SCSI 【Small Computer System Interface】
概要
SCSI(Small Computer System Interface)とは、コンピュータ本体にストレージ装置(外部記憶装置)などの周辺機器を繋いで通信するための接続方式の標準規格の一つ。1979年に考案され業界標準として広く普及していたSASI(Shugart Associates System Interface)を元に改良し、1986年にANSI(米国国家規格協会)によって最初の規格が標準化された。当初制定された規格群は複数の信号線で同時に通信を行うパラレル方式(パラレル通信)を採用したもので、単にSCSIといった場合はこの規格群を指すことが多い。後にシリアル方式を採用したSAS(Serial Attached SCSI)や、伝送媒体にIPネットワークなどを利用するiSCSIなどの規格が発行され、現在ではこれら様々な方式・規格の総称となっている。当初のパラレル方式の仕様をこれらと区別して「パラレルSCSI」(Parallel SCSI)と呼ぶこともある。
パラレルSCSI (Parallel SCSI)
初期に策定されたパラレル方式のSCSI規格は、一本の信号線を複数の機器で共有するバス型の接続方式を採用し、実際の接続形態は機器をコンピュータ本体から順番にケーブルで連結していく数珠つなぎ(デイジーチェーン接続)型となっている。
終端の端子には信号の反射を防ぐターミネータ(terminator)と呼ばれる装置を装着する(機器に内蔵されることもある)。当初の規格では50芯(Narrow規格)、後期の規格では68芯(Wide規格)のケーブルおよびコネクタを利用する。
接続された各機器はSCSI IDと呼ばれる固有の番号が割り当てられ、0から7(Narrow規格)または15(Wide規格)までの整数で識別される。機器内部に複数の装置がある場合は8台までLUN(論理ユニット番号)で識別することができる。
電気信号の伝送方式は当初、制御が容易だが伝送距離の短いSE(Single Ended:シングルエンド)方式と制御が難しいが伝送距離の長いHVD(High Voltage Differential)方式が用意されたが、後にLVD(Low Voltage Differential)方式に移行した。SEとLVDは電気的に互換性があり対応製品同士を接続できるが、HVDは他二つと互換性がなく繋ぐことができない。
SCSI-1/SCSI-2
1986年に制定された最初の規格は後にSCSI-1と呼ばれる(規格名はSCSI)もので、コンピュータに最大7台までの機器を接続でき、バス幅は8ビット、伝送速度5MB/s(メガバイト毎秒)、最大接続長6m(SE)または25m(HVD)となっていた。後継規格のSCSI-2は1989年に発行され、駆動周波数を引き上げて伝送速度を10MB/sに高速化したいわゆる「Fast SCSI」仕様と、さらにバス幅を16ビットに拡張して20MB/sに高速化した「Wide SCSI」(Fast Wide SCSI)仕様が定められた。
SCSI-3
SCSI-2を改良した第3世代の規格は、物理層、コマンド、プロトコルなど技術分野ごとに策定されたため、「SCSI-3」という名称の規格は存在しないものの、第3世代の規格群を俗にSCSI-3と総称する場合がある。
物理層の規格としてはSCSI-2を直接引き継ぐパラレル方式のUltra SCSIが策定され、狭義の第3世代SCSIは通常これを指す。一方、物理層をシリアル伝送方式に変えたSSA(Serial Storage Architecture)やIEEE 1394、TCP/IPネットワーク上でSCSIコマンドを送受信するiSCSI、光ファイバーケーブルを用いるFibre Channelなど、SCSIのコマンドやプロトコルなどを引き継いだ新たなアーキテクチャの接続仕様が生まれた。これらのうちいくつかは独立した規格として発展している。
Ultra SCSI
1992年のUltra SCSI規格では伝送速度を20MB/sに引き上げた「Ultra Narrow SCSI」(単にUltra SCSIとも)およびバス幅16ビットで40MB/sの「Ultra Wide SCSI」が定められた。1996年には伝送方式をLVDに変更し伝送速度を40MB/sに引き上げた「Ultra2 SCSI」、バス幅16ビットで80MB/sの「Wide Ultra2 SCSI」の二つの拡張仕様が追加された。
1999年には160MB/sに高速化された「Ultra160 SCSI」、2002年には320MB/sに高速化された「Ultra320 SCSI」が追加された。この頃からパラレルSCSIは他の方式に取って代わられるようになり、Ultra320が実質的に最後の規格となっている。
SCSIカード (SCSIホストアダプタ)
SCSI機器と通信するためのコネクタ及び制御用ICチップ(ホストバスアダプタ)は高性能なサーバ製品などにしか標準搭載されていなかったため、一般的なパソコンなどでSCSI機器を利用するには専用の拡張カードが必要だった。これをSCSIカードという。
コンピュータのISAバスやPCIバスなどに接続された拡張スロットに差し込んで利用するインターフェースカードの一種で、筐体背面に露出した金属製の被覆(ブラケット)部分にコネクタが配置され、ケーブルを差し込むことができる。米アダプテック(Adaptec)社の製品の人気が高く、支配的な地位を築いていた。