多層防御 【defense in depth】
概要
多層防御(defense in depth)とは、企業などの組織における情報セキュリティの対策方針の一つで、システム内の複数の構成要素や攻撃者の活動の複数の局面に対して、何重にも防御策を講じること。情報やシステムの防御について「ネットワーク境界で侵入を阻止する」といった単一の技術要素や攻撃局面のみで対策しようとするのではなく、「インターネット利用端末と重要システムはネットワークが分離されている」「一般ユーザーのアカウントを乗っ取っても機密情報へのアクセス権限は無い」といった具合に攻撃の各段階に対応した重層的な対策を行うことを指す。
一般的な方針としては、入口対策、内部対策、出口対策の三階層で防御することが多い。入口対策はセキュリティ上の脅威をネットワーク内に侵入させない対策で、ファイアウォールやパケットフィルタリング、IDS/IPSによる侵入検知・防御、アンチウイルスやマルウェア検知システムなどが用いられる。
内部対策は脅威の侵入を許してしまった際に被害の拡大を最小限に抑えるための対策で、端末や利用者の分離、アクセス権の限定、重要資産の隔離、ログ管理、システム監視、エンドポイントセキュリティの導入、ゼロトラスト化などが該当する。
出口対策はシステム内部での攻撃活動から外部への情報送信を検知、阻止する対策で、重要データの暗号化やアクセス制限(一度に取り出せる件数の制限など)、ファイアウォールやIDS/IPSによる外向きの通信の監視や不審な通信の遮断などがある。外部の他のシステムへの不正アクセスやウイルス送信などのために自社システムが「踏み台」にされないための対策でもある。
似た概念に「多重防御」があり、多層防御の同義語とする場合もあるが、一般的には侵入防止策を複数重ねる場合など、同じ機器や同じ局面で複数の防御策を組み合わせることを指し、多層防御とは区別されることが多い。
(2021.5.12更新)