ITパスポート単語帳 - ビジネスインダストリ

POSシステム 【Point Of Sales system】 ⭐⭐

小売店などで客に商品を販売する際に何がいくつ売れたかを単品ごとに端末に入力し、売上や在庫などの情報をリアルタイムに管理するシステム。

専用のキャッシュレジスター(POSレジ)を用いて商品パッケージのバーコードを読み取り、販売した日時や数量などと共にシステムに入力する。むき出しの生鮮品などバーコードを貼付できない商品は端末に設けられたボタンやタッチパネルで販売員が商品を指定する。

得られたデータはネットワークを通じてストアコンピュータ(ストアコントローラ)と呼ばれる管理用コンピュータに登録され、同じ企業が複数店舗を展開している場合やフランチャイズチェーンの場合は本部のITシステムに情報が集積される。

POSシステムを通じて得られた情報は、売上や利益、税金など各種の会計上の計算、在庫や発注の管理、売上動向の把握や解析、販売促進施策の計画や効果測定など、様々な用途や目的のために活用される。

商品に付けられるバーコードを、メーカーなどがあらかじめ包装などに印刷やシールで掲載した状態で納品する方式を「ソースマーキング」、店内で専用の端末からシールを印刷して貼付する方式を「インストアマーキング」という。

GPS 【Global Positioning System】

出題:令2秋

人工衛星を利用して自分が地球上のどこにいるのかを正確に割り出すシステム。米軍の軍事技術の一つで、地球周回軌道に30基程度配置された人工衛星が発信する電波を利用し、受信機の緯度・経度・高度を10m前後の誤差で割り出すことができる。

基本的な原理

GPS衛星には極めて高精度な原子時計が搭載されており、自らの軌道上での現在位置と現在時刻を定期的に電波で発信している。受信機がこの電波を受信すると、発信時刻と受信時刻の差から電波が届くのにかかった時間がわかり、光速(約30万km/s)を掛ければ衛星までの距離を知ることができる。

軌道上には多数のGPS衛星がおり、受信機は複数の衛星までの距離を知ることができる。3つの衛星までの距離が分かれば、それぞれの衛星から距離を半径とする球面が交わる点が現在位置ということになる。実際には受信機の時計が正確でないことが多いため、これを補正するために4つ目の衛星からの情報が必要となる。

主な用途

元来は米軍による軍事用の技術だが、民間や外国でも基本的には自由に利用できることから、航空機や船舶の航行システム、自動車のカーナビゲーションシステム、測量システム、登山用ナビゲーション機器、デジタルカメラの撮影位置記録などに応用されてきた。

近年では受信機の小型化、低価格化が進み、ほぼすべてのスマートフォンやタブレット端末などに標準でGPS機能が内蔵されている。アプリやネットサービスと組み合わせ、地図やナビゲーション、見守り、紛失物発見、オンラインゲーム、SNSなどのサービスに利用されている。

GPS衛星 (NAVSTAR衛星)

GPSに用いられる人工衛星は米国防総省が管理しており、正式には「NAVSTAR」(NAVigation Satellite Timing And Ranging)と呼ばれる。高度約2万kmの6つの軌道面にそれぞれ4つ以上、計24個以上が配置され、約12時間周期で地球を周回している。

約7年半で寿命を迎えるため、毎年のように新しい衛星を打ち上げて軌道に投入しており、概ね30個前後の衛星が常時運用されている。GPS衛星は高性能の原子時計を内蔵しており、1.2/1.5GHz帯の電波で時刻を含むデータを地上に送信している。

暗号化と精度

GPS衛星の発信する電波に含まれる信号には、軍事用に暗号化されたものと民間用に暗号化されていないものの2種類がある。暗号化されたデータは極めて高精度で、米軍しか利用することができない。誤差は数cmから数十cmと言われており、精密誘導兵器などに利用されている。

民生用に利用できるものは暗号化されていないデータで、誤差は10m程度となる。1990年代までは民生用のデータは故意に精度を落として誤差100m程度で運用されていたが、2000年以降は精度低下措置は有事の際に地域を限定して行う方針となった。2007年以降は恒久的に低下措置は行わない方針となっており、誤差10m程度の状態が定着している。

補助手段による精度向上

補助的な手段を加えることで精度向上や位置特定までの時間を短縮する技術がある。このうち、位置の分かっている固定の地上局からFM電波を発信し、GPS衛星の代用とする技術を「DGPS」(Differential GPS)という。日本では全国の沿岸に27局が整備されたが2019年に廃止された。

スマートフォンなどでは、移動体通信ネットワークの基地局が常時GPS衛星の情報を受け取り、端末の要求に応じて提供する仕組みがあり、「A-GPS」(Assisted GPS/補助GPS)という。端末が自前で受信するよりも素早く初回の測位を行うことができる。基地局からの電波を用いてGPSと同じ原理で端末の位置を割り出す仕組みもあり、GPSと併用されている。

国によっては、GPS衛星と互換性のある高精度の信号を発信する衛星を独自に打ち上げ、自国領や周辺地域に限って精度向上を図っている場合もある。インドでは静止衛星を利用した「NavIC」を、日本では準天頂衛星を利用した「QZSS」を運用している。QZSSは対応機器であればセンチメートル級の極めて高精度な信号を利用できる。

他の衛星測位システム

GPSおよびGPS衛星は米国政府が保有・運用しているため、各国政府は社会インフラや軍事インフラとしての位置情報の取得技術を米政府に依存する状態に危機感を覚え、同種の衛星測位システムの開発および運用に乗り出している。

ロシアでは1996年から「GLONASSグロナス」を、中国では2012年から「北斗ほくと/ベイドゥ」を、欧州連合(EU)では2016年から「Galileoガリレオ」を運用している。インドの「NavIC」や日本の「QZSS」のように運用地域を限定した衛星測位網を構築している国もある。これらすべてを総称して「GNSS」(Global Navigation Satellite System)と呼ぶこともある。

準天頂衛星システム 【QZSS】

出題:令6

特定地域の天頂付近に長時間留まる特殊な軌道を周回する人工衛星を利用した、GPSを補完する高精度の衛星測位システム。日本上空では2010年から運用されている。

準天頂衛星とは

地上の同じ地点の上空に常に留まる衛星軌道には「静止衛星」があるが、これは赤道上空にしか投入できない制約があり、地上から見ると緯度が高くなればなるほど仰角が下がる(水平線に近くなる)ため、地形や建物に隠れやすく利用しにくい。

「準天頂衛星」は地球の自転と同じ公転周期で周回するが、赤道面に対して傾斜した楕円軌道を通り、ある経度の上空で南北に「8」の字を描くように周回する。8の字の一方の輪がなるべく小さくなるような軌道を取ることで、この輪の間にいる間はその地域の天頂付近に留まっているように見える。

とはいえ、もう一方の輪を周回する期間はその地点から大きく離れるため、同じ機能を持つ複数の衛星を同じ軌道の離れた位置に置くことで、入れ替わりに上空付近に飛来するよう運用する。数機の衛星を一体的に運用することで、常に天頂付近に最低一基は留まるようにすることができる。

みちびき

日本の準天頂衛星「みちびき」は1号機が2010年に打ち上げられ、2018年からは4基体制で運用されている。日本の天頂付近に長時間滞在し、東南アジア、オセアニアを周回する8の字軌道に投入されている。

これらはGPSと互換性のある信号を発しており、代用として用いることでGPS衛星が見通しにくい場所で精度を向上させることができ、測位までの時間も短縮することができる。また、国土地理院の電子基準点のデータを利用した独自の高精度の信号も発信しており、専用の受信機を用いることでセンチメートル単位の極めて正確な測位を行うことができる。

ITS 【Intelligent Transport Systems】

道路交通に情報技術や通信技術を応用し、交通問題の軽減、交通の効率化や高度化などをはかる技術や製品、サービスなどの総称。自動車や道路、標識や信号機などの道路設備、駐車場、公共交通、歩行者などに関連する、情報システムを応用した機器やサービス、制度などが含まれる。

日本では1995年に当時の警察庁、運輸省、建設省、郵政省、通産省が共同で全体構想を策定した。この中ではITS全体を、ナビゲーションシステムの高度化、自動料金収受システム、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化、公共交通の支援、商用車の効率化、歩行者等の支援、緊急車両の運行支援の9分野に整理している。

現在までに、VICS(道路交通情報通信システム)やETC(電子料金収受システム)、バスロケーションシステム、自動ブレーキシステム、車線維持支援システム、事故自動通報システムのように実用化や普及が進んでいるものが数多くある一方、トラックの自動隊列走行のように実験段階のものや、構想段階で足踏み状態の技術や施策もある。

ETC 【Electronic Toll Collection】

有料道路の料金所などに設置された通信機と自動車に搭載した端末(車載器)で無線通信を行い、走行しながら自動的に料金の支払いなどを処理するシステム。

利用者は出入り口や本線料金所でETCに対応したゲート(ETCレーン)を速度を落として通り抜けるだけでよく、発券機や窓口を利用する必要がない。全国の高速道路、自動車専用道路で整備・導入が順次進められており、主要な有料道路のほとんどの出入り口には一つ以上のETC専用レーンあるいはETCゲート・有人窓口併設レーンが設けられている。

道路運営者側はETC普及により段階的に料金所の窓口・係員を削減して道路運用コスト低減が可能となり、料金所周辺の渋滞緩和の効果も期待できる。経路や混雑状況、時間帯などに応じて料金の割引などを行い、交通量の誘導・分散を行う試みも実施されている。

世界数十ヶ国で導入されているが、各国が独自の方式を規定しており、同じ国の中でも道路の運営主体によってシステムが異なる国もある。車載器ごとに支払者を固定する方式と、車載器にIDカードなどを差し込み、カードの持ち主を支払者にする方式がありる。

日本ではクレジットカード会社が発行する接触式ICカード(ETCカード)を専用の車載器に差し込む仕組みになっており、料金は紐付けられたクレジットカードの口座に請求される。機器の技術規格が統一されているため、利用者は一枚のカードがあれば(車載器のある)どの車でも、全国のどの道路でも同じように支払いを行うことができる。

ICカード 【IC card】

出題:平21秋

プラスチック製カードに極めて薄い半導体集積回路を埋め込み、データの記録や処理、外部との入出力などをできるようにしたもの。外部との入出力方式の違いにより接触式と非接触式がある。

カード内に半導体メモリを内蔵し、数KB(キロバイト)から1MB(メガバイト)程度のデータを記録することができる。内蔵メモリ素子が読み出し専用のROMチップの場合は書き換えできないが、フラッシュメモリを採用したものは専用の装置で記憶内容の追加や上書き、消去ができる。簡易なCPU(処理装置)を内蔵して暗号化などの処理が可能なものもある。

記録や通信の暗号化、認証やアクセス制御によりデータの不正な読み取りや改ざんを防ぐことができるため、磁気ストライプ式などに比べ偽造や変造が困難で安全性が高いとされる。記憶容量が大きいため単純な識別番号などの他に様々な情報を記録・送受信することができ、一枚のカードに複数の機能を持たせる汎用カードを作ることもできる。

日本では「ICカード」の呼称が広く浸透しているが、英語圏では “IC card” という表記はほとんど用いられず、 “integrated circuit card” とICを略さずに記すか、“smart card” (スマートカード)あるいは “chip card” (チップカード)の呼称の方が一般的である。

接触式ICカード

接触式ICカードはカード表面に平たい金属端子を備え、読み取り装置側の端子に接触させることにより通電し、回路駆動用の電力供給と信号の送受信を行う。

端子の物理仕様などの基礎的な技術仕様はISO/IEC 7816として標準化されており、これに基づいて各業界がデータの記録や送受信などに関する個別の標準規格を定めている。主に従来の磁気ストライプカードに代わってクレジットカードやキャッシュカードなどに用いられるほか、携帯電話のSIMカード(UIMカード)や、日本ではETCカードやデジタル放送の受信者識別カード(B-CASカード)にも採用されている。

非接触ICカード

非接触ICカードはコイル状のアンテナを内蔵し、読み取り装置からの無線電波による電磁誘導で電力を発生させ、電波で無線通信を行う。

ソニーなどが推進する日本のFeliCa(フェリカ)、蘭フィリップス(Philips)社(現NXPセミコンダクターズ)などが推進する欧州のMifare(マイフェア)が早くから浸透しており、両者を併記したNFC(Near Field Communications)がISO/IEC 18092として標準化され、広く採用されている。

カードと機器を接触・固定する必要がないため、交通機関のICカード乗車券やカード型電子マネーなど、極めて短時間での処理や手続きが求められる用途でよく用いられる。日本では運転免許証(ICカード免許証)、個人番号カード(マイナンバーカード/接触式端子と併用)、パスポート(IC日本国旅券)などにも採用されている。

RFID 【Radio Frequency Identification】 ⭐⭐⭐

識別番号などを記録した微細なICチップをタグなどに埋め込んで物品に添付し、検知器などと無線通信することにより個体識別や所在管理、移動追跡などを行う仕組み。

無線機能を備えるICチップを内蔵したタグを(無線)ICタグと呼び、これを商品などに貼り付けたり取り付けることにより、個体を識別して管理情報の取得や更新を行うことができるようにする。タグ内部のメモリ素子には原則として識別番号のみを記録するが、方式によっては外部からの通信により記録内容を書き換えることもでき、自身の状態などを記録する用途なども提唱されている。

チップの内部には無線通信のためのアンテナ回路があり、方式にもよるが数十cmから最長で数m程度の距離から専用の通信装置を用いてデータを読み取ることができる。近い場所に複数のタグがあってもそれぞれ個別に識別できる技術が開発されている。

ICタグの種類

単にRFIDといった場合は通常、パッシブ型ICタグを用いる方式を指すことが多い。これは最小で数mm角程度のタグで、電池や電源は不要で、外部からの無線通信用の電波からエネルギーを得て動作する。記録容量や通信可能距離などは貧弱だが、最も小型軽量かつ安価であり、壊れなければ半永久的に使うことができる。

一方、用途によっては電池を内蔵した大きめのアクティブ型ICタグを用いる場合もある。定期的に電池を換える必要はあるが、自らの電源で動作し続けるため、定期的に電波を発信したり、数十m以上の比較的長い距離からデータを送信することができる。

バーコードなどとの比較

RFIDの有力な応用として、従来のバーコードや二次元コードに代わる商品や荷物など個体識別や単品管理、所在や移動履歴の把握(トレーサビリティ)などがある。

バーコード等と比較すると、タグが箱の中などに隠れたり汚れたりしても装置を近づければ読み取ることができる点、読み取り速度が高速な点、近くにある複数のタグをまとめて読み取れる点など、効率向上や自動化に適した特徴がいくつかある。

ただし、タグ自体が電子機器であるため、印刷可能なバーコードに比べると高コストになってしまう点や、タグ自体への曲げや圧力、高温や湿り気などで破損しやすい点、金属や水分で電波が遮蔽されやすい点などのデメリットもある。

SFA 【Sales Force Automation】 ⭐⭐⭐

企業で利用される情報システムやソフトウェアの一種で、営業活動を支援して効率化するもの。顧客や見込み客を登録し、それぞれについての情報や接触履歴を記録して営業活動に役立てる。

既存顧客や見込顧客のそれぞれについて、営業活動に関連する情報を記録・管理することができ、過去の商談の履歴や、現在進行中の案件の進捗状況、営業活動を通じて入手した重要な情報、アポイントメントや期限といったスケジュールなどを一覧したり編集することができる。

SFAをチームで利用することによりチーム内で常に最新の状況を共有することができ、属人性を排して組織として効率的に営業業務を進めることができる。

既存顧客との関係を管理する情報システムやソフトウェアをCRM(Customer Relationship Management)というが、多くの企業では既存顧客への営業も重要な営業活動であるため、CRMがSFAの機能を取り込んだり、SFAにCRMとしての機能が追加される事例が増えており、両者の融合が進みつつある。

コンタクト管理 (contact management)

顧客の要望や取引相手との交渉内容などを整理し、データベース化して管理することをコンタクト管理(contact management)という。顧客ごとに詳細な情報を持つことで、それぞれに応じた最適のサービスを提供することを目的とする。

営業担当者の間では以前から個人レベルで行われていたことだが、これを一元的に管理して社内で共有することで、後のサポートや新製品のセールス、マーケティング分析などに応用することが可能になる。SFAの重要な一環として様々な企業で整備が進められており、専用のソフトウェアも販売されている。

チームセリング (team selling)

営業担当者が個々に営業活動を行うのではなく、営業部門全体として戦略的に活動を行うことをチームセリングという。グループ単位で一つの企業に売り込みをかける、などの行動を指す。

個々人の受注成績ではなく、営業部門全体の生産性を上げようという考え方に基づいた行動であり、顧客を企業全体の資産とする観点が背景にある。実現のために必要な要素として、スキルや情報を共有することによる営業プロセスの標準化や、営業活動の経過や結果の共有が挙げられる。SFAの一環と言うことができ、それを援助するソフトウェアも開発されている。

トレーサビリティ 【追跡可能性】

出題:平26春

過程や来歴などが追跡可能である状態のこと。一般の外来語としては、消費財や食品などの生産・流通の過程を履歴として統一的に記録し、消費者などが後から確認できること、および、そのような制度やシステムを意味することが多い。

ITの分野では、システム開発などの各工程で制作される様々な文書やプログラムなどについて、対応関係や変更履歴などを記録し、追跡や検証ができる状態をトレーサビリティという。

例えば、要件定義と仕様書、仕様書とソースコード、仕様書とテスト仕様書などの間で、前工程で規定された項目が後工程の成果物に漏れなく反映されているかをチェックできるようにすることなどを指す。

スマートグリッド

出題:令5

電力の送配電網に情報システムを統合し、高度で自律分散的な需給調整機能を持たせたもの。発電所や配電網と需要家の状況をリアルタイムに集約し、高精度な送配電制御を行う。

発電所や変電所、企業や家庭の配電盤、電力計などにセンサーやコンピュータを導入して通信網で相互に接続・通信することにより、それらの情報を活用して従来より高度できめ細かな制御を行なうというコンセプトである。

電力会社では、検針や手続き、保守の手間やコストが削減できるほか、需要家の動向をリアルタイムに把握することで発送電計画の精度を高め、省エネや信頼性の向上を実現できるとされている。

電力の品質や供給体制は国によって大きく異なり、発送電の事業者が制度上分離している国や、電力網の安定性が低い国で特にスマートグリッドへの期待・関心が高い。

スマートメーター (smart meter)

電力計にデジタル計測機能や簡易なコンピュータ、通信機能を内蔵し、送配電網や建物内のシステムと通信・連携させることができるようにしたものをスマートメーターという。

電力会社では遠隔から自動で検針したり、電力の供給開始や中断、アンペア設定の変更などを行うことができるようになり、電力網の運用コストを低減できる。

また、契約者側では宅内のコンピュータなどと繋ぐことで、現在の電力消費量や電気料金、過去の履歴や将来の予測などの把握が容易になる。

電気料金の安い深夜に蓄電池や電気自動車などに充電して高額な時間帯の受電量を抑制したり、自家発電設備や太陽光発電パネルの余剰電力を電力会社や近隣の需要家に売却するといったことも可能になるとされる。

CDN 【Content Delivery Network】

Web上で送受信されるコンテンツを効率的に配送するため、インターネット内に単一の事業者が構築した広域的なネットワーク。また、これを利用して顧客企業のコンテンツを高速に配信するサービス。

CDN事業者はインターネットの様々な場所にコンテンツ配信用の「キャッシュサーバ」を設置しており、これらは大容量の回線で相互に接続されている。キャッシュサーバには配信元である顧客のWebサーバ(オリジンサーバ)から配信されるコンテンツの複製(キャッシュ)が保存され、全サーバがオリジン側の最新コンテンツと同じ内容になるよう常に同期している。

オリジンサーバへアクセス要求があると、アクセス元に地理的あるいはネットワーク的に近い位置にあるキャッシュサーバが代理応答し、キャッシュとして保存されている内容を送信する。多数のサーバで接続要求を負荷分散することができ、アクセス元とオリジンサーバが遠距離(別の大陸など)の場合に遅延時間を短縮することができる。

国際的に活動する企業や世界的なネットサービスでは世界中からアクセスがあるが、アクセス元の国にCDN事業者のキャッシュサーバがあれば、各端末が個別に遠距離の通信によってコンテンツを取り寄せる必要がなくなる。CDNの普及によりインターネット全体での重複トラフィックの削減や回線資源の利用効率の向上にも寄与している。

CDNの例

CDNサービスの先駆者として1998年創業の米アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)社が有名だが、他にも専業の大手として米クラウドフレア(CloudFlare)社や米ファストリー(Fastly)社、韓シーディーネットワークス(CDNetworks)社などがよく知られる。

米アマゾンドットコム(Amazon.com)社の「Amazon CloudFront」、米グーグル(Google)社の「Cloud CDN」、米マイクロソフト(Microsoft)社の「Azure CDN」など、大手クラウド事業者などが手がけるサービスもある。グローバル展開する大手事業者は世界100か国以上に渡って数十万台に及ぶキャッシュサーバ群を擁し、インターネット全体の数%から10%以上に及ぶトラフィックを捌いている例もあると言われる。

デジタルツイン

現実世界の対象から詳細にデータを収集し、コンピュータ上でモデルとして再現する手法。分析やシミュレーション、予測などを行い、得られた有用な成果を現実にフィードバックする。

ツイン(twin)は双子という意味で、物理空間上の対象物の状態をセンサーなどで詳細に調べ、デジタル空間上にそっくりそのまま再現する。デジタルの「双子」には現実の状況が常に反映され、シミュレーションなどを行い将来予測や工程の最適化などを行うことができる。

主な応用分野として期待されているのは製造業で、製品のデジタルツインに稼働開始後の現実の状況を反映させて効率的に保守や故障予測を行うシステムや、生産ラインの機械の配置や稼働状況をデジタルツイン化して効率化や管理・運用の自動化などを進めるシステムなどの事例が見られる。

また、建設業では建設現場の機材や人員の配置や稼働状況などをデジタルツインで監視して遠隔から施工状況を詳細に把握、管理できるシステムが、公共分野では社会インフラのデジタルツインによりメンテナンスや更新を効率化するシステム、都市のデジタルツインに現実に試すことができない様々なシミュレーションを行い政策立案に活用するシステムなどが提案されている。

サイバーフィジカルシステム 【CPS】

現実世界からセンサーなどで収集した様々なデータをコンピュータシステム上で処理・解析し、結果を現実世界へ反映(フィードバック)する仕組み。高度な機械制御、自動化などの仕組みに応用されている。

コンピュータ上に現実世界の一部をモデル化したサイバー空間(cyberspace)を構築し、現実の物理世界(physical space)からセンサーなどで取り込んだデータを反映させる。モデルを利用して未来予測やシミュレーションなどの処理を行い、目的の結果が得られるよう機器を制御したり人間に働きかけて現実世界に結果をフィードバックする。

例えば、自動運転システムは目的地までの地図データや現在地のデータ、センサーが捉えた視界前方の観測データをリアルタイムに取得している。これを車体と前方空間をモデル化したシステムに反映させ、次の瞬間にどのような制御を行えば良いか判断し、アクセルやブレーキ、ハンドルなどを操作している。

自動運転車のように単体の機械単位のシステムだけでなく、仮想空間内でモデル化した工場でシミュレーションを繰り返して機械の配置や制御を最適化する施設単位のシステムや、電力消費量をリアルタイムに収集して送配電システムの制御に反映させる社会規模のシステムなどもある。

工場のシミュレーションのように、仮想空間内に現実世界の対象をモデル化して再現したものを「デジタルツイン」(digital twin)という。機器やシステムを連携させて構築する仕組みにはセンサーや制御システムがネットワークで結ばれていることが重要であり、「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)がその重要な構成要素となる。

ブロックチェーン ⭐⭐

出題:令3,令1秋

一定の形式や内容のデータの塊を改竄困難な形で時系列に連結していく技術。内容が随時追加されていくデータ群を複数の独立した対等な主体の間で安全に共有することができる。仮想通貨(暗号通貨/暗号資産)の開発を通じて誕生し、他の用途へも応用されている。

ブロックチェーンを用いて記録されたデータはインターネットなどを通じて参加者間で複製、共有されるが、途中の一部を改竄しても全体を整合性のある状態にすることは困難な性質があり、特定の管理者や管理システムが存在しなくても真正なデータを共有することができる。

この性質を応用し、ネットワークに参加する二者間の取引を記録した台帳データを参加者間で共有しつつ、取引の発生に応じて追記していく分散型台帳を実現することができる。この台帳によって値の移動を追跡、検証可能な方法で記録したものを一種の通貨として利用する試みを暗号通貨という。

ハッシュ値とPoW(Proof of Work)

各ブロックには記録されるデータと共に、一つ前のブロックのデータから算出したハッシュ値が添付される。ハッシュ値はデータの長さによらず固定長の短いデータで、元になるデータが少しでも変化すると規則性なくまったく異なる値になるという性質がある。

これにより、チェーンの途中にあるブロックの内容を改変すると、次のブロックに記録されたハッシュ値と一致しなくなる。これを整合するように改変しても、今度はその次のブロックのハッシュ値と一致しなくなるため、後続のすべてのブロックを連結し直さなければならない。

単にハッシュ計算をやり直して連結し直すだけならばデータ量によってはすぐにできる場合もあるが、多くのブロックチェーン技術ではハッシュ値が特定の条件を満たすようブロックに短いデータ(nonce:ナンスという)を追加する。適切なナンス値を発見するには多数の候補値を用意して条件を満たすまで何度も繰り返しハッシュ値を算出し直す膨大な総当り計算が必要となる。

あるブロックのハッシュ値が条件を満たすことができるナンス値が発見されると、ようやくブロックを閉じて連結することができる。この工程を「PoW」(Proof of Work)と呼び、ビットコインなどのシステムではナンス値を算出した利用者に報酬として新たに暗号通貨を発行する仕組みになっている(コインのマイニングと呼ばれる)。

算出に時間がかかるナンス値が各ブロック毎に用意されていることにより、攻撃者が途中のブロックを改竄しても、後続のすべてのブロックのナンス値の割り出しをやり直さなければ正しいチェーンを得ることができず、改竄を極めて困難にすることができる。システムによってはPoWの代わりにPoS(Proof of State)など別の仕組みを用いる場合もある。

歴史

2008年に「Satoshi Nakamoto」(サトシ・ナカモト)という日本人風の名を名乗る匿名の人物(身元が分からず個人なのか集団や機関なのかも不明)が暗号通貨ネットワークの「ビットコイン」(Bitcoin)を立ち上げ、同時に公開された論文の中でその原理をブロックチェーンの語で紹介したのが最初である。

その後、ビットコインを模した暗号通貨が数多く作られ、インターネット上の交換所を通じて現金との間で、あるいは暗号通貨間で活発に取引が行われている。現在は主に投資用の資産として売買されており、通貨としての機能、すなわちモノやサービスの売買の決済、支払い手段としてはほとんど普及していない。

台帳に取引記録以外の情報を載せることで様々な仕組みを構築することもでき、ある種のプログラムを搭載して条件に応じて自動的に実行する「スマートコントラクト」などが提唱されている。2015年頃からブロックチェーンを金融取引などへ適用する試験的な取り組みなどが活発になっているが、今のところ暗号通貨のように既存の技術や制度では実現できない、あるいは決定的に優位性のある用途は見つかっていない。

住基ネット 【住民基本台帳ネットワーク】

出題:平24春

全国の市区町村体が管理する住民基本台帳を電子化し、コンピュータネットワークを介して情報を送受信できるようにしたシステム。住民の本人確認や自治体間の転居などの手続きで利用されている。

住民基本台帳のいわゆる「基本4情報」(氏名・性別・生年月日・住所)と住民票コード、マイナンバー(個人番号)、これらの変更履歴が登録され、手続き時の本人確認や転居などの際の自治体間の情報交換などに利用される。

市区町村と都道府県、全国センターが専用の閉域網(IP-VPN)で接続されており、全国センターは地方公共団体情報システム機構が運営している。各行政機関内のシステム上も住民基本台帳ネットワークシステムの系統は他の業務系システムとは分離されており、ファイアウォールを介して限定的に通信できるようになっている。

付随する制度として「住民基本台帳カード」(住基カード)と呼ばれるICカードがが発行され、個人の身分証明や手続きの簡素化などのために利用された。現在はマイナンバー制度の開始に伴い「個人番号カード」(マイナンバーカード)へ移行している。

2002年に発足し、全国の自治体が接続されたが、いくつかの自治体はセキュリティ上の懸念などから参加を拒み、また住民ごとの選択制や参加後の離脱を選ぶ自治体も現れた。2015年の個人番号(マイナンバー)制度の開始に伴い、住民基本台帳ネットワークシステムへの接続が法律上正式に業務の前提となったことから、すべての自治体の接続・参加が完了した。

CTI 【Computer Telephony Integration】

電話やFAXをコンピュータシステムの一部として統合すること。また、そのような情報システム(CTIシステム)。通話相手の情報を端末で表示・入力するといった仕組みを構築でき、コールセンターなどで用いられる。

CTIシステムは電話回線網とコンピュータネットワークを中継し、コンピュータに電話機の機能を統合する。オペレータは端末を操作して発着信を制御し、ヘッドセット(ヘッドホン一体型マイク)を用いて通話する。企業などが顧客や見込み客などと電話でやり取りするコールセンターでよく利用される仕組みである。

顧客管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)などと連動し、画面上に現在の通話相手に関連する情報(プロフィールや個人情報、製品の購入履歴、過去の対応履歴、進行中の案件の進捗など)を表示したり、通話しながらシステムに新しい情報を入力したりできる。通話内容を記録・蓄積し、トラブルの際の証拠としたり、オペレータの評価やトレーニングに活用することができる。

多数の端末と回線を取りまとめて一括管理することができ、オペレータの稼働状況の把握、空いているオペレータへの着信の自動割り振り、オペレータで対応できない場合の上役への自動引き継ぎ(エスカレーション)、音声案内による受付や取次(IVR:自動音声応答)などの機能もある。

従来は施設内に設置して運用するオンプレミス型の製品しかなかったが、近年ではCTIシステムを事業者の管理するデータセンターで運用し、インターネットを介してサービスとして提供するクラウド型CTIが増えている。少ない導入コストで迅速に使用開始でき、在宅スタッフへの遠隔割り当てなどにも対応できる。

マイナンバー 【個人番号】 ⭐⭐

日本政府が発行・管理する、個人を識別するための12桁の番号。自治体に住民票を持つすべての国民と特別永住者など国内に居住する一部の外国人に発行される。主に社会保障や納税、本人確認などの手続きに利用される。

通称マイナンバー法として知られる「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」によって定められた制度で、2015年10月に番号の通知が開始され、2016年1月以降の行政手続きに番号の通知が必要となる。

主に年金、医療、福祉、納税、災害対策などについて個人の識別のために用いられる番号で、給付の申請など手続きの際には自分のマイナンバーを申告しなければならない。法律に定められた業務のために行政機関や関連する民間の事業者が取り扱い、目的外の使用や、他者のマイナンバーを含む情報を誰かに提供することなどは禁じられている。

マイナンバーは誕生時(出生届時)や外国からの帰国時など、初めて国内で住民票を作成するタイミングで発行され、原則として生涯その番号を使用する。個人の希望で自由に変更することはできないが、マイナンバーを含む個人情報が不正に流通するなどした場合には変更される。

マイナンバーカード

番号の発行時にはすべての対象者に個人情報とマイナンバーが記された個人番号通知書が配られるほか、希望者には公的身分証明書として使える写真入りの通称「マイナンバーカード」(正式名称は個人番号カード)が提供される。

カードにはICチップが内蔵され、券面に記載されたマイナンバーと、氏名、住所、生年月日、性別のいわゆる基本4情報がデジタルデータとして記録されているほか、各種の手続き時にデジタル署名を行うための電子証明書が保管される。

取得や携帯の義務はないが、国ではカードの普及率向上を目指しており、自治体ごとの取得率を公表して競わせたり、取得時に民間の電子決済サービスで利用できる「マイナポイント」を付与したり、健康保険証を原則廃止してマイナンバーカードの「マイナ保険証」機能で置き換えるといった施策を推進している。

パッケージソフト 【プログラムプロダクト】

出題:平21春

既成品として販売されているソフトウェア製品。または、物理的な記憶媒体に記録され、箱などに梱包されて販売されるソフトウェア製品。

既成品という意味のパッケージ

既成品という意味のソフトウェアパッケージは、開発元が自ら設計・開発して完成品として流通事業者や顧客に販売しているソフトウェア製品を指し、利用者の要望に応じて個別に設計・開発されるオーダーメイドのソフトウェアと対比される。

個人が購入・利用するソフトウェアのほとんどはパッケージだが、企業などの情報システムでは構想時にパッケージと個別開発を比較検討してどちらにするか選択することがある。ソフトウェアパッケージの中には機能を改変したり追加できる仕組みを提供しているものもあり、これを利用して一部を自らの必要に応じて作り変える(カスタマイズ)場合もある。

ソフトウェアパッケージはすでに完成して販売されている製品であるため、利用者側にとっては設計や開発にかかる時間を省いてすぐに購入して利用することができる。他にも利用者がいるため、使用ノウハウなどの有益な情報を開発元から得るだけでなく利用者間で共有できる場合がある。多数の利用者が日々使用することで問題点なども早期に発見され、速やかに修正されることが期待される。コストも同規模、同機能、同性能で比較すればほとんどの場合既成品の方が安い。

ただし、仕様は開発元が策定し、潜在的利用者が共通して求めると想定される最大公約数的な内容であることが多いため、個々の利用者にとっては自らにとって必要な機能が不足していたり、不要な機能ばかり多く費用対効果が低かったりする場合もある。当然ながら自分(自社)しか使用しない特殊な機能などが標準で実装されることは期待できない。

物理的な梱包という意味のパッケージ

提供方式としてのソフトウェアパッケージは、プログラムやデータがCD-ROMやDVD-ROM、Blu-ray Discなどの物理的なメディアに記録され、マニュアルや保証書、利用許諾契約書(ライセンス)などと共に紙箱やプラスチックケースなどに梱包されて利用者に届けられるものを指す。店頭で販売され利用者が購入して持ち帰る場合と、オンラインで注文して宅配便などで配達される場合がある。

インターネットを通じてプログラムなどを配布するダウンロード販売(オンラインソフト)や、Webブラウザなどを介してインターネット上のサービスとしてソフトウェアの機能を提供するSaaS/クラウドサービスなどと対比される。

インターネット回線が低速だったりWebシステムの機能が貧弱な時代にはソフトウェア製品の標準的な提供手段だったが、現代ではスマホアプリのようにネットワークを通じた提供が一般的になり、パッケージ販売はパソコン向けの一部の製品で行われるのみとなっている。

DTP 【Desktop Publishing】

出版物や印刷物の原稿作成や編集、デザイン、レイアウト、組版などの作業をコンピュータで行い、最終的に印刷可能な原稿(版下)の作成まで行うこと。電子化された紙面編集。

見出しや文章、画像、図表などの素材を作成・編集し、それらを紙面に割り付けて構成する作業をコンピュータの画面上で行う。出来上がりの紙面状態を確認しながら編集するWYSIWYG環境を備えたソフトウェアを用いるのが一般的だが、TeXのように専用の人工言語を用いてプログラミングの要領で紙面構成を記述していくシステムもある。

簡易な用途には一般的なワープロソフトなどを用いることもあるが、印刷物の紙面構成を行う機能に特化した「DTPソフト」と呼ばれる業務用のソフトウェアを用いることが多い。

DTPは1990年代前半頃から普及が始まり、パソコンやプリンタ、イメージスキャナなどの高性能化・低価格化や、フォントなどの環境の整備が進んだことにより、現在では商業出版物の編集作業のほとんどがDTPで行われるようになっている。

初期のDTPには専用の高性能ワークステーションや米アップル・コンピュータ(Apple Computer/現Apple)社のMacintoshシリーズがよく用いられ、米アルダス(Aldus)社(当時)の「Aldus PageMaker」(ページメーカー)や米クォーク(Quark)社の「QuarkXPress」(クォークエクスプレス)が人気を博した。

現在ではWindowsパソコンもよく使われるようになり、Aldus社を買収してこの分野に進出した米アドビ(Adobe)社の「Adobe InDesign」(アドビ・インデザイン)がQuarkXPressと競い合っている。出版社や新聞社では内製や特注の専用システムを利用している場合もある。

汎用人工知能 【AGI】

人間の持つ知識や情報処理能力、認知能力などに加え、意識や意志、心に相当するような自律的に行動する仕組みを備えた人工知能(AI)。現在は存在しうるかどうかすら明らかになっていない。

現在AIとして研究・開発されているコンピュータシステムは「弱いAI」(weak AI)に分類され、特定の分野や対象、問題に特化した限定的な知的能力を有する。人間に代わって自動車を運転するAI、将棋や碁で人間と対戦するAIなどである。

これに対し、「強いAI」(strong AI)は人間のように広範で統合された世界認識、自意識や自律性などを持ち、人間の指示がない状況でも自発的に行動を起こしたり、未知の概念について学習して新たな知識や能力を獲得したり、長期的な目標や目的を見出したり、意思に基づく創造や創作、発明などを行うことができるとされる。

様々な分野を対象とする弱いAIをいくらたくさん繋ぎ合わせてもこのような振る舞いをするAIを作り出すことができないことは明らかで、何らかの新しいメカニズムが必要になると考えられている。それが可能か否か、現在のコンピュータやソフトウェアの延長線上にある人工物で実現可能かも含め、詳しいことは未だ分かっていない。

シンギュラリティ

もし汎用AIのような存在が生み出されると、人間の力に頼らず自らを改良するための研究や発明を行うことができるようになり、いずれ人間の理解できない方法で人間を大きく超える知性を獲得し、独自の文明や文化を築き始めるようになるとする予想もある。

そのような事態を「シンギュラリティ」(singularity)と呼び、映画「ターミネーター」シリーズの人工知能ネットワーク「スカイネット」のように、人間に敵対し、人類を大きく凌駕する科学力と工業力を身に付けて人類を滅ぼそうとするAIが生み出されるかもしれないと警鐘を鳴らす人もいる。

生成AI 【Generative Artificial Intelligence】

機械学習技術を応用したAIシステムの一種で、文章や画像、音声、動画、プログラムコードなど、まとまった量の新しい情報を生み出すことができるもの。

機械学習(ML:Machine Learning)システムに大量の学習データを与え、データ中によく出現するパターンや規則性を学習させる。完成したモデルに対して人間が指示を与えると、学習したデータに似た特徴を持つ新たな情報を生成して出力する。

文字、画像、プログラムなど、学習および出力できるデータの種類はシステムごとに決まっている。一種類の情報の入力にのみ対応することを「ユニモーダル」(unimodal)、文字と画像など複数種類の情報の入力に対応することを「マルチモーダル」(multimodal)という。

種類

現在実用的な水準で広く受け入れられているのはテキスト(文字)生成AIと画像生成AIである。テキスト生成AIは米オープンAI(OpenAI)社が開発した大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)の「GPT」(Generative Pre-trained Transformer)シリーズ、および、これを対話形式(チャット)で利用できるようにしたクラウドサービス「ChatGPTチャットジーピーティー」により一気に注目を集めるようになった。

画像生成AIは写真風やイラスト風、絵画風などの静止画像を人間の指示する文字列や元になる画像に基づいて生成するもので「AIアート」「生成的アート」などとも呼ばれる。OpenAIによる「DALL-Eダリ」、米ミッドジャーニー(Midjourney)研究所の「Midjourneyミッドジャーニー」、英スタビリティAI(Stability AI)社らの「Stable Diffusionステーブルディフュージョン」などがよく知られる。

他にも、動画、音楽、音声、コンピュータプログラム(のソースコード)、化学物質(分子構造)などを生成するAIシステムの研究・開発が進められており、一部は実用的なソフトウェアやサービスとして実装されている。ロボットの動作を生成AIに基づいて制御するなどの応用も研究されている。

法的な問題

学習データや出力データについて、著作権や肖像権など既存の法的権利との関係の整理が進む前に一気に実用レベルの技術が登場したため、どのような枠組みに基づいて法規制を行うかをまさに現在各国で議論している最中である。

現在の著作権関連法規には機械学習システムに学習データとして入力することについての規定は無いが、出力される文章や画像には学習した著作物の特徴などが反映されており、著作者の許諾や補償無しに利用することは「タダ乗り」であるとして何らかの規制を求める声が上がっている。

また、生成AIの出力結果の文章や画像などを著作物として著作権を認めるか、認める場合は誰が著作者となるのかについても議論となっている。画像や映像の出力結果に著名人にそっくりな人物が含まれる場合の肖像権との関係、生成結果を公開する際にAI生成物であることを明示させるべきか否か、などの論点もある。

マルチモーダルAI 【multimodal AI】

テキスト(文字情報)と画像、動画と音声など、複数の異なる種類のデータを組み合わせて学習することができる機械学習システム。言葉による指示で画像を生成するといった動作が可能となる。

AI(人工知能)の主要な実現方式である機械学習(ML:Machine Learning)では、大量の学習データを処理して規則性などを学び、ニューラルネットワークとしてモデルを構築する。テキスト(文字情報)を学習させテキストの入力からテキストを出力するといったように、取り扱うデータの種類が一つの場合を「ユニモーダルAI」(unimodal AI)という。

一方、マルチモーダルAIは複数種類のデータを相互に関連付けて学習させることができる。例えば、テキストと画像に対応している場合、画像データに付与されたキャプションや分類タグなどの文字データを、その画像の特徴と関連付けてモデル化することができる。

これにより、単語やフレーズの組み合わせを入力して対応する画像を生成したり、画像を入力して写っているものを説明させるといった機能を実現することができるようになる。防犯システムに動画と音声を組み合わせて学習させ、カメラに写った映像とマイクで収録した音声を総合して異状を検知するシステムなども研究されている。

教師あり学習 ⭐⭐

出題:令6,令4

機械学習の手法の一つで、あらかじめ「正解」が明示されている学習データに適合するようにモデルを構築していく方式。学習のためには問題と正解の形に整理された大量のデータが必要となる。

学習データが「例題と答え」という形式に整理されており、例題を入力すると対応する答えを出力するようにモデルを訓練していく。答え(出力)がラベルや離散値であるようなデータを用いれば分類問題に、実数などの連続値を取るようなデータを用いれば予測や推論を行うための回帰問題に適用できる。

例えば、数字を手書きした画像(例題)と、写っている数字(答え)をペアにした教師データをたくさん用意し、画像を入力すると数字を答えるモデルを作成すると、手書きの数字を認識するシステムを作ることができる。

人間が既に答えを知っているような判断や作業を自動化したい場合に有効な手法で、様々な分野で応用が広がっている。学習効率も高く精度も向上させやすいが、生のデータを「例題と答えのペア」という形式に整理しなければならず、学習データの質や潜在的な問題点がそのまま精度や結果に反映されてしまう難点もある。

一方、人間があらかじめ正解を示さずにデータを与え、似た特徴のデータに分類する(クラスタリング)といった処理を行えるようにする手法を「教師なし学習」(unsupervised learning)、決まった正解は存在しないが出力結果に対する評価は存在し、好ましい評価を得るために出力を調整していく手法を「強化学習」(reinforcement learning)という。

教師なし学習

出題:令6

機械学習の手法の一つで、人間が基準や正解を与えずに学習データを分析させ、システムが自律的に何らかの規則性や傾向を見出す手法。

与えられたデータ群を何らかの目的をもって解析し、特徴の似たデータのグループ分けなどを行えるようにする。人間が示した基準に従っているわけではないため、得られた結果が何を意味するかは人間の解釈を必要とする。

具体的な手法としては、データ群を似た特徴の集団に分類する「クラスター分析」(データクラスタリング)、多数の説明変数を要約して少ない変数で同じ傾向を説明できるようにする「主成分分析」、複数の項目間に潜在する関連性を見つけ出す「アソシエーション分析」などがある。

人間にも正解が分からない課題についての知見を得たい場合や、大量のデータから規則性を探索したい場合などに有効な手法で、データの前処理が少なく現実世界にある多様な大量のデータを素材にできる反面、人間にとって有用な結果が得られるよう制御するのが難しく精度も安定させにくいなどの課題がある。

一方、人間があらかじめ「例題と正解のペア」という形式に整理した学習データ(教師データ)を利用してモデルを訓練する手法を「教師あり学習」(supervised learning)、決まった正解は存在しないが出力結果に対する評価は存在し、好ましい評価を得るために出力を調整していく手法を「強化学習」(reinforcement learning)という。

セグメンテーション 【セグメント化】

出題:平27秋

区分け、区分、分割などの意味を持つ英単語。全体を何らかの基準や規則に基づいて、いくつかの部分・断片に分割すること。何をどう分割するかは分野や対象によって異なる。

ネットワークのセグメンテーション

ネットワークの分野では、大規模なネットワークを小規模なネットワークに分割して管理することをセグメンテーション(ネットワークセグメンテーション)という。

特に、構内ネットワーク(LAN)で物理的に同じ信号が届く機器のグループを小さな規模に収め、信号の衝突(コリジョン)や同報送信(ブロードキャスト)による通信効率の低下を抑制することをこのように呼ぶ。

ネットワークスイッチにVLAN(仮想LAN)を設定して端末を小さなグループに分けたり、ルータなど信号の直接的な中継を行わない機器を挟んで分割する手法が用いられる。

メモリのセグメンテーション

ソフトウェアやプログラミングの分野では、オペレーティングシステム(OS)コンピュータのメインメモリを用途などに応じて可変長の領域に分割して管理することをメモリセグメンテーションという。

メモリ保護機能の一種で、あるプログラムを実行するために用意したメモリ領域を、プログラムを置く「コードセグメント」や処理対象のデータを置く「データセグメント」などに分割し、読み込み専用などの属性を付与することができる。

許可されたセグメント外へのアクセスなど、プログラムが規定されたセグメンテーションから外れた操作を行おうとすると「セグメンテーション違反」(segmentation fault)と呼ばれる実行時エラーで強制終了する。

マーケティングのセグメンテーション

一般のビジネス分野では、マーケティングなどで、顧客や消費者を共通する属性や特徴を持つ集団に分類することをセグメンテーション(顧客セグメンテーション/市場セグメンテーション)ということがある。

製品の想定顧客を絞り込んではっきりさせることで細かなニーズに対応した訴求力の高い製品を開発したり、同じ製品でも市場セグメントごとに最適なプロモーション手法を使い分けたりするために行われる。

クラスタリング 【クラスタ化】

出題:令5

同じ構成の複数のコンピュータを相互接続し、外部に対して全体で一台のコンピュータであるかのように振る舞わせること。並列処理による性能の向上、多重化による信頼性の向上を図ることができる。

オペレーティングシステム(OS)などの機能として提供され、一般的なコンピュータ製品とネットワーク(LAN)で利用できる簡易なものから、専用のハードウェアや接続インターフェース(インターコネクト)により構成される高度な製品まで様々な方式がある。

コンピュータ間の接続や連携などは専用のクラスタソフトが行い、利用者やソフトウェアからは一台のコンピュータとして通常と同じ方法で操作・使用することができる。クラスタリング技術により連結されたコンピュータ群を「クラスタシステム」あるいは「コンピュータクラスタ」という。

クラスタリングを行う目的によって機器の構成や運用手法は異なる。「HPCクラスタ」(High Performance Computing cluster)はスーパーコンピュータなどの構成法の一つで、多数のノードを連結して並列処理を行わせることで一台の高性能コンピュータとして運用する方式である。

「HAクラスタ」(High Availability cluster)は機器を複数用意することで可用性(availability)を高める方式で、稼働中に一台が故障してもシステムを運用したまま交換することができる。

このうち、全ノードを同時に稼働させ処理を分散する構成を「アクティブ/アクティブ構成」あるいは「負荷分散クラスタ」、いずれか一系統を通常時の稼働系として停止時には待機系に即座に移行して稼働を続行する構成を「アクティブ/スタンバイ構成」あるいは「フェイルオーバークラスタ」という。

データクラスタリング

統計学などにおけるデータ解析手法の一つで、多数のデータ群を何らかの尺度に基づいて似た特徴を持つ集団に分類する手法を「データクラスタリング」(data clustering)あるいは「クラスター分析」(cluster analysis)というが、文脈によってはこれを略して単にクラスタリングということがある。

強化学習 【RL】

機械学習の手法の一つで、システムの行動に対して評価(報酬)が与えられ、行動の試行錯誤を繰り返して評価を最大化するような行動パターンを学習させるもの。機械の制御や競技、ゲームなどを行うAIの訓練に適している。

他の学習手法と異なり、人間がまとまった形で学習データを与えることはせず、システムには自身が現在置かれている環境や状態および可能な行動の選択肢と、行動(出力)に対する評価が与えられる。システムは現在の状況を入力として行動を選択し、得られた評価を元に好ましい行動を学んでいく。

実際には、行動一回ごとにその良し悪しを評価する仕組みを用意するのは非現実的なことが多いため、連続して行動を起こした結果何らかの目標を達成(対戦に勝利する等)した場合に、遡って一連の行動に良い評価を与えるという設計にすることが多い。

近年ではニューラルネットワークの階層を深くしたディープラーニングに強化学習を組み合わせることで非常に複雑なタスクの自動化が可能なことが示され、注目が集まっている。システムが環境に働きかけて試行錯誤を行える状況に適しており、囲碁や将棋、ビデオゲームなどのプレイ、自動運転、ロボット制御などへの適用事例がよく知られる。

ハルシネーション

幻覚、幻影などを意味する英単語で、生成AIが学習データからはおよそ想像も及ばないような出鱈目な内容を出力してしまう現象。大規模言語モデル(LLM)が荒唐無稽な作り話を回答する現象を指すことが多い。

大規模言語モデルで動作するチャットボットが、学習データの中に該当する知識が存在しないような質問を受けたときに、モデル内の関係がありそうな情報を繋ぎ合わせてもっともらしい回答を返すことがある。学習データに誤りがあるわけではなく、学習内容からは導き出せそうもないような応答を返すことをハルシネーションという。

例えば、数量などの事実関係を聞かれたときに「分からない」と答えずに出所不明な誤った内容を回答したり、前提が間違っている質問に対して「間違っている」と指摘せずに誤った前提に基づく作り話を始めたり、存在しない(質問者がでっち上げた)概念について尋ねると「存在しない」と答えずに、あたかも実在するかのようもっともらしい回答を創作したりする。

人間ならば自らが知っている知識体系に照らし合わせて、「知らない」「分からない」「質問が間違っている」「そんなものはない」と答えられるが、現在の生成AIは人間のように知識モデルを参照しているわけではないため、どういった場合に「回答らしい文章」ではなく「知らない」と答えるべきなのか判断できないものと考えられている。

しかし、巨大な機械学習モデルの内部でどのような推論が行われているのか、単語や知識をどのように組み合わせて回答を作成しているのかは複雑すぎて簡単には解析できないため、ハルシネーションが発生する詳しいメカニズムや、どのようにしたら防げるのかなどについて詳しいことは分かっていない。

ディープフェイク

人工知能により画像や音声、動画などを生成あるいは編集し、本物そっくりの偽の情報を作り出すこと。生成AIの高性能化により人間にはにわかに真贋が判別できない動画なども作られ、詐欺への利用や政治的な偽情報の拡散が社会問題となっている。

人工知能の主要な方式の一つに、大量のデータからパターンを学習する機械学習がある。近年では深層学習(ディープラーニング)という高精度な手法が開発され、文字情報だけでなく画像や音声、動画などのメディアデータも極めて自然に生成、編集、合成できるようになってきた。

ディープフェイクはこの技術を用いて作られた悪意のある偽情報で、「ディープラーニング」の「ディープ」に「偽物」を意味する「フェイク」を組み合わせてこのように呼ばれる。人間には簡単に真贋が見極められないほど精巧な偽の写真や映像、誰かの声色を真似た偽の合成音声などが含まれる。

特定の政治勢力や敵対国の政府が報道や公式発表を装ったプロパガンダやフェイクニュースを作成して政治的な混乱や分断を煽ったり、犯罪組織などが企業や個人などを標的に詐欺やなりすまし、脅迫を行うために利用したり、精緻なフェイクポルノなど新しいタイプの人権侵害行為を引き起こしている。

実際に、政治家の架空の発言をでっちあげて報道を装ったフェイクニュースを流したり、投資詐欺グループが実在の著名人を模した合成音声で偽のメッセージを流したり、著名人の容姿から生成した精巧な偽のポルノ画像を作成したり、企業経営者の声色で電話をかけて送金の指示を行うなどの手口が確認されている。

CAD 【Computer-Aided Design】 ⭐⭐⭐

工業製品や建築物などの設計や製図をコンピュータを用いて行うこと。また、そのためのソフトウェアや情報システム。図面作成を効率化でき、データからシミュレーションや完成予想図の作成などを行うことができるシステムもある。

専用の図形編集ソフトウェアによって、対象の外観や内部構造、部品・部材の配置、配線などを作成・編集し、設計図面を自動的に生成したりすることができる。

紙面上で製図する場合に比べ、各部の形状や大きさ、長さなどを後から変更・調整したり、形状や物体を簡単な操作で複製して別の箇所に流用したり、各部の寸法や面積などを自動的に算出したりできるといった利点がある。

また、製品によっては、画面上で形状を立体的に表示して確認したり、さらに、表面の色彩や質感、装飾などを入力して、完成予想図を3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)として再現する機能を持っているものもあり、デザインの確認のために模型や試作品を作成する工程を省くことができる。

CADソフトウェアは機械、建築、土木、電気など、分野ごとに必要な機能などを実装した専用の製品が開発されているが、用途があらかじめ決まっていない汎用のCAD製品もある。平面上の作図のみ扱うものを「2D CAD」(2次元CAD)、立体モデルを表示・操作できるものを「3D CAD」(3次元CAD)という。

2D CAD (2次元CAD/2DCAD)

CADのうち、平面的な図の作成に特化したものを「2D CAD」(2-dimensional CAD)「2次元CAD」という。主に設計図面などの作図・製図をコンピュータ化するために用いられる。

初期のCADはすべて2D CADだったため、当初はこのように呼ばれることはなかったが、新たに3D CADが開発されたことにより、従来の平面上の作図のみを扱う製品を区別して2Dと呼ぶようになった。

従来、紙とペンで行なっていた物体の正面図や平面図、側面図などの作図をコンピュータ上で行うことができるようにしたもので、3D CADより機能は制約されるものの、ソフトウェアが安価(無償公開されているものも多い)で軽快に動作するという利点がある。

3D CAD (3次元CAD/3DCAD)

CADのうち、造形物を立体的なモデルを用いて作成・編集し、これを元に自動的に各種の図面を自動生成するものを「3D CAD」(3-dimensional CAD)「3次元CAD」という。

設計対象を3次元空間上の点や線、面などの組み合わせによって構成するもので、プリミティブと呼ばれる様々な基本的な立体図形(直方体、球、円柱、円錐、ドーナツ型など)を繋ぎ合わせたり、その形に削ったりして立体を形作っていく。

完成した3Dモデルを特定の視点・角度から投影した図を設計図面として利用する。従来の製図法のように図面から立体形状を想像するのではなく、最終的な立体形状を確認しながら編集できる。部品同士の干渉などを調べたり、体積や表面積などを算出することも容易である。

各部に属性情報を付与することができる製品もあり、質量を与えて重心を求めるといった、試作やシミュレーションに近い用途の一部までカバーすることができる。今日では工業製品の設計などに用いられるCADシステムの大半は3D CADとなっている。

CAM 【Computer-Aided Manufacturing】 ⭐⭐

工業製品などの製造現場に情報システムを導入し、CADなどで作成した設計図面などを元に、工作機械を操作するためのプログラムの作成などを行う手法。また、そのためのシステムやソフトウェア。

CAMソフトウェアは数値データで表された設計図などを読み込み、NC(数値制御)/CNC(コンピュータ数値制御)工作機械を制御して図面に示された形状に加工する命令の並び(NCデータ/NCプログラム)を出力する。作成されたプログラムは工作機械に入力され、これに従って材料を自動的に加工していく。

対応する加工形状の違いにより、平面上の加工を行う「2D CAM」(2次元CAM)、自由曲面など3次元的な加工を行う「3D CAM」(3次元CAM)、両者の中間(立体形状を等高線を引くように層状に加工していく)の「2.5D CAM」(2.5次元CAM)などの種類がある。

ポストプロセッシング

同じ加工を行うのにも工作機械の機種や構成の違いによりそれぞれに適した異なるプログラムが必要となるため、実際にはCAMシステム本体は「カッターパス」あるいは「カッターロケーション」(CL:Cutter Location)と呼ばれる工具の移動経路データなどを生成することが多い。

これを使用する機種に対応した専用のソフトウェアによって実際のNCデータへ変換する。この変換工程を「ポストプロセッシング」(postprocessing)、変換ソフトウェアを「ポストプロセッサ」(postprocessor)という。広義のCAMにはポストプロセッサも含まれることがある。

FA 【Factory Automation】

工場の様々な作業や工程を機械や情報システムを用いて自動化すること。加工や運搬、検査などの工程を自動化し、少ない人員で工場を運営できるようにする。

数値制御(NC)の工作機械や産業用ロボットなどを導入し、またそれらを通信ネットワークで相互に結んだり情報システムに接続して集中的に制御することにより、原料や資材、部品の運搬や加工、組み立て、検査などの工程を自動化あるいは省人化する。

機械を人が使用する機械化をさらに一歩進め、人による操作や判断が無くてもセンサーやコンピュータによる自動認識や自動処理によって人に代わって作業を完遂することを目指している。

FAにより工場全体あるいは一部の工程の無人化、省力化を進めることで、設備の稼働率向上、品質の向上や均一化、生産調整の容易化、作業員の安全性の向上、人間に由来するミス(ヒューマンエラー)の低減などが期待できる。

現状では自動化機械が高額で汎用性に乏しく、人間のような器用さや認知能力は期待できないことも多いため、人手による操業よりもコストを削減する目的で導入される事例は限定的となっている。今後は機械学習システムなどによる自動認識技術の高度化などにより、汎用性の向上や低コスト化が進むことが期待されている。

CIM 【Computer Integrated Manufacturing】

製造業の生産工程で必要となる、あるいは発生する様々情報をコンピュータシステムで一元的に管理し、製造の最適化を推進する手法。また、そのためのソフトウェアや情報システム。主に1980年代に用いられた用語で、現代ではほとんど使われていない。

CAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)などのシステムが取り扱う設計に関するデータや、原材料や部品、在庫などの状況、生産システムや工作機械の制御(FA:Factory Automation)に関する情報をコンピュータで統合する。

生産に関連する情報を各部門で共有することで、在庫の削減や納期の短縮など生産の効率化を図ることができる。より発展的なシステムでは、販売や流通、調達、開発など生産の前後の工程に関するシステムやデータも統合し、製造業の業務全般を最適化する機能を提供する場合もある。

1980年代、コンピュータが一部の単純な事務作業や会計処理だけでなく、企業の様々な業務や現場に本格的に導入され始めた時期に考案された概念・用語で、現代ではあまり用いられることはないが、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)などその後現れた手法やシステムにその考え方が反映されている。

コンカレントエンジニアリング 【CE】 ⭐⭐⭐

製品の開発プロセスを構成する複数の工程を同時並行で進め、各部門間での情報共有や共同作業を行なうことで、開発期間の短縮やコストの削減を図る手法。

特に製造業で用いられる手法で、設計、試作、調達、生産などの各工程を担当する部門が情報を共有して高度に連携し、前工程の完了を待たずに前倒しで業務を進める。

また、後工程の持つ知見を前工程にフィードバックし、例えば量産時に不良品が生じにくい構造を設計に反映させるなどして、全体最適や全体を通じたコストの削減を目指す。

狭義には、設計から生産までのエンジニアリング部門間での共同作業を意味するが、広義には、企画やマーケティングから、開発、製造、販売、サポート、廃棄・リサイクルなどに関連する部門まで、製品のライフサイクル全般に渡って行われる活動を意味する場合もある。

シミュレーション 【シミュレート】

出題:平27春

現実の対象や現象から特徴的な要素を抽出してモデル化し、模擬的に実践・再現すること。科学技術の分野では現象の理解や予測、人工物の開発や改良などによく応用される。

「顧客の反応をシミュレーションする」といったように日常の場面でも模擬的な予測や再現をシミュレーションということがあるが、一般的にはコンピュータによる数値計算や情報処理を用いて複雑な物理現象や人工物の振る舞いなどを再現する「コンピュータシミュレーション」(computer simulation)を指すことが多い。綴りから分かるように「シュミレーション」は誤記である。

シミュレーションは実物による実験が様々な理由により不可能・困難な場合、あるいは長い期間や多くの費用を要する場合などに、これを簡易に代替する手法として実施される。対象の振る舞いや生じる現象への理解を深めたり、対象を扱う技能の教育・訓練を行なったり、対象が人工物の場合は結果を元に修正や改良を行ったりする。

対象にまつわるありとあらゆる要素を正確に模倣することは不可能で、多くの場合は無意味でもあるため、対象の性質や挙動を代表する要素を絞り込んで単純化したモデルを用いて計算などを行なう。モデルがよく対象を表していれば正確なシミュレーションができるが、誤りや粗さがあれば精度の低いシミュレーションにしかならない。

ある対象のシミュレーションを行うことに特化した機器やソフトウェア、システムなどを「シミュレータ」(simulator)という。特に乗り物や機械の挙動を再現するシミュレータがよく知られ、自動車を模倣する「ドライブシミュレータ」や航空機を模倣する「フライトシミュレータ」は運転・操縦の訓練にも用いられる。

ジャストインタイム生産方式 【かんばん方式】 ⭐⭐⭐

工業製品の生産方式の一つで、必要なものを必要なとき必要なだけ生産する方式のこと。工程間に滞留する仕掛品や在庫を削減することで生産コストを削減して効率的に生産することが可能となる。

後工程が消費した分だけ前工程に生産・加工を要求することを原則とする方式で、工場内での工程間の部品や仕掛品の受発注のために「かんばん」(看板)と呼ばれる帳票を受け渡していたことから「かんばん方式」とも呼ばれる。

在庫や仕掛品を極力持たないようにするため、途中の工程や外部との部材の配送などにトラブルが起きるとすぐに全体の操業が停止してしまうリスクもあるが、これは工程上の問題があると早期に顕在化するということでもあるため、生産工程の改善・改良を進めやすいとも言われる。

1938年に当時のトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)創業者の豊田喜一郎氏が新工場操業に際して提唱した方式が起源とされ、現代では「見える化」「カイゼン活動」などと共にトヨタ生産方式を支える代表的な手法の一つとして広く知られている。

また、「必要なときに必要なだけ」という発想は工業製品の生産効率化という分野に留まらず、様々なビジネス手法に応用されており、1980年代に体系化された「リーン生産方式」のように「リーン」(lean:引き締まった、無駄のない)という用語で表されることが多い。

フレキシブル生産システム 【FMS】

出題:平30春

工場の生産システムの一種で、一つの生産ラインで複数の品目を小ロットずつ柔軟に作り分けられる能力を持ったもの。大量生産によるコスト低減と多品種少量生産をある程度両立することができる。

従来のライン生産では一つのラインで一つの決まった品目を大量生産するが、フレキシブル生産システムではロボットの導入や機器間の通信・連携により複数の品目に同時に対応する。需要の変動に応じて迅速に生産量の増減や生産品目の切り替えを行い、効率よく多品種少量生産を行うことができる。

各工程には自動制御の搬送機や加工機械、産業用ロボットなどが導入され、自動化、省力化を進める。全体を統合的に制御する情報システムにより各機器への指示や生産状況の把握をリアルタイムに行うことができる。人間が行う業務は計画や指示、監視などが中心で、作業に伴う人為的なミスも減らすことができる。

生産現場へのコンピュータや通信システムの導入に伴い1980年代頃から本格的に普及、発展してきた生産方式で、自動車工場の混流生産などの例でよく知られる。現代では電気機械、電子機器、住宅設備、衣料品、食品、医薬品など様々な分野の工場で導入が進んでいる。

MRP 【Material Requirements Planning】

出題:平26秋

製造業などの生産管理手法の一つで、生産計画に基いて部品表と在庫情報から発注すべき資材の量と時期を決定する方式。1960年代に考案され、コンピュータシステムと共に広まった。

過去の使用分を補充するのではなく、予想される需要を事前に捉えることにより、在庫の過剰と不足の両方を解消することを目指している。資材の調達を顧客からの受注と需要予測に直結させた結果、生産計画作業は大きく改善された。

短いスパンで精度の高い計画を立てるには大量の計算が必要で、1970年代には大型コンピュータ(メインフレーム)やミニコンピュータ/オフィスコンピュータ向けの汎用ソフトウェアパッケージが開発され、こうしたコンピュータシステムを伴って導入されていった。

MRP II (Manufacturing Resource Planning)

1970年代に考案された生産管理手法で、MRPを発展させ、管理対象を資材の発注から人員の配置や資金計画などへ広げた方式。MRPのMRは “Material Requirements” (資材所要量)だったが、より総合的な手法であるという意味でMRP IIのMRは “Manufacturing Resource” (製造資源)へ改められている。

MRPの導入によって生産現場における資材の調達や在庫管理は最適化されていったが、MRP IIではこれに加えて人員や設備、資金など生産に必要な様々な要素を全体として計画・管理し、単一の情報システムで統合することを目指した。

1980年代に広まった概念で、1990年代には生産に留まらず企業活動の全体を対象に適正な資源配置を行う「ERP」(Enterprise Resource Planning)へと発展していった。

eビジネス

企業などの事業活動全般に渡ってインターネットや関連する情報・通信技術を導入し、業務工程を全面的に電子化すること。また、そのような変革を経て生まれた深く電子化された企業活動や商取引。

製品などの売買をインターネット上で電子化した、いわゆる電子商取引(EC:eコマース)の次の段階として提唱された概念で、企業の業務過程に全面的にインターネット由来の技術を導入し、ビジネス全体が電子化された状態を指す。

1997年にIBM社がインターネット時代の事業構想を発表する中で企業が目指すべき方向性として提唱した標語で、同社が新産業の興隆を願ってあえて商標登録しなかったこともあり、他社やメディアも盛んに用いるようになった。

2000年代後半になり企業活動でのコンピュータやインターネットの利用が当たり前になると、企業や人々の関心は電子化そのものから新しい技術やシステムの具体的なあり方などに移っていき、eビジネスという用語もあまり使われなくなっていった。

EC 【Electronic Commerce】

データ通信やコンピュータなど電子的な手段を介して行う商取引の総称。狭義にはインターネットを通じて遠隔地間で行う商取引を指す。より狭義には、Webサイトなどを通じて企業が消費者に商品を販売するネット通販を指す場合もある。

取引主体の組み合わせにより、企業(法人)間の電子商取引を「B to B 電子商取引」(B2B/Business to Business)、企業と消費者の電子商取引を「B to C 電子商取引」(B2C/Business to Consumer)、消費者間の電子商取引を「C to C 電子商取引」(C2C/Consumer to Consumer)という。

最も一般的なB to C 電子商取引には、物品のオンラインショップ(電子商店)やオンラインモール(電子商店街)、交通機関や興行のオンラインチケット販売、宿泊施設や飲食店などのオンライン予約、動画・音声・ビデオゲーム・電子書籍などデジタルコンテンツのオンライン販売、金融商品のオンライントレード、オンラインバンキングなどが含まれる。

また、B to B 電子商取引には、eマーケットプレイス(電子市場)や電子調達(eプロキュアメント)、EDI(電子データ交換)、ネット広告(販売)などが含まれる。C to C 電子商取引としてはネットオークションやフリマアプリ、フードデリバリー、民泊アプリ、ライドシェアなどがある。

実際の店舗を構える場合に比べ少ない費用や人員でビジネスを始めることができ、地理的な制約に縛られず離れた場所の顧客を相手に取引することができる。ただし、競合相手も同じ条件であるため、分野によっては実店舗より競争が激しく、全国や全世界といった大きな規模で寡占や「勝者総取り」現象が生じる場合がある。

ロングテール ⭐⭐⭐

インターネット上での現象は生起頻度の低い要素の合計が全体に対して無視できない割合を占めるという法則。縦軸を頻度として横軸に頻度の高い順に項目を並べたグラフを描くと、右側に低頻度の項目が大量に並び、長く伸びた動物の尻尾のように見えることからこのように呼ばれる。

経済現象や社会現象では、上位の少数の要素が全体の数量の大半を占める法則や経験則が様々な分野や対象で見られ、「冪乗則」(べき乗則)「パレートの法則」「80:20の法則」(売上の80%は上位20%の顧客/商品がもたらす)などの形で古くから知られていた。

このような傾向自体はインターネット上での経済活動でも見られるが、現実の店舗などが売り場面積や人員などの物理的な制約から、ある程度上位の「売れ筋」に集中せざるを得ない一方、オンラインショップなどでは制約が小さいため、従来は「死に筋」と見られていた下位の商品も低コストで取り扱うことができ、合算すると大きな収益を産む場合がある。

米ワイアード(WIRED)誌の編集長だったクリス・アンダーソン(Chris Anderson)氏は2004年10月に発表した記事 “The Long Tail” の中で、このような従来の現実世界の経験則が通用しないインターネット特有の構成比率が見られる事例を紹介し、グラフに描画した際の右下に長く伸びる低頻度の領域を恐竜の長い尻尾になぞらえて「ロングテール」(long tail)と呼んだ。

この傾向はECサイトの売上構成比だけでなく、ネット上の様々な経済・社会現象で観察される。例えば、Webサイトを構成する各ページの閲覧回数、検索エンジンにおける各検索語の検索頻度などである。また、個別の事業やサービスなどの中だけでなく、市場全体にもこのような傾向が見られ、ある市場のロングテール部分に特化した事業を展開するビジネスなども興隆している。

フリーミアム

出題:令5

ソフトウェアやコンテンツ、ネットサービスなどの提供方式の一つで、基本的な機能や内容を無償提供し、高度な機能や充実した内容を有償で販売する手法。

従来、完全に有料の製品やサービスは敷居が高くなかなか顧客が増えず、一方で広告収益モデルなど完全無料の方式では製品やサービスの提供を維持するだけの十分な収入がなかなか得られないというジレンマがあった。

フリーミアムはこれを改善する課金モデルで、基本的な内容を無料で提供して利用者を惹きつけ、気に入ってくれた利用者にオプションとして高度な内容や便利な機能を販売する。「フリーミアム」の語は「フリー」(free)と「プレミアム」(premium)を組み合わせた造語である。

従来からソフトウェアの販売でよく用いられる、体験版や試用版、開発途上版を無償で配布して気に入った利用者に正規版を販売する手法に近いが、フリーミアムの場合は無償版でも一通りの完結した機能を期限を定めず提供する点が異なる。

オンラインサービスやソフトウェア、コンテンツのようにインターネットを通じて非常に低いコストで複製や配布、提供を行うことができる製品やサービスで可能な施策であり、生産や輸送のコストが重い物理的な実体を持つ製品や対面で提供するサービスなどでは実施しにくい。

F2P (Free-to-Play/基本プレイ無料/フリートゥプレイ)

オンラインゲームやオンライン販売ゲームなどの販売・課金モデルの一つで、ゲームソフトの入手やプレイ開始は無料で可能にしておき、追加要素やプレイの継続に課金する方式のこと。ビデオゲームにおけるフリーミアム方式。

F2Pで提供されるゲームは、ソフトウェアのダウンロードや利用登録、プレイ開始には課金せず、基本的な内容は無料で遊ぶことができる。その代わり、ゲーム内通貨や特殊なゲーム内アイテムの入手に課金したり、無料状態では使えない便利な機能を有料で提供したり、一定のお試し期間の終了後、継続プレイする場合に課金したりといった方法で希望者から代金を徴収する。

スマートフォン向けゲームでは、広告など課金以外の方法で収益を得る完全無料のゲームが増え、購入しなければ開始できないタイトルは競争上不利な状況が強まっているため、F2Pモデルを導入する販売元・運営元が増えている。

ゲームを実際に試してみて気に入れば課金して本格的に遊べばよいという点は消費者にとっても利点だが、一方で、課金のタイミングや額が分かりにくく不本意に課金されたり、子どもが課金されていることを認識できずに親の知らない間に大きな額を使ってしまったりといったトラブルも増えている。

EC 【Electronic Commerce】

データ通信やコンピュータなど電子的な手段を介して行う商取引の総称。狭義にはインターネットを通じて遠隔地間で行う商取引を指す。より狭義には、Webサイトなどを通じて企業が消費者に商品を販売するネット通販を指す場合もある。

取引主体の組み合わせにより、企業(法人)間のECを「B to B EC」(B2B/Business to Business)、企業と消費者のECを「B to C EC」(B2C/Business to Consumer)、消費者間のECを「C to C EC」(C2C/Consumer to Consumer)という。

最も一般的なB to C ECには、物品のオンラインショップ(電子商店)やオンラインモール(電子商店街)、交通機関や興行のオンラインチケット販売、宿泊施設や飲食店などのオンライン予約、動画・音声・ビデオゲーム・電子書籍などデジタルコンテンツのオンライン販売、金融商品のオンライントレード、オンラインバンキングなどが含まれる。

また、B to B ECには、eマーケットプレイス(電子市場)や電子調達(eプロキュアメント)、EDI(電子データ交換)、ネット広告(販売)などが含まれる。C to C ECとしてはネットオークションやフリマアプリ、フードデリバリー、民泊アプリ、ライドシェアなどがある。

実際の店舗を構える場合に比べ少ない費用や人員でビジネスを始めることができ、地理的な制約に縛られず離れた場所の顧客を相手に取引することができる。ただし、競合相手も同じ条件であるため、分野によっては実店舗より競争が激しく、全国や全世界といった大きな規模で寡占や「勝者総取り」現象が生じる場合がある。

B to B 【Business-to-Business】

企業間の商取引、あるいは、企業が企業向けに行う事業のこと。企業間の物品の売買やサービスの提供、企業と金融機関との取引などがこれに含まれる。企業向け事業が主体の企業のことをB to B企業ということがある。

産業全体ではB to B取引の規模の方が対消費者向け(B to C:Business-to-Consumer)よりも何倍も大きいとされる。企業の分類としてB to Bという場合には、素材メーカーのように取り扱う商品自体が企業向けの場合を指すことが多いが、一般にB to C企業に分類される場合でも、例えば消費者向け加工食品メーカーが直接取引するのは消費者ではなく食品卸や大手小売チェーンなどの卸売・小売企業であり、事業や取引の形態そのものはB to Bとなる。

企業向け事業の特徴として、一回の取引金額や数量が大きく、逆に取引頻度は少ない。意思決定に複数の人や組織が関わることが多く、検討や決定に多くの時間や手続きを要する。また、購買部門が購入した備品を社員が使うといったように、購入者や意思決定者と、使用者や対象者が一致しないことが多いのもB to B取引の大きな特徴である。

これに対し、企業と一般消費者の商取引、または、企業が一般消費者向けに行う事業のことを「B to C」(Business-to-Consumer、B2C)、企業と公的機関の商取引、または、企業が公的機関向けに行う事業のことを「B to G」(Business-to-Government、B2G)、企業内の従業員向けサービスなどのことは「B to E」(Business-to-Employee)という。

B to C 【Business-to-Consumer】 ⭐⭐

企業と個人(消費者)間の商取引、あるいは、企業が個人向けに行う事業のこと。一般消費者向けの製品の製造・販売や、消費者向けサービスの提供、個人と金融機関の取引などがこれに含まれる。消費者向け事業が主体の企業のことをB to C企業ということがある。

一般消費者にとって日常的に接する商取引のほとんどはB to Cだが、産業全体では企業間の取引規模のほうが大きいと言われる。企業の分類としてB to C企業という場合には、小売業や消費者向け製品のメーカー、個人客を対象とするサービス事業者などを指す。

ただし、一般にB to C企業とみなされる企業でも、例えば消費者向け加工食品メーカーが直接取引するのは消費者ではなく食品卸や大手小売チェーンなどの卸売・小売企業であり、事業や取引の形態そのものは企業間・事業者間が中心となる。

個人向け事業の特徴として、一回の取引金額や数量が小さく、逆に取引頻度は多い。一回の取引について購入者と使用者、意思決定者が一致するか関与する者が少数(家族など)であることがほとんどだが、一方で取引相手は不特定多数に分散する。ネット販売などを除き取引先の身元がほとんど分からない点も事業者間取引などにはない性質である。

これに対し、企業間の商取引、または、企業が企業向けに行う事業のことを「B to B」(Business to Business/B2B)、フリーマーケットのような個人間・消費者間の商取引を「C to C」(Consumer to Consumer/C2C)、企業と公的機関の商取引、または、企業が公的機関向けに行う事業のことを「B to G」(Business to Government/B2G)という。

C to C 【Consumer-to-Consumer】

出題:平24春

商取引の分類を表す用語の一つで、個人間、とりわけ一般消費者同士の間で行われる商取引のこと。また、個人間の取引を仲介する事業やサービスなどのこと。

電子商取引やネットサービスの事業分類によく用いられる概念で、個人間で物品の売買やサービス提供を行う取引や、その仲介や紹介などを行う事業などを指すことが多い。具体的にはネットオークション(Yahoo!オークションなど)やフリマアプリ(メルカリなど)、個人で開業できるオンラインショップ(の開設・運用支援サービス)などが該当する。

近年では、物品の売買に限らず個人間の財産の貸し借りやサービス提供を仲介するネットサービスが興隆している。例えば、個人宅の空き部屋の宿泊提供(AirBnBなど)、自動車による送迎(Uberなど)、駐車場の時間貸し(Akippaなど)、飲食店からの宅配(Ubereatsなど)などである。ネットを介した資産の貸し借りで生まれる新たな経済を「シェアリングエコノミー」という。

これに対し、企業と消費者の商取引を「B to C」(Business-to-Consumer)、企業間の商取引を「B to B」(Business-to-Business)という。また、公的機関(G:Government)との商取引や行政サービスの提供などについて、「B to G」(企業→公的機関)、「G to B」(公的機関→企業)、「G to C」(公的機関→住民・国民)のように類型化することもある。

B to E 【Business-to-Employee】

出題:平25春

企業や提携事業者と従業員の商取引や、企業が従業員向けに提供するサービスなどのこと。社員食堂や社内での物品や食品の販売、自社製品の優待販売などが含まれ、広義には各種の補助制度や金融取引なども含める場合がある。

B to E取引は社員食堂や社販(商品の社員割引)、企業所有保養所の格安利用のような形で古くから存在はするが、近年では士気や能率、従業員満足度の向上や離職率低下(長期的には採用・教育関連コスト削減)などの効果を狙って意識的にB to Eを充実させる企業が目立っている。

企業自身が従業員に提供するサービスなどの他に、外部の企業が契約を結び社屋内などで従業員向けに事業を行う場合もあり、「B to B to E」と呼ばれる。お菓子を「置き薬型」で提供する販売方式や、ヘルスケアサービスなどの事例が知られる。

O2O 【Online to Offline】

インターネットを利用した企業のマーケティング施策の一つで、実店舗への来店や店頭での購入などオフラインでの行動を促すことを目的とするオンラインでの活動のこと。

小売店や飲食店など消費者との物理的な接点となる拠点を持つ事業者がネット上で行う施策で、消費者や顧客へ来店を促したり、実店舗での購買行動の利便性や魅力を高めるようなサービスを提供することを指す。

例えば、スマートフォンアプリなどを通じて割引クーポンを配布して顧客の来店頻度を高めたり、飲食店が席の予約や商品の注文をオンラインで受け付けて来店時に待たずに着席や商品の受領ができるようにしたり、利用者の携帯端末の位置情報を元に近隣の店舗の紹介やクーポン発行を行ったりする事例が知られている。

近年では逆に、実店舗の来店客にネット通販サイトやオンラインサービスの利用を促す “Offline to Online” 型の施策も行われるようになってきている。例えば、店頭の商品にQRコードなどを掲示してスマートフォンで商品の詳しい情報やECサイトの在庫を参照できるようにしたり、来店客がスマートフォンに公式アプリをインストールすると割引やキャッシュバックを提供するといった事例が見られる。

OMO 【Online Merges with Offline】

小売業などのマーケティング戦略の一つで、実店舗など顧客との物理的な接点(オフライン)を、オンライン戦略の一部として融合させること。顧客に対してオンラインとオフラインの両面からアプローチする。

ECサイト、モバイルアプリ、メール会員、SNSやメッセンジャーの公式アカウントといったオンラインの接点と、実店舗などのオフラインの接点の垣根をなくし、情報や施策を一元的に管理することで、顧客一人ひとりに最適化された総合的なアプローチを可能になる。

例えば、ECサイトやアプリで事前にオーダーした商品を実店舗で受け取る、事前にオンラインで登録した利用者のみが入店できる無人店舗、実店舗で購入した商品の関連商品をオンラインで提案、店舗スタッフがコミュニケーションツールで常連客と接触するといった施策が該当する。

O2O・オムニチャネルとの違い

似た概念に「O2O」(Online to Offline)があるが、これはネットから店舗へ集客するという一方向のアプローチである。OMOはネットと店舗を行き来して総合的に顧客へアプローチする手法であり、O2Oの施策を包含すると考えられる。

また、「オムニチャネル」(omni-channel retailing)も複数の顧客接点を活用する戦略だが、ECサイト、SNS、店舗といった個別のチャネルを併用する手法であり、OMOのようなチャネル間の連携や融合、統合された顧客行動の捕捉などには踏み込まない。

EDI 【Electronic Data Interchange】 ⭐⭐

出題:令2秋,平30春

商取引に関する情報を標準的な形式に統一して、企業間で電子的に交換する仕組み。受発注や見積もり、決済、出入荷などに関わるデータを、あらかじめ定められた形式にしたがって電子化し、インターネットや専用の通信回線網など通じて送受信する。

紙の伝票をやり取りしていた従来の方式に比べ、情報伝達のスピードが大幅にアップし、事務工数や人員の削減、販売機会の拡大などにつながる。データ形式やコンピュータ間の接続方式などは国ごと、業界ごとに標準が定められていることが多いが、国際的な規格や業種横断的な規格もある。

国際標準としては国連機関が定めたUN/EDIFACT(United Nations rules for Electronic Data Interchange For Administration, Commerce and Transport)やebXMLが知られる。日本の国内規格は基盤的なものとして情報処理開発協会(JIPDEC)内の産業情報化推進センター(CII:Center for the Informatization of Industry)が定めたCII標準があるが、多くは各業界が個別に定めた標準が用いられている。

例えば、金融機関は全銀協手順(全銀ベーシック手順、全銀TCP/IP手順など)、流通業界は流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)、小売チェーン店はJCA手順、食品業界は日食協標準EDIフォーマット、鉄鋼業界は鉄鋼EDI標準といった具合に業界ごとにメッセージや伝送手順の標準を定めている。

自動車部品業界のJNX(Japan automotive Network eXchange)のように企業間を繋ぐ信頼できる取引情報交換ネットワークを構築している業界や、放送CM業界の広告EDIセンターのように売り手と買い手を結びつける取引所を設置している業界もある。

EDIシステムの多くはNTT地域会社などの電話回線やISDN回線などの公衆交換電話網(加入電話網)を利用して取引先に接続するよう設計されているが、近年ではインターネット上にVPN(Virtual Private Network)を構築して安全に接続する手法も広まっている。また、ソフトウェアも専用のものを導入するのが一般的だったが、これに代えてWebブラウザを用いて取引先のWebサーバ上に構築されたEDIシステムを利用するWeb-EDIが台頭している。

キャッシュレス決済 【電子決済】

商品やサービスの代金支払いなどを、現金の受け渡しや金融機関での手続きなどではなく、電子的なデータ交換によって行うこと。

銀行口座やクレジットカードなどを利用するキャッシュレス決済方式として、インターネット上でのクレジットカード決済(カード番号などをオンラインで送信する)やインターネットバンキングによる相手口座への送金、キャッシュカードで店頭での支払いを行うデビットカード決済などがある。

事前に決済事業者に入金した額の範囲で支払いを行うことができる決済方式を「電子マネー」あるいは「ストアドバリュー型電子決済」という。利用者はカード購入や入金端末操作、銀行振り込み、クレジットカード決済などで決済サービス上での貨幣価値を入手し、提携店舗やネットサービスでの支払いに充てることができる。

これには交通系ICカードなどのICカード型電子マネー、店舗でカードを購入するうプリペイドカード型電子マネー、オンラインで入金や決済を行うネットワーク型電子マネー、スマートフォンの短距離無線通信を利用するモバイル決済、QRコードで決済情報を伝達するQRコード決済などが含まれる。

2000年代初頭のインターネット普及や非接触ICカード技術の進歩により広まった決済方式で、ECサイトやネットサービスでの支払いにオンラインのクレジット決済やネットバンキングがよく利用される。店舗での支払いなど現金を代替する用途は日本では大都市圏での交通系ICカード以外なかなか普及しなかったが、2010年代後半頃からモバイル決済やQRコード決済が急激に浸透しつつある。

フィンテック 【Fintech】 ⭐⭐

出題:令6,令3,令1秋

金融と情報・通信技術を融合して産み出される、従来にない新しいサービスやシステムの総称。欧米では2000年代前半頃から使われていた言葉で、日本では2014年頃から本格的に注目されるようになった。

“Finance” (金融)と “Technology” (技術)を組み合わせた造語である。資金の貸し借りや決済・送金、企業などの財務・会計、個人や家庭の家計・財産管理などにコンピュータやインターネットを応用し、従来の手続きや管理を電子化、効率化したり、従来にない新しい手段やサービスを実現したものを指す。

広義には、金融機関が自らのサービスをインターネットなどを通じて利用できるようにしたオンラインバンキングやオンライントレードなどを含むこともあるが、狭義には、金融機関が提供してこなかったようなサービスや、金融機関自身が提供するのは難しいシステムやサービス(複数の企業や業界を横断するものなど)を指すことが多い。

事例

具体的な事例としては、各金融機関のネットサービスと横断的に連動して手続きや情報取得を自動化・効率化する資金管理システムや家計簿ソフト(アグリゲーションサービス)、QRコード決済などのキャッシュレス決済などが広く普及している。

また、SNSのIDなどを利用した個人間送金サービス、個人間の資金の貸し借りを仲介するソーシャルレンディング(P2P金融)、ネットを通じて広く個人から投融資資金を募るクラウドファンディングなども注目されている。仮想通貨(暗号通貨)など、ブロックチェーン技術を応用したシステムやサービスをフィンテックの一種とする場合もある。

2000年代初頭から特に日本で広く普及している、ICカードや携帯電話、プリペイドカードを利用した電子マネーおよび電子決済サービスや、マイルやポイントの交換サービスなども概念上はフィンテックに含まれるが、フィンテックという単語が注目される以前からすでに広く普及していたことや、日本特有のサービスやシステムは欧米では馴染みがないことなどから、フィンテックの文脈で取り上げられることは少ない。

クラウドファンディング 【クラファン】 ⭐⭐

出題:令4,平29秋

資金を必要とする個人や団体、プロジェクトなどが不特定多数の相手から少額の資金を募る手法。特に、専門の仲介サイトで詳細を告知して資金提供者を募集すること。

資金を募って活動を行いたい場合、まとまった大口資金を少数から集める手法だと、限られた富裕な人や団体の好む事業しか実現できず、また、少数の大口出資者の都合や意向にプロジェクト運営が大きく左右される問題があった。

クラウドファンディングの “crowd” は「群衆」、“funding” は「資金調達」という意味で、ネットを通じて広く一般に資金提供を呼びかけ、数千円から数万円といった小口の資金を多数の賛同者から集める。多くの人が少額を拠出する形を取ることで個々の出資者の影響を小さく抑えることができる。

また、資金を募集する過程自体がある種の宣伝やアピールとして機能し、対象の事業に強い興味を持つ「ファン」や製品の潜在顧客を組織したり、その意見をプロジェクトに反映させることができる。出資者はプロジェクトに愛着を持ち成功を強く祈るようになり、口コミで他の出資者を探したりプロジェクトの存在を広めてくれることも多い。

種類と対象

見返りの有無や種類によって、特に見返りのない「寄付型」の募集と、通常の出資や貸付のように利益が出たらその一部を受け取れる「投資型」、開発した製品やサービスを無償または安価で受け取ったり利用したりできる「購入代金前払い型」に分類することができる。

クラウドファンディングの対象となるのはベンチャー企業への出資や、新しい工業製品やソフトウェアの開発プロジェクトなどが多いが、これに留まらず、政治運動や市民運動、映画やビデオゲームなどの作品制作、スポーツチームや芸能グループの活動継続、舞台や興行の開催、公的部門からの資金の乏しい学問研究、災害復興支援、街づくりや地域活性化などへの資金の募集にも用いられている。

問題点

資金提供の条件やプロジェクト運営の手法、情報開示などについて法規制等はなく、クラウドファンディングサイトが利用者にガイドラインを示すといった取り組みはしているものの、資金の払込後に連絡が取れなくなるといった詐欺まがいの事案が発生することがある。また、個人運営のプロジェクトを中心に見返りの内容や資金使途の公開などを巡ってトラブルになる事例が多く見られる。

NFT 【Non-Fungible Token】

ブロックチェーン上に記録されるデータ単位(トークン)のうち、個体識別の仕組みを持ち他のトークンと代替不可能なもの。特定のデジタル資産と利用者(チェーン参加者)を紐付けることができる。

ブロックチェーンは中央集権的な管理システムを用いずに時系列のデータを蓄積する仕組みで、参加者のコンピュータに分散して台帳データを作成し、改竄困難な形で履歴データを追加していくことができる。

代表的な応用例である仮想通貨では、各参加者の持つ数値の所有、譲渡、増減をチェーンに記録していき、これを通貨に見立てて参加者間での取引、支払いに用いる。各参加者の保有する仮想通貨は入れ替え可能であり、ある参加者の持つ通貨1単位と他の参加者の持つ1単位は等価で区別はない。

一方、NFTはブロックチェーン上に固有性を持つデータを記録する技術で、作成されたトークンは識別番号などで他のトークンと区別される。トークンには現在の所有者や、何らかのデジタル資産を指し示すデータが含まれ、仮想通貨と同じように移転履歴が改竄不可能な形でチェーン上に記録される。

デジタル資産のNFT

NFTの典型的な用途として、Web上で公開されている画像や動画、その他の何らかのデジタル資産とトークン所有者の紐付けがある。トークンに対象となるデジタル資産が置かれたURLなどを記録し、そのトークンの現在の所有者と対応付ける。デジタル資産は複製可能だが、トークンに記録された所有者の情報は譲渡するまで書き換えできない。

インターネット上には様々なNFT取引所があり、デジタル化された写真や絵画、イラスト、動画、ゲーム内アイテムなどを参加者の間で売買できる。参加者は仮想通貨あるいは現実の通貨を支払って現在の所有者からNFTを購入すると、取引所内で表示される所有者が自分の名前に書き換わる。引き続き出品して他の参加者に転売することもできる。

誤解と問題点

NFT取引所などではこの仕組みを画廊での絵画作品の販売やオークションでの取引などになぞらえ、「デジタル資産の所有権を売買できる」と表現することがあるが、これはいくつかの点で不正確である。

まず、NFTに記録される「所有者」は「NFT(トークン)自体の所有者」で、紐付けられた画像等の所有者を意味しない。著作権も原著作者から譲渡されないのが普通で、「所有者」の法的な権利は不明瞭である。

また、通常はデジタル資産のデータ本体はトークン内に記録されず(記録するNFTも存在するが一般的ではない)、資産が所在するURLなどが記録されるため、資産との紐付けが有効か否かはURLで指し示されたWebサーバ(NFT取引所など)の管理主体に依存する。

資産自体はNFTとは無関係にデジタルデータとしてWeb上などに存在し、NFTによって複製や伝送を防止できるわけでもない。他人の公開している画像から勝手にNFTを作成して販売するといった問題も起こっている。

eマーケットプレイス 【電子市場】

インターネットを介して売り手と買い手を結びつける取引所や市場のこと。多くはWebサイトの形で開設され、登録した売り手の販売する商品を、買い手がオンラインで発注して購入する。

運営元はECサイトとしての基本的な仕組み(商品の登録や表示、決済、物流など)を整え、売り手の企業などの参加を募る。サイト上には様々な売り手が販売する商品が陳列され、訪れた買い手は商品や売り手を選択して購入する。売り手を横断してサイト全体から商品を検索・一覧する仕組みや、決済や配送を運営元が仲介することで売り手の信用を補完する仕組みなど、単純に複数の電子商店を寄せ集めただけではない利便性を備えていることが多い。

2000年前後のインターネット普及期には主に企業間の電子商取引(B to B EC)の担い手としてeマーケットプレイスに期待する声が大きく、実際、中国のAlibaba(アリババ)など成功例もいくつか見られたが、企業間の取引ではオープンなスポット取引は限定的で、信用調査や取引条件の交渉などの手順が複雑であることなどから、当初予想されたほどには広まっていない。

一方、消費者向けの電子商店が集まったいわゆる電子モール(オンラインモール)や、個人間(C to C)で商品を売買するオンラインオークションやフリマアプリなどは順調に発展・普及しており、eマーケットプレイスという用語で連想されるものとしては現在はこちらが中心となっている。

オンラインモール 【ECモール】

インターネット上で商品を販売する電子商取引サイト(ECサイト)のうち、複数の異なる運営主体による電子商店(オンラインショップ)が出店しているもの。検索機能や決済などが共通化され、単体のショップと同じ利便性で様々な店舗を利用できる。

オンラインモールには複数のオンライン店舗がそれぞれ販売用のページやサイトを持って商品を販売している。モール側では店舗を横断する検索機能により取り扱い商品や価格を調べられるようにしたり、決済や配送などを共通化するなどして、単体のオンラインショップよりも利便性を高めている。

出品者は販売手数料などを負担するが、知名度が低くても著名なモールに出店することにより消費者に認知されやすくなり、自前で商品管理や決済などのシステムを導入・運用しなくてもモール側の用意したシステムで事業を始められるメリットがある。

オンラインモールを営む事業者には、モールの運営に特化した事業者と、自社で商品を販売するオンラインショップ上に外部の販売店による出品を受け入れる事業者がある。日本では前者の事業形態として「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などが有名で、後者としてはAmazon.com内に統合されている「Amazonマーケットプレイス」がよく知られる。ファッション分野に特化した「ZOZOTOWN」(ゾゾタウン)のように特定のジャンルで出店を募るサイトもある。

eBayやYahoo!オークション、メルカリなど個人間で自由に物品を売買できるサービスは「オンラインオークション」(ネットオークション)あるいは「フリマアプリ」(スマートフォンアプリの場合)と呼ばれ、オンラインモールとは区別されることが多いが、これらを広義のオンラインモールの一種に含める場合もある。

ネットオークション 【オンラインオークション】

インターネット上で行われる競売。また、そのような取引の場を提供するネットサービス。電子商取引(EC)の一種で、一般消費者同士が直接取引を行う「C to C」(Consumer to Consumer)型の取引の代表的な形態の一つである。

出品者はサイト上に、商品の名称や写真、状態、最低価格、入札期限、配送方法、支払方法などの情報を掲載し、入札者が現れるのを待つ。期限内に最も高値を提示した入札者が商品を落札し、出品者と連絡を取り合い、商品と代金を交換する。

電子オークション事業者は、これら一連の処理を行うためのシステムと「場」を提供し、出品者から手数料を徴収する。出品や落札を無料にして、サイト内に掲載する広告で収入を得る事業者や、オークションシステムを顧客企業のブランドで運営するアウトソーシング事業者なども存在する。電子オークションの仕組みを応用して官公庁が物品の公売に用いる「インターネット公売」(官公庁オークション)も定着している。

オークション成立後の個人間売買のための決済、物流などの個人向けサービスも普及し、企業間の取引や、消費者への販売の新たな手法として用いられるケースも増えている。一方で、違法な物品が取引されたり、落札者が代金を支払ったのに商品が送られてこないなどのトラブルが問題となっている。

一般にネット上の個人間のやり取りでは相手が信用に足る人物か判断するのは難しい。電子オークションでは取引上のトラブルを避けるため、相手方が確実に支払いや発送を履行するまで品物か代金(あるいは両方)を一旦事業者が預かる「エスクロー」(escrow)と呼ばれるサービスをオプションで提供する事業者もある。

インターネットバンキング 【Internet banking】

出題:平30秋

パソコンやスマートフォンなどを用いてインターネット経由で銀行などの金融機関のサービスを利用すること。店舗や端末に出向くことなく振込などのサービスを利用できる。

預金の残高照会、入出金照会、口座振り込み、振り替えなど、ATMで対応しているサービスが利用可能なほか、複数口座の一括管理や電子メールによる相談の受付など、独自のサービスが利用可能な銀行もある。

振り込みなどの処理が実際に行われるのは営業時間中だが、手続き自体はいつでもどこからでも可能なため、平日の昼間に窓口やATMに赴くのが難しい人には特に便利なサービスである。

金融機関側でも手続きの電子化が進めば窓口やATMの削減が可能となるため、預金者に利用を促しており、紙の通帳を廃止したり、ネット経由の場合に手数料の優遇を行ったりしている。

サービスの利用方法で分類すると、Webブラウザを使うものと、専用のソフトウェアを使うものの2種類がある。パソコンから利用する場合はWebブラウザを用いる方式が、スマートフォンやタブレット端末から利用する場合は専用のアプリを導入する方式が主流となっている。

ネット銀行 (インターネット専業銀行)

インターネット上での営業活動に特化した銀行を「ネット銀行」と呼ぶことがある。一般的な店舗による対面の営業を実質的に行わず、すべての手続きやサービスをオンライン上で行う業態を指す。

自前の店舗網やATM網をほとんど持たず、紙の預金通帳も発行しないことで、通常の銀行などより預金金利を高めたり手数料を引き下げたりしている。

日本では2000年10月に当時のさくら銀行(現在の三井住友銀行)などが設立したジャパンネット銀行が先駆けで、ソニー銀行、住信SBIネット銀行などがよく知られる。

電子マネー 【電子通貨】

貨幣価値の蓄積や移動を電子的な手段によって行う決済システムやサービス、装置などのうち、主に現実の貨幣や紙幣の代替として利用するために設計されたもの。また、そのための専用の装置などに蓄積され、店頭などで支払いに充当することができる貨幣価値のこと。

ストアドバリュー型

実店舗で利用される電子マネーとしては、非接触ICカードやスマートフォンなどで貨幣価値を表すデータを蓄積・管理し、店頭の端末と無線通信を行って支払いを行う方式がよく用いられる。カードや端末へは手持ちの現金や銀行口座、クレジットカードなどから繰り返し「入金」することができ、蓄積された残高の範囲内で現金の代わりに支払いに当てることができる。

この方式では、JR東日本の「Suica」や首都圏私鉄・バス事業者連合の「PASMO」をはじめとする交通系ICカードが大都市圏を中心で広く普及しているほか、楽天Edyやイオングループの「WAON」、セブン&アイグループの「nanaco」など流通系ICカードも普及している。

ポストペイ型

一般的には事前に入金が必要なプリペイド(前払い)方式のものを電子マネーというが、「iD」や「QUICPay」のように事前入金なしに利用できて、後日、銀行口座の引き落としやクレジットカードなどで支払いを行うポストペイ(後払い)方式のサービスもある。ポストペイ方式は実質的にはクレジットカードの付加サービスあるいはクレジット決済の一種とみなされる。

プリペイドカード型

また、事前に一定額を支払うと引き換えに発行されるコード番号などを入力することで、同額の決済を行えるサービス・システムもあり、ネットサービスやオンラインゲーム、オンラインショップなどでの支払いや、スマートフォンなどでのアプリやコンテンツの購入などでよく利用される。

コード番号の記載されたカードがコンビニエンスストアなどで販売されているほか、店頭で一定額を支払うとレジからコードの記載されたレシートが発行されたり、銀行振込やクレジット決済で一定額を入金すると事前に登録したメールアドレスなどにコードが送られてくる、といった仕組みを採用しているサービスもある。

「WebMoney」や「BitCoin」など専業の事業者が運営し、提携している各社のサービスで利用できるものと、米アップル(Apple)社の「Apple Gift Card」や米グーグル(Google)社の「Google Playギフトカード」、米アマゾンドットコム(Amazon.com)社の「Amazonギフトカード」のように、自社サービスの決済に利用するために販売されるものがある。

仮想通貨との違い

電子マネーは日本円など現実の通貨の価値をデジタルデータに置き換えて蓄積・交換するための仕組みだが、これとは別に、それ自体を独立した一つの通貨のように用いることのできる、デジタルデータで表された価値の蓄積・交換システムも存在し、「仮想通貨」(virtual currency)あるいは「暗号通貨」(cryptocurrency)と呼ばれる。

オンライントレード

上場企業の株式などの証券や投資信託などの金融商品、外国通貨などをインターネットなどの通信システムを通じて売買すること。また、金融機関が提供する、そのような証券などの売買が可能なネットサービス。

単にインターネットトレーディングといった場合は、証券会社が主に個人の投資家に向けて提供する、インターネットを利用した上場株式や投資信託、外国株式などの売買サービスを指すことが多い。運営主体やサービスによっては、国債や社債、株価指数先物、オプション、外国為替、商品先物などを対象とするものもある。

会員登録と身元確認手続きを行なって指定口座に入金し、Webブラウザで専用のサイトに接続して売買の指示を行う方式が一般的だが、操作性や即時性に優れた専用のデスクトップアプリケーションやモバイルアプリを提供している企業もある。

店舗窓口や電話を利用する従来の方式に比べ、市況をリアルタイムに把握しながら迅速に売買を執行でき、人手を介さない分だけ売買手数料が割安に設定されていることが多い。資産状況の照会や売買指示などは24時間365日どこからでもできる利点もある。

ネット専業証券会社

近年では、対面や電話での取次を行わず(あるいは廃止・撤退して)、インターネットトレーディングシステムのみを専門に運営・提供する「ネット専業証券」(ネット証券)と呼ばれる業態の証券会社が台頭している。伝統的な大手証券会社がグループ企業としてネット専業の業態を設ける例もある。

これらは私設の電子市場を運営したり、売買頻度の高い、あるいは大口の資金を持つ得意客(ヘビーユーザー)向けに定額制の手数料や専用のトレーディングルームを提供したりといった新しいサービスを打ち出し、激しい顧客獲得競争を繰り広げている。

他のオンライン金融サービス

インターネットを通じて金融関連サービスを提供する業態は他にもあり、銀行サービスを利用することは「オンラインバンキング」あるいは「インターネットバンキング」(ネットバンキング)などと呼ばれ、保険の加入・更新ができるサービスは「ネット保険」(ネット生保/ネット損保)などと呼ばれる。

エスクロー 【エスクロウ】

出題:平29秋

第三者預託という意味の英単語。二者の契約について一方から他方への義務の履行が確認されるまで、対価として引き渡される金銭や証書、物品などを第三者が預かる仕組みのこと。

例えば、物品の売買について二者が合意に達すると、まず買い手が商品の代金を仲介者に預け、これを確認したら売り手は商品を引き渡す。買い手は商品を受け取り、確かに発注したとおりであると確認できれば、仲介者に連絡して代金を売り手に引き渡す。これにより、納品したのに代金が支払われない、あるいは、代金を支払ったのに納品されないといったトラブルを未然に防ぐことができる。仲介者は手数料として代金の一定の割合か固定額を受け取る。

古くから証券や不動産、企業間取引などの分野で金融サービスの一種として存在したが、インターネットを通じた取引が活発化するに連れ、eマーケットプレイス事業者が出店している小規模店舗と消費者の間で提供したり、ネットオークションやフリマアプリなど個人間の商取引を仲介する事業者が提供する例が増えている。日本では2009年の資金決済法により、事業会社が届け出により100万円以下の決済を取り次ぐ資金移動業者になることができるようになった。

なお、売買など金銭の受け渡しだけでなく、二者間の交換や契約の履行を第三者が仲介する様々な仕組みやサービスにエスクローサービスという名称が用いられている。

クラウドソーシング

インターネットを利用して不特定多数の人に業務を発注したり、受注者の募集を行うこと。また、そのような受発注ができるネットサービス。

発注元の事業者はクラウドソーシングサイトで業務の内容や発注条件などを告知し、サイトの加入者の中で希望する人が応募する。発注元は最も適任と思われる応募者に業務を発注する。納品後、発注者はサイト側に一定の料率や料金の仲介料を、受注者に委託料を支払う。

デザインや制作物の依頼などでは希望者が作品を投稿し、発注者が気に入ったもの(だけ)を選んで買い取る、いわゆるコンペ形式(コンペティション型)の発注形態が取られることもある。

発注側にとってはこれまで取引のなかった個人などに低コストで業務や制作を発注することができ、受注側も最も困難で手間のかかる取引先の開拓をサイト側に任せることができる。フルタイムで業務に専従することが難しい副業や在宅などの働き方でも受注側として参加できる利点もある。

なお、「クラウドソーシング」の名称は、“crowd” (群衆)と “sourcing” (調達) を繋げた造語である。「クラウド」は「クラウドファンディング」(crowdfunding)などと共通で群衆などの意味がある。「クラウドコンピューティング」などの “cloud” は同音異義語であり関係ない。

暗号資産

出題:令3

暗号技術を用いて、コンピュータネットワーク上で単一の管理主体を置かなくても利用者間で安全に値を移転できる仕組みを構築し、この値に財産的な価値を見出したもの。通貨のように取引できる「暗号通貨」を指すことが多いが、他の応用例もある。

所有者の端末に、その暗号資産の取引履歴などを記録した分散台帳(ブロックチェーン)の複製が保管される。ブロックチェーンは暗号技術で保護されており、所有者が自分に有利なように記録を改竄しようとしても、他の所有者が保管する台帳と整合性が取れず、書き換えは棄却される。

この仕組みにより、現実の通貨のような中央集権的な発行主体や管理主体を置かなくても、個々の所有者によるデータ保管、所有者相互のデータのやり取りのみで安全に取引を完結させることができる。各所有者の保有高を改竄不可能な形でネットワーク上に保管し続けることができる。

ブロックチェーン上での値の移動を通貨の支払いとみなし、代金の決済などに利用できるようにしたものを「暗号通貨」(cryptocurrency)という。ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)などがよく知られ、支払いや蓄財、投資などで通貨の代わりに用いられている。

為替取引のようにネット上の交換所で現実の通貨や他の暗号通貨と交換することもできる。中央銀行のような発行主体が存在しないため財産的な裏付けは無いが、企業などが発行し、法定通貨やコモディティに価値が連動するよう設計された「ステーブルコイン」も存在する。

一方、株式や債券、会員券、引換券などに類似する、通貨以外の何らかの財産的な権利の所有や移転をブロックチェーン上に記録するシステムもあり、広義の暗号資産に含まれる。セキュリティトークン(デジタル証券)、ユーティリティトークン、NFT(非代替性トークン)などが該当する。

日本では2016年の資金決済法改正により「仮想通貨」の名称で規定が追加されたが、2020年の金融商品取引法および資金決済法の改正で呼称が「暗号資産」に統一された。日本の法制度上の「暗号資産」は通貨性のあるもの(暗号通貨)に限定され、NFTなどは該当しないとされるため、一般的な概念の “crypto asset” に含まれる範囲とは必ずしも一致しない。

アカウントアグリゲーション

利用者が所有する複数の金融機関の口座(アカウント)情報を取得し、まとめて処理・表示できるようにする仕組み。資産運用や家計簿などのアプリやネットサービスで用いられる。

アカウントアグリゲーションに対応したシステムは利用者が預金口座などを持つ金融機関のインターネットバンキングサービスなどを利用して預金残高や入出金明細などの情報を取得し、全体を集約・通算して一つの画面で一覧できるようにする。

初期に用いられた手法は「スクレイピング」を応用した方式で、利用者からIDとパスワードを預かり、利用者に成り代わってネットバンキングサービスにログインして画面を操作し、表示画面のWebページの内容を解析して必要な情報を抽出する。

この方式は人間向けのネットサービスを提供している金融機関であればアグリゲーション事業者による対応のみで利用できる汎用性の高さがあるが、利用者が金融機関のログイン情報という重要な情報を事業者に預ける形となるためセキュリティ上のリスクが高い。

近年スクレイピングに代わって徐々に普及しているのは「API連携」(オープンAPI)を応用した方式である。金融機関側は外部からアクセス可能なプログラム向けの窓口(API:Application Programming Interface)を用意し、利用者の認証と承認を経てプログラム上のやり取りで情報を取得する。金融機関側の対応が必要だが安全性が高い。

アカウントアグリゲーションは以前から資産管理アプリなどで用いられてきたが、2018年からは銀行法などの改正により「電子決済等代行業者」として金融庁への登録が必要となった。金融庁ではAPI連携によるアカウントアグリゲーションが望ましいとして全国の金融機関にAPI問い合わせを受け付ける環境を整備するよう要請している。

eKYC 【electronic Know Your Customer】

出題:令4

事業者が顧客との契約時に行う本人確認手続きを電子的な手段で行うこと。インターネットやスマートフォンなどを用いた確認手続きで、窓口に出向いたり書類を郵送する手間を省いてすべての手続きを遠隔からオンラインで即時に済ませることができる。

事業者が顧客などの身元や実在性、連絡先などを確認する手続きを「KYC」(Know Your Customer)という。従来は戸籍謄本や住民票などの書類、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの身分証を使い、窓口や郵送など物理的な方法で確認するのが一般的だった。

この確認手続きをスマートフォンやインターネットを通じて電子的に手続きを行うことをeKYCという。日本では2018年に金融庁が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)の施行規則を改正したことにより、金融機関や資金移動サービスを手掛けるネット事業者などによるKYC手続きの電子化が可能となった。

同規則ではいくつかの手続き方法を定義しているが、例えば、本人確認書類の写真をスマートフォンのカメラなどで撮影した画像と、本人の写真やビデオ通話による容貌の確認などを組み合わせることで本人確認手続きとすることができる。

オープンAPI 【open API】

出題:令6

情報システムの運用者が、その機能やサービスをプログラムから呼び出すインターフェースを外部に公開したもの。通常は内部的に利用される機能を外部に開放したものをこのように呼ぶ。金融機関のシステムを別の事業者のサービスから利用するためのものを指すことが多い。

API(Application Programming Interface)とは、あるコンピュータプログラムの機能や管理下のデータを、外部の別のプログラムから利用できるようにするための呼び出し規約のことで、要求や応答のデータ形式、呼び出し手順などで構成される。

「オープンAPI」とは外部に開かれたAPIという意味で、主に金融分野で用いられる。金融機関の情報システムに機能や蓄積された顧客の情報などは本来、自社内部でのみ用いられるが、近年では他の事業者が運用するネットサービスやアプリから利用できるよう、一定の基準や条件、契約などに基づいて開放する動きが活発化している。

これにより、金融関連のソフトウェアやサービスが金融機関の手続きやデータを取り込むことができ、利用者の利便性が高まる。例えば、家計簿アプリが利用者の契約先の銀行のオープンAPIにアクセスし、口座の入出金情報を受け取って自動的にリスト化するといった機能を実現することができる。

IoT 【Internet of Things】 ⭐⭐⭐

コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステムや、人間の検針員に代わって電力メーターが電力会社と通信して電力使用量を申告するスマートメーター、大型の機械などにセンサーと通信機能を内蔵して稼働状況や故障箇所、交換が必要な部品などを製造元がリアルタイムに把握できるシステムなどが考案されている。

これまでの情報システムとの違いとして、個々の機器の取り扱うデータ量や処理量、通信量は少ないが機器の数が桁違いに膨大であることや、従来のコンピュータ製品が人の周りや特定の場所(建物や部屋)に集中しているのに対しIoT機器は世の中の様々な場所に分散して配置される点などがある。

こうした特徴を反映し、低コストで生産でき低消費電力で稼働するICチップや、多数の機器からデータを集約して解析したり、同時に多数の機器を制御するソフトウェア技術、低消費電力で遠距離通信が可能な無線技術、環境中から微小なエネルギーを取り出す技術(エナジーハーベスティング)などの研究・開発が進められている。

LPWA (Low Power Wide Area)

IoTに必須の要素として、装置の消費電力が少なく、多数の機器を一つのネットワークに収容できる広域的な無線通信技術があり、これを「LPWA」(Low Power Wide Area)と総称する。そのような通信方式で構築されたネットワークは「LPWAN」(Low Power Wide Area Network)とも呼ばれる。

IoTを実現するには、携帯電話網など従来からある広域無線技術に比べ、十~数十kmといった遠距離や広い範囲をカバーでき、乾電池などの乏しい電源でも数か月から数年は稼働できることが求められる。一方、人間がスマートフォンなどの通信機器に求めるような高速なデータ伝送能力は必ずしも必要なく、数十~数百kbps(キロビット毎秒)程度あれば実用に供することができる。

このような特性を備えた新しい通信方式をLPWAと呼び、具体的な規格として「Sigfox」「LoRa」「Wi-Fi HaLow」「Wi-SUN」「LTE-M」「NB-IoT」「RPMA」などの方式が提唱されている。

M2M/センサネットワークとの違い

以前から、機器同士を直接繋いで自律的にシステムを運用する「M2M」(Machine to Machine)や、通信可能なセンサーを分散配置して高度な監視や制御を可能にする「センサネットワーク」(WSN:Wireless Sensor Network)などの概念が存在し、これらはかなりの部分がIoTと重複している。

ただし、IoTはインターネットへの接続を前提とするのに対し、これらの技術は閉じた専用ネットワークや独自プロトコル(通信規約)での運用を想定している場合が多い。また、M2Mやセンサネットワークは特定の目的のために機械同士が情報のやり取りすることで処理が完結する仕組みであることが多いのに対し、IoTは接続された機器と人や外部の情報システムとの相互関係がより重視される傾向がある。

IoE (Internet of Everything)

「ありとあらゆるものが接続されたインターネット」という意味で、モノのインターネットと、人やデータ、情報、ソフトウェアなどが中心の従来からあるインターネットが統合された姿を指す。

とはいえ、従来のインターネットとの違いは多数のモノが接続されている点であるため、実際上はIoTとほぼ同義として用いられることが多い。主に米シスコシステムズ(Cisco Systems)社が提唱している用語である。

ドローン

小型で無人の移動機械。無線による遠隔操縦あるいは自動操縦で飛行する無人の小型航空機を指すことが多く、クアッドコプター型のものがよく知られている。原義は(ミツバチの)「雄蜂」で、広義には無人の船や潜水艇なども含む。

ラジコンヘリや軍事用の無人機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などは以前から存在するが、2010年代半ば頃から4つの回転翼を持つ小型の無人航空機(クアッドコプター)が広く実用に供されるようになり、これを指す言葉としてドローンという語が普及した。

広義には、回転翼・固定翼に関わらず以前から存在するものも含めた無人の航空機全般を総称し、さらに、軍事などの分野では無人の船舶(無人水上艇/USV)を「水上ドローン」、無人の潜水艇(無人水中機/UUV)を「水中ドローン」などように呼ぶ場合がある。

無人のクアッドコプターは近年急激に技術の発展や社会への応用が広がっている航空機で、映像や写真の空撮、観測や測量、農薬の散布、軽量貨物の配送、災害時の被害調査や捜索、緊急物資の輸送、警備や刑事捜査、照明を搭載したドローンを編隊飛行させるエンターテインメントなどに利用されている。

スマートスピーカー 【AIスピーカー】

音声認識・合成技術を利用し、声による対話的な操作が可能なコンピュータ製品。人間の質問に答えたり、ニュースの読み上げや音楽再生などの機能を利用することができる。

スマートフォンなどを声で操作できる音声アシスタント機能を単体の据え置き型の機器として実装したもので、小さな筐体にマイクとスピーカーのみを備えたシンプルな外観の製品が多い。小さな液晶ディスプレイで画面表示を行えるタイプの製品もある。

Wi-Fiなどを通じてインターネットに接続されており、声で質問を受け付けてWeb検索を行い結果を音声で読み上げたり、配信されているニュースを読み上げたり、音声ストリーミングサービスなどを用いて音楽を再生したりすることができる。

オンラインサービスのアカウントと紐付けることで、メールやメッセージの受信通知や内容の読み上げを行ったり、スケジュールの追加や変更、リマインドなどを音声による操作や案内で利用することができる。アラームや電卓などの機能を声で呼び出すこともできる。

ソフトウェアの選択などが必要な一般的なコンピュータの操作とは異なり、人間からの入力は人に話しかけるのと同じように指示や質問をするだけでよい。例えば、「24かける365は?」と尋ねれば「8760です」と応え、「明日の朝7時半にアラームをセットして」と指示すれば「明朝7時半にアラームをセットしました」と応える。

人の声すべてを入力であると認識してしまうと他の人との会話に割り込んでしまったりして不都合なため、冒頭に決まりのセリフを言うことでスマートスピーカーへの入力を開始することを明示する仕組みになっている製品が多い。Apple HomePodであれば “Hey Siri”(ヘイ!シリ!)、Google Homeであれば “OK, Google”(オーケー!グーグル!)といった具合である。

2014年頃から大手IT企業が実用的な製品を投入し普及が始まった製品カテゴリーで、米アマゾンドットコム(Amazon.com)社の「Amazon Echo」(アシスタント名はAlexa)、米グーグル(Google)社の「Google Home」(現Google Nest)、米アップル(Apple)社の「HomePod」(アシスタント名はSiri)などが世界的に有名である。Amazon.comやGoogleは機器メーカーにアシスタント機能を提供しており、音響機器メーカーなどが対応製品を製造・販売している。

コネクテッドカー

出題:令3

無線通信でインターネットなど外部と常時接続する機能を持ち、各種の情報サービスなどと連携して高度な機能を提供する自動車。

車内のセンサー類などが収集した情報を外部の提供したり、外部から情報を受信して様々な機能やサービスを実現することができる。車内のスマートフォンなどと連携してサービスを提供する仕組みも提供されている。

例えば、各車の走行状況から割り出したリアルタイムの渋滞情報や道路情報、衝突を検知して自動的に関係機関へ通報する自動緊急通報システム、動画配信などを楽しめる車載エンターテインメント、走行記録と連動するテレマティクス保険、位置情報を利用した盗難車両追跡システムなどが利用できる。

CASE 【Computer Aided Software Engineering】

ソフトウェアの開発や改修にソフトウェアを利用すること。また、そのためのソフトウェア(CASEツール)。主に1980~90年代に用いられた概念で、現代ではほとんど聞かれない。

CASEによるソフトウェア開発では、対象業務やソフトウェアの構造・設計などを図表などを用いて可視化して作業を進めやすくしたり、特定の形式で記述された設計データから対応するプログラムコードを自動生成するなど、開発工程の一部を専用のツールを用いて自動化することができる。

CASEによる開発を支援するCASEツールは、計画・設計など、ソフトウェア開発の初期段階(上流工程)を支援する「上流CASEツール」と、コーディング・テスト・保守など下流工程を支援する「下流CASEツール」に分類される。これらのプロセスすべてに一括して対応するものを「統合CASEツール」と呼ぶ。

MaaS 【Mobility as a Service】

ITを活用して様々な移動手段や交通機関を繋ぎ合わせ、ある地点から別の地点への人の移動をサービスとして一括提供すること。乗り物の種類や提供主体の垣根を取り払い、移動をサービスとして捉えたもの。

電車やバス、航空機、船舶、タクシーなど既存の交通機関、レンタカーやカーシェアリング、バイクシェアといった車両などの貸出・共有サービス、さらには自動運転車やライドシェアといった新世代の技術やサービスを緊密に連携し、利用者の移動ニーズに応じて一括提供するシステムやサービスを指す。“Mobility as a Serviceモビリティ・アズ・ア・サービス” を直訳すると「サービスとしての移動」という意味になる。

利用者はスマートフォンアプリなどを通じて目的地や条件などを指定して検索を行うと、システムが最適な経路や移動手段の組み合わせを提案し、予約や決済までを一括して済ませることができる。従来のように移動手段や運営主体ごとに個別に手配や手続きを行う必要はなく、「目的地までの最適な移動手段」をサービスとして提供する。

利用者にとっては手続きのワンストップ化による利便性向上のほか、人によっては自家用車が不要になり家計負担が軽減されたり、通勤の経費精算が簡素化されるといったメリットが考えられる。交通機関や事業者側でも膨大な移動履歴のデータを活用することができ、サービス提供を最適化・効率化したり、移動先の施設等と連携してサービス利用の活性化を進めることができる。

地域や行政などの視点から見ても、域内の交通が最適化されることで交通渋滞や大気汚染が軽減されたり、観光客など外来者の移動の活発化、高齢者など交通弱者の外出機会の増大などが期待でき、地域経済の活性化や住民の厚生の向上に資するとされる。鉄道やバスなどの公共交通機関は公営であることも多く、企業だけでなく国や自治体などでもMaaSに関する調査・研究が進められている。

ワイヤレス給電 【無線給電】

ケーブルや金属端子を接することなく、電源から機器まで空間を経て電力を供給する技術。電磁波を利用して無線通信のように物理的に接していない装置間で送電し、機器の駆動や充電を行う。

電源に接続した送電素子と、規定の範囲内で離れた位置にある受電素子の間で電磁波によるエネルギーの伝送を行う。様々な規模や用途での使用が見込まれるが、近年実用化が進んでいるのは携帯機器の充電装置である。

機器をパッド型の装置に乗せるだけで充電でき、同じ規格であれば複数の機器を一つの装置で充電できる。機器側に電源端子が不要になるため、故障に強く防水性や防塵性に優れた筐体を設計可能になる。

充電などに用いられるのは装置間を近接させる非放射型の技術で、磁界共鳴方式、電界結合方式などが知られるが、最も広く普及しているのは電磁誘導方式である。これは近づけたコイルの片方に交流電流を流すと磁界の変化を通じてもう一方に誘導電流が生じる電磁誘導の原理を応用したもので、伝送可能距離は数cmと短いが、エネルギー効率が高く装置が小型軽量、低コストというメリットがある。

遠距離を送電可能な方式(放射型)として通信用の電波や指向性のマイクロ波、レーザーを利用する方式もあり、無線通信用に放射される微弱な電波からエネルギーを取り出し微小なセンサー機器などを駆動させるエネルギーハーベスティング技術や、人工衛星で太陽光発電を行い地表の受電設備へ超長距離をマイクロ波で送電する技術などが研究されている。

Qi (チー)

小型の情報機器などで用いられるワイヤレス給電の標準規格の一つ。業界団体のワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC:Wireless Power Consortium)が提唱している。

主にスマートフォンなどの小型の電子機器のバッテリー充電を行うために用いられる方式で、パッド型やスタンド型など送電装置に機器を置いておくと無線給電で充電される。Qiに準拠した機器であれば送電側と受電側の機器のメーカーが違っても使用できる。

WPCは2008年から標準化活動を行っているが、当初は出力が低かったこともあり普及は低調で、2010年代後半になり米アップル(Apple)社のiPhoneシリーズや韓国サムスン(Samsung)社のGalaxyシリーズなどが対応したことで市場に対応機器が広く出回るようになってきた。

2010年の最初の規格では5Wまでの低出力の仕様(BPP:Baseline Power Profile)が定められ、2015年には出力を15Wまで高めた仕様(EPP:Extended Power Profile)が策定された。メーカーが独自に仕様を規定するPPDE(Proprietary Power Delivery Extension)という仕組みもあり、同じメーカーの製品間で使用できる(他メーカーの装置と組み合わせた場合はBPPあるいはEPPで送電する)。

クラウドサービス

従来は手元のコンピュータに導入して利用していたようなソフトウェアやデータ、あるいはそれらを提供するための技術基盤(サーバなど)を、インターネットなどのネットワークを通じて必要に応じて利用者に提供するサービス。

機材やソフトウェア、処理性能、記憶領域、ファイル、データなど何らかの計算資源をインターネットなどの通信ネットワークを通じて提供し、利用者がいつでもどこからでも必要なときに必要なだけ資源にアクセスできるようなサービスの総称として用いられる。

どのような資源をサービス化したものかによって大きく3つに分類される。「SaaS」(Software as a Service)あるいは「ASPサービス」(Application Service Provider)は特定の機能を提供するアプリケーションソフトをサービス化したもので、利用者はWebブラウザなどを通じて事業者のサーバにアクセスし、その機能やデータを利用する。

「PaaS」(Platform as a Service)はソフトウェアの実行基盤であるオペレーティングシステム(OS)や言語処理系が導入済みのサーバ環境をサービス化したもので、契約者は自らが必要なソフトウェアを導入し、ネットワークを通じてその機能を利用する。

「IaaS」(Infrastructure as a Service)または「HaaS」(Hardware as a Service)は情報システムの運用基盤となるコンピュータ自体や通信回線などをサービス化したもので、契約者はOSやアプリケーションなど必要なソフトウェアやデータを導入して運用する。

いずれの場合も利用者はパソコンやスマートフォンなど最低限の操作環境(クライアント)さえあれば基本的な機能を利用することができ、ハードウェアやソフトウェア、データなどの資源を固定的に所有したり持ち歩いたりする必要がない。利用者に属するデータや情報も事業者側のコンピュータに保存されるため、使用環境(場所や端末など)が変わっても自らの資格情報(アカウント)を入力することで同じように利用できる。

かかるコストも従来のような個々の資産の購入代金ではなく、利用期間や使用量に応じた都度課金や月額課金などサービス利用料の形となる。個人向けのサービスでは基本的な機能が無料で提供され、追加の機能や記憶容量などにのみ課金される方式も多い。

スマートシティ

出題:令1秋

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの最先端の情報・通信技術(ICT)を活用し、管理の効率化や行政サービスの向上、新たな価値の創出に取り組む都市や地域のこと。

行政が中心となり、企業や民間機関、市民などと共同でデジタル技術の広範な導入・活用を進めることにより、行政の効率化、市民生活の向上、地域内の諸課題の解決や緩和、ビジネス環境の競争力強化、省エネや再生エネルギー利用の促進などを推進する政策である。

具体的な事例として、カーシェアリングや乗り合いタクシー、レンタサイクルなどの整備やこれらを連携させたMaaS(Mobility as a Service)の構築、自動運転バスやドローン配達など新技術の社会実装、駐車場や駐輪場の空き状況のリアルタイム配信などが知られている。

日本では、政府が2016年に発表した第5期科学技術基本計画の中で提示した未来社会の構想「Society 5.0」の一環として提唱され、内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省などがスマートシティ推進に取り組む自治体への支援施策などを推進している。

スマートファクトリー

工場にAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの先端的なデジタル技術を導入し、自動化や効率化、コストや期間の削減、品質向上などを図る試み。また、そのような高度に自動化された工場。

製造装置や搬送機などにセンサーや制御装置を取り付け(あるいは内蔵型の製品に切り替え)てネットワークに接続し、中央の管理システムにデータを収集・蓄積して、一括して監視・管理することができるようにする。

様々なデータを集めて解析することで現場の状態や問題点を可視化(見える化)し、事象間の因果関係の分析や事象のモデル化を行う。モデルに基づく将来予測や制御の最適化を行い、結果を再びデータとして観測し、さらなる工程の改善に繋げる。

スマートファクトリーはデジタル技術を前提とした製造工程の作り直しであり、生産におけるデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)とも呼ばれる。デジタル化された製造現場は計画や調達、更には販売や経営ともシステム接続されてリアルタイムに連動し、部門をまたいだ全体最適化を可能とする。

マシンビジョン 【MV】

機械のシステムの一部に画像や動画の認識システムを搭載し、機械の制御に応用したもの。工場の自動検査システムなどが該当する。

コンピュータで画像や動画のデータを解析し、何がどのように写っているのかを割り出す技術を「コンピュータビジョン」(CV:Computer Vision)という。マシンビジョンはこれを機械に組み込んで制御に応用した仕組みである。

光学センサーやカメラを組み込んだ機械システムを構築し、センサー部分から入力されたデジタル画像情報を内蔵された組み込みコンピュータで処理する。処理結果は操作員に知らせたり、動作に反映させる。

応用例として、ベルトコンベアを流れる製品のカメラ映像を処理し、外観から不良品を選別して自動的に抜き取る検査機、産業用ロボットが加工を行う位置合わせを行うためのガイド、製品や荷物に貼付されたバーコードやシリアル番号の自動読み取り機などがある。

HEMS 【Home Energy Management System】

出題:令5

家庭内の電気設備や家電製品の稼働状況や電力使用量を監視・記録し、また、設備を遠隔から制御することにより、電力使用量や電力料金の低減・最適化を図る情報システム。

家庭内の照明や家電製品、電気設備、電力配線を監視し、各機器の電力使用状況をリアルタイムに表示したり、遠隔から自動的に電源のオン・オフや給電量の調整などを行い、電力の浪費を減らすことができる。

また、家庭用燃料電池や太陽光発電パネル、家庭用蓄電池など発電・蓄電設備がある場合には、電力会社からの受電・送電設備と一括して管理し、電気料金の高い時間帯に積極的に発電・売電したり、安い時間に充電するといった制御を行い、電力使用の最適化を行う。

組み込みシステム 【エンベデッドシステム】 ⭐⭐⭐

家電製品や産業機器、乗り物などに内蔵される、特定の機能を実現するためのコンピュータシステム。機器内の各装置の制御や利用者からの操作の受け付けなどを行う。

パソコンなどの汎用のコンピュータシステムとは異なり、要求される機能や性能が極めて限定的かつ開発時にあらかじめ特定されており、厳しいコスト上の制限から利用可能な資源にも強い制約がある。

安価なCPU(マイクロプロセッサ)や少ないメインメモリ(RAM)、プログラムを内蔵するROM(読み込み専用メモリ)などで構成され、ストレージや外部入出力(I/O)は存在しないか限定された最低限の装置のみであることが多い。こうした機能を一枚のICチップに実装したマイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)などの専用の半導体製品が用いられることも多い。

組み込みソフトウェア

組み込みシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)は「組み込みOS」(embedded OS)と呼ばれ、少ない資源で安定的に動作するよう汎用OSとは異なる設計の製品が用いられる。

機械の制御では処理の遅延が故障や事故に繋がる危険を伴う場合があるため、応答時間が一定の範囲に収まることを保証する特殊な「リアルタイムOS」(RTOS:Real-Time OS)が用いられることもある。

組み込みOS上で具体的な個別の機器の制御機能を実装したものを「組み込みソフトウェア」(embedded software)という。汎用コンピュータと違い基本的には利用者側で追加や変更を行う必要がないため、主基板などに備えられた書き換えできないメモリ装置(ROM)に固定的に記録し、それを使い続ける場合が多い。

家電や機械にも高度な通信機能や情報機能を搭載したものが増えているため、OSやソフトウェアをフラッシュメモリなど書き換え可能な記憶装置に記録しておき、出荷後にインターネットなどを通じて更新や機能追加などができるように構成されている製品もある。

歴史

1970年代初頭にマイクロプロッサが発明され実用化されるが、最初期の製品の一つである米インテル(Intel)社の「4004」を組み込んだ電卓が日本のビジコン社によって開発・発売された。小規模なコンピュータシステムにより制御される特定用途向けの電気製品という意味では組み込みシステムの先駆けと言える。

1980~90年代にかけてマイクロプロセッサやメモリの高性能化や低価格化が進むと、複雑で高機能な電化製品を中心に、専用回路や機械式の制御機構から組み込みシステムへの移行が進んでいった。

現代ではテレビやビデオレコーダー、デジタルカメラ、プリンタ、コピー機、携帯電話といった情報機器のみならず、洗濯機、炊飯器、自動車、自動販売機、券売機など、身の回りにあるほとんどの機械に何らかの組み込みシステムが搭載されているといっても過言ではない。

スマートフォンのように限りなく汎用コンピュータに近い汎用性や機能性を獲得した製品分野や、自動車のように極めて高度かつ複雑な大規模組み込みシステムが搭載される事例も見られるようになっている。

現金自動預払機 【ATM】

金融機関などが設置・運用している機械の一つで、顧客が通帳やカードなどを使い、現金の預け入れや引き出し、別の口座への送金などができるもの。

最も一般的なものは銀行が設置しているもので、自行の顧客や提携している他行の顧客が預金通帳やキャッシュカードなどを用いて、自分の預金口座への入出金や、他の口座や他行への振り込みや振り替え、残高照会、通帳記入などを行なうことができる。

対面の窓口で行う手続きの一部を機械で置き換えたもので、支店や出張所の店内の一角に並んでいるほか、都市部の駅前などにはATMのみが置かれた簡易な出張所が設置されることもある。提携している一般の店舗や商業施設に置かれたり、駅や公共施設に置かれているものもある。

証券会社や貸金業者、クレジットカード会社などが設置しているものもあり、口座への入出金、キャッシング、支払い、返済など、その金融機関に関連する現金の出し入れを行なうことができる。現金の払い出しのみが可能な機器は「キャッシュディスペンサー」(CD:Cash Dispenser)と呼ばれるが、これを含めて現金自動預払機と総称されることもある。

ファームウェア

出題:令4

コンピュータや電子機器などに内蔵されるソフトウェアの一種で、本体内部の回路や装置などの基本的な制御を司る機能を持ったもの。ハードウェアに組み込まれて提供され、一体的に動作する。

機器内部に固定的に組み込まれ、内部のハードウェアと密接に結びついており、通常の使用や操作では原則として内容の変更を行わないことから、ハードウェアに性質が近いソフトウェアとして “firm” (堅い、固定の)という語が当てられている。「FW」「F/W」などの略号で示されたり、「ファーム」と略されることもある。

パソコンやサーバなどの汎用コンピュータのほか、スマートフォンやネットワーク機器、家庭用ゲーム機、デジタル家電などのコンピュータ応用製品(組み込み機器)にも搭載される。本体の主基板などに実装された読み出し専用メモリ(ROM:Read Only Memory)など、電源オフ時にも内容が維持される不揮発メモリに記録されることが多い。

パソコンやPCサーバ(IAサーバ)に搭載されるファームウェアはオペレーティングシステム(OS)との連携方法などが規格化されており、以前は「BIOS」(Basic Input/Output System)が、現在は「UEFI」(Unified Extensible Firmware Interface)が用いられる。UEFIは正確にはファームウェアとOSの通信規格だが、パソコンに内蔵されたUEFI対応ファームウェアを略してUEFIと呼んでいる。

ファームウェアアップデート

ファームウェアがROMに記録されて提供される場合は工場出荷後に内容の変更はしない(できない)が、構成が複雑・大規模な機器や本体発売後に機能や周辺機器が追加される機器などでは、ファームウェアをフラッシュメモリなど書き換え可能な装置に記録する場合がある。

こうした機器は発売後に開発元が新しいファームウェアを配布して内容を更新・修正する。この処理や作業を「ファームウェアアップデート」という。俗に「ファームアップ」と略すこともあるが、この略し方は和製英語である。家庭用ゲーム機などでは起動時に自動的にアップデート処理が行われるが、パソコンのマザーボードやネットワーク機器などでは利用者が案内に従って特定の操作を行う必要がある場合もある。

携帯電話 【ケータイ】

電波による無線通信により屋外や移動中でも通話・通信できる、移動体通信システムおよびサービス。また、そのようなシステムで利用者が通話・通信に用いる、持ち運び可能な小型の電話機。

当局の認可を受け無線免許を取得した通信事業者が提供する電気通信サービスの一つで、建物などに固定的に設置され、事業者の有線通信網に接続された無線基地局と、利用者が所持している端末の間で無線通信を行う。基地局と電波で交信可能な範囲なら、屋内外・移動中・停止中の区別なく、いつでもどこでも通話・通信することができる。

携帯電話網は基地局および事業者の通信拠点施設を介して一般の加入電話網と接続され、各端末には加入電話と同じ体系の電話番号が割り当てられている。携帯電話間だけでなく固定回線の加入電話(アナログ電話やIP電話)や公衆電話、国際電話などと発着信・通話することができる(フリーダイヤルなど一部利用できない通話先もある)。

データ通信の利用

現代の携帯電話システムでは音声通話だけでなくデータ通信も可能で、SMSなどの文字メッセージの送受信、Web閲覧や電子メールの送受信などのインターネット接続機能・サービスを利用できる。携帯電話端末は小型のコンピュータとなっており、パソコンのようにアプリを導入して使用することができる。

通話機能を持たずデータ通信に特化した通信システムや料金プラン、通信端末(データ通信カードやモバイルルータなど)もあり、携帯電話とこれらを含む総称として「移動体通信」(mobile communication:モバイルコミュニケーション、モバイル通信)の語が用いられる場合もある。

携帯電話端末

単に携帯電話といった場合は携帯電話サービスの加入者が通話・通信のために用いる小型の電話機のことを指すことが多く、日常会話では「携帯」と略されることが多く、俗に「ケータイ」と表記されることもある。手のひらサイズの薄型・軽量の無線通信機で、充電池を内蔵し、標準的には数日から数週間連続して使用(通信可能状態で待機)できる。

筐体前面に液晶画面を備え、通話相手など各種の情報が表示される。固定電話機のように数字や記号の記されたボタンを指で押して操作する端末と、液晶画面がタッチパネルになっており、指先などで触れて操作する端末がある。

内蔵の半導体メモリや外付けのメモリーカードなどに、よく使う通話相手の電話番号と名前、メールアドレスなどを記録しておく「電話帳」機能があり、毎回数字を打鍵しなくても画面上で相手を選択するだけで発信でき、また、着信相手を名前で表示することができる。

携帯電話端末は多機能化が進み、写真や動画を撮影して保存したり電子メールに添付して送る機能や、メモ帳やカレンダー、スケジュール管理、インターネット接続などの機能を備えたものが標準的になっている。

さらに、汎用のオペレーティングシステム(OS)で動作する小型の個人用コンピュータとして機能し、様々なアプリケーションソフトを導入して機能やサービスを追加することができる端末が一般的になっており、「スマートフォン」(smartphone)と呼ばれる。スマートフォンと対比した従来型の通話機能を中心とする電話機を「フィーチャーフォン」あるいは「ガラケー」(ガラパゴス携帯電話の略)などと呼ぶことがある。

携帯電話事業者

携帯電話サービスを提供する通信事業者を「携帯電話会社」「携帯電話事業者」「移動体通信事業者」「携帯電話キャリア」(携帯キャリア、モバイルキャリア、単にキャリアとも)「MNO」(Mobile Network Operator)などと呼ぶ。

日本では1979年に当時の電電公社(日本電信電話公社)が自動車電話を開始したのが始まりで、1980年代の通信自由化でいくつかの新規事業者が参入した。その後、事業の統合や売却が進み、現在ではNTTドコモ、au(KDDI・沖縄セルラー)、ソフトバンクの大手三陣営と傘下のグループ企業に集約された。

近年では、これら大手事業者の通信インフラを借り受けて独自の携帯電話・移動体データ通信サービスを提供する「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator)と呼ばれる事業者の参入が相次ぎ、独自のブランドや付加価値を提供したり、割り切ったサービス内容で安さを売り物にするなど、大手にはない特色ある通信サービスや端末、契約プランなどを展開している。

携帯電話の通信方式

携帯電話の通信方式は世代により分類され、1980年前後に最初に実用化されたアナログ伝送方式を第1世代携帯電話(1G:1st Generation)という。いわゆるNTT方式(日本)やAMPS(米)/TACS(欧)、NMT(欧)などが含まれ、いずれも複数端末の同時接続に周波数分割多元接続(FDMA:Frequency Division Multiple Access)方式を利用している。

1990年代の第2世代携帯電話(2G:2nd Generation)では音声をデジタルデータに変換して送るデジタル伝送方式に移行し、日本では「PDC」(Personal Digital Cellular)が、日本以外のほぼ全世界では「GSM」(Global System for Mobile Communications)が普及した。複数端末の同時接続に時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)が採用されたほか、デジタル化でデータ通信が可能となった。

1990年代後半には第3世代携帯電話(3G:3rd Generation)が導入され、日欧の「W-CDMA」やアメリカの「CDMA2000」など、符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)による高速なデータ通信が可能な方式が採用された。

2010年代には3Gの通信方式を高度化した「LTE」(Long Term Evolution)が導入され、当初は3.9G(第3.9世代)とされたが、後にこれが第4世代携帯電話(4G:4th Generation)とされるようになった。4GにはLTEを高度化した「LTE-Advanced」が含まれる。

2020年代には第5世代移動通信システム(5G:5th Generation)規格が策定され、サービス導入が進んでいる。この世代から正式に世界統一規格となり、規格名称も「5G」となった。光ファイバー回線に匹敵する高速なデータ通信が可能となっている。

モバイル端末 【モバイルデバイス】

小型あるいは薄型、軽量で簡単に持ち運ぶことができ、電源コードを繋がなくても一定時間使用できる情報機器。ノートパソコンやスマートフォン、タブレット端末などの総称。

様々な場所に持ち運んで使用したり、手に持ったまま、あるいは身につけたまま使用することができる携帯型の端末で、充電式のバッテリーを内蔵し、屋外など電源の無い場所でも電池が尽きるまで使用することができる。

多くはWi-Fi(無線LAN)や移動体データ通信、Bluetoothなどの無線通信に対応し、通信ケーブルなどが無くても場所でもインターネットに接続したり周囲の機器と通信したりすることができる。パソコンや外部機器との接続、充電などのためにUSB端子などや専用ケーブルのコネクタを備える機器が多い。

具体的な製品の例として、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、スマートウォッチ、アクティビティトラッカー、GPS端末、デジタルオーディオプレーヤーなどが挙げられる。

文脈によっては、ワイヤレスイヤホンなど無線接続の周辺機器、電子辞書など通信機能のない携帯型の電子機器、カーナビゲーションシステムやETC車載器、ドライブレコーダーのような自動車などに固定的に設置される装置、モバイルルータなど人が操作する端末ではない中継機器などを含む場合もある。

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