ITパスポート単語帳 - 技術戦略マネジメント
ロードマップ ⭐⭐⭐
道路地図、計画図、予定表、工程表などの意味を持つ英単語。製品や技術、市場など特定の対象について、現在から将来のある時点までの展望や計画などを分かりやすく図や表にまとめたもの。
時間の流れを一本の道路になぞらえ、将来のどの時点で何が達成される見込みであるかを書き入れた図表のことを指す。その際、節目となる出来事や到達段階のことを「マイルストーン」(milestone:マイル標)という。ロードマップは企業の研究開発や事業展開についての見通しを示したり、ある業界や分野、市場、技術などについての将来予想を示したりするのに用いられる。
製品ロードマップ (product roadmap)
企業が提供を予定している製品をまとめた図表のことを製品ロードマップという。現在から計画可能な範囲の将来について、登場予定の製品と、それによって何を実現するのかといった目標などを時系列に並べたものを指す。
複数の製品系列や製品カテゴリーがある場合には、横軸を時間軸とする二次元のグラフで表したり、複数の段で構成される表で示したりすることもある。どの程度の未来まで計画するかは製品や市場の特性、企業戦略などにより異なるが、あまり遠い未来の経済・社会の状況や技術の発展度合いは見通すことが難しいため、数年から長くても10年程度とすることが多い。
技術ロードマップ (technology roadmap)
ある領域の科学技術・工業技術の研究・開発に携わる人たちが、その技術の将来の展望をまとめたものを技術ロードマップという。
いつどのような技術が実現しそうかを時系列に予想したもので、その内容はある程度科学的知見の裏付けがあり、多くの専門家が合意するものでなければならない。企業が自社の技術について作成することもあるが、業界団体や政府機関によって作成されることも多い。
MOT 【Management Of Technology】 ⭐⭐⭐
技術の研究・開発や継続的なイノベーションを中心とした経営管理の手法。また、それを対象とする学問分野。技術が重要な要素を占める事業や製品を持つ企業にとって必要となる。
科学技術を応用した製品・サービスを中核とする事業体が持続的に発展するために必要となる経営手法の体系であり、新技術の創出や獲得、技術への投資、製品への応用、技術資産の活用や知財・特許戦略などに力点が置かれている点が一般的な経営管理体系と異なる点である。
製造業など技術に立脚した事業を行う経営体では、独自技術により競争優位を獲得したり、技術を元に持続的に収益を挙げるビジネスモデルを確立するなど、経営資源や戦略の一環として技術を正しく取り扱う必要に迫られる。このように経営の立場から技術のマネジメントを行う手法の体系としてMOTが研究されてきた。
MOTの源流は1960年代アメリカの経営学研究にあると言われている。1980年代には半導体やバイオなど高度な科学技術を基礎とする産業の興隆、工業における日本など新興勢力からの挑戦を受けてMOTが大きく注目を集めるようになった。日本でも2000年代から工学系の大学院などでMOTを学ぶコースが整備されている。
プロセスイノベーション 【工程イノベーション】 ⭐
業務の過程・工程をこれまでの延長上にはない革新的、画期的な仕組みに改めること。工程における革新。従来より何桁も効率的な製造法などが該当する。
イノベーションとは革新、刷新、新機軸などの意味で、企業が大きく躍進したり他社を引き離すのに必要となる、従来にない根源的な変化のことを意味する。
そのような変化をどこで起こすか(起こそうとするか)に関して大きく分けて二つのアプローチがあり、その一つが、製品を製造したりサービスを提供する業務の過程(プロセス)を根本的に刷新することでコストや品質を飛躍的に改善するプロセスイノベーションである。
一方、既存製品の改良や既存の製品カテゴリーにおける新製品ではなく、従来にない画期的な製品やサービスを新たに創造することを「プロダクトイノベーション」(product innovation)という。
プロダクトイノベーション 【製品イノベーション】 ⭐
既存の製品の延長線上にはない革新的、画期的な製品を生み出すこと。製品そのものの革新。製品レベルの革新と、素材や部材レベルの革新がある。
イノベーションとは革新、刷新、新機軸などの意味で、企業が大きく躍進したり他社を引き離すのに必要となる、従来にない根源的な変化のことを意味する。
そのような変化をどこで起こすか(起こそうとするか)に関して大きく分けて二つのアプローチがあり、その一つが顧客に提供する製品やサービス自体について、画期的に優れたものを創造するプロダクトイノベーションである。
一方、製品を製造したりサービスを提供する工程・過程(プロセス)を根本的に刷新することでコストや品質を飛躍的に改善することを「プロセスイノベーション」(process innovation)という。
オープンイノベーション
企業などにおける研究開発や新事業創出の方法論の一つで、組織内で秘密裏に進めるのではなく、外部の企業や研究機関、公的機関、消費者などを巻き込んで、協力・連携して取り組むこと。
社会に変革をもたらすような斬新で革新的な技術や製品、サービス、ビジネスモデル、社会的な仕組みを生み出す活動(あるいは、その成果である新技術や新ビジネスなど)を「イノベーション」(innovation)という。
従来は企業などの組織が単独で研究開発や新規事業開拓などに取り組み、その成果を新製品や新サービスなどの形で実装することでイノベーションを実現してきた。この方式を「クローズドイノベーション」(closed innovation)という。
オープンイノベーションでは対照的に、外部の企業や研究機関、公的機関、既存顧客、消費者などを巻き込んで、各自の知識や技術、技能、知的財産、ノウハウ、アイデアなどを持ち寄り、共通のテーマについて共同で創発的な活動に取り組むことでイノベーションを引き起こすことを企図する。
これにより、自社内では得られない新しい発想やアイデアの取り込み、自社単独では成し得ない水準の製品やサービスの実現、外部との相乗効果による予期し得ない革新などの効果が得られることが期待される。共同作業による開発コストや期間の削減が見込める場合もある。
ただし、意図しない営業秘密やノウハウが他社に流出したり、知的財産を公開することで競争上の優位を失ったり、責任の所在が曖昧になり大した成果が得られないまま時間とコストを浪費してしまったり、協働する主体間で目的や理念が十分に共有されず「同床異夢」になるなどのリスクや短所もある。
魔の川 ⭐
企業における技術経営(MOT)上の概念の一つで、新技術の研究成果を製品開発に繋げる困難さのこと。出川通氏が2004年の著書「技術経営の考え方 ~MOTと開発ベンチャーの現場から」で提唱した。
企業の技術研究・開発における研究段階と開発段階を分かつ障壁で、基礎技術の研究成果を元に、新技術が市場のどのようなニーズを満たすことができるのかを探り、具体的な新製品、新サービスの開発プロジェクトとして立ち上げる困難さを表している。
氏は企業が新たな技術を研究し、産業として成立させるまでの過程を「研究」「開発」「事業化」「産業化」の4段階に分けて分析した。魔の川の後段階で、開発から事業化に繋げる困難さを「死の谷」、製品の市場投入から産業としての確立に繋げる困難さを「ダーウィンの海」と呼んでいる。
死の谷 ⭐
企業における技術経営(MOT)上の概念の一つで、新技術の製品開発から事業化に繋げる困難さのこと。出川通氏が2004年の著書「技術経営の考え方 ~MOTと開発ベンチャーの現場から」で提唱した。
企業の新技術応用における開発段階と事業化段階を分かつ障壁で、製品開発から実際に製品発売やサービス開始に漕ぎ着けるまでの困難さを表している。製品であれば調達や生産、流通の手配を整えなければならず、巨額の資金が必要となる。失敗したときの痛手の大きさを深い谷になぞらえている。
氏は企業が新たな技術を研究し、産業として成立させるまでの過程を「研究」「開発」「事業化」「産業化」の4段階に分けて分析した。死の谷の前段階で、研究から開発に繋げる困難さを「魔の川」、後段階で、製品の市場投入から産業としての確立に繋げる困難さを「ダーウィンの海」と呼んでいる。
ダーウィンの海 ⭐
企業における技術経営(MOT)上の概念の一つで、新製品の事業化から産業化へ至る困難さのこと。出川通氏が2004年の著書「技術経営の考え方 ~MOTと開発ベンチャーの現場から」で提唱した。
市場に投入された新製品や新サービスが既存製品や競合他社との競争、消費者や想定顧客の認知や購入の壁、顧客の評価などに晒されながら、市場に定着する困難さを表している。市場で行われる製品や企業間の生存競争や淘汰、環境への適応といった過程をダーウィンの進化論に重ね合わせた表現である。
氏は企業が新たな技術を研究し、産業として成立させるまでの過程を「研究」「開発」「事業化」「産業化」の4段階に分けて分析した。ダーウィンの海の前段階で、研究から開発に繋げる困難さを「魔の川」、開発から事業化に繋げる困難さを「死の谷」と呼んでいる。
ハッカソン ⭐⭐
ソフトウェア開発に関するイベントの一種で、参加者が会場に集って数時間から数日をかけて集中的に作業に取り組み、一つの技術分野や製品、テーマなどに関連するコンピュータプログラムを開発したり、既存のプログラムを改良したりするもの。
「ハック」(hack)と「マラソン」(marathon)を組み合わせた造語である。主催者によってテーマや取り上げる技術、目的などが設定され、参加者が一人あるいはチームでどのようなプログラムを作るか考え、開発に取り掛かる。短いものでは数時間の場合もあるが、長いものでは数日から一週間程度、会場に泊まり込みで作業を行うイベントもある。
会期の終わりに、各々が取り組んだ内容を説明したり、実際に作ったものを動かして見せたりといった発表の場が設けられる。競技形式やコンテスト形式で審査や採点などを行い、勝者や優秀者を表彰したり、賞品や賞金を授与する場合もある。
オープンソースソフトウェアに関連するハッカソンでは、新しい単体のプログラムの開発よりも、公開されている既存のソフトウェアに含まれる問題点を修正したり、新機能を追加したり、改良や改善を行なったりといったことに力点が置かれることもある。
近年では、ソフトウェアの開発や改良だけでなく他の対象や分野でも、参加者が一堂に会し、協同で長時間集中して創造的な作業に取り組むイベントを「~ハッカソン」あるいは「~ソン」(~thon)と呼ぶことがある。新しいアイデアを産み出す「アイデアソン」(ideathon)、ものづくりを行う「メイカソン」(makerthon)などである。
キャズム
新しいアイデアや技術に基づく製品やサービスの普及に関する理論の一つで、ハイテク製品では普及の初期と中期の間に「深い裂け目」があり、多くの新製品がこれを超えられずに脱落してしまうというもの。
アメリカの経営コンサルタント、ジェフリー・ムーア(Geoffrey A. Moore)氏が1991年の著書 “Crossing the Chasm” (キャズムを越える)の中で提唱した概念で、情報機器などのハイテク製品によく見られる、製品化初期に失速し普及に失敗する事例を「谷越え」になぞらえた表現である。
1962年にエベレット・ロジャース(Everett M. Rogers)氏が提唱したイノベーションの普及に関する理論では、まず新しもの好きの「イノベーター」が新しいアイデアを採用し、続いてオピニオンリーダー的な「アーリーアダプター」、大衆的な人々のうち新しいものに親和的な「アーリーマジョリティ」、新しいものにあまり乗り気ではない「レイトマジョリティ」、最後まで頑なに採用しない「ラガード」の順に普及が進むとされる。
ムーアはコンピュータ製品などのハイテク市場では、この理論におけるアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に他の製品カテゴリーやー市場では見られない深い亀裂のような断絶が生じており、順調に普及するかに見えた新製品が突如として失速して普及に失敗して消えていくことを指摘した。
ハイテク関連製品に固有のこのような現象が起きる原因として、ムーアは製品に対する期待の違いを挙げている。初期の採用者は技術や体験の斬新さを求める一方、大衆的な集団は実用性や安心感を重視しており、ハイテク製品では両方の期待に同時に応えるのがしばしば困難になる。
例えば、新技術に基づき設計されたコンピュータ製品やソフトウェア製品は技術的な新機軸に挑戦するため従来製品との互換性や相互運用性を犠牲にせざるを得ない場合が多く、初期の採用者は新しさに惹かれていち早く購入するが、大衆層は手持ちのデータやソフトウェアが使えなくなる不便さや周囲からの孤立を恐れ導入に二の足を踏む。
デザイン思考 【デザインシンキング】 ⭐
デザイナーがデザインを行う際に見られる認知パターンや思考過程のこと。また、これを体系化し、デザイン以外の様々な問題解決プロセスに応用する方法論。
何かをデザインする際に共通して見られる過程を考察・整理したもので、人々が求めているものに対する理解、課題を解決する創造的なアイデアの考案、試作や試験の繰り返しなどで構成される。問題に対するこのようなアプローチは、明確に定義されていない、または未知の複雑な問題に取り組む場合に特に有用となる。
5つのステップ
2005年にスタンフォード大学ハッソー・プラットナー・デザインスクール(d.school)がまとめた、「共感」(emphasize)、「定義」(define)、「アイデア出し」(Ideate)、「試作」(Prototype)、「試験」(Test)の5段階からなる過程がよく知られる。
「共感」は製品の利用者など、人々が求めているものを探る段階で、行動の観察や聞き取りなどを通じて理解を深める。「定義」は集めた情報を整理・分析する段階で、取り組むべき中心的な課題を導き出す。自社にとってのではなく人々にとっての課題である。
「アイデア出し」では、ブレーンストーミングなどの手法を活用して、思い込みに囚われない自由な発想で解決策に繋がるアイデアを生み出していく。多数のアイデアを分類してパターンを見出したり、統合や選択を繰り返して解決策へ落とし込んでいく。
「試作」は実際に新製品の試作品(プロトタイプ)を制作するなど、解決策を実装、具現化していく過程である。「試験」は試作品など得られた実装をテストして評価する過程で、実際に対象ユーザーに試作品を使ってもらうユーザーテストなどが活用される。
これらの過程は直線的に一度ずつ行われるとは限らず、後戻りや繰り返しが何度も行われることもある。例えば、テスト結果を受けて改良版を試作したり、試作品制作の過程で得られた知見から新しいアイデアが生み出され、試作をやり直すといったことが起き得る。
PoC 【Proof of Concept】 ⭐⭐
新しい概念や理論、原理などが実現可能であることを示すための簡易な試行。一通り全体を作り上げる試作(プロトタイプ)の前段階で、要となる新しいアイデアなどの実現可能性を示すためだけに行われる、不完全あるいは部分的なデモンストレーションなどを意味する。
新たな発見や技術、今までにないアイデアや手法、あるいは既知の要素についての試されたことのない組み合わせについて、机上の理論や構想に留まらず、具現化や実用化、応用、導入などが可能であることを実地で検証するプロセスを指す。
PoCは原理が実装可能であることを示し、計画の次の段階への進行や投資の可否を関係者が判断することを目的に行われる。成果物は核心部分のみのシンプルな構成であり、それ自体を元に実際の製品の試作品や完成品が作られることは少ない。
ビジネス上のプロジェクトの場合、コストや費用対効果、現状や他社との比較といった商業的な価値の検討はPoVなど別の工程に分けて行うことが多いが、これも含めてPoCとして実施する場合もある。
PoCは先端的な科学技術研究や工業製品の研究開発、大規模な商業プロジェクトで行われ、特に、基礎とする理論や構成要素が複雑、巨大で机上の検証では不十分なもの(航空機開発など)、実地での試行以外で効果や影響などを確かめるのが難しいもの(新薬など)、現物には多大なコストと期間が必要なため小規模な実証で出資者や関係者の理解を得る必要があるもの(映画製作など)で行われる。
ITの分野では、業務への新しい機器やシステムの導入、システム開発への新技術や新手法の適用、コンピュータセキュリティにおいて新たに発見された攻撃手法が実地で機能することを示す実証プログラム(PoCコード)などでよく知られる。
PoV 【Proof of Value】 ⭐⭐
ある製品や技術、仕組みなどが、企業の業務や事業に導入する価値があるかどうかを検証すること。実現可能かどうかは検証済みであることを前提として、事業価値の有無や程度を調べる。
例えば、あるシステムを業務に導入するか否かを検討する際に、実際に短期間、一部の業務に試験的に導入してみて、既存の仕組みと優劣を比較したり、コストに見合った価値を得られるかを実証する。
似た概念・用語に「PoC」(Proof of Concept)があり、新しい技術や仕組みなどが実現・実用可能であることを示す試行や試作などを意味する。こちらは「そもそも実現可能か」が関心事であるのに対し、PoVは実現可能であることが分かった上で「ビジネス上の意義があるか」「事業上の価値があるか」に注目する。
バックキャスティング ⭐
計画作成の手法の一つで、将来のある時点における望ましい未来を定義し、現在からそこへ到達するまでにどのような行動や変化が必要かを順に検討していくもの。
一般に、未来を考える際によく行われるのは「フォアキャスティング」(forecasting:将来予測)で、現在から状態を出発点として、過去からの傾向を延長して将来の状況を予測する。
一方、バックキャスティングでは将来実現されるべき望ましい状態とその期限を設定し、そこを出発点として過去に遡っていく。「この時点でこれを達成するには直前の段階でこうなっていなければならない」という逆算を積み重ねていき、最後に現在の状況に接続する。
1982年に加ウォータールー大学のジョン・ロビンソン(John B. Robinson)氏によって提唱された手法である。企業の長期戦略の策定や、環境問題やエネルギー問題、人口問題など長期的な取り組みを必要とする社会課題に対処するための国家による政策検討などで用いられることが多い。
リーンスタートアップ ⭐
起業の方法論の一つで、初期に資金や期間をあまりかけずに最低限の製品やサービスを市場投入し、顧客や市場の反応を見ながら改善を繰り返していく手法。
米国ではシリコンバレーのITベンチャーのように活発に起業が行われるが、一定以上の規模に成長できる企業は限られおり、成功率は極めて低い。新興起業が少しでも生き延び、事業を成功させるための新しい方法論としてリーンスタートアップが提唱された。
基本的な活動として、アイデアや仮説に基づく製品やサービス(の試作品)の「構築」(build)、これを顧客や市場へ提供し反応や結果を得る「測定」(measure)、得られたデータに基づく「学習」(learn)の3つの過程からなるサイクルを迅速に繰り返すことを目指す。
最初から製品の完成度を追求せずに、アイデアや仮説の有用性を実証するのに必要最低限の試作品(プロトタイプ)を投入する。これを「MVP」(Minimum Viable Product)という。製品は市場投入後に得られたデータに基づいて漸進的な改善を繰り返し、徐々に完成度を高めていく。
製品の仕様や機能を思い込みや思い入れで決めることは極力避け、細部が異なる複数のバージョンを同時に提供して顧客の反応を比較する「スプリットテスト」あるいは「A/Bテスト」を活用する。製品のコンセプトが市場に受け入れられない場合は大胆な方向転換(ピボット)もためらうべきではないとされる。
米起業家のエリック・リース(Eric Ries)氏が同名の著書 “The Lean Startup” で提唱した方法論で、日本でも2012年に訳書が邦題「リーン・スタートアップ」として刊行されている。氏は自身の起業体験から得た教訓が、欧米で「リーン生産方式」(lean manufacturing)として紹介されているトヨタ生産方式の発想に似ていることに気付き、“lean” の語を用いたとしている。
APIエコノミー 【API economy】 ⭐⭐
ソフトウェアの機能を外部から呼び出す規約であるAPI(Application Programming Interface)によって様々な事業者のソフトウェアやサービスを繋ぎ合わせることで生み出される新たな商業活動や経済的な価値。
APIとは、あるソフトウェアが取り扱うデータや処理を、外部の別のソフトウェアから一定の書式で記述された依頼を送付することで参照できるようにする仕組みで、オペレーティングシステム(OS)の機能をアプリケーションソフトが呼び出したり、ネットサービスの機能をWebページ上のスクリプトから呼び出したりするのによく用いられている。
この仕組みを応用して、ある事業者の保有するデータや運営するネット上のサービスを、インターネットを通じて別の事業者のサービスやアプリなどから呼び出して連携させることで、今までにない新たな機能や高い利便性が生み出される現象をAPIエコノミーと呼ぶ。
例えば、金融機関が公開するAPIを通じて顧客が自分の口座残高や入出金履歴などを参照できるようにすることで、家計簿アプリや会計ソフトに自動的に口座情報が反映されるようにしたり、地図サービスのAPIを利用してWebサイトに特定の場所の地図を埋め込み表示したり(Google Maps APIなど)、配車サービスのAPIを利用してホテルなどのアプリからすぐに車を手配できるようにする(Uber APIなど)といった事例が見られる。
API提供側のビジネスモデルは様々で、利用回数や期間、データ量などに応じて課金して対価を徴収する場合もあるが、頻度や使用量などに一定の制限を課して無償で提供し、ヘビーユーザーに有料プランを用意するフリーミアム方式も見られる。また、新規利用者の獲得や利用頻度を高めるプロモーションの一環として無償公開し、積極的に利用を呼びかける事業者もある。