ITパスポート単語帳 - ハードウェア
ハードウェア
コンピュータ本体や内部の装置、周辺機器などの物理的な実体を伴う装置や機器、およびその部品、部材のこと。それ自体には形がないソフトウェアと対比される。
コンピュータの場合、処理装置や記憶装置、入出力装置、電子基板、ケーブル類、筐体などの部品や部材、およびその総体として物理的実体としてのコンピュータのことをハードウェアという。「ハード」と略されることも多く、「HW」「H/W」などの略号で示されることもある。
これに対し、コンピュータプログラムやデータなど、それ自体は物理的な実体を伴わない要素のことを「ソフトウェア」(software)と総称する。ソフトウェアの記録や伝送、表示や実行には必ず何らかのハードウェアが必要となる。
コンピュータ以外の分野でも、施設や設備、機器、部品、資材といった物理的実体をハードウェアと呼ぶことがあり、付随する非物理的な要素と対比する文脈で用いられる。例えば、劇場の建物や設備をハードウェア、そこで催される公演をソフトウェアと呼んだり、教育機関の校舎や備品をハードウェア、提供される教育プログラムをソフトウェアと呼んだりすることがある。
英語の “hardware” の原義は金物、金属製品という意味で、機械や生活用品などについて、木製のものなどと対比して金属製であることを表す言葉だった。現代では金属製かどうかはあまり重視されず、工具や冶具、装置、設備、資材、軍用装備品などを広く総称する言葉として用いられることが多い。
コンピュータ 【電子計算機】
与えられた手順に従って複雑な計算を自動的に行う機械。特に、電子回路などを用いてデジタルデータの入出力、演算、変換などを連続的に行うことができ、詳細な処理手順を人間などが記述して与えることで、様々な用途に用いることができる電気機械のこと。
歴史的には手回しで歯車などを駆動する機械式の自動計算機なども存在したが、現代でコンピュータと呼ばれる機械は一般に、マイクロプロセッサ(CPU/MPU)や半導体メモリなどの半導体集積回路(ICチップ)を中心に構成され、記憶装置に記録されたオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトといったコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行するものを指す。
コンピュータの分類
一般的にコンピュータそのものとみなされる機器には、個人向けの汎用コンピュータである「パーソナルコンピュータ」(PC:Personal Computer/パソコン)や、企業や官公庁などの情報システムで用いられる大規模・高性能コンピュータである「サーバ」(server)や「メインフレーム」(mainframe computer)、科学技術計算などに用いる超高性能コンピュータである「スーパーコンピュータ」(supercomputer)などがある。
また、現代の電気機器の多くは内部の装置の制御などのために機器内部に小型のコンピュータシステムを内蔵しており「組み込みシステム」(embedded system)と呼ばれる。
このような組み込み型のコンピュータを備えた機器には携帯電話・スマートフォンやタブレット端末、ビデオゲーム機、通信装置やネットワーク機器、テレビ受像機、ビデオレコーダー、デジタルカメラ、電子制御の家電製品や産業機械、輸送機械などがある。
コンピュータの構成
一般的なコンピュータは、プログラムの実行状況や各装置の状態を制御する「制御装置」、データの計算や加工を行う「演算装置」、データを記録する「記憶装置」、人間や他の機器など外界との情報のやり取りを行う「入力装置」および「出力装置」などで構成される。この五つの要素を「コンピュータの五大装置」(五大機能)と呼ぶこともある。
このうち、制御装置と演算装置は現代では一つの装置や半導体チップとして統合されていることが多く、これを「処理装置」(PU:Processing Unit)という。コンピュータシステム全体の制御を司る中心的な処理装置のことを「中央処理装置」(CPU:Central Processsing Unit)という。
記憶装置は当座の動作に必要なプログラムやデータの一時的な記憶に用いる「主記憶装置」(メインメモリ)と、永続的な記録に用いる「外部記憶装置」(ストレージ)あるいは「補助記憶装置」に分かれていることが多い。
計算手順はCPUに対する命令の列を記憶装置にデータとして記録し、順に読み出して実行していく方式(プログラム内蔵方式)になっており、これを「コンピュータプログラム」あるいは単にプログラムという。
パソコン 【PC】
個人向けの小型、低価格の汎用コンピュータ製品。個人が手元に置いて直接操作して利用するもので、利用者がソフトウェアを導入することで様々な用途に利用できる。
現代のPCは本体および表示装置(ディスプレイ)、キーボード、マウスなどの機器で構成される。狭義の「PC」はこのうち本体部分を指し、プログラムを実行しデータを処理するCPU(マイクロプロセッサ)、プログラムやデータを一時保存するメインメモリ(RAM)、永続的に保管するストレージ(外部記憶装置)、マザーボード、電源ユニット、外部入出力端子などの部品で構成される。
ソフトウェア環境として汎用性の高いオペレーティングシステム(OS)が導入され、利用者が用途や目的に応じて必要なアプリケーションソフトを導入して使用する。OSはWindowsやmacOSなどの製品が本体に導入済みの状態で販売されることが多いため、PCの構成要素の一部とみなすことも多い。
形態による分類
<$Img:Laptop-PC.jpg|right|rupeshtelang|https://pixabay.com/illustrations/computer-laptop-worksheet-5433031/>机上に据え置きで利用する形態の製品を「デスクトップPC」(desktop PC)と呼び、その中で、筐体に高さがあり縦置きする形状のものを「タワーPC」(tower PC)という。デスクトップ型はディスプレイやキーボードなどの装置が別々に提供され、ケーブルや無線で接続して使用する形態が多いが、ディスプレイと本体が一体化している製品もある。
一方、すべての装置が薄型の小型の筐体に一体化していて持ち運び可能な形態の製品を「ノートPC」(laptop PC)という。二枚の板状の部材をヒンジで繋いで開閉できるようにした形状で、内側の片面が液晶ディスプレイ画面に、もう一方がキーボードやタッチパッドとなっている。
近年ではディスプレイに触れてタッチパネルとして操作できる機種も増えており、ディスプレイ側をヒンジから取り外して単体でタブレット端末としても使用できる「2in1タブレット」と呼ばれる製品カテゴリーも一般的になっている。
機種による分類
<$Img:Mac-Image.jpg|right|Mac>現代のPC製品は大きく分けて2系統に分類できる。一方は米マイクロソフト(Microsoft)社の「Windows」(ウィンドウズ)をOSとして使うことが多い「Windowsパソコン」あるいは「PC/AT互換機」と呼ばれる製品群で、米インテル(Intel)社製CPUや他社の互換製品を用いるなど、メーカーが異なっても仕様や設計の多くが共通している。
もう一方は米アップル(Apple)社が一社単独で展開する「Mac」(マック)シリーズ(旧称Macintosh:マッキントッシュ)で、同社が本体および専用のOSである「macOS」(マックオーエス)、主要な周辺機器やソフトウェアを一貫して提供している。
「PC」という表現は両者を含む個人向け小型コンピュータの総称とすることが多いが、「パソコンとMac」のようにWindowsPCのみを指す狭い意味で用いる人もいる。英語でも事情は似通っており、“PC” という略称でWindowsPCのみを表し、“PC vs Mac” のように表記する人がいる。その場合、総称としては省略しない “personal computers” を用いることが多い。
近年では、米グーグル(Google)社の「Chrome OS」(クロームオーエス)を搭載した「Chromebook」(クロームブック)シリーズが第三勢力として台頭しつつあり、Windowsが動作するが英アーム(ARM)社系CPUを採用しIntel系とはソフトウェアの互換性が限られる製品群など、従来の枠組みには収まらない機種も増えてきている。
サーバ 【サーバー】
コンピュータネットワークにおいて、他のコンピュータに対し、自身の持っている機能やサービス、データなどを提供するコンピュータのこと。また、そのような機能を持ったソフトウェア。
コンピュータ(ハードウェア)のことを明示的に指し示す場合は「サーバコンピュータ」「サーバマシン」「サーバ機」などと呼ばれ、ソフトウェアのことを指す場合は「サーバソフト」「サーバソフトウェア」「サーバプログラム」などと呼ばれる。「SV」「srv」「srv」などの略号で示されることもある。
一方、ネットワークを通じてサーバにアクセスし、その機能やサービス、データなどを受信したり利用したりするコンピュータやソフトウェアは「クライアント」(client)と呼ばれる。WebサーバにアクセスするためのWebブラウザなどが該当する。サーバとクライアントを組み合わせて構成するシステム「クライアントサーバシステム」という。
いわゆる大型汎用機(メインフレーム)などの分野では、実際の処理を担うコンピュータ本体や内部で動作するソフトウェアを「ホスト」(host)、ホストへ接続してデータ入力や画面出力を行なう装置やソフトウェアを「ターミナル」(terminal)と呼ぶ。
一般の外来語としては「ウォーターサーバー」のように末尾に長音記号「ー」を付す表記・発音が一般的だが、ITの分野では歴史的に3音以上の末尾にある “-r” 音の長音記号を省略する慣例があり、「サーバ」と表記することが多い。近年では一般的な表記にならって「サーバー」と表記する例も増えている。
サーバの種類
通常、個々のサーバ機やサーバソフトは外部に提供する機能やサービス、対応しているデータ形式やプロトコル(通信規約)が決まっており、「データベースサーバ」「Webサーバ」「ファイルサーバ」のように、提供する機能などの種類を冠して「○○サーバ」と呼ぶ。
サーバコンピュータは多数のクライアントからの処理要求に応えるため、内部の装置に高性能・大容量のものを搭載することが多い。タワー型サーバなどパソコンと同じような形態の機種と、ブレードサーバやラックマウントサーバなどサーバ専用の形態で提供される製品がある。
企業などの情報システムでサーバをクライアントと同じ建物に設置して自社運用する方式を「オンプレミス」(on-premise)という。一方、専門の事業者が運用するデータセンターに設置されたサーバを間借りしてインターネットや専用回線を通じて利用する方式を「クラウド」(cloud)という。
メインフレーム 【大型汎用機】 ⭐
大企業や官公庁などの基幹情報システムなどに用いられる大型のコンピュータ製品。最も古くから普及している製品カテゴリーで、多数の利用者や業務で共有し、大量の重要なデータや処理を扱うため、極めて高い性能や信頼性を実現している。
建物の一室やワンフロアを占めるほどの大型の本体(ホスト)と、通信回線や構内ネットワークで接続された操作用の端末(ターミナル)で構成され、日常的な操作は端末を通じて行われる。電源や処理装置、記憶装置などほとんどの構成要素が多重化され、処理性能や耐障害性の向上が図られている。
CPU(処理装置)などの部品やオペレーティングシステム(OS)などのソフトウェアの多くは各社が自社で開発・製造する独自仕様の製品で、顧客は一社からすべての要素をパッケージしたシステムとして購入する形となる。
コンピュータ上で実行される業務システム(アプリケーションソフト)は顧客の事業や業務に合わせてゼロから設計・開発されることが多く、メーカーがソフトウェア開発まで請け負ってハードウェアと一括で納品する場合と、開発受託企業(インテグレータ)がメーカーから仕入れたコンピュータにソフトウェアを導入して納品する場合がある。
ミニコンやオフコン、パソコンなど安価で小型な汎用コンピュータ製品が登場する1980年代頃までは、コンピュータといえば汎用コンピュータのことであったため、「汎用コンピュータ」という呼称は比較的新しいものである(単に「コンピュータ」と呼ばれていた)。
日本語で「汎用」と呼ばれるのは、それ以前のコンピュータは特定の用途ごとに特注で製造されるのが一般的だったからで、ソフトウェアや機器構成を柔軟に変更し、異なる種類の業務や用途に対応・共有できることは画期的なことだった。
汎用コンピュータを製造・販売できるメーカーは大手コンピュータメーカーに限られ、現在では米IBM社、米ユニシス(Unisys)社、仏アトス(Atos/旧Bull)社、富士通、NEC、日立の6社が残るのみとなっている。世界的にはIBMのシェアが高いが、日本では国産の人気が高い。
近年では、一部のシステムではパソコンや小型サーバコンピュータをネットワークを通じて相互に接続した分散型のシステムが汎用コンピュータに取って代わるようになり、最盛期に比べ市場規模は大きく落ち込んでいるものの、過去のシステムとの互換性や高い堅牢性などから、伝統的大企業や官公庁を中心に一定の地位を維持している。
モバイル端末 【モバイルデバイス】
小型あるいは薄型、軽量で簡単に持ち運ぶことができ、電源コードを繋がなくても一定時間使用できる情報機器。ノートパソコンやスマートフォン、タブレット端末などの総称。
様々な場所に持ち運んで使用したり、手に持ったまま、あるいは身につけたまま使用することができる携帯型の端末で、充電式のバッテリーを内蔵し、屋外など電源の無い場所でも電池が尽きるまで使用することができる。
多くはWi-Fi(無線LAN)や移動体データ通信、Bluetoothなどの無線通信に対応し、通信ケーブルなどが無くても場所でもインターネットに接続したり周囲の機器と通信したりすることができる。パソコンや外部機器との接続、充電などのためにUSB端子などや専用ケーブルのコネクタを備える機器が多い。
具体的な製品の例として、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、スマートウォッチ、アクティビティトラッカー、GPS端末、デジタルオーディオプレーヤーなどが挙げられる。
文脈によっては、ワイヤレスイヤホンなど無線接続の周辺機器、電子辞書など通信機能のない携帯型の電子機器、カーナビゲーションシステムやETC車載器、ドライブレコーダーのような自動車などに固定的に設置される装置、モバイルルータなど人が操作する端末ではない中継機器などを含む場合もある。
スマートフォン 【スマホ】 ⭐⭐
個人用の携帯コンピュータの機能を併せ持った携帯電話。単に高機能というだけでなく、汎用のオペレーティングシステム(OS)を搭載し、利用者が後からソフトウェアなどを追加できるようになっている機種を指す。
「スマート」(smart)は「賢い」という意味で、アプリを導入して様々な用途に使用できることを表している。一般的なスマートフォンの持つ機能としては、パソコンと同じWebブラウザによるウェブ閲覧や、電子メールの送受信、文書ファイルの作成・閲覧、写真や音楽、ビデオの再生・閲覧、カレンダー機能、住所録、電卓、内蔵カメラによる写真や動画の撮影、テレビ電話などがある。
一般的な機種は、ほぼすべての操作を画面に指を触れるタッチパネルによって行う。筐体前面のほぼ全面が液晶(または有機EL)画面となっており、表示装置兼入力装置となっている。文字入力も画面に表示された文字盤(ソフトウェアキーボード)をタッチして行う。
通信機能としては無線LAN(Wi-Fi)と携帯電話事業者の移動体通信に対応し、屋内ではWi-Fi、屋外や移動中は移動体通信と使い分けることができる。Bluetoothに対応している機種ではイヤフォンなどを無線接続することができ、NFC(Near Field Communication)に対応している機種ではタッチ決済などを利用できる。
インターネットなどを通じて、その機種が搭載しているOSに対応したアプリケーションソフトを入手して追加することができる。スマートフォン向けのアプリケーションは「アプリ」(app)と略されることが多い。WebブラウザでWebアプリケーションを利用することもできる。
OSメーカーや通信キャリアなどが、自社の対応機種に追加できるアプリを探し出して入手することができるネット上の店舗「アプリストア」を運営している。SNSやメッセンジャー、ゲームソフト、オフィスソフトなど様々な追加ソフトが提供されている。販売されているものと無償配布されているものがある。
スマートフォン市場は米アップル社(Apple)社の「iOS」を搭載した「iPhone」と、米グーグル(Google)社が開発した「Android」を搭載した機種にほぼ二分されている。Android対応のスマートフォンは様々なメーカーが販売している。世界的には単一機種ではiPhoneが最も人気だが、OSとしてはAndroidの方が普及している。日本市場は世界と傾向が異なり、iPhoneが単体で過半のシェアを獲得している。
タブレット端末
個人用コンピュータの分類の一つで、板状の筐体の片面が触れて操作できる液晶画面(タッチパネル)になっており、ほとんどの操作を画面に指を触れて行うタイプの製品のこと。
タッチ操作を基本とする携帯型コンピュータのことで、AndroidやiOSなどスマートフォンと共通のオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトを利用する製品を意味することが多い。パソコンと共通のWindowsなどで動作する製品は「タブレットPC」と呼ぶことが多い。
雑誌大の広さの薄型軽量の筐体を持ち、充電池を内蔵し持ち運んで好きな場所で利用できる。無線LAN(Wi-Fi)や移動体データ通信サービスに接続機能を内蔵しており、インターネットなどを通じてコンテンツやアプリケーションソフトを入手し、閲覧・操作することができる。
ほとんどの製品はソフトウェア環境がスマートフォンと共通となっており、機能や使えるソフトの種類、対応サービスなどもスマートフォンに準じるため、画面の広いスマートフォンの一種と考えることもできる。映像の視聴や電子書籍・雑誌の読書などは画面の広いタブレット端末に向いている。
米アップル(Apple)社の「iPad」で認知度が急激に高まった製品カテゴリーで、同製品と、米グーグル(Google)社のAndroid OSで動作する、いわゆる「Androidタブレット」が市場をほぼ二分している。最近では単に「タブレット」と呼ばれることも多い。着脱式のキーボードなどを備えノートパソコンとしても利用できる製品は「2in1タブレット」とも呼ばれる。
ウェアラブル端末 【ウェアラブルデバイス】 ⭐
小型の携帯型コンピュータの一種で、体に身につけて持ち運び、身につけた状態で使用するもの。腕時計型(スマートウォッチ)や眼鏡型(スマートグラス)、指輪型などが提唱されている。
単に小さく軽いというだけでなく、身体や衣服など身につけるもののどこかに固定して使用することを前提とした装置を指し、携帯ゲーム機やスマートフォンのように手で持って操作するのが前提の機器は含まない。
具体的な形態としては、腕時計やリストバンドのように手首に固定するタイプ、眼鏡やゴーグルのように耳や鼻を使って眼前に固定するタイプ、半透過型ディスプレイで視界を覆って頭部で固定するヘッドギア型(携帯型のヘッドマウントディスプレイ)、靴や衣服に一体化して固定されているタイプ、首から下げるペンダント型、指輪型などがある。
主な機能
現在販売されている(あるいは研究・開発されている)製品は性能は低いながらコンピュータとしての体裁を整え、CPUやメモリ、ストレージ(内蔵フラッシュメモリなど)、外部入出力、通信機能、バッテリー(ボタン電池などで代替することもある)などを高密度に実装している。用途に応じてカメラやGPS、各種のセンサー類を内蔵していることもある。
利用者との入出力には様々な方式が提唱されており、時計の延長線上でボタンを用いるもの、スマートフォンなどと同じように小型の液晶画面とタッチ操作を用いるもの、マイクとスピーカーやイヤフォンで音声認識・音声合成を用いるもの、視線追跡による位置入力を利用するもの(眼鏡型)などが知られている。
歴史
1961年、アメリカでエドワード・ソープ(Edward O. Thorp)氏とクロード・シャノン(Claude Shannon)氏がルーレットゲームに勝つための身に付けられるアナログ計算機および通信装置を開発し、“wearable computer” と名付けた。1970年代頃まで同じ用途の似たような装置の研究・開発が行われていたことが知られている。
1980年代になると、デジタル表示の腕時計にコンピュータとの接続、データ送受信機能を内蔵した初期のスマートウォッチが登場する。1984年の「SEIKO RC-1000」(セイコー)や1985年の同「RC-20」、1994年の「TimeX Datalink」(Timex社)などである。1998年には利用者が開発したプログラムを導入できる汎用コンピュータとしての機能を持つ「Raputer」(SII)が発売され話題となった。
サイズや形態による性能・機能上の制約や操作性の悪さ、実用的な用途の開拓が進まなかったこともあり、ウェアラブル型装置の開発は一旦下火になるが、2010年代になると工場作業者向けの業務用スマートグラスの普及、「FitBit」などのセンサーと連動した運動記録や健康管理などの用途を売りにしたリストバンド端末などで再び注目されるようになった。
2015年には米アップル(Apple)社が腕時計型の「Apple Watch」を発売し、当初はキラーアプリケーションの不足などで苦戦したものの、内蔵センサー類による健康管理、スマートフォンと連動した通知やメッセージの確認、キャッシュレス決済などの用途で一定の普及に成功している。現在では「Google Pixel Watch」など他社製品も含め腕時計型のウェアラブル端末が広く認知されている。
スマートデバイス 【スマデバ】
パソコンのような従来からある汎用のコンピュータ製品以外で、通信機能や簡易なコンピュータを内蔵し、ソフトウェアによる高度な情報処理機能を利用できる電子機器の総称。
厳密な定義は無いが、機器内部にCPUやメモリなどコンピュータとしての機能、有線・無線によるネットワーク接続機能を持ち、外部の機器やサービスと連携したり、複数のソフトウェアを組み込んで使用するといった汎用のコンピュータに近い柔軟で高度な情報処理が可能な機器を総称する。
パソコンやサーバなど汎用的なコンピュータと異なる点として、スマートフォンであれば「電話」、スマートウォッチであれば「時計」など、主たる特定の目的や機能、形状を有する。
また、従来の情報家電や携帯情報機器の多くが固定的に特定の情報機能を内蔵していたのとは異なり、パソコンに近い汎用的なオペレーティングシステム(OS)や操作画面、ソフトウェア実行環境などを持ち、外部からソフトウェアを導入したり、インターネット上のオンラインサービスを利用することができるものが多い。
スマートデバイスに分類される製品としては、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ、スマートグラス、スマートスピーカー、スマートテレビ、スマート家電、スマート照明、スマートサーモスタット、スマートリングなどがある。企業の情報システムなどの文脈ではスマートフォンとタブレット端末の総称という意味で用いられることもある。
キーボード 【KB】
指で押し込むことができる小さな部品(鍵やボタン)が規則正しく並んだ盤状の装置。楽器の場合は音を発することができ、コンピュータの入力装置の場合は文字や記号を入力したり指示や命令を発行することができる。
音楽の分野では、ピアノのように細長い鍵が横一列に並んだ楽器(の操作部分)を意味し、「鍵盤」とも呼ばれる。コンピュータの分野では、正方形や横長の小さなボタンが縦横に整然と並び、文字や記号、コンピュータへの指示などを送信するための入力装置のことを指す。
一般的な製品には100前後のキーが4~5段に渡って並んでおり、各キーの上面(キートップ)に入力される文字や機能などが記されている。文字や記号を入力するキーは小さな正方形になっていることが多く、特殊な機能を与えられたキーは横長になっていることが多い。キートップに指先などで触れて押し込むことで、そのキーが押されたという信号がコンピュータへ送信される。
文字キーにはアルファベットやアラビア数字、記号などが割り当てられており、日本国内で使用される装置にはかな文字が刻印されているものもある。一つのキーには通常複数の文字が割り当てられており、単に打鍵したときと、「Shift」キーを押しながら打鍵したとき、かな入力モードで打鍵したとき、などのように使い分けられる。
文字キー以外に特殊な文字の入力や機能の呼び出しを行うためのキーがあり、スペース(空白)文字を入力するスペースキー(横長のためスペースバーとも呼ばれる)や、タブ文字を入力するTabキー、選択のキャンセルなどを行うEscキー、現在地の文字の削除などを行なうDeleteキー(Delキー)、「↑」など矢印の刻印された方向キー(矢印キー)など様々な種類がある。
また、他のキーと組み合わせて(同時に押して)使用するためのキーは修飾キーと呼ばれ、別の文字を呼び出すShiftキーや、文字キーをソフトウェアの機能の呼び出しに用いるCtrlキー(Controlキー)やAltキーなどがある。WindowsパソコンにしかないWindowsキーやMacにしかないCommandキーなど、機種固有の特殊なキーもある。
キーの並び方にはいくつかの標準があり、アルファベットの配列は「QWERTY」と呼ばれる並べ方が標準的に用いられる。パソコン向けにはこれに記号や特殊キーを追加した101型(英語圏向け)や、さらに日本語入力用のキーを追加した106型や109型などの規格がよく用いられる。かな文字の配列の標準としてはJIS配列や親指シフト配列(NICOLA配列)などがよく知られている。
ポインティングデバイス
コンピュータの入力装置の分類の一つで、画面上での入力位置や座標を指定する機器の総称。マウスやタッチパネル、ペンタブレット、タッチパッド、トラックボール、ジョイスティックなどの種類がある。
画面内で操作を行いたい位置を入力することができ、表示された要素を指定して処理や操作を指示することができる。キーボードなどから文字で指示を与える方式に比べ、直感的に操作でき、操作法に習熟していない状態でも指示を出しやすい。
マウスなど手元で操作する機器の場合、画面上で対応する現在位置を示す絵記号が表示され、これを「ポインタ」(pointer)あるいは「カーソル」(cursor)という。手元の機器を操作すると、その動きに応じて画面上のポインタが移動するため、指示したい場所にポインタを重ねて操作を行う。
タッチパネル(タッチスクリーン)の場合には画面に接触位置を検知するセンサーが内蔵されており、指やペンなどで画面に直接触れ、その位置に操作の指示を行なうことができる。画面上にはポインタなどは表示されないことが多い。
アイコンやウィンドウなどのグラフィック表示とポインティングデバイスによる位置入力を基本とする操作体系(ユーザーインターフェース)を「GUI」(Graphical User Interface)という。現代では一般の利用者が使うコンピュータ製品のほとんどがGUIを備えており、何らかの形でポインティングデバイスを用いる。
マウス
コンピュータの入力装置の一種で、平らな面の上で卵大の装置を動かし、移動量や方向を指示するもの。姿がネズミに似ていることからこのように呼ばれる。表側には一つから数個のボタンがあり、決定やキャンセルなどの指示を伝えるのに用いられる。
画面上には現在位置を示す小さな絵記号が表示され、これをマウスポインタ(mouse pointer)あるいはマウスカーソル(mouse cursor)という。面に接する裏側には移動を検知するセンサーが搭載されており、手で軽く押さえて盤上を滑らせると、その方向や速さを検出してコンピュータ本体に伝え、画面上のポインタが同じように移動する。利用者から見て手前側が画面下方向に、奥が上方向にそれぞれ対応している。
表側の指のかかる部分にボタンがあり、これを押して素早く離す動作(クリックという)を行うと、ポインタの指し示す位置にある対象物を選択・指定された状態にすることができる。ボタンが左右に分かれて2つある場合は、右ボタンと左ボタンで機能や役割が異なる。左右のボタンの間に回転する車輪状の部品(ホイールという)が組み込まれた製品もあり、これを回転させたり押し込む操作が利用できる。
最初に実用化されたのは内部にゴムなどでできたボールを仕込んだもので、メカニカルマウスあるいはボールマウスと呼ばれる。内部にはボールの回転を検知するセンサーがあり、裏側からボールの一部を露出させて、面上を動かすと連動してボールが転がる仕組みである。現在普及しているのは、裏面に光源と光センサーがあり、接地面からの反射光の変化を読み取って移動を検知する光学式マウス(オプティカルマウス/レーザーマウス)である。
マウスの感度
マウスの感度(センサーの分解能)を表す性能指標として「カウント数」という単位を用いることがある。物理的にどのくらいの距離動いたら1単位の移動としてコンピュータに伝達するかを表す値で、1インチあたりの検出回数を「dpi」(dot per inch/ドット毎インチ)という単位で表す。
例えば、分解能400dpi(400カウントとも表記される)の製品の場合、手で400分の1インチ移動させるとコンピュータ本体へ信号が送られ、対応する距離だけ画面上のポインタを移動させる。コンピュータ側の設定によるが、1カウントあたり1ピクセル移動させる設定の場合、1インチの移動が画面上で400ピクセルの移動に相当する。
感度が高ければ微妙な動きも検知することができるが、高すぎるとわずかな移動でポインタが大きく動いてしまい、かえって使いにくくなってしまうため、スイッチなどでカウント数を切り替えて好みの値に設定できるようになっている製品も多い。
タッチパネル 【タッチスクリーン】 ⭐⭐
指先や専用のペンで画面に触れることで入力を行う装置。表示装置(ディスプレイ)と入力装置が一体化したもので、指が触れた位置をセンサーで検知して、どの表示要素が指定されたかを特定し、対応する動作を行なう。
銀行のATMや駅の券売機、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤー、カーナビゲーションシステムなどでよく利用されている。複数の個所に同時に触れたことを検知できるものを特に「マルチタッチパネル」「マルチタッチスクリーン」などと呼ぶことがある。
タッチパネルは画面上に見えているものに直接触れて指示できるため、直感的で簡単に操作できる点が最大のメリットである。反面、マウスなどに比べ細かい位置の指定が難しいため、表示要素をある程度大きくしたり間隔を空けて配置しなければならない点や、文字入力はキーボードより効率が悪い、ボタンと異なり打鍵感がないため正しく入力されているか分かりづらい、そのままでは視覚障害者が利用できない、といった難点もある。
静電容量方式 ⭐
パネルの表面に指などで触れて位置などを入力することができるタッチパネルの方式の一つで、指先の接触による表面の静電容量の変化を感知するもの。
指にしか反応しないため意図せず物が触れることによる誤検知が起きにくい反面、手袋や爪、(専用の付属品以外の)ペンなどで操作することができない。反応速度や位置検出精度は良好で、耐久性や防塵・防水性にも優れるが、より簡易な方式に比べればコストは高い。
主な方式は2種類あり、ガラス基板上の導電膜の静電容量の変化をパネルの四隅ある電極で検知する「表面型」と、モザイク状に配置した透明な電極膜の容量変化をパネルの縁に縦横に並べた多数の電極で検知する「投影型」がある。
表面型は構造が比較的単純でコストが低く大型のパネルでも利用できるが、位置検出の精度は低く同時に一ヵ所の接触しか検知できない。投影型は位置検出の精度が高く複数接触点の同時検知(マルチタッチ)に対応できるが、構造が複雑でコストが高く、使用する材料の性質上大型化が難しい。
ジョイスティック
コンピュータの入力装置の一つで、鉛直方向に立てた棒状の装置(レバー)を傾けることで方向の指示を行うもの。位置を入力するポインティングデバイスの一種で、ビデオゲームの操作などによく使われる。
台座にレバーといくつかのボタンがついた形状で、レバーを握って前後左右に倒して方向を指示する。傾き具合によって強さ(移動の速さなど)を同時に指示できるものもある。手を離すと中央に戻るようにできていることが多い。
レバーや台座にはボタンが配置されている。レバー上のボタンは握った手を離さずに片手で押せる位置に配置されている。人差し指でトリガーのように押す前部のボタンや親指で押す頂上部のボタンなどである。
航空機の操縦桿を模して考案された装置で、産業機械などでは機械の操縦用に機器に固定的に設置されている場合もある。コンピュータ向けとしては、パソコンや家庭用ゲーム機にケーブルで接続する単体の装置として販売されている。アーケードゲームの筐体などに埋め込まれている場合もあり、左手側にレバーが、右手側にボタン群が配された形状になっているものが多い。
ペンタブレット 【ペンタブ】
コンピュータの入力装置の一つで、位置を指示するためのペン型の装置と、位置を検出するための板状の装置を組み合わせたもの。ポインティングデバイスの一種。
板の上でペン先を触れて滑らせると、画面上の対応する場所に軌跡をそのまま入力することができる。ペイントソフトなどと組み合わせてイラストや絵画を描くのによく用いられる。
機種によっては押し付ける圧力の強さ(筆圧)、ペンの傾き角度などを入力できるものもあり、ソフトウェアが対応していれば筆圧に応じて線の太さや色の濃さが滑らかに変化するといった現実の画材に近い描画を行うことができる。
盤面が液晶ディスプレイになっており、画面上で直に位置を指示することができる製品は「液晶タブレット」(液タブ)と呼ばれる。ペンが触れた位置でそのまま描画が行われるため、紙に描くのと同じ感覚で細かい位置の調整が可能となる。
かつては単に「タブレット」と呼ばれることが多かったが、近年ではいわゆるタブレット端末のことをタブレットと呼ぶことが増えたため、省略せずに「ペンタブレット」とするか、略して「ペンタブ」と呼ぶことが多い。また、原型となった大型で高精度の製品は「デジタイザ」(digitizer)と呼ばれる。主にCADでの設計図面の入力、製図など業務用に利用される機器である。
イメージスキャナ ⭐⭐
紙面など平面的な対象物の表面を読み取って画像データとしてコンピュータなどに取り込む装置。書類や写真、図版などを画像としてコンピュータに入力することができる。
コンピュータの入力装置の一種で、原稿面に光学ヘッドをかざして光源から光を当て、反射光を光学センサーで読み取って表面の様子を電気信号に変換する。ヘッドは微細な光源とセンサーが一列に並んだ細長い形状が多く、これを原稿面に沿って上から下に走査して全体の画像を得る。
読み取った画像は点の集まりとして表現され、どのくらい細かく画像を読み取るかの性能指標として「ppi」(pixel per inch:ピクセル毎インチ)や「dpi」(dot per inch:ドット毎インチ)が使われる。200dpiなら対象面の長さ1インチを200の点の集まりに分解して読み取る。この値が高いほど、原画に近い精細な画像が得られる。
種類
コンピュータの周辺機器として最も一般的なのは、平たい原稿面に紙面を伏せて置き、下から光学ヘッドを動かして読み取る「フラットベッドスキャナ」(flatbed scanner)である。近年ではプリンタと一体化し、コピー機の機能も併せ持つ「プリンタ複合機」の形で販売されることが多い。
自動原稿送り装置(ADF)で複数枚の原稿を連続的に装置に差し入れて自動的にスキャンする方式の機器は「シートフィードスキャナ」(ADFスキャナ)あるいは「ドキュメントスキャナ」と呼ばれる。多数の原稿を読み取る必要があるオフィス用途などで用いられる。
また、POSシステムでバーコードなどを読み取る「バーコードスキャナ」(ハンディスキャナ)や、銀塩写真のフィルムを読み取る「フィルムスキャナ」、雑誌や書籍の紙面を読み取る「ブックスキャナ」あるいは「スタンドスキャナ」(書画カメラ)など、特定の用途や対象に特化した製品もある。
OCR 【Optical Character Reader】 ⭐⭐
紙面を写した画像などを解析して、その中に含まれる文字に相当するパターンを検出し、書かれている内容を文字データとして取り出す装置やソフトウェアのこと。また、そのような方式による自動文字認識。
文字が印刷された紙などをイメージスキャナやカメラなどで撮影し、その中に含まれる線の形状などのパターンを解析して、人間の使う文字や数字、記号に相当するものを発見して文字データの並びとして出力する。
古くから郵便番号の読み取り装置などとして利用されてきたが、近年ではパソコンやスマートフォンなどでも利用できる精度の良い安価なソフトウェアも増え、書類や書籍の電子化、帳簿や伝票などの読み取りシステムなどに応用されている。
書籍のように印刷された紙面の文字は字形が美しく規則正しく並んでいるため認識しやすいが、かすれや汚れで不鮮明な箇所や、人間が手書きした文字などでは認識精度が下がる。また、漢字文化圏では文字の種類の多さや互いにそっくりな形の異なる文字の識別という独特の困難さがあり、アルファベット文化圏では筆記体の読み取りという困難さがある。
これに対し、択一式試験のマークシート式答案用紙の読み取りなどに用いられる、紙面の所定の位置が黒くマークされているか否かを光学的に読み取る装置やシステムのことを「OMR」(Optical Mark Reader:光学式マーク読取装置)という。
Webカメラ 【ウェブカメラ】
パソコンなどに接続し、撮影した映像をリアルタイムに転送・処理することができるビデオカメラ装置。ノートパソコンの多くは画面上部にあらかじめ内蔵している。
USBケーブルなどでコンピュータ本体と接続する単体の機器のほか、ノートパソコンなどの液晶画面上部のフレーム部分に内蔵された装置もある。バッテリーを内蔵し、本体とWi-Fiや独自方式(2.4GHzワイヤレス)などで無線接続する製品もある。
撮影した映像を動画データとしてコンピュータ本体にリアルタイムに転送することができ、テレビ電話(ビデオ通話)やテレビ会議(ビデオ会議)、Web会議、インスタントメッセージングなど、映像による双方向コミュニケーションに用いることが多い。動画配信サービスを用いた自撮り型のライブ配信などにも用いられる。
インターネットなどのIPネットワークに接続する能力を持ち、撮影した映像をWebなどを通じてリアルタイムに配信・公開することができるものは「ライブカメラ」「ネットワークカメラ」「IPカメラ」とも呼ばれる。撮影場所にコンピュータ本体を持ち込む必要がないため、主に防犯や監視のために用いられる。
ディスプレイ
表示(する)、展示(する)、陳列(する)、掲示(する)、露呈(する)、誇示(する)、展示品、飾り付け、見せる、示す、などの意味を持つ英単語。ITの分野では、コンピュータなど情報機器の出力装置の一つで、画面を発光させて像を映し出す表示装置を指すことが多い。
コンピュータの操作画面を映像として電気的に映し出し、処理状況の変化や利用者の操作に即時に反応して表示内容を変化させることができる。データとして記録された動画像を再生・表示することもできる。「モニター」(monitor)とも呼ばれる。
コンピュータ本体とケーブルなどで接続する単体の機器と、コンピュータの筐体の一部に埋め込まれて利用される装置がある。動作原理はテレビ受像機と同じであるため、テレビの中にはコンピュータに接続してディスプレイとして使うことができるものもある。
ディスプレイ以前に主要な出力装置として利用されていたのは印字装置(プリンタ)であり、状況や操作を表示内容にリアルタイムに反映する特徴は画期的で便利な特性だった。現代では対面利用のパソコンなどではほぼ必ずディスプレイを利用するが、サーバなど対面で操作しない用途では用意しないこともある。
ディスプレイの構造
ディスプレイの画面は格子状に規則正しく並んだ微細な画素(ドット/ピクセル)から成り、その発光状態を電気的に制御してコンピュータから受信した映像信号を表示する。初期の装置は明暗2色(白黒や緑と黒など)のモノクロ表示だったが、現在では一つの画素を光の三原色に対応する微細な素子で構成し、カラー表示できるものが一般的となっている。
画面(画素)そのものが発光する方式(CRT、有機ELなど)と、画面の背後に設置した光源(蛍光灯やLEDなど)からの光の透過度を制御して前面に光を発する方式(透過型液晶など)、太陽光など前面からの光の反射を利用する方式(反射型液晶など)がある。
ディスプレイの種類
最初に実用化されたのは「CRTディスプレイ」(CRT display)で、筐体奥の電子銃から電子線を発射し、蛍光面に衝突させて発光させる「陰極線管」(CRT:Cathode Ray Tube/ブラウン管)を利用したものだった。奥行きのある箱型の形状で重量が重く、消費電力が大きいが、発色が鮮明で視野角が広く、応答速度が速いという特徴がある。
近年広く普及しているのは薄型、軽量、低消費電力の「液晶ディスプレイ」(LCD:Liquid Crystal Display)で、据え置き型の機器のほかにも、携帯機器の筐体に備え付けられた表示画面としても幅広く採用されている。当初欠点とされた視野角の狭さや応答速度の遅さ、発色の鈍さなども他の方式と遜色ないレベルに改善され、画面の大型化、画素の高密度化が進んでいる。
近年では、液晶と同じ薄型軽量で、より消費電力が少なく発色が鮮明な「有機ELディスプレイ」(OELD)も本格的に実用化され、スマートフォンなどに採用され普及が進んでいる。
液晶ディスプレイ 【LCD】
コンピュータの操作画面を映し出す画面表示装置(ディスプレイ装置)の一種で、物質の特殊な状態の一つである液晶の性質を利用して光を制御し、像を映し出すもの。テレビ受像機としての機能を持つものは「液晶テレビ」と呼ばれる。
薄い板状の形状で、陰極線管(ブラウン管)を用いる箱型のCRTディスプレイなど旧来の装置に比べ小型、軽量、薄型という特徴がある。このため、当初はノートパソコンなど携帯型の情報機器の表示装置として採用され、徐々に据え置き型のディスプレイ装置でも主流となった。携帯電話・スマートフォンやタブレット端末などもほとんどが筐体前面に液晶ディスプレイを備えている。
液晶パネルの構造
2枚のガラス板の間に液晶状態の特殊な物質を封入した構造になっており、部分的に電圧をかけることでその位置の液晶分子の向きを変え、光の透過率を制御する。
液晶物質そのものは発光しないため、背後に蛍光灯やLEDなどの光源(バックライト)を設置し、この光を遮ったり通したりすることで像を映し出す。背面光源ではなく明るい場所で反射光を利用する装置もある。
駆動回路による分類
液晶の駆動回路の構造として、縦横2方向に格子状に電極線を巡らし、両方向から一つずつを選んで電圧を加えることで交点の位置にある液晶を駆動する「単純マトリクス方式」(パッシブマトリクス方式)と、これに加えて画素ごとにアクティブ素子を配置してより確実に駆動させる「アクティブマトリクス方式」がある。現在ではほとんどが後者で、特にその中の一方式であるTFT方式が広く普及している。
駆動方式による分類
液晶の駆動方式としては、最も初期に実用化されたTN方式やその派生形のSTN方式、DSTN方式や、VA方式、IPS方式などがある。
TN方式は液晶分子を向きの異なる2枚の偏光板の間で90度ねじれるように並べ、電圧をかけるとねじれが失われて光を遮断する方式で、安価で低消費電力だが発色や視野角では劣る。VA方式は液晶分子を垂直に並べて光を遮り、電圧を加えると分子が水平になって光を通す方式で、コントラストが高い。IPS方式は水平に寝かせた分子の向きを電圧を加えて90度回転させる方式で、視野角や発色、応答速度など多くの面で優れているが、コストが高くコントラストが低い難点もある。
ノーマリーホワイトとノーマリーブラック
液晶パネルのうち、液晶に電圧がかかっていない時に透過率あるいは反射率が最大となり、白い画面になる構造のものを「ノーマリーホワイト」(normally white)という。TN方式の液晶パネルが該当する。液晶に電圧を加えると配列が変化して透過率が下がり、光を遮って暗い色を表示できる。画面全体に黒を表示するよりも白を表示したほうが消費電力が少なくなる。
一方、液晶に電圧がかかっていない時に透過率あるいは反射率が最小となり、黒い画面になる構造のものは「ノーマリーブラック」(normally black)という。VA方式やIPS方式の液晶パネルが該当する。液晶に電圧を加えると配列が変化して透過率が上がり、光を透過・反射して明るい色を表示できる。画面全体に白を表示するよりも黒を表示したほうが消費電力が少なくなる。
有機ELディスプレイ 【OELD】
ある種の有機化合物を用いた層状の構造体に電圧をかけると発光する有機EL(エレクトロルミネッセンス)現象を応用した表示装置。コンピュータ用ディスプレイや薄型テレビ、スマートフォンなどの携帯情報機器の画面として利用されている。
ガラスなどでできた基板に有機物の発光体を蒸着し、微細な電極で電圧をかけることで発光させる。赤、青、緑の光の三原色を発する画素を規則正しく並べ、その組み合わせで色を表現する。
発色の方式には、それぞれの色を発する発光体を並べる方式と、白色光を発する発光体を敷き詰めてそれぞれの色のついたカラーフィルタを被せる方式などがある。
液晶ディスプレイなどと同じように、機器を薄い板状にすることができる薄型ディスプレイの一種で、液晶など他方式に比べ、低い消費電力で高い輝度・コントラストを得ることができ、視認性、応答速度、薄さ、軽さなどの点で優れた特性を持つ。
また、曲がった面や(プラスチックなどの)柔らかい面を表示面とすることができるなど、他方式では難しい用途や装置への応用も可能とされる。
一方、加工・製造の難しさから低コスト化や大画面化には問題を抱え、2000年代初頭の実用化からしばらくは普及が進まず、2010年代後半になりようやく薄型テレビやスマートフォンなどで液晶に代わり広く採用されるようになってきた。
無機ELディスプレイ (inorganic electroluminescent display)
特定の種類の無機化合物に電圧を加えると発行する無機EL現象を利用する表示装置を無機ELディスプレイという。有機ELディスプレイと合わせてELディスプレイと総称されることもある。
硫化亜鉛や銅などを組み合わせた無機化合物の発光体をガラス基板に蒸着し、100~200Vの交流電圧により点灯・消灯する。表示面に柔らかい素材を利用でき、大型化しやすいなどの特徴は有機ELと同様で、発光材料は有機ELより安価である。
しかし、輝度や電力効率が低く、色の再現性が悪くカラー表示が難しい、高電圧の交流電源が必要、寿命が短いなどの欠点が多く、現在まで広く普及するには至っていない。実用化された例としては医療機器のモニタやキャッシュレジスターのディスプレイ装置、スペースシャトルに搭載されたコンピュータ用のモニタなどがある。
有機発光ダイオード (OLED:Organic Light Emitting Diode)
発光ダイオードの一種で、発光材料に有機化合物を用いるもの。有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)と呼ばれる現象を応用した発光素子の一種である。
電子輸送層、発光層、正孔輸送層を層状に重ねあわせた構造になっており、両端から電圧をかけると発光層内で電子と正孔が結合し、そのエネルギーが発光物質を励起させ発光する。この発光物質に有機化合物を用いるものがOLEDである。
液晶などに比べ薄型軽量で低消費電力、高速応答、高コントラストなどの特徴があり、テレビやコンピュータ用ディスプレイ、特殊用途の照明器具などに採用されている。OLEDを利用したディスプレイやテレビを「有機ELテレビ」「有機ELディスプレイ」(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)あるいは「OLEDテレビ」「OLEDディスプレイ」という。
エレクトロルミネッセンス現象 (EL:electroluminescence)
物質がエネルギーにより励起され起こるルミネッセンス(発光)現象の一つで、半導体などに電圧を加えて起きるもののこと。
蛍光体物質が励起源から受け取ったエネルギーを発光して放出することをルミネッセンス(luminescence)という。励起源の種類から、電界により励起するエレクトロルミネッセンス(EL)、光により励起するフォトルミネッセンス(PL:photoluminescence)、電子線により励起するカソードルミネッセンス(CL:cathodoluminescence)に分類される。
ELは発光原理から注入型ELと真性ELに分類されるが、狭義には真性ELのことをELと呼ぶ場合もある。注入型EL(分散型EL)は、電界を印加することにより、半導体内に注入された電子と正孔が再結合して発光する。発光ダイオードなどが注入型ELである。真性EL(薄膜型EL)は、電界により加速した電子が半導体内で発光中心に衝突、発光中心を励起されて発光する。薄膜EL素子などがこれに分類される。
薄膜EL素子は、厚さ0.5mm程度の発光板の面上で、均一・広範囲にわたる発光が可能な点が特徴である。液晶ディスプレイのバックライトなどに使われたほか、それ自体を発光体とするELディスプレイも実用化されている。発光体にジアミン類などの有機物を使うものを「有機EL」(organic EL)、硫化亜鉛などの無機物を使うものを「無機EL」(inorganic EL)という。
ヘッドマウントディスプレイ 【HMD】
ゴーグルやヘルメット、眼鏡のような形状の、頭部に装着して使用する表示装置。目を覆うように頭部に固定すると、眼前の小さな表示面にコンピュータなどから送られてきた像が投影され、見ることができる。
頭部装着型のディスプレイ装置で、装着者の視界全体を覆うように像を写すものと、映画館のように少し離れた場所に大画面の表示装置が現れたように見えるものがある。表示面をハーフミラーにしたり、外界を写す小さなビデオカメラを内蔵するなどして、眼前の外の光景が見えるようになっている製品もあり、「透過型ヘッドマウントディスプレイ」などと呼ばれる。
左右の表示面に少しずつ違った映像を表示することで立体感や奥行きの感じられる3次元的な表示を可能としたものや、身体の移動や頭部の動きをセンサーで検知して表示内容に反映させることで映像世界内への没入感を高めることができる製品もある。
人間の感覚器官に働きかけ現実感のある環境を人工的に作り出す技術を「VR」(Virtual Reality:バーチャルリアリティ/仮想現実/人工現実感)というが、コンピュータによりリアルタイムに生成した映像をHMDに表示するシステムはVRを実現する方式の中でも特に有望なものとして近年急激に発展し、ビデオゲームなどに応用されている。
プロジェクタ
画像や映像を表示するディスプレイ装置の一つで、壁面などに設けられた平たい投影面に向かって光を照射して像を映し出す装置。大型スクリーンなどを用いて極めて大画面の表示を得ることができる。
コンピュータなどから受信した映像信号を筐体側面のレンズから強力な光線の束として照射する装置で、光を平たい面で受けると像を結んで表示内容が見える。ただの壁面でも表示できるが、布や樹脂などで作られた白色のスクリーン(幕)を用意することが多い。
映画の映写機と同じ動作原理であり、面自体が発光・発色して表示する液晶ディスプレイなどの装置に比べ低コストで巨大な表示面を得ることができる。大人数で同じ画面を見る必要がある会議や発表などの場でよく利用されるほか、機器の低価格化でホームシアターなどでの採用例も見られる。
主な種類
1970年代に実用化され、当初はテレビやモニターに用いられる「CRT」(陰極線管、ブラウン管)に表示された像をレンズで投影する「CRTプロジェクタ」が普及した。1990年代になると光源からの光を液晶パネルを通して投影する「液晶プロジェクタ」が実用化された。
2000年代には光源からの光を数百万の極微細な鏡(DMD:Digital Micromirror Device)を内蔵したマイクロチップに通して像を形成する「DLPプロジェクタ」(DLP:Digital Light Processing)が普及した。現在は液晶型とDLP型が主流となっている。高級機種には反射型液晶を内蔵した「LCOSプロジェクタ」(LCOS:Liquid Crystal On Silicon)も見られる。
プリンタ ⭐
出力装置の一つで、コンピュータなどから文字や画像、図形などのデータを受け取り、紙などに印刷する装置。
用紙をセットするカセットやトレイ、紙送り装置、印字ヘッドなどの印字機構、インクやトナーなど着色材料を貯める容器などで構成され、用紙を一枚ずつ繰り出し、端から順に必要な箇所に着色して印刷を行う。
黒など単色の印刷しかできないものと、複数の原色の着色材料を使用してカラー印刷できるものがある。多くの機種はB5版やA4版の普通紙の印刷に対応しているが、B4版やA3版などの大きな用紙に印刷できるものや、はがきや写真用紙、CDやDVDなどのレーベル面に印刷できるものなどもある。
コンピュータとはUSBケーブルやネットワークケーブル(イーサネット:Ethernet)など有線で接続する場合と、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothなどで無線接続する場合がある。デジタルカメラやスマートフォンと接続して写真などを印刷できる機種もある。
近年では、筐体上面にイメージスキャナ(画像読み取り装置)を備え、紙面を読み取ってコンピュータに画像データとして入力したり、印刷機能と連動してコピー機(複写機)として利用できる「プリンタ複合機」(インクジェット方式のプリンタの場合はインクジェット複合機とも)が一般的になっている。
印字方式によりいくつかの種類に分類される。現在主流なのは、ヘッドの先端の微細なノズルからインクを噴射して印刷する「インクジェットプリンタ」(ink jet printer)と、感光体にレーザーを照射して微細な粉末を付着させ紙に転写する「レーザープリンタ」(laser printer)である。
他にも、ヘッドの先端のピンをインクのついたテープ(インクリボン)に打ち付けて紙に転写する「ドットインパクトプリンタ」(dot impact printer)、熱を加えると黒く変色する特殊な用紙に熱したヘッドを押し当てて印刷する「感熱式プリンタ」などがある。
プリンタの性能は主に解像度と印字速度で表される。印刷解像度はどれくらい微細な点で像を構成するかを1インチあたりの点の数を意味する「dpi」(dots per inch:ドット毎インチ)という単位で表すことが多い。
印字速度は、1分あたりに印刷できる平均枚数を意味する「ppm」(pages per minute:ページ毎分)や、印字面数を意味する「ipm」(images per minute:イメージ毎分)などの単位で表すことが多い。
ラインプリンタ (line printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一行ずつ印刷していくものをラインプリンタ(line printer)という。
帳票などの印刷を行う業務用の製品で主に用いられる方式で、一度の印字動作で用紙の横幅に相当する数の文字を同時に印刷することができる。印刷方式としては縦横に並んだ微細なピンをインクリボンに打ち付けて紙にインクを写し取るドットインパクト方式(インパクトプリンタ)が多い。
シリアルプリンタ (serial printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一文字ずつ印刷していくものをシリアルプリンタ(serial printer)という。
印字ヘッドを用紙上で左右に移動させ、端から一文字ずつ順番に印字していくプリンタのことを指す。よく用いられる印字方式としては、微細なピンでインクリボンを打ち付けるドットインパクト方式(インパクトプリンタ)や、微細なノズルからインクを噴射するインクジェット方式などがある。
ページプリンタ (page printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、一度に紙面一ページをまとめて印刷できるものをページプリンタ(page printer)という。一度の印刷動作で用紙全面を印刷できるプリンタで、ほとんどの製品は印刷方式としてコピー機(複写機)などと同じ乾式電子写真方式を用いる。
光源にレーザーを用いるものを「レーザープリンタ」(laser printer)、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いるものを「LEDプリンタ」という。他の方式に比べ高速で高品質の印刷が可能だが、筐体が大きく高価なため、オフィスで利用する業務用の製品が多い。
3Dプリンタ 【3次元プリンタ】 ⭐
微細な材料を一層ずつ積み重ねて立体物を造形する装置。紙に印刷するプリンタのように、断面の形状に合わせて上から材料を吹き付けたり光線を照射したりすることからこのように呼ばれる。
材料には石膏や樹脂、金属の粉末や液体が使われ、熱やレーザー、紫外線、接着剤などの作用により固化させて層を形成する。積層面に均等に配置した材料に、断面形状に合わせて上部から光線などを当てて固化させる方式と、材料そのものを断面形状に合わせて上部から噴射する方式がある。
工業的な大量生産手法に比べると装置や原料が高額で製造に時間がかかるため、一般消費者向け製品の大量生産などには向かず、試作のような一品物、あるいは、多品種・少量をオンデマンドで素早く提供するような用途に適している。
精度を高めるほど装置が高額になり造形に時間がかかるが、3D設計データと原材料があれば即座に製作することができ、工具や工作機械、職人的な技能の熟達が不要という利点がある。従来の製造法が苦手とする様々な部材や材料の一体成型、複雑な内部構造の造形などは得意である。
データを伝送・配布すれば同じ物体をどこでも誰でも同じように作り出せる点も今までにない特徴で、模型などの分野では立体物のデータ販売(購入者が自らの3Dプリンタで造形する)など新たな試みも行われている。
1980年代初頭に発明され、当初は高額な製品がほとんどだったため一部の特殊な業務用途で用いられていたが、2010年頃から個人向けの低価格製品の登場などを受け様々な用途で使われるようになった。
製造業を中心に、製品や部品の試作、デザインモデルの製作、可動部の機構検討、治具・工具・交換部品の製造などに用いられている。建築分野で建築模型の製作に用いられたり、医療分野でCTスキャンやMRIの画像を元に患部を再現した医療用モデルの製作に用いられることもある。