群「OSI」(Open Systems Interconnection)の一部として策定された。OSI参照モデルでは第7層(アプリケーション層)に位置し、下位層のプロトコルにはOSIプロトコル群を用いることが想定された。後にIPネットワーク上で利用するための仕様(RFC 1006)も整備された。
メッセージ配信を行うMTA(Message Transfer Agent)、受信したメッセージを保存するメッセージストア(Message Store)、利用者が操作するユーザーエージェント(User Agent)などで構成され、それぞれの機能や動作、通信する際のプロトコルやメッセージの形式などが定められている。
MHSは他の多くのOSI標準と同様、電子メールシステムとしては広く普及することはなく、インターネットの普及に伴ってSMTPやPOPなどを組み合わせたシステムが普及した。1990年代にEDI標準の一つであるH手順のメッセージ交換システムとして採用されており、現在ではそちらの用途が最もよく知られている。
(2022.5.27更新)