ITパスポート単語帳 - コンピュータ構成要素
コンピュータの五大装置
コンピュータのハードウェアを構成する主要な装置を5つに分類したもの。制御装置、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置の5つ。それぞれの機能(制御、演算、記憶、入力、出力)を指して「五大機能」と呼ぶこともある。
制御・演算
制御装置はプログラムに記述された命令の解釈・実行と他の装置の制御を行い、演算装置は算術演算や論理演算などのデータ処理を行う。この二つは現代のコンピュータ製品では中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)として一つの半導体チップ(マイクロプロセッサ/MPU)にまとめられるのが一般的となっている。
記憶
記憶装置はプログラムやデータを保存する装置で、当座の使用のため一時的に保存することができる主記憶装置(メインメモリ)やCPU内部のレジスタおよびキャッシュメモリ、永続的な保管のために用いる補助記憶装置(外部記憶装置/ストレージ)に分類される。
メインメモリには、高速に読み書きできるが容量あたりの単価が高く、装置の電源を切ると内容が消えてしまう半導体メモリのDRAM(Dynamic Random Access Memory)が用いられることが多い。
ストレージには、読み書きは低速だが安価で電源を切っても内容が消えない装置や記憶媒体が用いられ、ハードディスクなどの磁気ディスク装置や、CDやDVDなどの光学ディスク装置、SSDやメモリーカード、USBメモリなどのフラッシュメモリ装置などがよく知られる。
入力・出力
入力装置は外部からデータを送り込むための装置で、人間による操作をコンピュータに伝えるマウスやキーボード、ペンタブレットなどのほか、外部の情報を取り込んでデジタルデータとしてコンピュータに伝送するイメージスキャナやマイク、カメラなどがある。
出力装置はコンピュータ内部のデータを外部に取り出すための装置で、ディスプレイやスピーカー、プリンタなどが該当する。
ALU 【Arithmetic and Logic Unit】 ⭐
コンピュータを構成する基本的な装置の一つで、算術演算(四則演算)や論理演算などの計算を行う装置。現代のコンピュータでは制御装置とともにマイクロプロセッサ(CPU/MPU)などの論理回路の一部として実装されている。
加算器や論理演算器などの演算回路を持ち、整数の加減算、論理否定(NOT)、論理和(OR)、論理積(AND)、排他的論理和(XOR)などの基本的な演算を行うことができる。
これらの回路を組み合わせて、乗算や除算、余剰、実数(浮動小数点数)演算、否定論理和(NOR)、否定論理積(NAND)などの演算ができるようになっているものもある。
制御装置 ⭐
機械やシステムの構成要素のうち、主に他の要素の動作の制御などの機能を担うもの。コンピュータの場合はCPUの機能の一部として内蔵されている。
コンピュータの制御装置
コンピュータを構成する装置のうち、他の装置の制御を行うものを制御装置と呼ぶ。演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置と合わせてコンピュータの五大装置という。
現代のコンピュータではほとんどの場合、演算装置と共に中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)という装置の一部として実装される。また、CPUはマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)と呼ばれる単一の半導体集積回路(ICチップ)の形で提供されている。
制御装置は演算装置やレジスタ(CPU内部の記憶回路)を操作して命令の実行制御を行ったり、メインメモリ(RAM)などの記憶装置とプロセッサ間のデータや命令の読み出しや書き込みの制御、外部の装置との信号の入出力制御などを行う。
初期のコンピュータの設計では演算装置とは独立・分離していたが、現代のプロセッサにおいては両者が統合されて一体的に設計されるため、両者の区別にはほとんど意味がなくなり、「実行ユニット」「プロセッサコア」のような用語で呼ばれることも多い。
記憶装置
コンピュータの構成要素の一つで、データやプログラムの保存・記憶を行うための装置。レジスタやキャッシュメモリなどCPU内部の半導体メモリ、メインメモリ(主記憶装置/RAM)、ストレージ(外部記憶装置/補助記憶装置)などに分類される。
用途や実装方式、性能、コストなどにより様々な種類の装置があり、これらを組み合わせてコンピュータシステムを構成する。一般に、より高速に読み書き可能な装置ほどコストが高かったり永続的な記憶ができない(電源を落とすと内容が失われる)という特性があるため、小容量の高速な装置、中容量の中速の装置、大容量の低速で永続記憶可能な装置を組み合わせ、状況や使用頻度などに応じて使い分ける。このような階層型の構造を「記憶階層」(memory hierarchy)という。
プロセッサ内部の記憶装置
最も高速だが大きな容量を取ることができないのはCPU(MPU/マイクロプロセッサ)の半導体チップ上に設けられた記憶素子の集合で、中でも、論理回路が処理や演算に直接用いる「レジスタ」(register)は一般的なプロセッサで数十バイトしかないが最も高速に動作する。
また、直近に使用したデータや使用頻度の高いデータをチップ内に保持しておいて、すぐ参照できるようにするための記憶素子を「キャッシュメモリ」(cache memory)という。プロセッサによっては搭載しないこともあるが、数KB(キロバイト)から数百KB程度であることが多い。キャッシュメモリ内部にも記憶階層がある場合があり、より高速だが容量の少ない順に1次キャッシュ、2次キャッシュ、3次キャッシュ、と2~3段階で構成される。
メインメモリ
メインメモリは主記憶装置とも呼ばれ、現代のコンピュータの大半では半導体メモリ素子の一種であるRAM(Random Access Memory)が用いられる。現代のパソコンなどでは数GB(ギガバイト)程度の容量であることが多い。
CPUはストレージに直接アクセスできないため、実行中のソフトウェアが当座必要なデータやプログラムはメインメモリに置いておく必要がある。内容は起動時や必要になった時点でストレージから読み込まれ、CPUが処理した結果なども一旦メインメモリに置かれる。電源を落とすと内容が失われるため、永続的に保管しておきたいものはストレージに書き込む必要がある。
RAMのメモリチップそのものを主基板(マザーボード/メインボード)などに直に実装する場合もあるが、パソコンなど汎用的なコンピュータの多くは、メモリチップをいくつか実装した小さな基板であるメモリモジュールを主基板上の専用の差込口(メモリスロット)に差し込んで装着する。
ストレージ
ストレージはコンピュータの電源が切れても内容が失われない装置で、永続的に必要なデータやプログラムの保存に用いられる。RAMなどに比べ動作が低速な装置が大半で、また、CPUから直に読み書きできないため、コントローラICなどを通じて内容をメインメモリとの間でやり取りする必要がある。駆動装置(ドライブ)と記憶媒体(メディア)が一体化している装置と、取り外して交換できる装置があり、後者はメディアを追加することで全体の容量を増やすことができる。
パソコンなどで主要な記憶装置としてよく用いられるのは磁気ディスクを装置内に固定したハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)で、現代では数百GBから数TB(テラバイト)の製品がよく用いられる。ハードディスクに代わって台頭しているのが不揮発の半導体メモリの一種であるフラッシュメモリを用いたSSD(Solid State Drive)で、フラッシュメモリを用いたストレージには他にUSBメモリやメモリーカードなどもある。
データやプログラムの運搬や配布などによく用いられるのがレーザーで内容の読み書きを行う光学ディスクで、登場順にCD、DVD、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク/BD)などがあり、この順に容量が大きく読み書きも高速である。CDは音楽・音声の記録や販売に、DVDやBDは映像ソフトの記録や販売に特によく用いられる。
入力装置 【入力機器】
コンピュータなどの機器本体にデータや情報、指示などを与えるための装置。一般的には人間が操作して入力を行う装置のことを指し、手指の動きや打鍵を電気信号に変換して伝達するキーボードやマウス、タッチパネルなどが該当する。
コンピュータの登場以前から、ボタンやレバー、ツマミ、ペダルなどの入力装置が機械の操作に用いられてきたが、情報機器ではこれらに加えてより複雑で汎用的な情報入力を実現するため、多数の操作要素や高度な機構を持つ装置が発明された。
例えば、文字が刻印された小さな鍵盤が敷き詰められたキーボード、手で位置や移動を入力するためのマウスなどのポインティングデバイス、画面表示と位置入力を兼用するタッチパネルなどが発達した。特殊なゴーグルなどを利用して視線の方向を検知し、画面上の位置を指示して入力する装置なども開発されている。
ビデオゲームでは、数種類のボタンやスティック、加速度センサーなどを手のひらサイズに収めたゲームコントローラ(ジョイパッド/ジョイスティック)が最も一般的な入力装置として用いられるほか、カメラやセンサーなどを組みわせて四肢の動きを検知するシステムが用いられたり、実在の機械を模した専用の装置(ハンドルやレバー、フットペダルを組み合わせたレースゲーム用筐体など)が用いられることもある。
広義には、人間の動作に限らず外界から情報を取り込んで電気信号やデジタルデータとしてコンピュータに伝達する機器全般が含まれる。マイクやイメージスキャナ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、バーコードリーダー、指紋センサー、X線撮影装置、超音波診断装置、光学式読み取り装置(OCRやOMR)などである。
出力装置 【アウトプットデバイス】
コンピュータが扱う情報を利用者に認識できる形式で提示する装置。ディスプレイやプリンタ、スピーカーなどが含まれる。
コンピュータシステムを構成する主要な装置の一つで、データを人間に認識できる形で外部に物理的に出力する装置である。光の像を投影して画面を映し出すディスプレイ(モニタ)やプロジェクタ、紙などに印字・印刷を行うプリンタやプロッタ、音声を発するスピーカーやイヤフォンなどが該当する。
主に人間の視覚や聴覚に働きかける原理の機器が多いが、振動で情報を知らせるバイブレーターや、ゲームコントローラなどで操作感(押しやすさ、回しやすさなど)を状況に応じて変化させるフォースフィードバック機構など、触覚を利用する装置もある。
映画館や体験型アミューズメント施設などに見られる、映像に合わせて霧や風を吹き出す装置なども広義には出力装置の一種と言える。未だ研究段階ながら、香り(触覚)や味(味覚)を動的に合成してコンピュータからの出力とする装置も構想されている。
これに対し、人間や環境、外部の機器から情報を取り込んでデータとしてコンピュータ本体に伝える装置を「入力装置」(input device:インプットデバイス)といい、キーボードやマウス、タッチパネル、ゲームコントローラ、マイク、イメージスキャナ、各種センサーなどが含まれる。
出力装置と入力装置を合わせて「入出力装置」(I/O device)と総称することもある。イヤホンマイクやプリンタ複合機(イメージスキャナとしても利用できるプリンタ)、振動機能付きコントローラなど、入出力の両方の機能を一体的に提供する装置もある。
マイクロプロセッサ 【MPU】
コンピュータにおける演算や制御などの機能を一枚の半導体チップに集積したもの。コンピュータの心臓部であるCPU(中央処理装置)として用いられることが多い。
マイクロプロセッサはメインメモリ(主記憶装置/RAM)などに記録されたコンピュータプログラムを一命令ずつ読み込み、その指示に従ってデータの演算や装置間の転送、他の装置の動作の制御を行う。
命令セットとマイクロアーキテクチャ
機種ごとに実行可能な命令のコード体系が決まっており、これを「命令セットアーキテクチャ」(ISA:Instruction Set Architecture)あるいは単に命令セットという。一方、命令を実行するための内部の具体的な回路構成などの設計を「マイクロアーキテクチャ」(microarchitecture)という。
命令セットが同じであれば同じプログラムを実行することができるが、マイクロアーキテクチャ次第で命令の実行速度や消費電力などは異なる。新しい製品ほど効率的に命令を実行することができる。
同じメーカーの同じ系列の製品(プロセッサファミリー)は同じ命令セットを共有しており過去の製品とのソフトウェアの互換性を保っているが、世代が下るごとに命令セットの拡張とマイクロアーキテクチャの刷新を行って機能や性能を改善していく。
機能と構造
一般的なマイクロプロセッサの内部は、命令の解釈や他の回路への動作の指示などを行う制御ユニット、論理演算や算術演算を行う演算ユニット(ALU:Arithmetic and Logic Unit)、データの一時的な記憶を行うレジスタ、外部との通信を行うインターフェース回路などで構成される。
レジスタとメインメモリ(RAM)にはあまりにも大きな速度差、容量差があるため、両者の中間の速度・容量のキャッシュメモリが内蔵されることが多い。画像処理などのために特定の種類の演算処理を高速化する並列演算(SIMD)ユニットなどを搭載する製品もある。
かつてはチップセットや単体の制御回路、拡張カードなどの形で実装されてきたメモリコントローラやI/Oコントローラ、ビデオチップ(GPU)などの機能も、近年ではマイクロプロセッサの一部として吸収されるようになりつつある。コンピュータに必要な機能を一通り内部に統合したプロセッサ製品は「SoC」(System-on-a-Chip)と呼ばれる。
RISCとCISC
マイクロプロセッサの基本的な設計方針をCISC(Complex Instruction Set Computer)方式とRISC(Reduced Instruction Set Computer)方式に分類する考え方がある。
CISC方式では、単純なものから複雑で高度なものまで様々な種類の命令を用意して、なるべく多くの処理を一つの命令で実行できるようにすることで能力の向上をはかっている。マイクロプロセッサ発明の当初から主流の設計方針である。
一方、CISC方式の限界を乗り越えるべく考案されたのがRISC方式で、命令の種類を絞り、ひとつひとつの命令を単純化して命令長や実行クロック数などをなるべく均等に揃えている。これにより、複数の命令を効率よく同時実行できるようにして性能の向上をはかっている。
時代が下るにつれて、CISC型の製品もRISC型の製品も互いの長所を取り込む形で発展を続けているため、このような区分は実質的な意味を失いつつあるとする指摘もある。
ビット数と動作周波数
プロセッサが一度の動作で演算・転送できるデータ量は決まっており、初期の製品は4ビットだったが、8ビット、16ビット、32ビットと技術の進展に伴って拡張され、現在は64ビットの製品が主流となっている。
また、プロセッサ内部の回路はクロック信号と呼ばれる規則的な信号に従ってタイミングを合わせて動作している。この信号が単位時間(1秒)あたりに発振される回数をクロック周波数あるいは動作周波数という。
この周波数が高いほど高速に動作し、現代の製品ではGHz(ギガヘルツ:毎秒10億回)の単位で表されるものが一般的となっている。
マルチプロセッサとマルチコア
一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載して並列に動作させる構成を「マルチプロセッサ」(multiprocessor)という。高性能な業務用コンピュータなどで採用される。
一方、単体のプロセッサとして独立して動作する「プロセッサコア」と呼ばれる回路群を一枚のプロセッサチップの内部に複数格納し、一枚であたかも複数のプロセッサがあるように動作するものを「マルチコアプロセッサ」(multi-core processor)という。近年では一般的なパソコンやスマートフォン向けの製品でも2コアや4コアなどの構成がよく見られる。
歴史
マイクロプロセッサが発明される以前は、演算装置や制御装置、各種インターフェース回路などは単体の半導体素子や小規模なIC(集積回路)を組み合わせて個別に設計・製造されていた。
1971年に米インテル(Intel)社が4ビットマイクロプロセッサ「4004」を開発し、初の民生用商用製品として出荷された。以降はコンピュータのCPUとしてマイクロプロセッサを搭載し、チップセットなど補助的なチップを周辺に配する構成が主流となっていった。
1978年に同社は8ビットの「8086」を発売し、主に初期の個人向け小型コンピュータ(マイコン)市場で人気を博した。8086を元に改良していった製品系列は「x86系プロセッサ」と呼ばれ、パソコンや小型サーバなどの市場で支配的な地位を得た。
1980年代には主に業務用コンピュータ向け市場でPOWER/PowerPCやSPARC、PA-RISC、MIPS、AlphaといったRISC型の高性能プロセッサが普及したが、その多くは2000年代までにx86系との競争に破れ、主流のコンピュータ製品の市場からは姿を消した。
2010年代になると英ARM社(現在はソフトバンクグループ傘下)が設計し提携チップメーカー各社が製造するARM系のRISC型プロセッサがスマートフォンやタブレット端末などで急激に普及し、この分野での標準的な製品として浸透している。
CPU 【Central Processing Unit】 ⭐⭐⭐
コンピュータの主要な構成要素の一つで、他の装置・回路の制御やデータの演算などを行う装置。演算装置と制御装置を統合したもので、現代では一枚のICチップに集積されたマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)を用いる。
CPUはメインメモリ(RAM)に格納された機械語(マシン語)のプログラムを、バスを通じて一命令ずつ順番に読み出し(フェッチ)、その内容を解釈して行うべき動作を決定(デコード)し、内部の回路を駆動して実際に処理を実行する。現代のCPUの多くはマイクロプログラム制御方式を採用しており、機械語の一命令は、より細かな動作(マイクロコード)の組み合わせに分解されてから実行される。
命令セット
CPUは実行可能な命令の体系が決まっており、これを命令セット(instruction set)あるいは命令セットアーキテクチャ(ISA:Instruction Set Architecture)という。記憶装置から読み出されたどのようなビット列がどのような動作に対応するかを定めたもので、機械語のプログラムはこれを用いて記述される。
命令セットは各CPUの機種ごとに固有だが、同じメーカーの同じ系列の製品では同じ命令セットが採用されることが多く、その場合は異なる製品が同じプログラムを実行することができる。同じ命令セットでも製品の世代が下るに連れて新しい命令が追加されることが多く、新しいCPUは古いCPU向けのプログラムも実行できる一方、古いCPUは新しい命令セットのプログラムは実行できないという関係になる(後方互換性)。
有力なメーカーの製品には、別のメーカーが同じ命令セットを採用した互換CPU製品を開発・販売することもある。例えば、米インテル(Intel)社のx86命令セットは広く普及しており対応ソフトウェアが豊富なため、これをそのまま実行できる互換CPUを米AMD社などが製造している。
構造
一般的なCPUの内部は、命令の解釈や他の回路への動作の指示などを行う制御ユニット、論理演算や算術演算を行う演算ユニット(ALU:Arithmetic and Logic Unit)、データの一時的な記憶を行うレジスタ、外部との通信を行うインターフェース回路などで構成される。
また、レジスタとメインメモリのあまりに大きな速度差、容量差を埋めるため、両者の中間の速度と容量を併せ持つキャッシュメモリが内蔵されることが多く、浮動小数点演算に特化した演算ユニット(FPU:Floating-Point Unit)なども標準搭載されることが多い。
以前はマザーボード上のチップセットや単体のICチップとして提供されてきた、メモリコントローラやI/Oコントローラ、グラフィックス処理(GPU)などの機能が統合された製品も数多く登場している。コンピュータに必要な機能のほとんどをCPUの内部に統合した製品はSoC(System-on-a-Chip)と呼ばれる。
性能
内部の演算回路やレジスタが一回の動作でまとめて伝送、保存、処理できるビット数が決まっており、この値が大きいほど一度に多くのデータを処理でき、また、広大なメモリ空間を一元的に管理できる。
一度にnビットのデータを処理できるCPUをnビットCPUというように呼び、CPUが発明された当初は4ビットであったが、8ビット、16ビット、32ビットと拡張されてゆき、現代では64ビットCPUが広く普及している。
また、ほとんどのCPUはコンピュータ内部の特殊な回路から一定周期で発信されるクロック信号に合わせて動作するようにできている。より高い周波数の信号で動作するものほど、単位時間あたりに多くの動作を行うことができ、性能が高い。例えば、2GHz(ギガヘルツ:毎秒10億回)で動作するCPUと1GHzのCPUならば、他の仕様が同じなら約2倍の速度差がある。
並行処理
単純な構造のCPUは一つの命令列から一つずつ順番に命令を取り出し実行していくが、現在のCPU製品の多くは、何らかの形で複数の命令、あるいは複数の命令列を同時並行に処理できる機能を内蔵しており、クロックあたりの性能を引き上げている。
よく用いられるのはパイプライン処理で、一つの命令を複数の段階に分割してそれぞれを別の回路で実行することにより、いくつかの命令の実行を並行して進めることができる。ある命令が実行段階にあるとき、次の命令がデコードを、その次の命令がフェッチを行うといったように、前の命令の完了を待たずに空いた回路に先行して次の命令を投入する方式である。
また、大抵の命令は限られた回路しか利用しないという性質を利用して、空いている回路で実行できる別の命令を同時に投入する方式を同時マルチスレッディング(SMT:Simultaneous Multithreading)という。擬似的に二つのプログラムを並行に実行することができ、最良の場合で数割の性能向上が果たせる。Intel社のCPUに内蔵されるハイパースレッディング(Hyper-Threading)機能が有名である。
一つの半導体チップの内部に、命令の解釈・実行を行うユニット(CPUコア)自体を複数搭載するという手法も広まっており、マルチコアプロセッサ(multi-core processor)という。それぞれが独立して別のプログラムを並列に実行でき、複数のCPUを搭載するのとほとんど同じ効果を得ることができる。ちなみに、一台のコンピュータに複数のCPUを内蔵する方式はマルチプロセッサ(multiprocessor)という。
マルチコアCPU 【multi-core CPU】 ⭐⭐
2つ以上のプロセッサコアを単一のICチップに集積したマイクロプロセッサ(MPU/CPU)。コアの数に応じて複数のコンピュータプログラムを並列に実行することができる。
一般的なCPUでは、命令の解釈や演算、他の装置の制御などを行う回路を組み合わせた「プロセッサコア」(processor core)が1セット入っている。マルチコアプロセッサにはこのコアが複数内蔵されており、ちょうどCPUを複数個搭載しているような状態になる。
マルチコアプロセッサでは、各コアは単体で機能が完結していて独立しているため、それぞれのコアは他のコアに影響されることなく動作できる。一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載するマルチプロセッサと同じように、処理を複数のコアで分散して並列に実行することで性能を向上させる。
コアの数を増やしていけば同時に実行できるプログラムの数も増え、複数台のコンピュータを用意したのと同じように全体として性能を向上させることができる。ただし、単体のプログラムの実行性能(シングルスレッド性能)はこの方法で向上させることはできない。
演算回路などはコアごとに独立しているが、一部のキャッシュメモリ(2次キャッシュなど)や外部とのデータ伝送路などは複数のコアで共有される。キャッシュの共有は、あるコアが読み込んだデータを別のコアが流用できるなど性能面でのメリットもある。
一方、マルチコアプロセッサのデメリットとして、1個のプロセッサ製品にほぼフルセットのコアを複数個詰め込むという性質上、どうしてもプロセッサのサイズ(面積やトランジスタ数)は大きくなり、製造コストは高くつく。
マルチコアプロセッサはOSからは独立した複数のマイクロプロセッサとして扱われ、動作感もマルチプロセッサ構成とほとんど変わらないため、利用者やソフトウェア開発者はマルチコアプロセッサ上での動作を特に意識する必要はない。
内蔵するコア数によって呼び方が変わり、2コアは「デュアルコア」、4コアは「クアッドコア」、6コアは「ヘキサコア」、8コアは「オクタコア」と呼ばれる。10コアや12コアの製品も開発されているが、これらは単に「数字+コア」と呼称されることが多い。
ヘテロジニアスマルチコア (heterogeneous multicore)
異なる種類(heterogeneous)のプロセッサコアを一つのICチップに集積して一体的にどうさせる方式をヘテロジニアスマルチコアという。
機能や得意分野の異なる複数の種類のコアを統合することにより、様々な場面で総合的に高い性能を発揮できるように設計されている。ただし、性能を引き出すためには複雑なプログラミングが必要とされるため、対応ソフトの開発コストは高くなりがちになる。
ヘテロジニアス方式は組み込みシステム向けのプロセッサなどで採用例があり、ソニーのプレイステーション3のCPUである「Cell/Broadband Engine」プロセッサなどが有名。一方、パソコンやサーバ向けの汎用CPU製品では同じコアを複数搭載するホモジニアスマルチコアが主流となっている。
ホモジニアスマルチコア (homogeneous multicore)
同じプロセッサコアを複数集積したマルチコアプロセッサのことをホモジニアスマルチコアという。通常、単にマルチコアと言えばこの方式のため、あえて明示することは少なく、異なる種類のコアを組み合わせるヘテロジニアスマルチコアと対比する文脈で主に用いられる用語である。x86/x64系プロセッサなど、一般に広く流通する汎用的なCPU製品の多くがこの方式である。
デュアルコアCPU 【dual core CPU】 ⭐⭐
一つの半導体パッケージにマイクロプロセッサ(MPU/CPU)の演算・処理回路であるプロセッサコアを2つ集積し、それぞれ独立に稼働させることができるもの。複数のコアを一つのプロセッサに組み込むマルチコアプロセッサ(multi-core processor)の一つ。
プロセッサコアはCPUの心臓部で、メインメモリからコンピュータプログラムを読み出して解釈や実行を行うことができる。デュアルコアCPUには同じ設計の独立したコアが2基内蔵されており、それぞれが別のプログラムを同時に実行することができる。プログラム側は特別な対応は必要ないが、OS側にはデュアルコアを認識してそれぞれにプログラム実行を割り当てる対応が必要になる。
互いに依存関係にない2つのプログラムを同時に実行するような場合にはシングルコアプロセッサに比べ2倍近い性能を発揮できるが、コア以外の回路やデータ伝送路などは共用であるため、実際に2倍の性能が発揮できる場面は多くない。
また、同一のCPUをコンピュータに2基搭載するデュアルプロセッサに比べ、主基板の制御回路やデータ伝送路などは簡素で低コストになるが、共用部分の多いデュアルコアの方が性能は上げにくい。
デュアルコアは複数のコアを一つのプロセッサパッケージに組み込むマルチコアプロセッサ(multi-core processor)のうち最も基本的な構成で、パソコン向けでは米インテル(Intel)社が2005年に発売したPentium Dや米AMD社のAthlon 64 X2(Athlon X2)、2006年以降のIntel Coreシリーズなどから本格的に普及し始めた。
その後、技術の進歩とともにプロセッサコアの集積度も上がり、4コアの「クアッドコアCPU」(quad-core)、6コアの「ヘキサコアCPU」(hexa-core)、8コアの「オクタコアCPU」(octa-core)などが登場している。数十かそれ以上の多数のコアを積載したCPUは「メニーコアCPU」と呼ばれる。
クアッドコアCPU 【quad-core CPU】 ⭐⭐
一つの半導体パッケージにマイクロプロセッサ(MPU/CPU)の演算・処理回路であるプロセッサコアを4つ集積し、それぞれ独立に稼働させることができるもの。複数のコアを一つのプロセッサに組み込むマルチコアプロセッサ(multi-core processor)の一つ。
プロセッサコアはCPUの心臓部で、メインメモリからコンピュータプログラムを読み出して解釈や実行を行うことができる。クアッドコアCPUには同じ設計の独立したコアが4基内蔵されており、それぞれが別のプログラムを同時に実行することができる。プログラム側は特別な対応は必要ないが、OS側にはクアッドコアを認識してそれぞれにプログラム実行を割り当てる対応が必要になる。
互いに依存関係にない4つのプログラムを同時に実行するような場合にはシングルコアプロセッサ(コアが1つ)に比べ4倍近く、デュアルコアプロセッサ(コアが2つ)に比べ2倍近くの性能を発揮できるが、コア以外の回路やデータ伝送路の一部は共用であるため、実際にその通りの性能が発揮できる場面は多くない。
米インテル(Intel)社のハイパースレッディング(Hyper-Threading)のように一つのコアで仮想的に2つのスレッドを並行に実行する同時マルチスレッディング(SMT:Simultaneous Multi-Threading)技術に対応している場合には、計8スレッドを同時に実行状態に置くことができ、各コアが単一スレッド型の場合に比べ最高で2~3割程度の性能向上が期待できる。
初期にはコアが2つあるデュアルコアプロセッサの半導体ダイ(チップ)を一つのCPUパッケージに集積する手法が用いられることもあったが、その後は単体のプロセッサコアを一枚のダイに4つ集積する設計が主流となっている。
同一のCPUをコンピュータに4基搭載するクアッドプロセッサ(quad-processor)方式と比べると、主基板(マザーボード)側の制御回路やデータ伝送路などは簡素で低コストになるが、共用部分の多いクアッドコアの方が性能は上げにくい。
x86系プロセッサで初めてクアッドコア設計を採用したのは2006年末に米インテル(Intel)社が発売したパソコン向けのCore 2 Extremeとサーバ向けのXeon 5300で、2007年初頭に米AMD社がクアッドコアOpteronで続いた。その後は技術の進歩とともにプロセッサコアの集積度も上がり、6コアのヘキサコア(hexa-core)、8コアのオクタコア(octa-core)などが登場している。
GPU 【Graphics Processing Unit】 ⭐⭐
コンピュータに搭載される半導体チップの一種で、画面表示や画像処理に特化した演算装置。特に、3次元グラフィックス(3DCG)描画や動画の圧縮・展開などに必要な演算を高速化する並列処理に優れた構造のもの。
コンピュータには制御や演算のためにCPU(MPU/マイクロプロセッサ)が搭載されている。これは汎用的に設計されており様々な命令を実行できるが、一度に実行できる命令は数個から数十個(数値演算並列化機能使用時)程度に限られる。
一方、GPUは画像処理などで多用される特定の比較的単純な数値計算に特化した演算回路を大量に内蔵しており、一度に数百回から数千回の演算を一気に実行することができる。CPUで同じ計算を行う場合よりはるかに高速に処理することができる。
また、グラフィック描画に関連する機能を豊富に用意しており、3次元から2次元への座標値の変換(ジオメトリ処理)、立体表面に貼り付けられた画像パターン(テクスチャ)や光、陰影などから各画素の表示色を決定する処理(シェーディング)などを高速に実行できる。
単体のICチップとして実装されたGPUを「dGPU」(ディスクリートGPU)と呼び、コンピュータのマザーボードに実装したり、ビデオカード(グラフィックカード)に搭載して拡張スロットに差し込んで使用する。CPUの内部にGPUの回路を統合したものは「iGPU」(内蔵GPU)と呼ばれ、廉価版のCPU製品などに組み込まれている。
GPUはコンピュータグラフィックスを多用するビデオゲームなどで主に用いられてきたが、近年では汎用の高速な数値計算装置として様々な分野で利用されるようになっており、これを「GPGPU」(General Purpose GPU)あるいは「GPUコンピューティング」(GPU computing)という。科学技術計算や暗号処理、仮想通貨、音声認識・合成、人工知能(機械学習)などの分野で広く普及している。
GPGPU 【General-Purpose computing on Graphics Processing Units】
画像処理を高速に実行するGPU(Graphics Processing Unit)の機能を、画像処理以外の用途に転用すること。
GPGPUはコンピュータで画像や映像、3次元グラフィックス(3DCG)などの処理を担う特定用途の補助的なマイクロプロセッサの一種で、コンピュータグラフィックスの生成や動画圧縮・再生などに多用される数値計算やデータ処理を高速に実行する機能を持っている。
これを画像や映像とは直接は関係ない計算用途に流用するのがGPGPUで、分野によってはパソコン用の安価なグラフィックスカードでも多数を統合的に運用することで高価な並列計算機に匹敵する高速処理が可能なことから注目を集めている。
GPUは通常のマイクロプロセッサのような広汎で汎用的な機能を持っているわけではないが、内部に多数の演算器(機種によっては数千に及ぶ)を持ち、比較的単純な数値計算を多数のデータに並列に繰り返し適用するのが得意な構造になっている。
この特徴を活かし、画像処理に類似する処理の特徴を持つ分野において高速な並列計算システムを構築することができる。科学技術研究における数値計算やシミュレーションの一部、暗号解読や仮想通貨のマイニング、機械学習やニューラルネットワークといった人工知能(AI)の一部の分野などと相性が良いことが知られている。
当初は純粋にグラフィックス処理向けに設計されたGPU製品を利用者側で工夫して転用していたが、近年ではGPUメーカーも新たな需要・市場としてGPGPUを意識するようになり、GPUの設計を他用途でも使いやすい構造に改良したり、GPGPUを支援する機能やソフトウェア開発環境などを提供するなど、積極的に用途開拓に乗り出している。
GPGPUのための汎用的な開発環境としては、GPUメーカー大手NVIDIA社による「CUDA」(Compute Unified Device Architecture)、米アップル(Apple)社および業界団体クロノス・グループ(Khronos Group)による「OpenCL」(Open Computing Language)、米マイクロソフト(Microsoft)社による「DirectCompute」(ダイレクトコンピュート)などがある。
クロック周波数 【動作周波数】 ⭐⭐⭐
電子基板や半導体チップなどの内部で、複数の電子回路が信号を送受信するタイミングを揃えるための周期的な電気信号を、単位時間あたり何回発振するかを表す値のこと。単位は「Hz」(ヘルツ)。
クロック信号には様々な形式があるが、最も基本的なものは一定時間ごとに高電圧と低電圧が切り替わる信号で、基板内や回路内に設けられた発振器により生成され、各装置や回路に供給される。
クロック信号を毎秒何回発するかを表すのがクロック周波数で、この値が大きいほど、1秒を短い間隔で区切って信号の処理や伝送を実行するため、他の条件が同じなら装置をより高速に動作させることができる。
クロック信号を毎秒1回発振するのが1Hzで、毎秒1000回を1kHz(キロヘルツ)、毎秒100万回を1MHz(メガヘルツ)、毎秒10億回を1GHz(ギガヘルツ)という。現代のコンピュータのクロック周波数は数百MHzから数GHzが多い。
原則として基板上のチップや回路は単一(同一)のクロック周波数で動作するが、近年ではCPUなど特定のチップの内部だけ、外部からの信号の数倍の周波数を用いて高速に動作させる場合もあり、「CPUクロック」「メモリクロック」「ベースクロック」などのように呼び分ける。
クロック周期 (clock cycle/クロックサイクル)
クロック信号の繰り返し周期一回分にかかる時間の長さをクロック周期(クロックサイクル)という。クロック信号の始まり(電圧の立ち上がりなど)から、次のクロックの始まりまでの時間で、クロック周波数の逆数となる。
例えば、クロック周波数1MHzの信号は毎秒100万回の発振を繰り返すため、一回あたりのクロック周期は100万分の1秒(1マイクロ秒)となり、1GHzならば10億分の1秒(1ナノ秒)となる。
メモリ ⭐
記憶、記憶力、回想、追憶、記念などの意味を持つ英単語。ITの分野ではコンピュータに内蔵される半導体集積回路(IC)を利用したデータの記憶装置を指すことが多い。
コンピュータを構成する装置の一つで、CPU(MPU/マイクロプロセッサ)などから直接読み書きすることができる記憶装置のことを「主記憶装置」(main memory:メインメモリ)というが、通常はこれを略してメモリと呼んでいる。また、主記憶装置を含む、半導体素子により電気的にデータの記憶や読み書きを行う記憶装置を総称して「半導体メモリ」という。
主記憶装置としてのメモリ
コンピュータ内部でCPUがソフトウェアの実行のために当座必要なプログラムやデータを記憶しておくための記憶装置を主記憶装置あるいはメモリという。一方、プログラムやデータを長期的、永続的に保管しておくために利用される装置は「外部記憶装置」「補助記憶装置」あるいは「ストレージ」(storage)などと呼ばれる。
一般に主記憶装置は外部記憶装置よりはるかに高速に動作する装置が用いられるが、単価や装置構成上の制約から少ない容量しか搭載することができない。このため、コンピュータは起動すると外部記憶から主記憶に必要なプログラムやデータを読み込んで実行し、必要なくなったデータなどは主記憶からすみやかに消去して新たに必要になったものと入れ替える。永続的に保管する必要があるデータなどは外部記憶へ書き込まれて保存される。
現代のコンピュータでは主記憶装置として、電気的に動作し高速に読み書きできる「RAM」(Randam-Access Memory)、特に「DRAM」(Dynamic RAM)を用いることが多いため、RAMやDRAMを主記憶装置あるいはメモリの同義語のように用いることが多い。歴史的にはRAM以外の装置が主記憶だった時代もあり、また、今後、RAMとは異なる原理の記憶装置を主記憶に用いるための技術の研究・開発も行われている。
RAM/DRAMは電源を落とすと内容が失われる「揮発性メモリ」の一種であるため、これを主記憶装置の特徴と説明することもあり、現代のコンピュータの設計については当てはまるが、本来これはRAM/DRAMの特性であり、他の装置を用いた場合はその限りではない。
半導体記憶装置としてのメモリ
電気的に情報を記録できる半導体素子を集積し、ある一定の容量のデータの記録、読み書きが可能な半導体集積回路(IC/LSI)を「半導体メモリ」あるいは単にメモリという。
半導体メモリ装置の多くは主記憶装置やそれに準じる用途に用いられるが、フラッシュメモリのように外部記憶装置(ストレージ)として用いられることがあり、主記憶装置をメモリと呼ぶ場合と紛らわしいので注意が必要である。
RAM
自由に読み書きできるが電源を断つと内容が失われる装置を「RAM」(Randam-Access Memory:ランダムアクセスメモリ)と呼び、記憶を保持するために定期的に電荷の再注入が必要な「DRAM」(Dynamic RAM:ダイナミックRAM)と不要な「SRAM」(Static RAM:スタティックRAM)に分かれる。
コンピュータの主記憶としてよく用いられるのはDRAMで、パソコンなどの場合は細長い電子基板にいくつかのDRAMチップ(メモリチップ)を実装したDRAMモジュール(メモリモジュール)をマザーボードに装着して利用する。
ROM
一方、電源を落としても記録内容が維持されるが、利用者が内容を書き込めないか書き込み方法に制約のある装置を「ROM」(Read-Only Memory:リードオンリーメモリ)という。コンピュータ内部に固定的に設置されてファームウェアやBIOSなどを記憶したり、プラチックのパッケージなどに収められてソフトウェアの流通などに用いられる。
このうち、製造時に内容を記録し、以後は内容の消去や上書きが一切できないものを「マスクROM」(Masked ROM)、利用者が特殊な装置を用いて一度だけ内容を記録できるものを「PROM」(Programmable ROM)、特殊な装置を用いて何度も内容の消去、再書込が可能なものを「EPROM」(Erasable Programmable ROM)という。
さらに、特殊な装置が不要で読み出しと同じ装置で消去、再書込ができるようにしたものは「フラッシュメモリ」(flash memory)と呼ばれ、自由に読み書き可能な不揮発メモリとして外部記憶装置(ストレージ)に利用される。
RAM 【Random Access Memory】
半導体メモリ装置の一種で、データを繰り返し書き込み、書き換え可能で、装置内のどこに記録されたデータも等しい時間で読み書き(ランダムアクセス)できる性質を持ったもの。主にコンピュータの主記憶装置(メインメモリ)として用いられる。
データを保存することができるICチップで、内部に大量に敷き詰められた微細な半導体記憶素子の状態を電気信号によって変化させる。記憶内容を保持するために定期的に再書き込み動作(リフレッシュ)が必要な「DRAM」(Dynamic RAM)と、何もしなくても記憶が保持される「SRAM」(Static RAM)がある。
いずれも通電をやめる(装置の電源落とす)と記憶内容は失われるため、フラッシュメモリなどとは異なり永続的な記憶装置(ストレージ)として用いることは難しい。SRAMは特殊な用途に限定的に用いられることが多く、広く普及しているのはDRAMであるため、単に「RAM」という場合はDRAMを指すことがほとんどである。
DRAMはコンピュータ内部でCPUが必要とするプログラムやデータを置いておくメインメモリとして広く普及している。内部の操作を電気的に行うため磁気方式の装置などに比べ極めて高速に動作するが、記憶の保持に通電が必要で容量単価も高いため、SSDやハードディスクなどのストレージと組み合わせて使用する。
パソコンなどのRAM
<$Img:Random-Access-Memory-2.png|right|PopaBogdan>パソコンなどの汎用コンピュータのメインメモリとして用いるRAMには標準規格があり、いくつかのメモリチップを実装した「メモリモジュール」をマザーボードなどに設けられたメモリスロットに差し込んで使用する。
業界団体のJEDECが策定しているメモリ規格がよく用いられ、製品の世代により「DDR3 SDRAM」「DDR4 SDRAM」「DDR5 SDRAM」などの種類がある。これらの中でさらに、メモリチップの動作周波数や外部とのデータ伝送速度などにより仕様が細かく分かれている。
例えば、「DDR4-2400」型のメモリモジュールはDDR4 SDRAM方式でバスクロック600MHz、伝送速度192.2GB/s(ギガバイト毎秒)で動作させることができる。マザーボードやCPUは接続できるモジュールの仕様(の範囲)が決められており、対応する製品を購入して装着する必要がある。
ROMとの違い
一度記録した内容の消去・書き換えができないメモリ装置を「ROM」(Read Only Memory)という。RAMと対比することが多いが、“Read Only”(読み込み専用)と対になる表現は “Recordable”(記録可能)、“Rewritable”(書き換え可能)、“Read/Write”(読み込み/書き込み)などであり、また、ROM(の読み込み)はランダムアクセス可能であるため、語義的には対になっていない。
これは、RAMは本来 “Random Access read/write Memory” の略だったが、略称に引きずられて “read/write” が脱落した呼称が定着してしまい、また、RAMと本来対になる「SAM」(Sequential Access Memory:逐次アクセスメモリ)も過去に存在したが廃れてしまったため、このような状況になったとされる。
なお、スマートフォンの仕様表などで「RAM容量」「ROM容量」といった項目が記載されていることがあるが、前者はメインメモリ容量、後者は内部ストレージの容量を意味する。スマートフォンなどに内蔵されるストレージ装置にはフラッシュメモリが用いられるが、フラッシュメモリはROMの技術から発展したもので、以前は「フラッシュROM」と呼ばれていたことから、その名残りでこのような表記が残っているものと考えられる。
ROM 【Read Only Memory】 ⭐
半導体などを用いた記憶素子および記憶装置の一つで、製造時などに一度だけデータを書き込むことができ、利用時には記録されたデータの読み出しのみが可能なもの。
コンピュータなどの電子機器を制御するBIOSやファームウェアなどを記録するために機器の本体に内蔵されていることが多く、利用者が直に目にする機会はあまりない。家庭用ゲーム機などでは、ソフトウェアの流通手段として、ROMに内容を記録してプラスチック製のケースに納めたROMカセットが用いられることもある。
工場での製造時に一度だけデータを記録するものを「マスクROM」(mask ROM)、工場出荷時には何も記録されておらず、利用者が専用の書き込み装置を用いてデータを記録するものを「PROM」(Programmagle ROM)という。PROMの中には内容の消去や再書込が可能なものがあり、これを「EPROM」(Erasable Programmable ROM)という。
EPROMの一種であるEEPROM(Electrically EPROM)から発展し、電源を落としても記録が消えず、内容を自由に読み書きができるメモリ素子に「フラッシュメモリ」がある。これを当初は「フラッシュROM」と呼んでいたため、スマートフォンやタブレット端末などの内部ストレージがフラッシュメモリで構成されている場合、カタログなどでこれを「ROM」と表記する場合がある。
なお、単にROMという場合は半導体メモリ素子を利用した製品を指すが、光学ディスクの「CD-ROM」「DVD-ROM」「BD-ROM」のように、メモリ装置以外の読み出し専用の記憶装置や記憶媒体(メディア/ディスク)のことも(比喩的に)ROMと呼ぶことがある。
揮発性メモリ ⭐
データの記憶に用いられる半導体メモリの分類の一つで、外部からの給電が途絶えると記憶内容が失われる記憶素子を用いるもの。コンピュータのメインメモリ(主記憶装置)によく用いられるDRAMなどが該当する。
メモリ装置は内部の半導体素子の動作原理の違いにより、通電している間だけ記憶内容を維持できる揮発性メモリと、給電が途絶えても内容が失われず永続する「不揮発性メモリ」(non-volatile memory/不揮発メモリ)に分かれる。
揮発性メモリの代表は「DRAM」(Dynamic RAM)であり、コンピュータが稼働している間に利用されるデータやプログラムを一時的に保管しておくメインメモリとして広く普及している。失われては困るデータはストレージ装置に格納することで永続的に保管する。
「SRAM」(Static RAM)も揮発性メモリだが、記憶の維持に微弱な電力しか必要としないため、電池やバッテリーと組み合わせ、本体電源がオフの時にも内容が失われないように構成したシステムがよく用いられる。永続的なデータ保管に利用されるため不揮発性メモリと勘違いされることもある。
一方、不揮発性メモリには「ROM」(マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなど)や「フラッシュメモリ」、「MRAM」、「FeRAM」などが含まれる。ROMから普及が始まったため不揮発性だとデータの書き込みができないと考えられがちだったが、その後の技術の進展でフラッシュメモリのように書き換え可能な素子が一般化している。
不揮発性メモリ 【非揮発メモリ】 ⭐⭐
データの記憶に用いられる半導体メモリの分類の一つで、外部からの給電がなくても記憶内容を維持することができる記憶素子を用いるもの。コンピュータのストレージ(外部記憶装置)にも用いられるフラッシュメモリなどが該当する。
メモリ装置は内部の半導体素子の動作原理の違いにより、通電している間だけ記憶内容を維持できる「揮発性メモリ」(volatile memory/揮発メモリ)と、記憶の維持自体には電力を消費せず、電源を落としても内容が維持される不揮発性メモリに分かれる。
前者にはコンピュータのメインメモリに用いられる「DRAM」(Dynamic RAM)や高速な書き換え速度と低消費電力で知られる「SRAM」(Static RAM)などがあり、後者には「ROM」(マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなど)や「フラッシュメモリ」、「MRAM」、「FeRAM」などが含まれる。
ROM
初期に発明され普及したのはROM(Read Only Memory)で、製造時に内容が記録され、後から消去・書き換えができない記憶素子が用いられていた。出荷時にコンピュータに内蔵されるファームウェアの記録媒体や、ソフトウェア製品の流通媒体(家庭用ゲームカートリッジなど)としてよく利用された。
後に限定的な書き換え機能を持つ方式が開発され、製造時ではなく利用者の手元で専用の装置を用いて一度だけ書き込める「PROM」(Programmable ROM)、専用の装置で消去と再書き込みができる「EPROM」(Erasable Programmable ROM)、利用環境で電気的に繰り返し消去と再書き込みが可能な「EEPROM」(Electrically Erasable and Programmable ROM)などの種類がある。
フラッシュメモリ
ROM技術から発展した任意に書き換え可能な「フラッシュメモリ」(flash memory)もあるが、DRAMなどの揮発性メモリに比べると書き換え速度や耐久性(消去・上書き回数の上限)などが劣るため、磁気メディアや光学メディアより高速なストレージ装置の記憶媒体としてSSDやUSBメモリ、メモリーカード、スマートフォン内蔵ストレージなどの形で普及している。
ユニバーサルメモリ
「磁気抵抗メモリ」(MRAM:Magnetoresistive RAM)や「強誘電体メモリ」(FRAMまたはFeRAM:Ferroelectric RAM)など、DRAMに匹敵する高速性や書き換え耐性を持つ不揮発性メモリも進められている。電源を落としても消えない主記憶装置として利用できると期待されており、メモリとストレージの役割を兼ねた「ユニバーサルメモリ」(universal memory)として用いられることが想定されている。
フラッシュメモリ ⭐⭐⭐
半導体素子を利用した記憶装置の一つで、何度も繰り返し書き込みができ、通電をやめても記憶内容が維持されるもの。近年、データを永続的に保存するストレージ(外部記憶装置)製品の記憶素子として急激に普及している。
フラッシュメモリは半導体メモリのうち、電源を落としても記録されたデータが消えない不揮発性メモリ(nonvolatile memory)に分類される。電気的に繰り返し自由に消去や再書き込みができる特徴はRAMと同じだが、技術的にはROM(の一種であるEEPROM)に由来するため「フラッシュROM」とも呼ばれる。
素子の構造や動作方式により大きくNAND型とNOR型の二種類に分かれる。最初に開発されたのはNOR型で、バイト単位で高速に読み出しができ、信頼性が高いが、後に開発されたNAND型の方が集積度を高めやすく、書き込みが高速であるという特徴の違いがある。
SLCとMLC
初期のフラッシュメモリはメモリセル(記憶素子)の電荷の有無にデジタル信号の「0」と「1」を対応付ける1ビット記録の素子(SLC:Single Level Cell/シングルレベルセル)が用いられた。後に、セルに投入した電荷量を段階的に識別することで1セルに複数ビットを保存できる素子(MLC:Multi-Level Cell/マルチレベルセル)が開発された。
初期のMLCは4段階識別・2ビット記録だったため、現在でもこれを指してMLCと呼ぶことが多いが、8段階識別・3ビット記録の「TLC」(Triple Level Cell/トリプルレベルセル)や、16段階識別・4ビット記録の「QLC」(Quad-Level Cell/クアッドレベルセル)も開発されており、MLCはこれら多値記録方式全体の総称を指すこともある。
特徴と用途
フラッシュメモリは磁気ディスクや光学ディスクなどに比べ、半導体素子に電気的にアクセスするためデータの読み書き速度が桁違いに速く、ドライブ装置に可動部がないため動作音もなく衝撃や振動にも強い。
ただし、素子の構造上劣化の進みが速く、初期には数百回程度、近年でも数万回程度の再書き込みによって素子が破損することが知られている。この点をカバーするため、制御回路により書き込み回数を各素子に均等に分散させる「ウェアレベリング」(wear leveling)と呼ばれる処理が行われる。
他方式のメディアに比べ価格も桁違いに高く小容量の製品しかなかったが、2000年代半ば頃からは量産効果や技術の進歩により飛躍的に低コスト化され、磁気ディスクなどの用途を奪う形で普及が拡大している。
主な用途としては、スマートフォンなどの携帯情報端末の内蔵ストレージや、数cm角の薄いプラスチックケースに収めたカード型の記憶媒体である「メモリーカード」、指先大の短い棒型や角型のケースに収めUSB端子でコンピュータに接続する「USBメモリ」などがある。
DDR3 SDRAM 【PC3】
パソコンなどに使われる半導体メモリ(DRAM)の規格の一つで、DDR2 SDRAMを改良した第3世代のDDR SDRAM規格。主にパソコンやサーバのメインメモリとして利用されている。
DDR3 SDRAMは同一の動作クロックで比較すると前世代のDDR2 SDRAMの2倍、当初のDDR SDRAM規格(DDR1)の4倍の高速なデータ伝送が可能となっている。消費電力の低減も進み、DDR1の2.5V/2.6V、DDR2の1.8Vに対して1.5Vの低電圧で動作する。
信号の仕様などはDDR2など従来品と互換性がなく、専用に設計された製品を用いる必要がある。メモリモジュールのサイズやスロットの幅はDDR1およびDDR2と同一だが、端子の途中にある切り欠きの位置が異なるため、古い規格用のスロットにDDR3モジュールを差し込む(あるいはその逆)はできないようになっている。
DDR3 SDRAMの規格は、「DDR3-xxx」のようにメモリの周波数を示す「チップ」と、「PC3-yyyy」のようにメモリの伝送速度を示す「モジュール」の二種類により規定される。例えば、「DDR3-800」はメモリクロック100MHz、バスクロック400MHzのDDR駆動(800MHz)で動作するチップで、「PC2-6400」は最大伝送速度6.4GB/sのモジュールである。
<$Fig:ddr3|center|false>電子部品の業界団体JEDECが標準化した規格で、最初の仕様は2005年に発表された。その後、より高速な仕様が順次追加されている。2007年頃から本格的に普及し始め、2010年代半ばに後継のDDR4 SDRAMが登場するまで主流のメモリ規格だった。
DDR4 SDRAM 【PC4】
パソコンなどに使われる半導体メモリ(DRAM)の規格の一つで、DDR3 SDRAMを改良した第4世代のDDR SDRAM規格。主にパソコンやサーバのメインメモリとして利用される。
DDR4 SDRAMは同一の動作クロックで比較すると前世代のDDR3 SDRAMの2倍、二世代前のDDR2の4倍の速度のデータ伝送が可能となっている。電源電圧はDDR3の1.5Vから1.2Vに下がり消費電力が削減されたが、一部の回路には別に2.5Vの電源を供給する必要がある。
標準のメモリモジュール(DIMM)のサイズや形状はDDR3以前と変わらないが、入出力ピン数はDDR3の240ピンから288ピンに増え、ピン間の幅が縮まっている。DDR3やDDR2など過去の規格とは互換性が無いため、マザーボードやメモリモジュールはDDR4 SDRAMに対応した専用の製品を用意する必要がある。
DDR4 SDRAMの規格にはメモリの周波数を示す「チップ」とメモリの転送速度を示す「モジュール」の二種類により規定され、前者は動作周波数を元に「DDR4-xxxx」の形式で、後者はデータ転送速度を元に「PC4-yyyyy」の形で表記される。例えば、「DDR4-1600」はメモリクロック100MHz、バスクロック800MHzのDDR(1600MT/s)で動作するチップで、「PC4-12800」は最大伝送速度12.8GB/sのモジュールである。
<$Fig:ddr4|center|false>DDR4 SDRAMの規格は電子部品の業界団体JEDECが標準化を進めており、最初の仕様は2012年に発表された。その後より高速な仕様が順次追加されている。2014年から本格的な普及が始まり、DDR3を徐々に置き換えて市場に浸透している。
DDR5 SDRAM 【PC5】
パソコンなどに使われる半導体メモリ(DRAM)の規格の一つで、DDR4 SDRAMを改良した第5世代のDDR SDRAM規格。主にパソコンやサーバのメインメモリとして利用される。
DDR5 SDRAMは同一の動作クロックで比較すると前世代のDDR4の2倍、二世代前のDDR3の4倍の速度のデータ伝送が可能となっている。電源電圧はDDR4の1.2Vから1.1Vに下がり、消費電力も抑えられている。このような低電圧でも電圧の変動幅を一定幅に抑えるため、メモリモジュール内に電圧レギュレータ(PMIC)が内蔵されるようになっている。
標準のメモリモジュール(DIMM)のサイズや形状はDDR4以前と変わらず、入出力ピン数もDDR4同様288ピン(小型のSO-DIMMは262ピン)である。DDR4やDDR3など過去の規格と互換性が無いため、誤挿入を防ぐため端子の切り欠き(キー)の位置がDDR4やそれ以前の規格とは異なっている。
複数のメモリチップを束ねて一体的に運用するメモリバンクのグループ数がDDR4の4から8に倍増(1グループあたりのバンク数は従来通り4)し、最大32バンクを独立に制御できる。チップ内の配線や素子の微細化および記憶密度の向上によるエラーや欠陥の増大に対応し、チップごとに誤り訂正機構(オンダイECC)が組み込まれた。
DDR5 SDRAMの規格にはメモリの周波数を示す「チップ」とメモリの転送速度を示す「モジュール」の二種類により規定され、前者は動作周波数を元に「DDR5-xxxx」の形式で、後者はデータ転送速度を元に「PC5-yyyyy」の形で表記される。例えば、「DDR5-4800」のチップはバスクロック2400MHzのDDR(4800MT/s)で、これを搭載したモジュールは「PC5-38400」で、外部と最大38.4GB/sの伝送速度で通信できる。
<$Fig:ddr5|center|true>DDR5 SDRAMの規格は電子部品の業界団体JEDECが標準化を進めており、最初の仕様は2020年に発表された。その後より高速な仕様が順次追加されている。2021年頃から徐々に対応製品が普及し始めているものの、DDR4からの世代交代は緩やかに進んでおり、高性能機種(ハイエンドモデル)への採用が中心となっている。
DIMM 【Dual Inline Memory Module】
コンピュータのメインメモリとして利用されるメモリ基板(メモリモジュール)の一種で、基板の端に並んだ金属端子が基板の表と裏でそれぞれ別の端子として機能するもの。
細長いプラスチック基板の片面あるいは両面にDRAMチップ(メモリチップ)が複数実装され、長辺の一方に外部と接続するための数十の金属端子が並んでいる。この端子のある側を、マザーボードなどに設けられた専用の差込口(DIMMスロット、DIMMソケット)に差し込んで利用する。
DIMMの形状や端子の仕様は業界団体のJEDECが標準化した規格が最も普及しており、対応するチップや用途などよって様々なものが存在する。単にDIMMといった場合はJEDEC規格のDIMMの総称を意味することが多い。
DIMMの派生仕様として、物理的なサイズを縮小したものを「SO-DIMM」(Small Outline DIMM)という。基板面積が狭く搭載できるメモリチップの数は少ない。携帯型コンピュータのメインメモリとして、あるいはプリンタやネットワーク機器の拡張メモリなどとして用いられる。
DIMM以前によく用いられいたメモリモジュールは「SIMM」(Single Inline Memory Module)という。形状や仕組みは一見DIMMに似ているが、両面の端子が区別されておらず同じ信号の送受信に用いられていた。DIMMは表裏を分離して別の端子としているため、端子の列の数が同じでも端子数は2倍に増えている。
SO-DIMM 【Small Outline Dual In-line Memory Module】
コンピュータのメインメモリに用いられるメモリモジュールの種類の一つで、DIMMの物理的なサイズを縮小した規格。DIMM同様、端子形状やピン数はメモリ規格によって異なり、様々な種類がある。
通信仕様やデータ伝送速度などはDIMMサイズのモジュールに準じ、メモリ規格に定められた方式や速度でデータが伝送される。基板の面積が狭い分、搭載されるメモリチップの容量はフルサイズのモジュールより少ない。
主にノートパソコンや省スペースデスクトップPC、あるいはプリンタや通信機器などの拡張メモリとして利用される。汎用品が大量生産されるDIMMに比べ、同じ仕様の製品の用途や出荷量が限られるため、容量が少ない割に価格は割高である。
当初よく用いられたサイズは幅67.7mm(2.66インチ)×高さ31.75mm(1.25インチ)、厚さ3.8mm(0.15インチ)以下の形状で、SDRAMやDDR SDRAM、DDR2 SDRAMなどで用いられた。DDR3 SDRAMなどではこれよりわずかに幅が長く高さの低いサイズが用いられる。
ピン配置はメモリ規格によって決まっており、少ないものでは100ピンから多いものでは260ピンといった高密度のものもある。ピン数が同じでも規格が異なるものは誤挿入による誤作動や破損を防ぐため切り欠きの位置を変えて別の規格のメモリスロットには差し込めないようになっている。DDR SDRAMの200ピンとDDR2 SDRAMの200ピンのように一見して区別しにくい場合もある。
記録メディア 【記憶媒体】
信号やデータを何らかの物理状態に置き換えて記録することができる装置や部品のこと。磁気ディスクや磁気テープ、光学ディスク、フラッシュメモリなどが該当し、文脈によっては単にメディア、媒体と呼ばれることもある。
コンピュータなどの情報機器でデータの永続的な保管に用いられるストレージ(外部記憶装置)は、データを何らかの微細な物理的パターンに置き換えて記録・保持するメディアと、これを駆動して読み書き操作を行なう「ドライブ」(drive)と呼ばれる装置からなる。
記録媒体がディスク(円盤)やカセット、カートリッジ式になっており、ドライブ装置から着脱・交換可能(リムーバブル)になっている装置と、装置内部にメディアが封入・固定されていて入れ替えられない機器がある。フロッピーディスクや光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)などは前者、ハードディスクやSSD、USBメモリは後者に分類される。
ハードディスク 【HDD】 ⭐
コンピュータなどの代表的なストレージ(外部記憶装置)の一つで、薄くて硬い円盤(ディスク)の表面に塗布した磁性体の磁化状態を変化させてデータを記録するもの。一台あたりの容量が大きく容量あたりの単価が安いため、パソコンなどに内蔵されるストレージとして標準的な存在となっている。
構造・原理
装置内にはガラスや金属でできたプラッタ(platter)と呼ばれる円盤型の記憶媒体が数枚封入されており、表面には磁性体が塗布されている。これを回転軸で高速(毎分数千回)で回転させ、アームの先端に取り付けられた磁気ヘッドを近接させる。特定の箇所の磁化状態を変化させることでデータを書き込むことができ、状態を読み取ることでデータを読み出すことができる。
プラッタの直径は主流の製品で3.5インチ(約8.9cm)だが、小型の機器向けに2.5インチや1インチの製品も存在する。一台の装置にプラッタが1~8枚程度備え付けられ、通常はその両面を記録に用いる。内部的な制御や区画分けはプラッタごとに行われるが、外部から見た記憶領域としては全体で一つとなる。
他媒体との比較
「ハードディスク」とは硬い円盤という意味だが、これはフロッピーディスクなどのようにプラッタの素材に柔らかいプラスチックフィルムなどを用いる装置と対比した表現である。フロッピーディスクなどは記憶媒体と駆動装置(ドライブ)が分離していてディスクだけを取り外して交換したり持ち運べるが、HDDはディスクとドライブが一体化しているため、「ハードディスクドライブ」(HDD:Hard Disk Drive)とも呼ばれる。
磁気ディスクや光学ディスクなどの中では最も記録密度が高く、同じ世代で比較すると装置(媒体)一台あたりの記憶容量は飛び抜けて大きい。読み書きも高速で、パソコンやサーバなどのコンピュータ製品では基幹的な記憶媒体として広く普及している。ドライブ一体型なこともあり一台あたりの価格が高いことや、振動に弱いという難点もある。
SSDへの置き換え
装置の寸法や接続仕様をHDDに揃え、内部の記憶媒体をフラッシュメモリに置き換えた製品はSSD(Solid State Drive)と呼ばれ、HDDの代替として近年急速に浸透している。
読み書き速度が桁違いに速く衝撃にも強いという長所があるが、半導体メモリのため価格が高く一台あたりの容量も少ないという欠点があった。近年では低価格化と記憶容量の向上が劇的に進み、従来のHDDの用途を置き換える形で普及が加速している。
接続方式
コンピュータ本体に内蔵されるHDDの場合、接続インターフェースとして初期にはIDE/ATA(パソコン向け)やSCSI(サーバ・ワークステーション向け)が、2000年代以降はSATA(Serial ATA)が主に用いられている。独自の筐体を持ちケーブルでコンピュータと繋ぐ外付けの装置もあり、USBやIEEE 1394、eSATAなどの規格で接続される。
SSD 【Solid State Drive】 ⭐⭐⭐
外部記憶装置(ストレージ)の一つで、記憶媒体にフラッシュメモリを用いる固定型の装置。ハードディスクと同じようにコンピュータに接続し、プログラムやデータの永続的な保存に用いる。
ハードディスクなどの磁気ディスク装置は磁気的に、DVDなどの光学ディスク装置は光学的に信号の読み書きを行うが、SSDは半導体素子に電気的にデータの記録、読み出しを行うため、極めて高速に読み書きすることができる。
また、高速で回転する円盤(ディスク)やモーター、盤上を移動する読み書き装置(ヘッド)といった機械部品がないため、消費電力が少なく、耐衝撃性に優れ、振動や駆動音もなく、装置の形状を小型、薄型、軽量にすることができる。
ただし、フラッシュメモリは書き込みを行うごとに素子が劣化するため、同じ容量なら磁気ディスクより書き換え寿命が短い。この欠点を補うため、多くのSSD製品では、なるべく満遍なく各素子に書き込み動作が分散するよう制御装置が記録位置の選択を行う「ウェアレベリング」と呼ばれる制御を行っている。
また、現在のところ容量あたりの単価は磁気ディスクや光学ディスクよりフラッシュメモリのほうが高額なため、同世代の同じ容量の製品の中では割高となる。コンピュータにSSDとハードディスクを両方搭載し、システムファイルや頻繁にアクセスされるプログラムやデータをSSDに保存して、それ以外はハードディスクに保存するといった使い分けが行われることも多い。
筐体仕様(フォームファクタ)やコンピュータ本体との接続インターフェースは、当初は既存の機器と置き換えられるよう3.5インチ筐体やSATA(シリアルATA)などハードディスクと同じ規格が流用されたが、SSDの高速な読み書き性能や省スペース性を最大限活用すべく、mSATAやM.2、NVMe、SATA ExpressなどSSDにより適した規格も策定され、普及しつつある。
SLC/MLC/TLC/QLC
SSDの記憶媒体に用いられるNAND型フラッシュメモリのうち、一つの記憶素子(メモリセル)に2値(1ビット)のデータを格納する方式を「SLC」(Single Level Cell)、3値以上からなる多ビットのデータを格納する方式を「MLC」(Multi-Level Cell)という。
初期のMLC型は4値(2ビット)を記録する方式だったため、狭義にはこれを指してMLCと呼ぶ。これを3ビット以上と区別する場合は「DLC」(Double Level Cell)と呼ぶこともあるが、この呼称は普及していない。3ビット(8値)記録できるものは「TLC」(Triple Level Cell)、4ビット(16値)のものは「QLC」(Quad-Level Cell)、5ビット(32値)のものは「PLC」(Penta-Level Cell)と呼ばれる。
セルに記録できるビット数が少ない方が動作が高速で信頼性、耐久性(書き換え寿命)も高いが、容量あたりの単価が高くつく。SLC型は記録密度が低すぎるためほぼ廃止されており、多値記録セルで記録密度を高める方向に発展している。
CD 【Compact Disc】
薄い樹脂製の円盤(ディスク)の表面に微細な加工を施し、高速で回転させてレーザー光を照射することで信号の読み書きを行う光ディスクの一つ。1980年にソニーと蘭フィリップス(Philips)社が開発した。
音楽ソフトを販売するための記録媒体として開発され、アナログレコードやカセットテープに代わって標準的な音楽販売メディアとして再生機器が広く普及した。後に利用者側の機器でデータを記録できる追記型(CD-R)や書き換え型(CD-RW)の仕様も策定され、コンピュータの補助的なデータ記憶メディア、ソフトウェア販売メディア、配布・交換用メディアとしても広まった。
CDは直径8cmあるいは12cmの中心に穴の空いたプラスチック製の薄いディスクで、ドライブ装置に挿入して高速で回転させる。近接させた光ピックアップから回転する記録面上の特定の位置にレーザー光を照射し、反射した光をセンサーで検知して記録されたデータを読み取る。書き込み型の場合はレーザー光で記録面を加熱して光の反射率を変化させることによりデータを書き込む。
記憶容量は一般的な12cmディスクの場合、データ650MB(メガバイト)または音声74分を記録できる製品と、700MBまたは80分の製品、800MBまたは90分の製品がある。8cmディスクは155MB/18分から300MB/34分まで数種類がある。標準のデータ転送速度は1.2Mbps(メガビット毎秒)で、これを「等速」「1倍速」などと呼び、その整数倍に高速化された機器が一般的となっている(最高は48倍速)。
ディスクへデータ記録する標準形式もいくつか定められており、音声を記録するCD-DA(CD Digital Audio)とコンピュータのファイルを記録するCD-ROM(CD Read Only Memory)が最も一般的に用いられる。動画を記録できるVideo CDやCDV、画像を記録するCD-GやPhoro CD、マルチメディアタイトルを記録できるCD-IやCD-ROM XAなどの規格も策定されたが、いずれもあまり普及しなかった。
CDの仕様や技術を踏襲しながら容量やアクセス速度を高速化した光ディスク規格がいくつかあり、主に動画の記録に用いられるDVDや、DVDをさらに大容量化したBlu-ray Disc(BD/ブルーレイディスク)などがある。DVD機器のほとんどはCDも読み込むことができ、BD機器はDVDに対応するが、BD機器の中にはCDのサポートを打ち切るものも現れている。
商標および規格名としての「CD」は “Compact Disc” の略で、イギリス英語の “disc” の綴りが用いられる。CD以降、光学ディスクの商標や規格名には “disc” 表記が好んで用いられる傾向にある一方、磁気ディスク系では “disk” 表記(アメリカ英語に由来)が一般的であり、あたかも意味上の違いや使い分けがあるように見えるが、単に慣例的なもので深い意味はない。
CD-ROM 【Compact Disc Read Only Memory】
コンパクトディスク(CD:Compact Disc)の規格の一つで、コンピュータなどが扱うデータを記録した読み取り専用のディスク。サイズと記憶容量は何種類かあるが、通常使われるのは直径12cmで容量700MB(メガバイト)のものである。
CDはプラスチック製の穴の空いた円盤型の記録媒体で、ドライブ装置内で高速回転させながらレーザー光を照射して、表面の微細なパターンとして記録されたデータを読み取る。CD-ROMは初期の規格で策定された読み取り専用ディスクの仕様で、データの記録に用いられる。
データの記録は製造工場の専用の装置で行われ、製造時に記録されたデータを利用者側で消去、追記、上書きすることはできない。同じ内容のディスクを大量に生産する商業的なソフトウェア製品、家庭用ゲーム機向けのビデオゲームソフトなどの販売用によく用いられる。
主な仕様
他のCD規格と同じように直径8cm、12cmのディスクがあり、記録容量は当初185MB(8cm) / 650MB(12cm:音楽74分相当)が主流だったが、後に210MB(8cm) / 700MB(12cm:80分相当)が一般的となった。現在一般的に用いられるのは12cm、700MBの規格のみである。
音楽CDで1トラック目に相当する領域にデータを記録し、後続のトラックに音楽を記録することもでき、ゲームソフトなどに用いられた例がある。ただし、データトラックを音声として再生しようとするとスピーカーが損傷したりソフトウェアが予期しない動作をする危険がある。
コンピュータで扱うデータをファイルとして記録する際にはファイルやディレクトリの情報を記録するためのファイルシステムが必要となるが、CD-ROM規格自体には規定がないため、別に策定されたISO 9660規格やその派生仕様(Romeo、Jolietなど)を用いる。
読み込み速度
データの読み出し速度はドライブ装置によって異なり、当初は音声の再生に必要な読み出しスピードである150kB/s(キロバイト毎秒)の装置が製品化された。現在ではこの速度を「等速」「1倍速」と呼ぶ。
その後、この速度の整数倍で高速化が進み、「x2ドライブ」「x16ドライブ」といったように倍率によって性能を表記するようになった。現在では最大で52倍速(7.8MB/s)の製品が存在するが、CDの材料や製法の関係で、これ以上高速に回転させるとディスクが物理的に破損するため、この速度が物理的な上限となっている。
歴史
1985年にソニーと蘭フィリップス(Philips)社が通称「Yellow Book」(イエローブック)と呼ばれる規格書を発行した。1989年にはISO/IEC 10149として国際標準となり、日本でも同様の内容がJIS X 6281として国内標準となっている。その後、特定の用途に向けて記録データの形式を規定したCD-IやCD-ROM XAなどの拡張規格も発表されたが、あまり普及しなかった。
CD-R 【Compact Disc Recordable】 ⭐
記録可能なコンパクトディスク(CD:Compact Disc)の一つで、利用者が手元で一回だけ書き込みが可能なもの。「追記型」と呼ばれる。
利用者は何も記録されていないブランクディスク(空ディスク)を購入し、パソコンなどでデータを記録することができる。空き領域のある限り何度も追記していくことはできるが、一度書き込んだ内容の書き換えや消去はできない。
コンピュータで作成・編集したデータやプログラムを書き込んで保管や運搬、交換、配布、販売に用いたり、音声ファイルなどを元に音楽CDを作ることもできる。音声が記録されたディスクはCDに対応したオーディオ機器で再生できる。
仕様
記録メディアの容量は650MB(メガバイト)、音声記録74分相当の仕様と、後から追加された700MB、音声80分相当の2種類がある。書き込むにはCD-Rへの書き込み機能に対応したドライブ装置が必要だが、記録済みのCD-Rは読み込み専用の機器の大半で読み込むことができる。
初期の装置では書き込み速度は読み出し時と同じ1.2Mbps(150KB/s、1倍速)だったが、2倍速、4倍速と高速化され、最終的には約50倍速の装置が登場した。これは1枚を1分台で記録できる速度で、これ以上は回転が速すぎてディスクが破損する恐れがあるため、速度を引き上げることは難しいとされる。
原理
CD-Rは記録面に金色や青緑色の有機色素が塗布されており、ドライブ装置内で回転させながらレーザー光を照射し、色素を熱で変性させてデータを記録する。この過程は不可逆であるため、記録済みの箇所のデータの消去や上書きはできない。
熱で変化した部分が通常のCDのピット(微小な凹凸)と同じ役割を果たし、読み込み時に照射されたレーザー光の反射率を変化させる。レーザーで熱を加えることから、CD-Rにデータを書き込むことを俗に「CDを焼く」と言うことがある。
歴史
CD規格には当初、工場での製造時にデータを書き込み、利用者は再生のみを行う読み出し専用ディスクしかなかったが、1988年に太陽誘電が利用者側の機器で書き込むことができるCD-Rを発明し、1990年に「Orange Book Part II」としてCD規格に追加された。
書き込み可能なCD規格には他に、書き込んだ内容を消去して繰り返し書き込むことができる「CD-RW」(CD ReWritable)がある。現在のコンピュータ用の光学ドライブ装置はCDの読み込み、CD-R、CD-RWの読み書きのすべてに対応している製品が一般的となっている。
DVD ⭐⭐
コンピュータや映像機器などでデータ記録メディアとして利用される光学ディスクの一種。細かい溝の彫られた樹脂製の円盤で、ドライブ装置内で高速回転させて溝に沿ってレーザー光を照射し、データの読み取りや書き込みを行う。規格の策定は業界団体のDVDフォーラムが行なっている。
サイズは直径8cmあるいは12cmで、中心にドライブ装置の回転軸を挿入する穴が空いている。両面記録、2層記録に対応しており、12cmディスクの記憶容量は片面1層で4.7GB、片面2層で8.54GB、両面1層で9.4GB、両面2層で17.04GBとなっている。
<$Fig:dvdmedia|center|true>コンテンツやソフトウェアの販売などに用いられる読み出し専用の「DVD-ROM」の他に、一度だけ書き込める(消去・上書きできない)「DVD-R」、書き換え可能な「DVD-RW」「DVD-RAM」がある。記録型メディアを巡って業界内で規格の分裂があり、別の業界団体DVD+RWアライアンスが独自に規格を定めた「DVD+R」「DVD+RW」もある。
映像や音声を記録するための標準のディスクフォーマットやファイル形式のセットなども定められており、映像とそれに付随する音声・字幕を記録するための「DVD-Video」が映像ソフトの流通などに、「DVD-VR」がHDDレコーダーなどでよく利用される。商品としての「DVD」の呼称はDVD-Video形式の映像ソフトを指す場合がある。
<$Fig:dvdapplication|center|true>DVD-ROM 【DVD Read Only Memory】 ⭐
製造時にデータが固定的に記録され、利用者の手元では読み出し専用となるDVDのこと。ソフトウェアやビデオゲーム、映像作品などの販売・配布用としてよく用いられる。
工場で専用の機械を用いてディスクの記録面に微細な窪み(ピット)を形成する手法で量産され、読み取り時には窪みの有無や長さによってレーザー光の反射の変化することを利用して信号を読み出す。信号が物理的な凹凸で表現されるため、記録層の物質の化学変化などを利用する記録型DVDよりも劣化しにくい。
一般的な12cmディスクの場合、記憶容量は片面1層記録で4.7GB、片面2層(DL)で8.5GB、両面2層で17GB、両面各1層で9.4GBとなっている。論理フォーマットの標準としてUDF(Universal Disk Format)が採用されており、コンピュータでファイルシステムとして内容を読み出すことができる。映像を記録する場合には、この中にDVD-Video規格に従って動画ファイルなどを配置する。
DVD-RAM
利用者が何度も内容の消去や上書き、再書込を行える、書き換え可能型DVDの規格の一つ。業界団体のDVDフォーラム(DVD Forum)が策定したもので、最大記録容量は他のDVD規格と同じ片面一層で4.7GB。
他のDVD規格と同じ形状、サイズだが内部構造の異なる専用のディスクを用い、データの記録や追記、消去、再書込ができる。ディスク上の特定の領域を指定して選択的に消去あるいは上書きすることはできず、すべてのデータを消去(再フォーマット)して空のディスクに戻し、再書き込み可能にする。DVD-Rのように空き領域に追記していくことはできる。
パナソニック(当時は松下電器産業)の書き換え可能な光学ディスク「PD」の技術を元に開発された相変化型の記録方式を採用し、1997年に発表された最初の規格では他のDVD規格より少ない2.6GBのデータを記録できた。その後、バージョン2規格で他と同水準の4.7GBまで記憶容量が拡張された。
当初は専用のカートリッジにディスクを収納したメディアを用いたが、後に他のDVDメディアと同じむき出しのディスクを利用するよう変更された。他の規格とはメディアや記録方式の物理的な特性が大きく異なり互換性が低く、特別にDVD-RAMに対応しているドライブでなければ再生できないという難点があった。
「RAM」は書き換え可能な半導体メモリのRAM(Random Access Memory)に由来する。初期のDVD規格は書き込み不可能な「DVD-ROM」で、「ROM」が書き込みできない半導体メモリのROM(Read Only Memory)に由来していたことから、その対義語として書き込み可能メモリの「RAM」の名が拝借された。
DVD-RW/DVD+RWとの違い
DVDフォーラムは同じく書き換え可能型DVD規格としてDVD-RWを制定しているが、DVD-RWが主にAV機器などでの映像記録用として用意されたのに対し、DVD-RAMはコンピュータなどでのデータ記録用を想定しており、書き換え可能回数が10万回と他の規格(多くは1000回程度)より大幅に高いなどの特徴がある。
また、DVD+RWアライアンス(DVD+RW Alliance)という別の業界団体が、書き換え可能なDVD拡張規格として「DVD+RW」を策定しており、ディスクのサイズや形状、最大記憶容量(4.7GB)などは共通しているが、仕様が異なるためディスクやドライブに互換性はない。
DVD-R 【DVD Recordable】 ⭐
利用者が一度だけ内容を書き込める記録型DVDの一つ。ディスク容量はDVD-ROMなどと同じ片面4.7GBだが、片面2層記録の「DVD-R DL」規格の場合は8.54GB。
何も記録されていない「空の」ディスクを利用者が購入し、内容を一度だけ書き込むことができる。書き込んだ内容は消去したり上書きしたりできないが、容量の範囲内で複数回に分けて書き込みができるため「追記型」とも呼ばれる。容量いっぱいに書き込みが行われるとそれ以上書き込むことはできない。
DVD-Rへの書き込みを行うにはドライブ装置が対応している必要があるが、書き込まれた内容の読み出し・再生は書き込み機能のないDVDドライブでも可能である。DVD-R規格の策定以前に製造された古い装置の中にはDVD-Rが読み込ないものもあったが、現在はDVD-Rの利用を想定した製品がほとんどである。
追記型のDVD規格としては他に「DVD+R」(プラスアール)が、内容の消去や再書き込みが可能な記録型としては「DVD-RW」(リライタブル)や「DVD-RAM」もあり、DVD-Rとはドライブ装置やディスクの仕様が異なる。ドライブに関しては現在製造される機種の多くはこれらのすべての規格に対応している。
Blu-ray Disc 【ブルーレイディスク】
DVDに次ぐ第3世代となる大容量の光ディスクの標準規格の一つ。CDやDVDと同じ直径12cmの樹脂製ディスクを用い、片面一層あたり25GB(ギガバイト)の高密度なデータの記録が可能。
ディスクをドライブ装置内で高速で回転させながら近接させた光ピックアップからレーザー光を照射して信号の読み書きを行う。片面一層あたり25GBを記録でき、両面記録や複層記録にも対応する。標準(1倍速)のデータ伝送速度は4.5MB/s(メガバイト毎秒)。
名称の由来は波長405nm(ナノメートル)の青色レーザー(正確には青紫色)を用いる点で、記録面上のトラックピッチ(隣接するトラック間の距離)をDVDの約半分の320nmに、最短ピット長を140nm程度に微細化している。
<$Fig:bluraymedia|center|true>DVDより高画質・長時間収録が可能な民生機器での映像記録を主な用途と見込んでおり、動画・音声の記録形式(BDMV/BDAV)や著作権保護機能(DRM)が標準で盛り込まれている。
CDやDVDと同様、工場でのディスク製造時にデータが記録され利用者側で追記・書き換えできない読み出し専用の「BD-ROM」と、利用者が一度だけ記録することができる追記型の「BD-R」(BD Recordable)、何度も繰り返し消去・再書き込みが可能な書き換え型の「BD-RE」(BD Rewritable)の3種類のディスク仕様が規定されている。
<$Fig:blurayvideo|center|true>主に映像ソフトやゲームソフトの販売、デジタル家電での録画、コンピュータのストレージ(外部記憶装置)などの用途で標準的に用いられ、パソコンやハードディスクレコーダー(ビデオレコーダー)、家庭用ゲーム機などの多くが対応しているが、機器側のほとんどがDVDとの両対応であることもあり、同じ用途でDVDも根強く使われ続け、置き換えはあまり進んでいない。
Blu-ray Disc Association (BDA/ブルーレイディスクアソシエーション)
Blu-ray Discの規格策定や普及促進を行う業界団体。ソニー、松下電器産業(現パナソニック)、シャープ、パイオニア、日立製作所、蘭フィリップス(Philips)社、韓LG電子、韓サムスン電子、仏トムソン・マルチメディア(Thomson Multimedia/現Technicolor)社らが2002年に設立したBlu-ray Disc Foundersが2004年に改称されて発足したもの。
現在では対応機器メーカーや映像産業から約140社が加盟しており、規格策定・更新の他に会員企業への技術情報の提供や、「Blu-ray Disc」の名称や「b」をかたどったロゴなどの商標について利用許諾などを行っている。
USBメモリ 【USB stick】 ⭐
コンピュータなどのUSB端子に差し込んで使用する、フラッシュメモリを内蔵した小型の外部記憶装置(ストレージ)。着脱・持ち運びが容易な記憶メディアとして、パソコンなどの情報機器間のデータの移動によく用いられている。
一般的なUSBメモリは親指ほどのサイズの箱型や棒状の機器の先端部がUSBコネクタとなっており、パソコンなどのUSBコネクタに差し込むとハードディスクなどと同じように記憶装置として読み書きできるようになる。
内部には通電しなくても内容が消えない不揮発性の半導体メモリの一種であるフラッシュメモリのICチップが実装されており、USB端子を通じてコンピュータ側から供給される電力(USBバスパワー)により駆動する。
2000年前後から普及し始めた製品カテゴリーで、記憶容量は当初は数十MB(メガバイト)程度の製品から普及し始めたが、近年ではハードディスクやSSDなどのストレージ装置に劣らない数百GB(ギガバイト)から1TB(テラバイト)を超える製品まで存在する。
日本では「USBメモリ」の呼称が浸透しているが、英語では正式な場面では “USB flash drive” と呼ばれることが多い。日常的には様々な呼び方が用いられ、“USB drive”“USB stick”“USB flash”“flash drive”などと呼ばれることが多い。
利点と欠点
極めて小型、軽量で記憶容量が大きく、USB端子があれば読み書きのための特別な装置(リーダー/ライター)やドライバソフトなどが不要で、半導体装置であるため衝撃に強く、読み書き速度も磁気メディアや光学メディアより格段に高速などの利点がある。
一方、磁気ディスクや光学ディスクに比べ容量あたりの単価が高い、寸法や形状の規格や標準がないため大量に保管する際は収納や整理が難しい、同じ可搬型フラッシュメモリ装置のメモリーカードよりは大きくかさばるといった難点もある。
<$Fig:storagecomparison|center|true>また、フラッシュメモリに共通する特徴として、書き込み動作を繰り返すと次第に記憶素子が劣化していくため、頻繁に何度も消去や書き換えを行う用途には向かない。光学ディスクなどは静電気の放電や水濡れに強いが、USBメモリは電子機器であるためこれらには弱い。
USBメモリの利用
USBの規格には元々、「USB Mass Storage Class」という、記憶装置に対する基本的な操作を提供する仕様が含まれており、USBメモリはこれを利用して読み書きを行うようにすることで、特別なドライバソフトなどをコンピュータのオペレーティングシステム(OS)に導入しなくても利用できるようにしている。
特に準備などをしなくても初めて使用するコンピュータに差し込むだけで即座に読み書き可能となるが、内部にファイルシステムを設けてからファイルやディレクトリを作成するため、FAT32、exFAT、NTFSなどファイルシステムの種類によっては特定の機種で読み書きできない場合がある。
一般的なUSBメモリ製品はUSB Type-Aコネクタを備えているが、近年の最新USB規格ではコネクタ仕様がUSB Type-Cに統一されたため、Type-Cコネクタの製品やType-AとType-Cの両対応になっている製品もある。iPhoneやiPadなど米アップル(Apple)社製品で利用できるようにするためLightningコネクタを備えた製品もある。
SDメモリーカード 【Secure Digital memory card】
事実上の標準として広く普及しているメモリーカードの規格。切手大あるいは小指の先ほどのプラスチック製のカードにフラッシュメモリが内蔵されており、データを記録・保存・交換することができる。
フルサイズのカードは幅24mm×長さ32mm×厚さ2.1mmの切手大で約2g、小さなサイズの「microSDメモリーカード」(マイクロSD)は幅11mm×長さ15mm×厚さ1.0mmの小指の先ほどの大きさで約1g。これらはサイズ以外の仕様は共通となっている。
当初の規格では最大記憶容量2GB(ギガバイト)、データ転送速度は2MB/s(メガバイト毎秒)程度だったが、後継のSDHC規格では最大32GBに、SDXC規格では最大2TB(テラバイト)に、SDUC規格では最大128TBに拡張された。
転送速度は製品により異なるが、大容量のものでは数十MB/sから100MB/s以上へ高速化が進んでいる。これらの拡張仕様は古い仕様の上位互換となっており、「SDカード」はこれらを含めた総称、あるいは上位規格のいずれかを指すことが多い。
<$Fig:sdcard|center|false>2000年前後には主要なものだけで5種類ほどが乱立していたメモリーカード規格のうちの一つに過ぎなかったが、徐々に他の規格を淘汰して市場シェアを広げ、2010年代には事実上の標準として広く普及している。
多くのノートパソコンやスマートフォンにはSDカードスロットやmicroSDカードスロットが設けられているほか、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、HDDレコーダー、家庭用ゲーム機、カーナビゲーションシステムなど、デジタル家電を中心に標準のストレージ(外部記憶装置)の一つとして普及している。
SDHC/SDXC/SDUC
1999年に発表された初期のSD規格はファイルシステムに古いWindowsやMS-DOSで標準だった「FAT16」を採用したこともあり、幅広い機器で汎用的に利用できた反面、すぐに容量上限の2GBに到達する製品が現れた。
2006年には標準のファイルシステムを「FAT32」に変更し、最大容量を32GBに拡張した「SDHCメモリーカード」(SD High Capacity)が策定された。しかし、フラッシュメモリの半導体素子の微細化・高密度化は予想以上に速く進み、2年後には早くも上限の32GBに到達した。
2009年にはフラッシュメモリ製品向けに新たに開発された「exFAT」ファイルシステムを利用する「SDXCメモリーカード」(SD Extended Capacity)が発表され、最大容量は2TBに大幅に拡張された。2018年には「SDUCメモリーカード」(SD Ultra-Capacity)が発表され、exFATの上限である128TBまでのカードを作れるようになった。
miniSD/microSD
小型の携帯機器で利用しやすいよう、一回り小さいサイズの「miniSDメモリーカード」(幅20mm×長さ21.5mm×厚さ1.4mm)規格が2003年に策定され、主に携帯電話で用いられた。
2005年にはさらに小さな「microSDメモリーカード」が策定され、以降は小型の機器ではmicroSDが主に使われるようになった。miniSD/microSD共にカードサイズ以外の仕様はフルサイズのカードとほぼ同等であり、スロットに形状を適合させるだけの簡易なアダプタを通じてフルサイズカードとして使用することができる。
スピードクラス
データ伝送速度はカードや機器(カードスロット/カードリーダー)の性能によって左右され、光学ディスク/ドライブと同じように150KB/s(キロバイト毎秒)を基準とする「n倍速」表記が用いられることもある。例えば、「10倍速」「10x」は1.5MB/sを意味する。
また、カード側で最低限保証するスピードを表す規格として「スピードクラス」が定められており、初期の「SDスピードクラス」では、2MB/sを保証する「Class 2」、4MB/sを保証する「Class 4」、6MB/sを保証する「Class 6」、10MB/sを保証する「Class 10」などがある。
「UHS」(Ultra-High Speed)と呼ばれる高速な接続仕様を実装したカードでは「UHSスピードクラス」が用いられ、10MB/sを保証する「Class 1」や30MB/sを保証する「Class 3」が定義されている。
<$Fig:sdspeed|center|false>記憶階層
コンピュータの記憶装置を、特性やコストの異なる複数の装置を組み合わせて構成すること。また、そのような様々な記憶装置の組み合わせ。
記憶装置には様々な種類があり、アクセス速度が高いほど容量あたりの単価が高いという傾向がある。このため、高速な記憶装置を少量、低速な記憶容量を大量に用意し、使用頻度などに応じてデータやプログラムの配置を工夫するという手法が用いられる。
現代の一般的なコンピュータでは、CPU内部のレジスタやキャッシュメモリが最も高速だが高価で容量が少なく、それに中容量の主記憶装置(メインメモリ、RAM)、大容量の外部記憶装置/補助記憶装置(ハードディスクやフラッシュメモリストレージなど)を組み合わせた構成が用いられる。それぞれの容量の差は2~3桁にも及ぶことがある。
キャッシュメモリ 【緩衝記憶装置】 ⭐⭐⭐
CPU(マイクロプロセッサ)などのICチップ内部に設けられた高速な記憶装置の一つ。使用頻度の高いデータを蓄積しておくことにより、相対的に低速なメインメモリ(主記憶装置)へのアクセスを減らすことができ、処理を高速化することができる。
プロセッサ内部の回路として読み書き可能な半導体メモリを集積し、プログラムの実行のためにメインメモリから読み込んだ命令やデータを一時的に保管しておく。メインメモリを読み書きするよりは何桁も高速にアクセスできる。
CPUなどの内部には、命令を実行するための回路に必要なデータを送り込むための「レジスタ」(register)もある。キャッシュメモリのアクセス速度はレジスタよりは低速だが、容量は数kB(キロバイト)から数MB(メガバイト)程度と、数個~十数個しかないレジスタよりは遥かに多い。
容量や速さの異なる2~3段階(2~3種類)のキャッシュメモリを用いる場合があり、実行回路に近く高速で容量の少ない方から順に「1次キャッシュ」「2次キャッシュ」「3次キャッシュ」といったように呼称する。実行回路はまず1次キャッシュにデータが無いか探し、無ければ2次キャッシュに、さらに無ければ3次キャッシュ、といったように順番に探す。
一般的な汎用のCPUは「フォンノイマン型」と呼ばれる構成になっており、命令もデータも区別せずメインメモリに混在させるため、キャッシュメモリも両者の区別なく記録する。一方、命令とデータが装置レベルで分離している「ハーバード型」の場合には、「命令キャッシュ」と「データキャッシュ」が分かれており、データの伝送路や制御方式も異なる。一部の組み込みシステムなどに見られる方式である。
メインメモリ 【主記憶装置】 ⭐⭐⭐
コンピュータ内部でデータやプログラムを記憶する記憶装置のうち、中央処理装置(CPU)と基板上の電気配線などを通じて直に接続されたもの。「メモリ」「RAM」とも呼ばれる。
CPUの命令によって直に読み書きが可能な記憶装置で、実行中のプログラムコードや当座の処理に必要なデータなどが保存される。外部記憶装置(ストレージ)に比べ読み書き動作は桁違いに高速だが、単価が高いため機器に搭載できる容量は何桁か少ないのが一般的である。
現代のコンピュータで主記憶装置として用いられるのは半導体記憶装置(半導体メモリ)のRAM(Random Access Memory)の一種であるDRAM(Dynamic RAM)がほとんどで、機器の電源を切るなどして装置への通電を止めると記憶内容が失われるという特性がある。
このため、データやプログラムの永続的な保管にはストレージを用い、コンピュータの起動時に主記憶装置に必要なプログラムなどを読み込んで実行するという動作が基本となっている。
また、現代のCPU製品の多くは内部にDRAMよりも高速な「キャッシュメモリ」と呼ばれる記憶回路を内蔵しているが、これはDRAMとのやり取りを高速化する一時的な保管場所としてのみ用いられ、プログラムから明示的に動作を制御することはできないようになっている。
ストレージ 【外部記憶装置】 ⭐⭐
コンピュータの主要な構成要素の一つで、データを永続的に記憶する装置。磁気ディスク(ハードディスクなど)や光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)、フラッシュメモリ装置(USBメモリ/メモリカード/SSDなど)、磁気テープなどがこれにあたる。
一般的には通電しなくても記憶内容が維持される記憶装置を指し、コンピュータが利用するプログラムやデータなどを長期間に渡って固定的に保存したり、他の機器へのデータの運搬や複製、配布などのために用いられる。
コンピュータ内には補助記憶装置とは別に、半導体記憶素子などでデータの記憶を行う主記憶装置(メインメモリ)が内蔵されており、利用者がプログラムを起動してデータの処理を行う際には補助記憶装置から必要なものをメモリに呼び出して使う。
同じコンピュータに搭載される装置同士で比較すると、補助記憶装置はメモリに比べて記憶容量が数桁(数十~数千倍)大きく、容量あたりのコストが数桁小さいが、読み書きに要する時間が数桁大きい。一般的な構成のコンピュータではメインメモリ容量の百倍から千倍程度の容量の固定内蔵ストレージを用意することが多い。
記録原理による分類
補助記憶装置装置は駆動装置(ドライブ)が記憶媒体(メディア)を操作して、記憶素子の物理状態に信号を対応付けて記録する。様々な動作原理の装置があり、主に磁気を利用するもの、レーザー光を利用するもの、電荷(半導体素子)を利用するものに分けられる。
磁気記録方式の補助記憶装置には磁気テープやハードディスク、フロッピーディスクなどがある。平たい媒体表面の磁性体の磁化状態を変化させて信号を記録する装置で、媒体を薄いテープ状にしてリールに巻き取った「磁気テープ」と、平たい円盤(ディスク)状にして中心軸(スピンドル)で高速に回転させる「磁気ディスク」に分かれる。
一昔前まで補助記憶装置の大半を占めていた方式で、現在でもパソコンに内蔵される固定補助記憶装置としてハードディスクがよく用いられる。磁気テープは容量あたりの単価が極めて安いという特徴から、現在でも企業や官公庁などの大規模なデータ保管に用いられることがある。
光学記録方式の補助記憶装置はCDやDVD、Blu-ray Discなどの光学ディスクで、信号を媒体表面の細かな凹凸や化学的な状態の変化として記録し、高速で回転させながらレーザー光を照射して反射光の変化を読み取る。
製造時にデータを記録する読み出し専用ディスクと利用時にデータの書き込みや上書きができる追記型や書き換え型のディスクがあり、前者は映像やソフトウェアなどのコンテンツの販売で、後者は映像の録画やデータのバックアップ、機器間のデータの運搬などでよく利用される。
近年では、読み出し専用メモリ(ROM)から発展した書き換え可能な不揮発メモリ(電源を落としても内容が消えない半導体メモリ)であるフラッシュメモリの大容量化、低価格化が進み、補助記憶装置装置として広く普及している。ハードディスクの代わりに固定内蔵ストレージとして用いられる「SSD」(Solid State Drive)、携帯機器の内蔵ストレージ、データの運搬に用いられるUSBメモリやメモリーカードなどがフラッシュメモリを応用した補助記憶装置である。
<$Fig:storagecomparison|center|true>入出力インターフェース 【I/Oインターフェース】
コンピュータ本体と周辺機器の間で信号を入力あるいは出力するための接続規格。コネクタやケーブル、通信方式、通信回路の仕様などで構成される。
コンピュータの中枢部である主基板(マザーボード)およびCPU、チップセットなどから、端子やケーブル、無線などを介して別の機器を接続し、データや制御情報を送受信する仕組みを指す。様々な種類の機器を接続できる汎用的な規格と、特定の機器との通信に特化した規格がある。
現代の一般的なパソコン製品などの場合、キーボードやマウス、プリンタなどの装置は汎用のUSB(Universal Serial Bus)を、ディスプレイとの接続には専用の規格(DVI、DisplayPort、HDMIなど)を用いることが多い。マイクやスピーカー、イヤフォンなどの音響装置は、一般的なオーディオ機器と共通のステレオミニプラグがよく用いられる。
ハードディスクやSSD、光学ドライブなどストレージ装置の接続にはSATA(Serial ATA)やThunderbolt、NVMe、M.2、IEEE 1394(FireWire)、Fibre Channelなどが、拡張カードの接続にはPCI Expressが広く普及している。スマートフォンなどの携帯機器ではBluetoothやNFCなど電波による無線通信で機器間を接続するインターフェースも利用される。
複数の信号線で同時に信号を伝送する方式を「パラレルインターフェース」(parallel interface)、一本の信号線で順番に信号を伝送する方式を「シリアルインターフェース」(serial interface)という。かつては高速なデータ伝送を要する用途によくパラレル方式が用いられた(SCSIやパラレルポートなど)が、技術的な限界に達し、現在は高速な用途でもシリアル方式が主流(USBやSATAなど)となっている。
多くの接続仕様は公的な標準化団体や業界団体によって標準化されており、メーカーをまたいで接続することができるが、米アップル(Apple)社の製品に採用されているLightningケーブル/ポートなど、メーカー独自の接続仕様も存在する。
インターフェースは技術の進歩に合わせて時代とともに移り変わり、かつて広く普及していたが現在ではあまり用いられない(あるいは特定分野・業界でしか見られない)ものもある。PS/2ポート、シリアルポート(RS-232Cなど)、パラレルポート(セントロニクス仕様/IEEE 1284)、IDE/ATA、SCSI、PCカード、IrDA、アナログRGB(VGA端子)、ISAバス、PCIバスなどである。
アナログ ⭐
機械で情報を扱う際の表現方法の一つで、情報を電圧の変化など連続的な物理量の変化に対応付けて表現し、保存・伝送する方式のこと。元の情報を高精度に表現することができるが、伝送や複製の際に劣化・変質を避けられない。
対義語は「デジタル」(digital)で、情報を離散的な数値に変換し、段階的な物理量として表現する。アナログで情報を扱う利点として、デジタル化では避けられない離散化に伴なう本来の信号からのズレ(量子化誤差)が生じないという点があり、情報の発生時点では正確に表現して記録することができる。
一方、保存や伝送、再生、複製に際して劣化やノイズによる影響を受けやすく、変化した情報は復元することができないため、伝送・複製を繰り返したり長年に渡って保存すると内容が失われたり変質してしまう難点がある。
かつて音楽の販売に用いられたレコード盤は、樹脂表面に刻まれた溝の凹凸の変化が音声信号の変化に直接対応付けられたアナログ記録方式だったが、コンパクトディスク(CD)では音声信号をサンプリング(標本化)して離散的な数値の列に変換し、これを表面の溝の凹凸にデジタル信号として記録している。
機器などの内部的にはデジタル処理が行われていても、人間には連続的に感じられる多段階の値で量を識別するような方式を便宜上アナログと呼ぶ場合がある。例えば、ゲーム機のコントローラの種類の一つで、方向の指示を多段階に滑らかに変化させられるものをアナログコントローラという。
1990年代頃までは、コンピュータなどによる情報のデジタル処理は限られた用途にのみ用いられてきたが、半導体チップやデジタル機器の性能向上や低価格化により、現代では身近な情報の多くがデジタル方式で保存、加工、伝送されるようになってきている。
比喩や誤用
コンピュータやデジタル方式の情報機器、通信サービスなどが普及するに連れ、旧来の機器や仕組み、考え方などを比喩的にアナログと称するようになった。
そのような用例の多くは情報の表現形式のデジタル・アナログとは無関係で、単に「コンピュータやインターネットによらない」という意味だったり、さらには「電気機械を使わない」ことを表していたりする。
中には本来の語義では誤用と思われる用例もある。例えば、ビデオゲームと対比してカードゲームやボードゲームを「アナログゲーム」と呼んだり、パソコンや電卓と対比してそろばんを「アナログな計算方法」と評することがあるが、これらが扱う情報は離散的な数値であり、電気機械を使っていないだけで情報の取り扱い方自体はデジタル的である。
デジタル 【ディジタル】 ⭐
機械で情報を扱う際の表現方法の一つで、情報をすべて整数のような離散的な値の集合として表現し、段階的な物理量に対応付けて記憶・伝送する方式のこと。特に、情報を2進数の「0」と「1」の組み合わせに置き換えて表現する方式。
現代のコンピュータはデータをすべて2進数の値の列に置き換え、これをスイッチのオン・オフや電圧の高低など明確に区別できる2状態の物理量に対応させて保存・伝送する。これに合わせて、通信回線や記憶媒体などもデジタル方式で情報を取り扱うようになっている。
対義語は「アナログ」(analog)で、情報を連続した物理量で表現する方式を意味する。初期の情報機器はアナログテレビ放送や音楽レコードのようにアナログ方式で情報を記録・伝送していたが、現代ではコンピュータの普及に合わせて動画配信やCDのようにデジタル方式への置き換えが進んでいる。
デジタルで情報を扱う利点として、保存や伝送、再生、複製などを行う際に劣化やノイズの影響を受けにくく、伝送・複製を何度繰り返しても内容が変化しない点や、様々な種類の情報を数値の集合として同じように扱うことができ、情報の種類によって媒体の選択に制限を受けない点などがある。ただし、連続的に変化する信号を離散値に変換する際に、必ず本来の信号からのズレ(量子化誤差/標本化誤差)が生じる。
機器などの内部的にはデジタル処理が行われていても、人間には連続的に感じられる多段階の値で量を識別するような方式を便宜上アナログと呼ぶ場合がある。例えば、ゲーム機のコントローラの種類の一つで、方向の指示を多段階に滑らかに変化させられるものをアナログコントローラという。
比喩や誤用
コンピュータやデータ通信、デジタル方式の記憶媒体などが普及するに連れ、「デジタル」という語をコンピュータやインターネットに関連するものの総称、「アナログ」をその逆、すなわち「電気・電子技術に依らないもの」とする比喩的な用法が広まった。
このような用例の多くは本来の情報の表現形式の違いとは無関係に用いられるため、カードゲームやボードゲームなどをビデオゲームに対比して「アナログゲーム」と呼んだり、そろばんを計算機と対比して「アナログな計算方法」と呼んだりするが、これらは離散的な数値しか扱わないため、情報の扱い方そのものはデジタル的である。
シリアル通信 【シリアル伝送】
1本の信号線や回線を使って1ビットずつ順番にデータを送受信する伝送方式。一度に伝送できるデータは少ないが、複数の信号線を同期する必要がないため伝送頻度を高めやすい。
これに対し、複数本の信号線などで一度に多くのデータを送受信する方式を「パラレル通信」(parallel communication)あるいは「パラレル転送」「パラレル伝送」(parallel transmission)などという。
シリアル方式はパラレル方式と比較すると、信号線が片方向1本ずつの一対2本で済むため、複数の信号線間の送受信タイミング(クロック)の同期が不要で、周囲の環境からの電磁ノイズ対策もしやすく、信号線や端子間の混信や干渉(漏話)も少ないという特徴がある。
公衆回線を経由するような長距離の通信はほとんどシリアル伝送なため、シリアル方式であることが意識されることは稀であり、パラレル方式も混在するコンピュータ内部の伝送路や本体と周辺機器の接続などでよく用いられる用語である。
コンピュータ関連では「USB」や「IEEE 1394」(FireWire/i.LINK)、「Serial ATA」(SATA)、「InfiniBand」、「PCI Express」、「Serial Attached SCSI」(SAS)、「Fibre Channel」などがシリアル方式である。
コンピュータ内部のチップ間や、電子機器(組み込み機器)の内部では「SPI」(Serial Peripheral Interface)や「I2C」(Inter-Integrated Circuit)、「ModBus」、「JTAG」、「1-Wire」なども用いられる。
シリアル方式の通信インターフェースを「シリアルポート」(serial port)あるいは「シリアルインターフェース」(serial interface)と言う。単にシリアルポートといった場合には、かつてパソコンで標準的に用いられていたRS-232Cポートやその派生・後継仕様(RS-422やRS-485など)を指すことが多い。現在のシリアル方式の接続端子は「USBポート」のように具体的な規格名で呼ばれるのが普通である。
パラレル通信 【パラレル伝送】 ⭐
複数の信号線や回線を使って一度の動作で複数の信号やデータを送受信する通信・伝送方式。一度に多くのデータを伝送できるが、複数の信号線を同期させなければならないため伝送頻度を高めにくい。
数本から数十本の端子や信号線で並行して複数の信号を伝送する方式で、伝送路が多い分だけ通信速度を向上させやすい。ただし、端子間の伝送タイミングの同期を図る制御を行わなければならず、信号線間の電磁的な干渉(漏話)により伝送距離が伸びると通信品質が下がるといった難点もある。
もともとコンピュータ内部のICチップ間の伝送路(バス)やコンピュータ本体と周辺機器の通信など、近接した機器間の通信でよく用いられ、ISA、PCI、IDE、ATA、SCSI、IEEE 1284(セントロニクス仕様)などの通信規格がパラレル伝送である。
近年では伝送速度が向上するにつれてデメリットの方が大きくなってきたため、ATAがSATA(シリアルATA)になるなど、近距離間の通信でも一本の信号線で伝送を行うシリアル伝送方式に移行する例が増えている。
パラレル方式の通信インターフェースを「パラレルポート」(parallel port)あるいは「パラレルインターフェース」(parallel interface)と言う。単にパラレルポートといった場合には、かつてパソコンに標準的に用いられていたセントロニクス仕様およびその派生規格を指すことが多い。
USB 【Universal Serial Bus】 ⭐⭐⭐
主にコンピュータと周辺機器を繋ぐのに用いられるコネクタおよびデータ伝送方式の標準規格。キーボードやマウス、プリンタ、外部ストレージ装置などの接続方式として広く普及しており、スマートフォンなどモバイル機器の充電や外部との通信でも標準的な接続方式となっている。
金属線ケーブルで機器間を結び、データ通信や電力供給を行うことができる。シリアル伝送方式を採用したバス型(信号線共有型)の接続規格で、一つの伝送路を最大127台までの機器で共有することができる。
コンピュータ側には通常1~4つ程度のポート(差込口)が用意されており、これで足りない場合は「USBハブ」と呼ばれる集線装置を介してポートを増やすことができる。機器本体の電源を落とさずにコネクタを着脱する「ホットプラグ」に対応している。
初期に普及した規格(USB 1.1)では12Mbps(メガビット毎秒)、最新の規格(USB4)では80Gbps(ギガビット毎秒)までの通信速度に対応する。当初はキーボードやマウスなどの入出力装置から普及が始まったが、通信速度が向上するに連れて、ネットワークアダプタ(EthernetアダプタやWi-Fiアダプタ)や外部接続の光学ドライブ、ハードディスクなどに利用が広がっていった。
フラッシュメモリを内蔵した親指大のストレージ装置である「USBメモリ」もよく使われており、以前のフロッピーディスクや書き込み型光学ディスク(CD-R/DVD-Rなど)に代わって手軽なデータの受け渡し手段として普及している。日常的にはこれを指して「USB」と呼ぶことも多い。
コネクタ形状
<$Img:USB-Connector.jpg|right|USB-Type Aコネクタ[PD]|https://commons.wikimedia.org/wiki/File:USB-Connector-Standard.jpg>コンピュータ側を想定した大きなコネクタ形状と、周辺機器側を想定した小さなコネクタ形状が規定されている。当初はコンピュータ側は長方形の「USB Type-A」、プリンタなどケーブルが別になっている周辺機器では正方形に近い「USB Type-B」が用いられた。
USB 2.0ではデジタルカメラなど小型の機器向けに、小さな台形に近い形状の「ミニUSB」(Mini-A/Mini-B/Mini-AB)が規定された。Aはコンピュータ側、Bは携帯機器側、ABは携帯機器同士の接続(USB On-The-Go)用だったが、B以外は廃止になり、Type-AとMini-Bを両端に持つケーブルが一般的となった。Miniよりもさらに小型化された「マイクロUSB」(Mirco-A/Micro-B)も規定され、スマートフォンやタブレット端末などでよく利用されている。
USB 3.0ではType-BとMicro-Bの形状が変更になり、従来と互換性のない形になった。新たな小型のコネクタ仕様として「USB Type-C」が規定され、これまでのすべてのコネクタを置き換える新世代の標準として普及が進められている。USB4以降はType-Cのみが標準とされ、過去のコネクタ形状は廃止となった。
給電機能
<$Img:USB-Bus-Power.png|right|>USBにはデータ通信だけでなくケーブルの金属線を利用した送電(電力供給)についての仕様も定めており、装置を駆動するのに必要な電力の供給やバッテリー充電などに用いられている。小さな電力であれば電源ケーブルをコンセントから別に引いてくる必要がなく、利便性が大きく向上した。
初期の規格から存在する「USBバスパワー」では、電圧5V、電流500mA、電力2.5Wまでの給電が可能で、キーボードなどの大きな電力を必要としない装置の駆動に用いられる。プリンタやハードディスクなど消費電力の大きな機器には足りないため、電源ケーブルで別途給電する必要がある。スマートフォンなど小型の機器や携帯機器ではUSBバスパワーが標準の充電方式になっていることも多い。
USB 3.1では従来より大電力の「USBパワーデリバリー」(USB PD:Power Delivery)が導入され、USB Type-Cケーブルを用いて100Wまでの電力供給が可能となった。液晶ディスプレイやコンピュータ本体などの電源ケーブルを代用できるほか、給電方向の切り替え、数珠繋ぎに他の機器を経由しての給電にも対応している。
USBデバイスクラス (USB device class)
<$Img:USB-Icon.png|right|>USBでは機器の種類ごとに標準の動作仕様と対応するドライバ仕様を「USBデバイスクラス」として規定しており、この範囲内の動作についてはオペレーティングシステム(OS)に付属する汎用ドライバだけで利用することができる。USBメモリを別のコンピュータに挿してすぐにデータが移せるのもこの仕組みを利用している。
以前の接続規格では個別の製品ごとに必ず製造元が提供するドライバソフトを導入しなければ通信できなかったが、デバイスクラスで規定された一般的な機能は個別のドライバ不要で動作する。機器に固有の機能を利用したい場合などには、これまで通り付属のドライバを導入して利用する形となる。
USB Type-A 【USB-Aコネクタ】
USB端子の形状の一つで、大きい平たい角型の端子。最も初期に策定されたコネクタ仕様の一つで、主にコンピュータ側のUSBポートに用いられる。
端子形状は幅約12mm×高さ約4.5mmの長方形で、初期の規格では4つのピンが並んでいる。端子には上下の区別があり、上下を逆さまにすると差し込むことができないようになっている。ケーブル側のコネクタの下半分はピン(金属接点)が埋め込まれた樹脂部分となっており、USB 2.0まで対応の初期の製品はこの部分が白色になっていることが多い。
USB 3.0規格では5つのピンが追加され、USB 3.0対応機器であれば高速に通信できる。3.0対応のケーブルは樹脂部分が青く着色されることが多く、旧規格用のものと並んでいても容易に見分けることができる。
規格で定められているのは青色のコネクタだが、メーカーによっては水色や緑、紫など別の色に着色されている場合もある。いずれのコネクタも旧規格に対する後方互換性があるため、旧規格の機器を差し込めば旧規格の仕様で通信できる。
USB Type-Aは1996年に策定された最初の規格、USB 1.0で定められたもので、パソコン本体などコンピュータ側の端子として広く普及している。同時に策定された「USB Type-B」は、より正方形に近い形状で、プリンタなど周辺機器側の端子として利用される。USB機器側の端子はより小型の「ミニUSB」や「マイクロUSB」に移行したが、その後もコンピュータ側はType-Aが主流であり続けた。
USB 3.0からは楕円に近い形状の「USB Type-C」が標準とされ、コンピュータ本体、周辺機器、携帯機器などすべてのUSB対応機器でType-Cへの移行が進みつつある。USB 3.2以降では最新規格での通信を行うにはType-Cが必須となり、Type-Aはマイクロ端子などと共に非対応となった。
USB Type-B 【USB-Bコネクタ】
USB端子の形状の一つで、幅と高さが近い六角形の端子。最も初期に策定されたコネクタ仕様の一つで、主にプリンタなど周辺機器側のUSBポートに用いられた。
サイズは幅8mm×高さ7.26mmと正方形に近いが、上端の左右が欠けた六角形となっており、上下を逆さまに差し込むことができないようになっている。初期の規格では4つのピンが上下に2本ずつ並んでいる。
USB 3.0対応の端子では切り欠きのある側が上に延長され縦長となっており、そこに5つのピンが追加されている。3.0対応のポートは樹脂部分が青く着色されることが多く、旧規格用のものと並んでいても容易に見分けることができる。後方互換性があるため旧規格の機器を差し込めば旧規格の仕様で通信する。
USB Type-Bは1996年に策定された最初の規格、USB 1.0で定められたもので、プリンタやイメージスキャナなど周辺機器側の端子として策定された。コンピュータ本体側は平たい形状のUSB Type-A端子が用いられる。
後に、より小型のミニUSB(USB Mini-A/USB Mini-B)やマイクロUSB(USB Micro-A/USB Micro-B)が策定された。コンピュータ本体側はUSB Type-Aが定着する一方、周辺機器側は小型化や携帯機器の普及の影響でこれら小型の端子形状に速やかに移行したため、USB Type-Bは2000年代前半以降はあまり使われていない。
USB 3.0からは楕円に近い形状の「USB Type-C」が標準とされ、従来のコンピュータ側(A型コネクタ)、USB機器側(B型コネクタ)の端子形状による区別もなくなった。USB 3.2以降では最新規格での通信を行うにはType-Cが必須となり、コンピュータ側、USB機器側ともにType-Cへの移行が急速に進行している。
USB Type-C 【USB-Cコネクタ】
コンピュータと周辺機器や携帯機器の接続などに使われるUSBの端子(コネクタ)形状の一つ。2013年8月に発表されたUSB 3.1規格で追加された楕円形の端子で、今後は旧型を廃止してこのコネクタに一本化される。
従来のような端子の向きの上下(表裏)の区別がなくなり、どちらを上に挿しても正常に機能する。USB 3.1以降の機能や性能をフル活用でき、給電仕様「USB PD」(USB Power Delivery)にも対応する。10Gbps以上の高速なデータ伝送や100Wの大容量の電力供給、双方向の給電などが可能となっている。
端子の大きさは幅8.4mm×高さ2.6mmと、従来のいわゆるマイクロUSB端子に近い大きさで、コンピュータ本体側でも周辺機器・携帯機器側でも同一の端子を用いるようになっている。USB 3.0、USB 2.0などとの互換性もあり、アダプタ(変換コネクタ)を介して古い機器に接続することもできる。
Type-Cへの統一
2017年のUSB 3.2以降では端子形状がUSB Type-Cに一本化され、USB Type-AやUSB Type-B、マイクロUSBなど旧仕様のコネクタは非対応とした。EU(欧州連合)が2024年以降販売される携帯機器にUSB Type-Cコネクタの搭載を義務付けるなどの動きもあり、今後は唯一のUSB端子として一層の普及が見込まれる。
現在もスマートフォンやタブレット端末などの携帯機器ではType-Cへの移行が順調に進みつつあるが、パソコンに接続するマウスやキーボードなど、特に高い性能は必要ない用途では、従来製品との互換性のため当分はUSB Type-Aコネクタが利用され続ける可能性がある。
同じUSB Type-Cケーブルでも、対応するUSB規格のバージョンや最高伝送速度、給電能力、Thunderbolt規格への対応などの仕様が大きく異なるものが混在しており、ひと目で見分けられるようなブランドやマークなどの整備も進んでいない。当面の間は市場の混乱状況は続くと見られ、消費者は自分の用途に適合したUSBケーブルを注意深く探す必要がある。
HDMI 【High-Definition Multimedia Interface】 ⭐
映像や音声をデジタル信号として伝送するインターフェース規格の一つ。パソコンやスマートフォン、ゲーム機、デジタル家電などと、テレビ、ディスプレイなどの表示装置を接続する方式の標準として広く普及している。
ケーブルやコネクタ、信号形式などの物理的な仕様と、データの伝送制御についての仕様を定めている。1本のケーブルで映像信号、音声信号、制御信号をすべて合成して送受信するため、取り回しが容易である。データ圧縮やアナログ信号への変換などを行わず直接デジタルデータとして出力機器まで伝送するため、伝送途上で品質が劣化することがない。
映像や音声をそのまま伝送するのではなく、コピー防止技術の「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection)によりデータを暗号化して送受信する。認証を受けた正規の出力先以外の装置で伝送信号を読み取って、映像や音声のデジタルコピーを作成することはできないようになっている。
コネクタの種類は「タイプA」から「タイプE」までの5種類が規定されている。このうち、パソコンやディスプレイなど据え置き型の機器に用いられる標準的なタイプAと、デジタルビデオカメラなどに用いられるやや小型の「タイプC」(ミニHDMI)、デジタルカメラやスマートフォンなどに用いられる小型の「タイプD」(マイクロHDMI)がほとんどを占める。
異なる製造元の製品間で互換性を確保するための認証プログラムがあり、HDMI対応製品は検査機関による試験を受けて合格しなければならない。また、対応製品のメーカーはライセンス管理団体に加盟し会費および製品一つあたりに賦課されるロイヤリティを支払わなければならず、ケーブルの価格が他方式より高額であると指摘されることが多い。
歴史
コンピュータとディスプレイのデジタル伝送仕様「DVI」(Digital Visual Interface)を発展させた仕様で、物理層の信号伝送に「TMDS」(Transition-Minimized Differential Signaling)を用いるなど共通点が多い。暗号化に対応したことで著作権で保護されたコンテンツのデジタル出力が可能になった。
最初の規格であるHDMI 1.0は2002年に発表され、米シリコンイメージ(Silicon Image、現Lattice Semiconductor)社を中心とする企業連合が規格を策定した。動画は最高でフルHD(1920×1080)サイズ、毎秒60フレーム(1080/60p)に対応し、音声はサンプリング周波数192kHz、量子化24ビットの品質を最大8チャンネルまで同時に伝送できる。
2006年の「HDMI 1.3」では48bppまでの色深度に対応し、2009年の「HDMI 1.4」ではタイプC(ミニHDMI)、タイプD(マイクロHDMI)コネクタの追加、USB Type-Cコネクタへの対応、4K解像度(3840×2160、4096×2160)への対応などが行われた。2017年の「HDMI 2.1」では8K解像度(7680×4320)や可変リフレッシュレート(VRR)に対応した。
DisplayPort 【DP】
コンピュータとディスプレイ装置を接続し、映像や音声をデジタル方式で送受信するインターフェース規格の一つ。ケーブルや端子、信号などの仕様を定めたもので、業界団体のVESA(Video Electronics Standards Association)が策定している。
従来、パソコンからディスプレイに映像を出力するのに用いられてきた、いわゆる「アナログVGA」(VGA端子)や「DVI」(Digital Visual Interface)を置き換える目的で開発された仕様である。これらよりコンパクトで薄型のコネクタを使うため、携帯機器にも端子を設けやすくなっている。
DisplayPortは主にパソコンで用いられており、テレビやHDDレコーダー、家庭用ゲーム機などのデジタル機器では同じデジタル接続インターフェースの「HDMI」(High-Definition Multimedia Interface)が普及している。ディスプレイ製品などは両対応の機種も多い。
主な仕様
1本のケーブルで映像と音声を多重化して伝送したり、複数のディスプレイを接続する際に数珠つなぎ(デイジーチェーン)に接続することができる。コンテンツの著作権保護は当初独自方式の「DPCP」(DisplayPort Content Protection)を用いていたが、HDMIなどで用いられる「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection)を用いるよう改められた。
DisplayPortのケーブルでは最大で4対の信号線を用い、それぞれ独立にシリアル伝送を行う。この伝送路は「レーン」と呼ばれ、当初の仕様では2.7Gbps×4で最高10.8Gbps(実効8.64Gbps)、DisplayPort 2.0では20Gbps×4で最高80Gbps(実効77.4Gbps)のデータ伝送が可能となっている。
当初の仕様ではフルHD(1920×1080)の映像をリフレッシュレート144Hzで伝送できたが、DisplayPort 1.2では4K解像度(3840×2160)を75Hzで伝送できるようになり、最新のDisplayPort 2.0では8K解像度(7680×4320)を60Hzで伝送することができる。
コネクタ形状
標準サイズのコネクタは幅16.1mm×高さ4.76mmで、片方の端に誤挿入防止のための切り欠きがある。携帯機器向けに小型の「Mini DisplayPort」が用意されており、こちらは幅7.5mm×高さ4.6mmとなっている。ピン数(20本)や信号形式、伝送性能などに違いはない。
また、ノートパソコンなどの筐体内で液晶パネルに信号を伝送する方式として「eDP」(embedded DisplayPort)も策定されている。DisplayPort 1.3からは標準コネクタの代わりにUSB Type-CポートにDisplayPort信号を流すことができる「DisplayPort Alt Mode」(DisplayPort代替モード)が用意された。
VGA端子 【VGA connector】
コンピュータからの映像信号の出力などでよく用いられるコネクタの一つで、アナログRGB信号を入出力するD-Sub15ピンのコネクタのこと。
パソコンとディスプレイ(モニター)を接続するディスプレイケーブルの端子としてよく用いられるもので、D-Sub規格の一つである3列15ピンの角丸台形型の端子(DE-15/HD-15/DB-15/ミニD-Sub15)である。両脇に指で回せるつまみの付いたネジが埋め込まれており、プラグとレセプタクルをしっかり固定することができる。
RGB(赤・緑・青)の各色に対応するアナログ映像信号や、垂直・水平同期信号などを送受信することができる。VGA規格(640×480ピクセル)のグラフィックス機能を持ったPC/AT互換機などで標準的に用いられてきたためこのように呼ばれる。ノートパソコンなどでは小型化したmini-VGA端子も用いられる。
1987年に米IBM社のPS/2に初めて採用され、1990年代を通じてパソコンとアナログ駆動のCRTディスプレイの間で映像信号を伝送するケーブル端子として普及した。2000年代になるとデジタル駆動の液晶ディスプレイが主流となり、伝送規格もデジタル信号を用いるDVIやHDMI、DisplayPortなどが主流となった。
大画面化も進み、VGA端子の上限である2K解像度(幅2000ピクセル前後の画素数)を超える高精細な製品も増えたため、2010年代になると徐々にコンピュータ側からもディスプレイ側からも撤去されるようになった。現在新規に出荷される製品はアナログRGB非対応の製品がほとんどで、デジタル端子のみを備えている。
DVI 【Digital Visual Interface】
コンピュータ本体とディスプレイ、プロジェクタなどの表示装置を結ぶインターフェース規格の一つ。VGA端子・コネクタなどに代わりデジタル方式で画面情報を伝送する規格として最初に広く普及した。
パソコンとディスプレイを結ぶインターフェースとしてVGA方式が事実上の標準となっていたが、これはアナログ信号しか伝送することができず、広い画面サイズや高い周波数にも対応が難しくなってきたことから、1999年にデジタル伝送も可能な新しい規格としてDVIが策定された。
コネクタは片側に8本×3段のピンが格子状に並んだデジタル用の端子が、反対側に「※」型のアナログ用の端子が並んだ形状になっており、アナログとデジタルの対応状況に応じて複数の端子規格がある。携帯機器向けに小型にしたMini-DVIやMicro-DVIも存在する。
DDWG(Digital Display Working Group)という業界団体が標準を策定しており、デジタル信号の伝送には米シリコンイメージ(Silicon Image)社が開発した「TMDS」(Transition Minimized Differential Signaling)というシリアル伝送方式が用いられる。
派生規格に「HDMI」(High-Definition Multimedia Interface)があり、端子形状は異なるが映像信号の形式など一部の仕様が共通している。DVIとは異なり同じケーブルで映像と音声を同時に伝送したり、著作権保護に関する仕様が追加されている。
DVI-A/DVI-D/DVI-Iの違い
端子(コネクタ)およびケーブルの規格として、アナログ信号専用のDVI-A、デジタル信号専用のDVI-D、両対応のDVI-Iの3種類がある。
DVI-AはVGA互換のアナログ映像信号を伝送する端子で、「※」型のアナログ端子のみを使用する。主にVGAのみ対応の旧式の機器からDVI機器へ接続するための仕様で、片側がVGA端子、もう一方がDVI-A端子になった変換ケーブルとして利用される。
DVI-Dはデジタル映像信号のみを伝送する端子で、格子状のピンが並んだデジタル端子のみを使用する。低解像度や低周波数では18ピン端子の「DVI-Dシングルリンク」を、高解像度や高周波数(WUXGA@60Hz以上)では24ピン端子の「DVI-Dデュアルリンク」を使用する。
DVI-Iはアナログとデジタルの両対応の端子で、格子状のデジタル端子と※型のアナログ端子の両方が有効となっている。機器側の受け口(レセプタクル)となっている場合はDVI-AケーブルとDVI-Dケーブルのいずれかを差し込むことができるが、ケーブル端子がDVI-Iの場合は受け口もDVI-Iである必要がある。DVI-Dと同様、全体で23ピン(デジタル18ピン)の「DVI-Iシングルリンク」と全体で29ピン(デジタル24ピン)の「DVI-Iデュアルリンク」がある。
シングルリンクとデュアルリンクの違い
DVIの信号伝送方式であるTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)では、映像信号の赤、緑、青、タイミング信号(クロック)の4つの信号に対応する4対の信号線を束ねて「リンク」と呼ばれる伝送路を形成する。
TMDSリンクを1本使用する方式を「DVIシングルリンク」、2本使用する方式を「DVIデュアルリンク」という。シングルリンクは最高で毎秒1億6500万画素(165メガピクセル/秒)、デュアルリンク
では2倍の毎秒3億3000万画素(330メガピクセル/秒)を超える伝送が可能である。デュアルリンクの最高性能は機器とケーブルの特性次第で、規格上は上限が規定されていない。
シングルリンクではフルカラー(24bpp)のUXGA(1600×1200)やWUXGA(1920×1200)の画面サイズをリフレッシュレート60Hzで表示できるが、これを超える解像度や周波数での表示を行う場合にはデュアルリンクが必要となる。DVI-DあるいはDVI-Iのデジタル側の端子が18ピンのものはシングルリンクのみ対応、24ピンのものはデュアルリンク対応である。
Bluetooth 【BT】 ⭐⭐
携帯情報機器などで数メートル程度の距離を接続するのに用いられる近距離(短距離)無線通信の標準規格の一つ。コンピュータと周辺機器を接続したり、スマートフォンやデジタル家電でデータを送受信するのによく用いられる。スウェーデンのエリクソン(Ericsson)社が開発したもので、IEEE 802.15.1として標準化されている。
各国で免許不要で使用できるよう開放されている2.4GHz(ギガヘルツ)帯の電波を利用し、10m程度の範囲にある機器を相互に結んでデジタル通信を行うことができる。赤外線を用いる同種の技術と異なり小出力の電波を利用するため、互いに見通せない位置にある機器間でも電波が届く範囲ならば接続することができる。電波を送受信するトランシーバーは1cm角程度であり、小型軽量で消費電力も少なく安価に製造できるため、小さな電子機器にも容易に実装できる。
マウスやキーボードなど、パソコンと入出力機器との接続をワイヤレス化したり、スマートフォンなどの携帯機器とイヤホンやスピーカーなどを繋ぐ用途に普及している。初期の仕様では通信速度は最高1Mbps(メガビット毎秒)だったが、現在では最高24Mbpsまで可能となっている。IoT機器などでの利用を見越して従来の1/3の電力で動作するBLE(Bluetooth Low Energy)と呼ばれる派生仕様も追加された。
Bluetoothプロファイル
様々な機器や用途での利用を想定し、いくつかの機器の類型について実装すべき機能や通信規約(プロトコル)などの標準仕様を定め「Bluetoothプロファイル」として公表している。
製品によって接続仕様がバラバラだとコンピュータ側に個別にデバイスドライバを導入するなど使用できるようするための準備に手間がかかるが、各製品がプロファイルに準拠した実装を行うことで、標準的な機能についてはすぐに利用できるようになっている。USBの「USBデバイスクラス」と似た仕組みといええる。
主なプロファイルとして、マウスやキーボードなどの入出力機器を扱う「HID」(Human Interface Device)、イヤホンマイク(ヘッドセット)を扱う「HSP」(Headset Profile)、汎用的な無線ネットワークを構築する「PAN」(Personal Area Network)、プリンタを扱う「BPP」(Basic Printer Profile)などがある。
歴史
Bluetooth 1.0は主にEricsson社が開発し、1999年に同社を中心に設立された業界団体Bluetooth SIGから正式に発表された。通信速度は1Mbpsで、後にBR(Basic Rate)と呼ばれる通信モードである。
2004年には最高3MbpsのEDR(Enhanced Data Rate)モードを追加したBluetooth 2.0が発表され、続く2007年の2.1でNFC(Near Field Communication)対応やスリープ(一時停止)動作時に消費電力を低減する仕様が追加された。EDR対応はオプションであるため、対応している場合は「Bluetooth 2.0+EDR」のように表記される。
2009年のBluetooth 3.0では、無線LAN(Wi-Fi)用の装置(および物理層・MAC層の仕様)をBluetoothによる通信に流用することで最高24Mbpsでの通信を実現するHS(High Speed)モードが追加された。HSモードもオプションであるため、「Bluetooth 3.0+HS」のように表記される。
2010年のBluetooth 4.0では、従来型の約1/3の省電力で動作する新たな通信方式として「Bluetooth Low Energy」(BLE)が追加された。通信速度は1Mbpsと低速で、送受信されるデータ単位も小さいが、これはセンサーなど間欠的に通信する極小型のIoT機器などでの利用を想定している。BLE対応の場合には「Bluetooth 4.0+LE」などと表記する。
2016年のBluetooth 5.0では、BLEの最高速度が2Mbpsに拡張されたほか、通信速度をあえて低速に抑える代わりに伝達距離を伸ばす仕様が盛り込まれた。Bluetooth機器同士がネットワークを形成し、バケツリレー式にデータを離れた機器まで転送することもできるようになった。
IrDA 【Infrared Data Association】 ⭐
赤外線を利用して近距離の無線データ通信を行う技術規格の一つ。また、同規格を策定する業界団体。初期の携帯電話などでよく利用されていた。
電波の代わりに赤外線を用いる無線通信方式で、1m程度の近距離を接続することができる。赤外線は光に性質が近いため遮蔽物を回り込む性質は弱く、障害物で見通しが遮られると通信できない。
1994年に策定された最初の規格では最長1mまでの距離を115kbps(キロビット毎秒)で結ぶことができた。1995年には4Mbpsに、1998年には16Mbpsに高速化された。小型機器向けに最長30cmまでの低消費電力の仕様も用意され、機器をかざしたり隣り合わせて利用した。
規格が策定された当初はなかなか用途開拓が進まなかったが、1990年代後半に携帯電話が爆発的に普及し始めると最大手のNTTドコモが端末と周囲の機器の通信手段として標準採用し、他社も追随し広まった。2000年前後には携帯電話による連絡先交換や機種変更時のデータ移行などの標準的な手段として定着していた。
スマートフォンの時代になると電波を用いる近距離無線通信技術のBluetoothが新たな標準となり、旧来型の端末製品カテゴリー「ガラケー」と共に廃れていった。初期の一対一の伝送モードに加え、周辺機器など複数台を双方向接続する「IrDA Control」や通信速度を高速化した「IrSimple」などの拡張仕様も登場したが、限定的な採用に留まっている。
RFID 【Radio Frequency Identification】 ⭐⭐⭐
識別番号などを記録した微細なICチップをタグなどに埋め込んで物品に添付し、検知器などと無線通信することにより個体識別や所在管理、移動追跡などを行う仕組み。
無線機能を備えるICチップを内蔵したタグを(無線)ICタグと呼び、これを商品などに貼り付けたり取り付けることにより、個体を識別して管理情報の取得や更新を行うことができるようにする。タグ内部のメモリ素子には原則として識別番号のみを記録するが、方式によっては外部からの通信により記録内容を書き換えることもでき、自身の状態などを記録する用途なども提唱されている。
チップの内部には無線通信のためのアンテナ回路があり、方式にもよるが数十cmから最長で数m程度の距離から専用の通信装置を用いてデータを読み取ることができる。近い場所に複数のタグがあってもそれぞれ個別に識別できる技術が開発されている。
ICタグの種類
単にRFIDといった場合は通常、パッシブ型ICタグを用いる方式を指すことが多い。これは最小で数mm角程度のタグで、電池や電源は不要で、外部からの無線通信用の電波からエネルギーを得て動作する。記録容量や通信可能距離などは貧弱だが、最も小型軽量かつ安価であり、壊れなければ半永久的に使うことができる。
一方、用途によっては電池を内蔵した大きめのアクティブ型ICタグを用いる場合もある。定期的に電池を換える必要はあるが、自らの電源で動作し続けるため、定期的に電波を発信したり、数十m以上の比較的長い距離からデータを送信することができる。
バーコードなどとの比較
RFIDの有力な応用として、従来のバーコードや二次元コードに代わる商品や荷物など個体識別や単品管理、所在や移動履歴の把握(トレーサビリティ)などがある。
バーコード等と比較すると、タグが箱の中などに隠れたり汚れたりしても装置を近づければ読み取ることができる点、読み取り速度が高速な点、近くにある複数のタグをまとめて読み取れる点など、効率向上や自動化に適した特徴がいくつかある。
ただし、タグ自体が電子機器であるため、印刷可能なバーコードに比べると高コストになってしまう点や、タグ自体への曲げや圧力、高温や湿り気などで破損しやすい点、金属や水分で電波が遮蔽されやすい点などのデメリットもある。
NFC 【Near Field Communication】 ⭐⭐
最長十数cm程度までの至近距離で無線通信を行う技術。広義にはそのような近距離無線通信の総称、狭義にはその標準規格であるISO/IEC 18092(NFC IP-1)やNFCフォーラム仕様などを指す。
10cm程度の距離に近接させた電子機器やICカードなどの間で数百kbps(キロビット毎秒)までの速度でデータを伝送できる無線通信で、装置をかざしたり重ねるだけですぐに通信できる手軽さが大きな特徴である。
非接触ICカードの通信方式として用いる場合は電池や電源が不要で、アンテナが電波を受信する際の電磁誘導で発生した電力だけで通信やデータの書き換えができることも大きな利点である。
非接触ICカードとして交通機関のICカード乗車券やカード型電子マネー、各種の身分証、ICタグ(RFID)などに広く用いられているほか、スマートフォンなどの携帯情報機器に内蔵されて機器間の通信や電子マネー機能などに用いられている。
歴史と規格
1990年代にソニーの「FeliCa」(フェリカ)やオランダのフィリップス(現NXPセミコンダクターズ)社による「Mifare」(マイフェア)などが開発され、2000年頃からIC乗車券などで実用化が始まった。いずれも13.56MHzの電波を用い、標準では100~400kbps程度で通信ができる。
2000年に非接触ICカードの標準規格としてISO/IEC 14443が策定され、MifareはType A仕様としてその一部に採用された(他に当時の米モトローラ社などが推したType B仕様がある)。また、2004年には近距離無線の通信規格としてISO/IEC 18092(NFC IP-1)が策定され、Mifareに加えてFeliCaがType F仕様として収録された。
2004年にはソニーとフィリップス、フィンランドのノキア(Nokia)社が業界団体のNFCフォーラム(NFC Forum)を設立し、これら公的な規格に加えて機器間でやり取りするデータ形式などを定めた包括的な標準仕様を発行するようになった。同フォーラムの主催する互換性テストに合格した機器には「N」の文字をかたどったNFCロゴの掲示が許可される。
IoTデバイス 【IoT device】
インターネットに接続され、人の操作を介さずに自律的に外部と通信して様々な機能や制御を実現する機器の総称。
IoTとは、コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、相互に接続したりデータを送受信することで自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うインターネットの新しい活用方法である。
パソコンやスマートフォンなど従来からインターネットに接続して利用されてきた機器以外に新たにインターネット接続が提供されるようになる装置や機器が該当する。具体的には、監視カメラや各種のセンサー装置、空調などの電化製品、照明や電子錠などの電気器具、工作機械などの産業機器、自動車などの輸送機械、スマートウォッチなどのウェアラブル機器などが挙げられる。
これらの機器がそれぞれ単体でインターネットを通じてクラウドサービスなどと連携することもあるが、設置場所やその近郊にデータの集約や処理、異なる通信方式の相互変換、装置の監視や遠隔制御、外部からの攻撃の遮断などを行う中継システムを置き、これを介してインターネットとやり取りする方式が主流になると見られている。このような中継システムを「IoTゲートウェイ」(IoT gateway)という。
センサー 【センサ】 ⭐
自然現象や対象の物理状態の変化などを捉え、信号やデータに変換して出力する装置や機器。光や音、温度、湿度、気圧、接触、圧力、電気、磁気、距離、速度、加速度、角速度、物質の濃度など、様々な現象や対象に対応する装置が存在する。
コンピュータと関わりの深いセンサーとしては、音声を電気信号に変換するマイク(マイクロフォン)や、受光素子が受けた光を電気信号に変換するイメージセンサー、タッチパネルなどで画面への指先の接触を検知する接触センサー、家庭用ゲーム機のコントローラーなどで動きや回転を捉える加速度センサーやジャイロスコープなどがある。
小型のセンサー機器に外部との通信機能やICチップによる高度な情報処理機能を統合し、データの蓄積や変換など何らかの処理を行ったり、複数のセンサー素子の情報を統合したり、ITシステムや機器の制御システムと連携する機能を持ったものを「スマートセンサー」(smart sensor)という。
また、電源と無線通信機能を内蔵した小型のセンサー機器を分散して設置し、それら協調して動作させることで、施設や設備の監視・制御や、環境や空間の観測などを行なう通信ネットワークを「センサネットワーク」(WSN:Wireless Sensor Network)という。
加速度センサー 【加速度計】
物体の加速度(単位時間当たりの速度の変化量)を計測する装置。電子機器などに組み込まれ、機器の移動の変化を検知して制御に反映する。
最も一般的な動作原理はバネにつながれたおもりを用いる方法で、バネの伸び縮みする方向に加速度が生じるとその大きさに応じておもりに力が加わり位置が移動するため、これを計測してフックの法則から加速度を求める。
おもりの移動量を検知する方式の違いにより、光学式や機械式、半導体式(静電容量型やピエゾ抵抗型など)に分かれ、装置の小型化が可能な半導体式が主流となっている。バネを振動させ振動周波数の変化を計測する方式もある。
一つの加速度センサーが検知できる加速度の向きは一方向(一軸)であるため、空間上のあらゆる動きを検知するには三つの計測器を互いに垂直になるよう配置する必要がある。このような任意の動きに対応できる装置を三軸加速度センサーという。
加速度センサーはゲームコントローラーに内蔵してコントローラー自体を動かす操作の検知に利用されるほか、スマートフォンなどの携帯機器で重力加速度を計測して機器の傾きに応じて自動的に画面表示の向きを変更する制御、ロボットの姿勢制御、自動車のエアバッグの衝突検知など、様々な機器に応用される。
ジャイロスコープ 【角速度センサー】
計測機器の一種で、角度(傾き)や角速度(回転の速さ)を測ることができるもの。空間内での姿勢や回転を検知する必要がある場合に用いられ、航空機やゲーム機のコントローラーなどに応用されている。
航空機や船舶、ロケット、人工衛星、カーナビゲーションシステム、スマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機のコントローラーなどに幅広く応用されている。「ジャイロセンサー」は和製英語で、英語では “gyroscope” (ジャイロスコープ)あるいは略して “gyro” (ジャイロ)という。
動作原理に応じて機械式や流体式、光学式などの種類があるが、よく知られているのは最初に発明された機械式で、球状の枠の内部に固定された円盤が回転する回転型ジャイロスコープが有名である。自転する物体に働く慣性力(ジャイロ効果)を利用する。精度は高いが装置が大掛かりなため主に大型の機械で用いられる。
スマートフォンなど小型の電子機器に内蔵される装置の場合には、小さな音叉や輪の形をした部品を振動させる振動型がよく用いられる。振動する物体を回転させた時に働くコリオリの力を検知する。
単純な構造の装置は特定の一つの軸の周りの回転しか検知できない1軸ジャイロスコープだが、構造を工夫したり複数の検知器を組み合わせることで、互いに直交する2軸や3軸の回転を検知できる装置もある。我々の住む世界の空間は3次元であるため、3軸型はあらゆる方向の回転を検知できる。
デバイスドライバ 【ドライバソフト】 ⭐⭐⭐
コンピュータ内部に装着された装置や、外部に接続した機器などのハードウェアを制御・操作するためのソフトウェア。OSの一部として取り込まれて一体的に動作する。
オペレーティングシステム(OS)がハードウェアを制御するための橋渡しを行なうプログラムで、利用者が直接操作することは稀で、OSに組み込まれてその機能の一部として振舞うようにできている。単に「ドライバ」と呼ばれることも多い。
OSや各プログラムは定められた手順でデバイスドライバに処理を依頼する形を取ることで、それぞれが個別のハードウェアの制御仕様に直接対応する必要がなくなり、また、機種の違いに依らず同じ機能は同じ手順で利用することができるようになる。
個別ドライバと標準ドライバ
個々のハードウェアはそれぞれ固有の機能や制御仕様を持っているため、原則として機種ごとに対応するデバイスドライバを入手・導入しなければ使用・操作することはできない。
ただし、キーボードやマウスなど機種毎の機能や仕様の差異が小さい装置については業界団体や有力メーカーが主導して共通仕様が定められている場合があり、OSに付属する標準のドライバ(ジェネリックドライバなどと呼ばれる)で大半の機能を使用できることが多い。
ドライバの入手・導入
コンピュータ周辺機器はパッケージの一部として添付された記憶メディアに電子マニュアルやユーティリティソフトなどとともにデバイスドライバが同梱され、簡単な操作でOSに導入できるようになっていることが多い。
また、開発元のWebサイトでダウンロードできるようになっている場合もあるほか、Windows UpdateなどOSのソフトウェア更新プログラムを経由して入手できるようになっていることもある。
デバイスドライバはOSごとに開発する必要があるため、Windowsのような有力なOSではほとんどのメーカーがデバイスドライバを用意しているが、マイナーなOSだと物理的に装着できてもドライバが提供されず使用できない場合がある。
プラグアンドプレイ 【PnP】 ⭐⭐⭐
「繋げばすぐに使える」という意味の英語表現で、コンピュータに周辺機器や拡張カードなどの装置を追加・接続する際に、システムが自動的に導入・設定を行い利用可能な状態にするもの。狭義には、Windowsにおけるそのような機能のこと。
かつてのコンピュータでは、周辺機器を追加・接続した後に、オペレーティングシステム(OS)へのデバイスドライバなど関連ソフトウェアの導入や、システムへの装置の情報の登録、I/OポートアドレスやIRQといった一般の利用者にはまったく意味不明な技術的な項目の設定などの作業を手動で行わなければならなかった。
プラグアンドプレイの仕組みが整備されたコンピュータや接続規格では、装置の種類や機種の自動検出、基本的な機能を利用するための制御方式の標準化・共通化(共通ドライバでの制御)、ドライバソフトのインターネット経由での自動取り寄せなどの機能を用いて、導入時の利用者の設定作業をほとんどあるいはまったく不要にしている。
現在では、PCI Express、SATA、USB、IEEE 1394など主要な接続規格および対応製品の多くがプラグアンドプレイの仕組みに対応しており、人手で設定作業を行うことはほとんどなくなった。手動設定がほとんど過去の遺物となっていくに従い、プラグアンドプレイという用語もほとんど使われなくなっている。
WindowsのPlug and Play
なお、狭義には、Windowsの機能および仕様の一つである「Plug and Play」を指すことがある。米マイクロソフト(Microsoft)社と米インテル(Intel)社が協力して策定した仕様で、Windows 95で導入された。
装置の追加時に他の装置と重複しないよう自動的に通信設定を行い、装置側に種類や型番を照会、システムへの登録や設定、ドライバソフトの導入などを自動的に行なってくれる。導入初期には手動での調整が必要になることもあったが、ハードウェア側の対応が広まるとほぼ自動で設定が可能となった。
後に、Microsoft社は同一ネットワーク内にあるコンピュータと情報機器などの間で接続・設定作業を自動化する「UPnP」(Universal Plug and Play)仕様を策定し、概念や実現する機能こそPlug and Play仕様と似ているが、技術的な詳細には共通する部分がまったくない別物である。