DSRC【Dedicated Short Range Communication】狭域通信
概要

日本のDSRCの技術仕様は電波産業会(ARIB)が「ARIB STD-T75」として標準化している。5.8GHz帯の電波を用いて、車両から数十メートル程度の範囲にある路側設備と通信する仕組みである。
携帯電話網のように広い地域を連続的にカバーする通信方式ではなく、料金所やITSスポットの設置場所付近に限って通信が成立する狭域通信である。通信範囲は用途に応じて調整でき、車載器と通信する数メートル程度の範囲から、複数台をまとめて扱う数十メートル程度の範囲まで設定できる。
複数の車両と同時に通信するための多元接続には「時分割多元接続」(TDMA)が用いられ、路側設備は全二重または半二重、車載器は半二重で通信する。変調方式にはASKとQPSKがあり、ASKでは最高1,024kbps、QPSKでは最高4,096kbps程度の速度でデータを送受信できる。ARIB STD-T75はISO 15628などの国際規格を踏まえて改定を重ねており、2020年3月には1.6版に改定されている。
DSRCの規格には、物理層を定めるARIB STD-T75のほかに、上位のアプリケーション層を扱うARIB STD-T88もある。STD-T88はDSRC上で複数のアプリケーションを実行できるようにする論理構造を定めた規格で、「ASL」(アプリケーションサブレイヤー)と呼ばれる。ETC 2.0対応車載器では、路側無線装置(RSU)側がSTD-T75とSTD-T88に、車載器(OBE)側がJEITAの定めるITS車載器規格に、それぞれ適合する形で運用されている。
ETCでは、料金所の路側機と車載器が走行中に通行料金決済に必要なデータを交換する。ETC 2.0では、これに加えて渋滞情報や迂回路案内、前方障害物の警告といった運転支援情報の配信や、車両の走行履歴(プローブ情報)の収集にも利用されており、収集したデータは交通施策にも活用されている。
「DSRC」という名称は日本の5.8GHz帯の通信規格のみを指すとは限らず、海外では車車間通信や路車間通信を含むITS向けの短距離通信技術を広く指す場合がある。海外ではセルラー回線を用いる「C-V2X」など別方式への移行が進む地域もあるが、日本では既存の道路インフラとの親和性の高さから、料金収受と交通情報提供を支える技術として定着している。
関連用語
関連リンク (外部サイト)
本ページを参照・引用している文書・論文など (外部サイト)
- 総務省 東北総合通信局「沿岸海域における効率的なワイヤレスブロードバンドシステムの技術的条件に関する調査検討会 報告書
」(PDFファイル)にて引用 (2010年3月)