読み方 : しんぽせい

進歩性【non-obviousness】

概要

進歩性とは、特許出願された発明が、すでに世の中に知られている技術に基づいて、その技術分野の専門家が容易に思いつくことができたものではないという要件。新規性によって「新しい」と認められた発明に対して、さらに「高度な創作」であるかを問う、特許取得のための最終関門である。
進歩性のイメージ画像

特許制度は、社会に対して真に価値のある技術の進展を促すことを目的としているため、既存の技術を単に寄せ集めたものや、誰でも思いつくような自明な工夫には、独占的な権利を与える必要がない。新規に特許を出願する際には、既存の技術体系に照らして十分な進歩性があるかが審査される。米国特許法では同様の要件を “non-obviousness”、すなわち「非自明性」という。

進歩性の判断においては、まず発明の出願時までに公知となっているすべての技術を参照し、それを基礎として、その分野の通常の知識や能力を持つ者(これを「当業者」という)が、どれだけ困難なくその発明にたどり着けるかが検討される。

具体的には、公知技術を単純に組み合わせただけの場合、周知の技術を適用分野に転用したに過ぎない場合、あるいは、技術的な課題解決のために慣用手段を適用したに過ぎない場合は、「容易に」思いつけたとして進歩性が否定されることが多い。

逆に、当業者の予測をはるかに超えるような顕著な効果を示したり、長期間誰も解決できなかった技術的な課題を解決するものであったりする場合には、進歩性が肯定される有力な根拠となる。この進歩性の有無こそが、発明が単なる思いつきではなく、真に保護すべき有用な技術であるかを決定づけるポイントとなる。

(2025.11.25更新)