高校「情報Ⅰ」単語帳 - 日本文教「情報Ⅰ」 - 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築

IT 【Information Technology】

情報を取得、加工、保存、伝送するための科学技術。特に、電気、電子、磁気、電磁波などの物理現象や法則を応用したコンピュータなどの機械や器具、および、その内部で動作するコンピュータプログラム(ソフトウェア)を用いて情報を扱う技術のこと。

ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)もほぼ同義として用いられるが、ICTには通信を前提とする諸技術(インターネットなど)という意味合いをもたせる場合や、ITを含むより包括的な概念とする場合もある。

また、ITをコンピュータやデジタル通信などの原理的な側面など情報技術そのもの、ICTを社会や生活への情報技術の適用や応用、といったニュアンスで区別する場合もある。英語圏では「ICT」「IT」のいずれも用いるが、日本では「ICT」は馴染みがなく、もっぱら「IT」が使われる。

コンピュータやデータ通信に関する技術開発や応用は第二次大戦をまたいで軍事用途で始まり、1950年代からは主に産業用途で発展してきたが、個人の仕事や日常生活に深く浸透し始めたのはパソコンとインターネットが急激に普及し始めた1990年代後半からである。

ITという用語も2000年前後から一般に普及し始め、「IT業界」「IT活用」「IT戦略」「ITソリューション」「ITリテラシー」など多くの造語を生み出している。近年ではITを前提とした社会や経済、暮らしのありようなどを指す用語として「デジタル」が用いられるようになっている。

IoT 【Internet of Things】 ⭐⭐⭐

コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステムや、人間の検針員に代わって電力メーターが電力会社と通信して電力使用量を申告するスマートメーター、大型の機械などにセンサーと通信機能を内蔵して稼働状況や故障箇所、交換が必要な部品などを製造元がリアルタイムに把握できるシステムなどが考案されている。

これまでの情報システムとの違いとして、個々の機器の取り扱うデータ量や処理量、通信量は少ないが機器の数が桁違いに膨大であることや、従来のコンピュータ製品が人の周りや特定の場所(建物や部屋)に集中しているのに対しIoT機器は世の中の様々な場所に分散して配置される点などがある。

こうした特徴を反映し、低コストで生産でき低消費電力で稼働するICチップや、多数の機器からデータを集約して解析したり、同時に多数の機器を制御するソフトウェア技術、低消費電力で遠距離通信が可能な無線技術、環境中から微小なエネルギーを取り出す技術(エナジーハーベスティング)などの研究・開発が進められている。

LPWA (Low Power Wide Area)

IoTに必須の要素として、装置の消費電力が少なく、多数の機器を一つのネットワークに収容できる広域的な無線通信技術があり、これを「LPWA」(Low Power Wide Area)と総称する。そのような通信方式で構築されたネットワークは「LPWAN」(Low Power Wide Area Network)とも呼ばれる。

IoTを実現するには、携帯電話網など従来からある広域無線技術に比べ、十~数十kmといった遠距離や広い範囲をカバーでき、乾電池などの乏しい電源でも数か月から数年は稼働できることが求められる。一方、人間がスマートフォンなどの通信機器に求めるような高速なデータ伝送能力は必ずしも必要なく、数十~数百kbps(キロビット毎秒)程度あれば実用に供することができる。

このような特性を備えた新しい通信方式をLPWAと呼び、具体的な規格として「Sigfox」「LoRa」「Wi-Fi HaLow」「Wi-SUN」「LTE-M」「NB-IoT」「RPMA」などの方式が提唱されている。

M2M/センサネットワークとの違い

以前から、機器同士を直接繋いで自律的にシステムを運用する「M2M」(Machine to Machine)や、通信可能なセンサーを分散配置して高度な監視や制御を可能にする「センサネットワーク」(WSN:Wireless Sensor Network)などの概念が存在し、これらはかなりの部分がIoTと重複している。

ただし、IoTはインターネットへの接続を前提とするのに対し、これらの技術は閉じた専用ネットワークや独自プロトコル(通信規約)での運用を想定している場合が多い。また、M2Mやセンサネットワークは特定の目的のために機械同士が情報のやり取りすることで処理が完結する仕組みであることが多いのに対し、IoTは接続された機器と人や外部の情報システムとの相互関係がより重視される傾向がある。

IoE (Internet of Everything)

「ありとあらゆるものが接続されたインターネット」という意味で、モノのインターネットと、人やデータ、情報、ソフトウェアなどが中心の従来からあるインターネットが統合された姿を指す。

とはいえ、従来のインターネットとの違いは多数のモノが接続されている点であるため、実際上はIoTとほぼ同義として用いられることが多い。主に米シスコシステムズ(Cisco Systems)社が提唱している用語である。

デジタルツイン

現実世界の対象から詳細にデータを収集し、コンピュータ上でモデルとして再現する手法。分析やシミュレーション、予測などを行い、得られた有用な成果を現実にフィードバックする。

ツイン(twin)は双子という意味で、物理空間上の対象物の状態をセンサーなどで詳細に調べ、デジタル空間上にそっくりそのまま再現する。デジタルの「双子」には現実の状況が常に反映され、シミュレーションなどを行い将来予測や工程の最適化などを行うことができる。

主な応用分野として期待されているのは製造業で、製品のデジタルツインに稼働開始後の現実の状況を反映させて効率的に保守や故障予測を行うシステムや、生産ラインの機械の配置や稼働状況をデジタルツイン化して効率化や管理・運用の自動化などを進めるシステムなどの事例が見られる。

また、建設業では建設現場の機材や人員の配置や稼働状況などをデジタルツインで監視して遠隔から施工状況を詳細に把握、管理できるシステムが、公共分野では社会インフラのデジタルツインによりメンテナンスや更新を効率化するシステム、都市のデジタルツインに現実に試すことができない様々なシミュレーションを行い政策立案に活用するシステムなどが提案されている。

エッジコンピューティング

ネットワークに多数の端末が接続されたシステムにおける処理形態の分類の一つで、端末自身あるいは端末に近い場所にあるサーバが情報の集約や処理などを行う方式。遠隔地のサーバで集中的に処理を行うクラウドコンピューティングと対比される。

主にIoTシステムの実装方式として注目される方式で、制御対象の機器やセンサーなどがネットワークを通じて近隣のサーバに情報を送信し、サーバは処理を行って結果や指示を機器に送り返す。

クラウド方式との違いはサーバの設置場所で、インターネットを通じて遠隔地のデータセンターに繋ぐのではなく、地理的、ネットワーク的に近い施設や設備でサーバを運用する。自動車やスマートフォン、ドローンなど末端が移動体であるシステムでは、端末自身に処理能力を持たせる場合も含まれる。

クラウド方式では端末の数が多い場合にインターネットを通過するトラフィック(通信量)が増加しコスト要因となるが、エッジコンピューティングでは局所的な通信のみで処理を完結させることができる。リアルタイム性が重視される用途では遠隔地との通信に伴う遅延(待ち時間)を抑えられることも利点となる。

一か所の施設や設備に処理を集中させると、そこがシステム障害や災害などで停止するとシステム全体が停止してしまう危険があるが、サーバが分散していれば影響を局所化することができる。サーバやネットワークを私的に敷設した設備の範囲に留めることができれば、インターネットやパブリッククラウドなどの公衆サービスを利用することによるセキュリティリスクも低減される。

ウェアラブル端末 【ウェアラブルデバイス】

小型の携帯型コンピュータの一種で、体に身につけて持ち運び、身につけた状態で使用するもの。腕時計型(スマートウォッチ)や眼鏡型(スマートグラス)、指輪型などが提唱されている。

単に小さく軽いというだけでなく、身体や衣服など身につけるもののどこかに固定して使用することを前提とした装置を指し、携帯ゲーム機やスマートフォンのように手で持って操作するのが前提の機器は含まない。

具体的な形態としては、腕時計やリストバンドのように手首に固定するタイプ、眼鏡やゴーグルのように耳や鼻を使って眼前に固定するタイプ、半透過型ディスプレイで視界を覆って頭部で固定するヘッドギア型(携帯型のヘッドマウントディスプレイ)、靴や衣服に一体化して固定されているタイプ、首から下げるペンダント型、指輪型などがある。

主な機能

現在販売されている(あるいは研究・開発されている)製品は性能は低いながらコンピュータとしての体裁を整え、CPUやメモリ、ストレージ(内蔵フラッシュメモリなど)、外部入出力、通信機能、バッテリー(ボタン電池などで代替することもある)などを高密度に実装している。用途に応じてカメラやGPS、各種のセンサー類を内蔵していることもある。

利用者との入出力には様々な方式が提唱されており、時計の延長線上でボタンを用いるもの、スマートフォンなどと同じように小型の液晶画面とタッチ操作を用いるもの、マイクとスピーカーやイヤフォンで音声認識・音声合成を用いるもの、視線追跡による位置入力を利用するもの(眼鏡型)などが知られている。

歴史

1961年、アメリカでエドワード・ソープ(Edward O. Thorp)氏とクロード・シャノン(Claude Shannon)氏がルーレットゲームに勝つための身に付けられるアナログ計算機および通信装置を開発し、“wearable computer” と名付けた。1970年代頃まで同じ用途の似たような装置の研究・開発が行われていたことが知られている。

1980年代になると、デジタル表示の腕時計にコンピュータとの接続、データ送受信機能を内蔵した初期のスマートウォッチが登場する。1984年の「SEIKO RC-1000」(セイコー)や1985年の同「RC-20」、1994年の「TimeX Datalink」(Timex社)などである。1998年には利用者が開発したプログラムを導入できる汎用コンピュータとしての機能を持つ「Raputer」(SII)が発売され話題となった。

サイズや形態による性能・機能上の制約や操作性の悪さ、実用的な用途の開拓が進まなかったこともあり、ウェアラブル型装置の開発は一旦下火になるが、2010年代になると工場作業者向けの業務用スマートグラスの普及、「FitBit」などのセンサーと連動した運動記録や健康管理などの用途を売りにしたリストバンド端末などで再び注目されるようになった。

2015年には米アップル(Apple)社が腕時計型の「Apple Watch」を発売し、当初はキラーアプリケーションの不足などで苦戦したものの、内蔵センサー類による健康管理、スマートフォンと連動した通知やメッセージの確認、キャッシュレス決済などの用途で一定の普及に成功している。現在では「Google Pixel Watch」など他社製品も含め腕時計型のウェアラブルデバイスが広く認知されている。

クラウドコンピューティング 【クラウドシステム】

コンピュータの機能や処理能力、ソフトウェア、データなどをインターネットなどの通信ネットワークを通じてサービスとして呼び出して遠隔から利用すること。

「クラウド」(cloud)とは「雲」という意味で、IT業界ではシステム構成図などを描く際にネットワークの向こう側にある外部のコンピュータやシステムなどをまとめて雲の形の絵記号で記す慣例があることから、このように呼ばれるようになった。

従来のコンピュータ利用方式では、利用者が直接操作する端末や、同じ建物内にあるサーバなど、システム利用側が自ら保有、設置する機器上でソフトウェアやデータを管理していたが、クラウドコンピューティングではシステム本体は専門の管理施設に集約し、利用者はインターネット等の広域回線網を介してこれを使用する。

コンピュータや通信回線の性能が向上したことから実用的になった利用方式で、通常は機器を設置、運用する専門の事業者(クラウドプロバイダー)が契約者に機器やシステム、ソフトウェアの使用権を貸与するクラウドサービスの形で提供される。

インターネットから誰でも利用できるようなサービスやシステムを「パブリッククラウド」、大企業などが自社ネットワーク上で社員などが利用するために内部的に構築・運用するものを「プライベートクラウド」、両者を組み合わせたものを「ハイブリッドクラウド」という。クラウドと対比して従来型のシステムを指す場合は「オンプレミス」(on-premises)型という。

ETC 【Electronic Toll Collection】

有料道路の料金所などに設置された通信機と自動車に搭載した端末(車載器)で無線通信を行い、走行しながら自動的に料金の支払いなどを処理するシステム。

利用者は出入り口や本線料金所でETCに対応したゲート(ETCレーン)を速度を落として通り抜けるだけでよく、発券機や窓口を利用する必要がない。全国の高速道路、自動車専用道路で整備・導入が順次進められており、主要な有料道路のほとんどの出入り口には一つ以上のETC専用レーンあるいはETCゲート・有人窓口併設レーンが設けられている。

道路運営者側はETC普及により段階的に料金所の窓口・係員を削減して道路運用コスト低減が可能となり、料金所周辺の渋滞緩和の効果も期待できる。経路や混雑状況、時間帯などに応じて料金の割引などを行い、交通量の誘導・分散を行う試みも実施されている。

世界数十ヶ国で導入されているが、各国が独自の方式を規定しており、同じ国の中でも道路の運営主体によってシステムが異なる国もある。車載器ごとに支払者を固定する方式と、車載器にIDカードなどを差し込み、カードの持ち主を支払者にする方式がありる。

日本ではクレジットカード会社が発行する接触式ICカード(ETCカード)を専用の車載器に差し込む仕組みになっており、料金は紐付けられたクレジットカードの口座に請求される。機器の技術規格が統一されているため、利用者は一枚のカードがあれば(車載器のある)どの車でも、全国のどの道路でも同じように支払いを行うことができる。

ITS 【Intelligent Transport Systems】

道路交通に情報技術や通信技術を応用し、交通問題の軽減、交通の効率化や高度化などをはかる技術や製品、サービスなどの総称。自動車や道路、標識や信号機などの道路設備、駐車場、公共交通、歩行者などに関連する、情報システムを応用した機器やサービス、制度などが含まれる。

日本では1995年に当時の警察庁、運輸省、建設省、郵政省、通産省が共同で全体構想を策定した。この中ではITS全体を、ナビゲーションシステムの高度化、自動料金収受システム、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化、公共交通の支援、商用車の効率化、歩行者等の支援、緊急車両の運行支援の9分野に整理している。

現在までに、VICS(道路交通情報通信システム)やETC(電子料金収受システム)、バスロケーションシステム、自動ブレーキシステム、車線維持支援システム、事故自動通報システムのように実用化や普及が進んでいるものが数多くある一方、トラックの自動隊列走行のように実験段階のものや、構想段階で足踏み状態の技術や施策もある。

SNS 【Social Networking Service】 ⭐⭐⭐

人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス。友人・知人間のコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供したり、趣味や嗜好、居住地域、出身校、あるいは「友人の友人」といった共通点や繋がりを通じて新たな人間関係を構築する場を提供するサービスで、Webサイトや専用のスマートフォンアプリなどで閲覧・利用することができる。

主な特徴

サービスにより機能や特徴が大きく異なるが、多くのサービスに見られる典型的な機能としては、別の会員を「友人」や「購読者」「被購読者」などに登録する機能、自分のプロフィールや写真を公開する機能、同じサービス上の別の会員にメッセージを送る機能、自らのスペースに文章や写真、動画などを投稿して友人などに見せる機能がある。

サービスによっては、複数の会員でメッセージ交換や情報共有ができるコミュニティ機能、イベントの予定や友人の誕生日などを共有したり当日に知らせたりしてくれるカレンダーあるいはスケジュール機能などがある。

多くの商用サービスではサイト内に広告を掲載するなどして、登録や基本的なサービスの利用を無料としているが、一部の機能を有料で提供しているサービスもある。

SNSの種類

多くのサービスはメールアドレスなどがあれば誰でも登録できるが、普及し始めた当初は人の繋がりを重視して「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっているサービスが多かった。

現在でも、何らかの形で参加資格を限定し、登録時に紹介や審査などが必要なサービスがある。また、参加自体が自由でも、テーマや分野などがあらかじめ設定され、関係や関心のある人の参加を募っているサービスなどもある。

企業などが従業員を対象に運用する「社内SNS」や、大学が教職員や在学生、卒業生を対象に運用する「学内SNS」もあり、業務上の連絡や情報共有に使われたり、業務とは切り離して参加者間の交流の促進のために利用されたりする。「OpenPNE」や「Mastodon」など自らSNSを開設・運用することができるサーバ向けソフトウェアもあり、これを利用したプライベートな集団内のサービスも存在する。

歴史と著名なサービス

2003年頃アメリカを中心に相次いで誕生し、国内事業者によるサービスも2004年頃から普及し始めた。世界的には、初期に登録資格を有名大の学生に絞って人気を博し、後に世界最大のソーシャルネットワークに成長した「Facebook」(フェイスブック)や、短いつぶやきを投稿・共有するマイクロブログ型の「Twitter」(ツイッター:現X)、写真の投稿・共有を中心とする「Instagram」(インスタグラム)、ビジネス・職業上の繋がりに絞った「LinkedIn」(リンクトイン)などが有名である。

日本独自のサービスとしては一時会員数1000万人を超え社会現象ともなった「mixi」(ミクシィ)などが有名だが、近年ではFacebookなど海外事業者に押され利用が低迷しており、オンラインゲーム運営・提供に業態転換するなどしている。

SNS的なサービスの広がり

近年では様々なWebサイトやネットサービス、スマートフォンアプリなどに「ソーシャルな」機能が組み込まれる事例が増えており、何がSNSで何がそうでないか明確に区別することは難しくなりつつある。

例えば、料理レシピ投稿サイトの「クックパッド」(Cookpad)や、スマートフォン利用者間でチャットや音声通話などを提供する「LINE」(ライン)などにも、集団の形成を支援するコミュニティ機能や日記の投稿・共有機能などがあり、これらのサービスをSNSの一種に含める場合もある。

SNSの功罪

SNSによって、一度繋がりの途絶えた古い友人と交流を再開したり、現実に頻繁に会うことは難しい多人数と日常的な繋がりを保ったり、身の回りに同好の士がいなくてもSNSで発見してコミュニティを形成できるなど、SNSのおかげで人間関係が充実した利用者は数多くいる。

一方で、不用意に個人情報や顔写真などを公開してしまい悪意に晒されたり、素性のよくわからない人と交流を持ちトラブルに巻き込まれたり、自分の周囲では特に問題視されなかった話がネット上で拡散されるうちに非難の書き込みが殺到してしまう(「炎上」と呼ばれる現象)など、SNSによって新たに引き起こされる問題もある。

また、SNSが様々な人の間に普及し、継続して利用する期間が長くなるに連れ、上司や家族など「望まれざる」相手とのSNS上での関係や対応に苦慮したり、知り合いの(大抵は良いことしか書かれていない)書き込みを読んで自分の身上と比較してしまったり、興味が湧かない話題でも毎回反応を迫られているように感じて精神的に疲弊する「SNS疲れ」といった問題に直面し、SNSの利用を断って離れる人も増えている。

EC 【Electronic Commerce】 ⭐⭐

データ通信やコンピュータなど電子的な手段を介して行う商取引の総称。狭義にはインターネットを通じて遠隔地間で行う商取引を指す。より狭義には、Webサイトなどを通じて企業が消費者に商品を販売するネット通販を指す場合もある。

取引主体の組み合わせにより、企業(法人)間のECを「B to B EC」(B2B/Business to Business)、企業と消費者のECを「B to C EC」(B2C/Business to Consumer)、消費者間のECを「C to C EC」(C2C/Consumer to Consumer)という。

最も一般的なB to C ECには、物品のオンラインショップ(電子商店)やオンラインモール(電子商店街)、交通機関や興行のオンラインチケット販売、宿泊施設や飲食店などのオンライン予約、動画・音声・ビデオゲーム・電子書籍などデジタルコンテンツのオンライン販売、金融商品のオンライントレード、オンラインバンキングなどが含まれる。

また、B to B ECには、eマーケットプレイス(電子市場)や電子調達(eプロキュアメント)、EDI(電子データ交換)、ネット広告(販売)などが含まれる。C to C ECとしてはネットオークションやフリマアプリ、フードデリバリー、民泊アプリ、ライドシェアなどがある。

実際の店舗を構える場合に比べ少ない費用や人員でビジネスを始めることができ、地理的な制約に縛られず離れた場所の顧客を相手に取引することができる。ただし、競合相手も同じ条件であるため、分野によっては実店舗より競争が激しく、全国や全世界といった大きな規模で寡占や「勝者総取り」現象が生じる場合がある。

オンラインショップ 【ECサイト】

インターネットを通じて商品を販売するWebサイトなどのこと。狭義には物品の販売を行う通販サイトを指すが、広義にはサービスや金融商品などを販売するサイトも含まれる。

取扱い製品の紹介ページや購入手続きのページなどで構成され、利用者はほしい商品を選択して配送先や決済情報などを入力・送信することにより、購入の申し込みを行なうことができる。商品は宅配便などで購入者の元に届けられる。決済方法としてはクレジットカードや銀行振込、電子マネーなどによる事前入金のほか、運送事業者の代金引換配達などを利用できる場合がある。

インターネット上には様々な事業者の開設する多種多様なネットショッピングがあり、一般の商店で販売している大抵のものはオンラインで購入できる状態となっている。当初は書籍やコンピュータ、家電製品、CD/DVD、ゲームソフトなどを取り扱うネットショッピングが成長したが、次第に様々な製品分野に広まり、日用品や加工食品、衣料品、旅行商品などでも普及が進んでいる。

一方、高額な商品や、複雑な手続き、打ち合わせなどが必要な商品ではその特性上ネットショッピングはあまり利用されない。また、衛生管理の問題から生鮮食品を取り扱うネットショッピングの実現は難しかったが、近年では大手スーパーマーケットチェーンが実店舗の周囲に独自の配送網を築くなどの手法でネットショッピングを開設しており、「ネットスーパー」(オンラインスーパー)とも呼ばれる。

様々なネットショッピングを一つに集め、横断的に商品を検索・比較したり、共通の手続きや登録情報で購入できるようにするなどのサービスを提供するWebサイトもあり、現実世界のショッピングモールになぞらえて「オンラインモール」(電子商店街、サイバーモール)と呼ばれる。

ネットオークション 【オンラインオークション】

インターネット上で行われる競売。また、そのような取引の場を提供するネットサービス。電子商取引(EC)の一種で、一般消費者同士が直接取引を行う「C to C」(Consumer to Consumer)型の取引の代表的な形態の一つである。

出品者はサイト上に、商品の名称や写真、状態、最低価格、入札期限、配送方法、支払方法などの情報を掲載し、入札者が現れるのを待つ。期限内に最も高値を提示した入札者が商品を落札し、出品者と連絡を取り合い、商品と代金を交換する。

ネットオークション事業者は、これら一連の処理を行うためのシステムと「場」を提供し、出品者から手数料を徴収する。出品や落札を無料にして、サイト内に掲載する広告で収入を得る事業者や、オークションシステムを顧客企業のブランドで運営するアウトソーシング事業者なども存在する。ネットオークションの仕組みを応用して官公庁が物品の公売に用いる「インターネット公売」(官公庁オークション)も定着している。

オークション成立後の個人間売買のための決済、物流などの個人向けサービスも普及し、企業間の取引や、消費者への販売の新たな手法として用いられるケースも増えている。一方で、違法な物品が取引されたり、落札者が代金を支払ったのに商品が送られてこないなどのトラブルが問題となっている。

一般にネット上の個人間のやり取りでは相手が信用に足る人物か判断するのは難しい。ネットオークションでは取引上のトラブルを避けるため、相手方が確実に支払いや発送を履行するまで品物か代金(あるいは両方)を一旦事業者が預かる「エスクロー」(escrow)と呼ばれるサービスをオプションで提供する事業者もある。

インターネットバンキング 【Internet banking】

パソコンやスマートフォンなどを用いてインターネット経由で銀行などの金融機関のサービスを利用すること。店舗や端末に出向くことなく振込などのサービスを利用できる。

預金の残高照会、入出金照会、口座振り込み、振り替えなど、ATMで対応しているサービスが利用可能なほか、複数口座の一括管理や電子メールによる相談の受付など、独自のサービスが利用可能な銀行もある。

振り込みなどの処理が実際に行われるのは営業時間中だが、手続き自体はいつでもどこからでも可能なため、平日の昼間に窓口やATMに赴くのが難しい人には特に便利なサービスである。

金融機関側でも手続きの電子化が進めば窓口やATMの削減が可能となるため、預金者に利用を促しており、紙の通帳を廃止したり、ネット経由の場合に手数料の優遇を行ったりしている。

サービスの利用方法で分類すると、Webブラウザを使うものと、専用のソフトウェアを使うものの2種類がある。パソコンから利用する場合はWebブラウザを用いる方式が、スマートフォンやタブレット端末から利用する場合は専用のアプリを導入する方式が主流となっている。

ネット銀行 (インターネット専業銀行)

インターネット上での営業活動に特化した銀行を「ネット銀行」と呼ぶことがある。一般的な店舗による対面の営業を実質的に行わず、すべての手続きやサービスをオンライン上で行う業態を指す。

自前の店舗網やATM網をほとんど持たず、紙の預金通帳も発行しないことで、通常の銀行などより預金金利を高めたり手数料を引き下げたりしている。

日本では2000年10月に当時のさくら銀行(現在の三井住友銀行)などが設立したジャパンネット銀行が先駆けで、ソニー銀行、住信SBIネット銀行などがよく知られる。

オンライントレード

上場企業の株式などの証券や投資信託などの金融商品、外国通貨などをインターネットなどの通信システムを通じて売買すること。また、金融機関が提供する、そのような証券などの売買が可能なネットサービス。

単にオンライントレードといった場合は、証券会社が主に個人の投資家に向けて提供する、インターネットを利用した上場株式や投資信託、外国株式などの売買サービスを指すことが多い。運営主体やサービスによっては、国債や社債、株価指数先物、オプション、外国為替、商品先物などを対象とするものもある。

会員登録と身元確認手続きを行なって指定口座に入金し、Webブラウザで専用のサイトに接続して売買の指示を行う方式が一般的だが、操作性や即時性に優れた専用のデスクトップアプリケーションやモバイルアプリを提供している企業もある。

店舗窓口や電話を利用する従来の方式に比べ、市況をリアルタイムに把握しながら迅速に売買を執行でき、人手を介さない分だけ売買手数料が割安に設定されていることが多い。資産状況の照会や売買指示などは24時間365日どこからでもできる利点もある。

ネット専業証券会社

近年では、対面や電話での取次を行わず(あるいは廃止・撤退して)、オンライントレードシステムのみを専門に運営・提供する「ネット専業証券」(ネット証券)と呼ばれる業態の証券会社が台頭している。伝統的な大手証券会社がグループ企業としてネット専業の業態を設ける例もある。

これらは私設の電子市場を運営したり、売買頻度の高い、あるいは大口の資金を持つ得意客(ヘビーユーザー)向けに定額制の手数料や専用のトレーディングルームを提供したりといった新しいサービスを打ち出し、激しい顧客獲得競争を繰り広げている。

他のオンライン金融サービス

インターネットを通じて金融関連サービスを提供する業態は他にもあり、銀行サービスを利用することは「オンラインバンキング」あるいは「インターネットバンキング」(ネットバンキング)などと呼ばれ、保険の加入・更新ができるサービスは「ネット保険」(ネット生保/ネット損保)などと呼ばれる。

電子マネー 【電子通貨】 ⭐⭐⭐

貨幣価値の蓄積や移動を電子的な手段によって行う決済システムやサービス、装置などのうち、主に現実の貨幣や紙幣の代替として利用するために設計されたもの。また、そのための専用の装置などに蓄積され、店頭などで支払いに充当することができる貨幣価値のこと。

ストアドバリュー型

実店舗で利用される電子マネーとしては、非接触ICカードやスマートフォンなどで貨幣価値を表すデータを蓄積・管理し、店頭の端末と無線通信を行って支払いを行う方式がよく用いられる。カードや端末へは手持ちの現金や銀行口座、クレジットカードなどから繰り返し「入金」することができ、蓄積された残高の範囲内で現金の代わりに支払いに当てることができる。

この方式では、JR東日本の「Suica」や首都圏私鉄・バス事業者連合の「PASMO」をはじめとする交通系ICカードが大都市圏を中心で広く普及しているほか、楽天Edyやイオングループの「WAON」、セブン&アイグループの「nanaco」など流通系ICカードも普及している。

ポストペイ型

一般的には事前に入金が必要なプリペイド(前払い)方式のものを電子マネーというが、「iD」や「QUICPay」のように事前入金なしに利用できて、後日、銀行口座の引き落としやクレジットカードなどで支払いを行うポストペイ(後払い)方式のサービスもある。ポストペイ方式は実質的にはクレジットカードの付加サービスあるいはクレジット決済の一種とみなされる。

プリペイドカード型

また、事前に一定額を支払うと引き換えに発行されるコード番号などを入力することで、同額の決済を行えるサービス・システムもあり、ネットサービスやオンラインゲーム、オンラインショップなどでの支払いや、スマートフォンなどでのアプリやコンテンツの購入などでよく利用される。

コード番号の記載されたカードがコンビニエンスストアなどで販売されているほか、店頭で一定額を支払うとレジからコードの記載されたレシートが発行されたり、銀行振込やクレジット決済で一定額を入金すると事前に登録したメールアドレスなどにコードが送られてくる、といった仕組みを採用しているサービスもある。

「WebMoney」や「BitCoin」など専業の事業者が運営し、提携している各社のサービスで利用できるものと、米アップル(Apple)社の「Apple Gift Card」や米グーグル(Google)社の「Google Playギフトカード」、米アマゾンドットコム(Amazon.com)社の「Amazonギフトカード」のように、自社サービスの決済に利用するために販売されるものがある。

仮想通貨との違い

電子マネーは日本円など現実の通貨の価値をデジタルデータに置き換えて蓄積・交換するための仕組みだが、これとは別に、それ自体を独立した一つの通貨のように用いることのできる、デジタルデータで表された価値の蓄積・交換システムも存在し、「仮想通貨」(virtual currency)あるいは「暗号通貨」(cryptocurrency)と呼ばれる。

キャッシュレス決済 【電子決済】

商品やサービスの代金支払いなどを、現金の受け渡しや金融機関での手続きなどではなく、電子的なデータ交換によって行うこと。

銀行口座やクレジットカードなどを利用する電子決済方式として、インターネット上でのクレジットカード決済(カード番号などをオンラインで送信する)やインターネットバンキングによる相手口座への送金、キャッシュカードで店頭での支払いを行うデビットカード決済などがある。

事前に決済事業者に入金した額の範囲で支払いを行うことができる決済方式を「電子マネー」あるいは「ストアドバリュー型電子決済」という。利用者はカード購入や入金端末操作、銀行振り込み、クレジットカード決済などで決済サービス上での貨幣価値を入手し、提携店舗やネットサービスでの支払いに充てることができる。

これには交通系ICカードなどのICカード型電子マネー、店舗でカードを購入するうプリペイドカード型電子マネー、オンラインで入金や決済を行うネットワーク型電子マネー、スマートフォンの短距離無線通信を利用するモバイル決済、QRコードで決済情報を伝達するQRコード決済などが含まれる。

2000年代初頭のインターネット普及や非接触ICカード技術の進歩により広まった決済方式で、ECサイトやネットサービスでの支払いにオンラインのクレジット決済やネットバンキングがよく利用される。店舗での支払いなど現金を代替する用途は日本では大都市圏での交通系ICカード以外なかなか普及しなかったが、2010年代後半頃からモバイル決済やQRコード決済が急激に浸透しつつある。

人工知能 【AI】 ⭐⭐⭐

人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断をコンピュータを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたもの。

人類は未だに人間の脳の振る舞いや知能の仕組みを完全には解明していないため、AIにも明快な定義は与えられていない。また、情報技術の進歩に伴って時代によってAIとされるシステムの具体的な内容は大きく変化してきている。

特に、前の時代にAIの一分野として研究・開発が進められていたものが、技術が成熟し実用化や普及が進むとAIとは呼ばれなくなり、より高度で研究途上のものが新たにAIとして注目される傾向がある。この現象は「AI効果」と呼ばれ、例として文字認識技術(OCR)や検索エンジン、かな漢字変換システム、ロボット掃除機などが挙げられる。

2000年代後半以降にAIとされるものは、大量のデータから規則性やルールなどを学習し、与えられた課題に対して推論や回答、情報の合成などを行う機械学習(ML:Machine Learning)を基礎とするものが主流となっている。

特に、人間の神経回路を模したニューラルネットワーク(NN:Neural Network)で深い階層のモデルを構築し、精度の高い推論を行うディープラーニング(深層学習)研究に大きな進展があり、これに基づく研究や開発が盛んになっている。

応用分野として、チェスや将棋、将棋など知的なゲームで対局するシステム、画像や映像に映る物体や人物を識別する画像認識システム(コンピュータビジョン)、人間の発話を聞き取って内容を理解する音声認識システム、言葉を組み立てて声として発する音声合成システム、ロボットや自動車など機械の高度で自律的な制御システム(自動運転など)、自動要約や質問応答システム、高度で自然な機械翻訳といった様々な自然言語処理などがよく知られる。

データサイエンス

統計解析や数理解析、コンピュータによる処理などを駆使して大量のデータを解析・分析し、有用な知見を導く手法を研究する学問領域。

現代ではコンピュータや通信技術の発達で大量のデータの記録や蓄積、伝送が可能となった。これを様々な手法を駆使して処理、解析し、学術研究やビジネスなど人間の社会的な活動にとって有用な知見を導き出す方法論を研究するのがデータサイエンスである。

人間の知的活動と機械によるデータ処理を橋渡しするという性質上、様々な既存の学問や技術を横断的に活用する学際的な側面を持っている。統計や数理解析、線形代数、機械学習、データモデリングなどの数理科学やコンピュータ科学の知見、データベース操作やデータ形式の理解、プログラミング、データ加工・変換・処理といったエンジニアリング領域の技法が総合的に求められる。

データサイエンスを修め、あるいは研究する人材を「データサイエンティスト」(data scientist)という。日本では2011年頃からビッグデータ活用の重要性が叫ばれるようになるなか、データ活用を推進する具体的な人材像として2013年頃からデータサイエンティストという職種が認識され始めた。十分な技能を持ったデータサイエンティストは常に人材不足であるとされ、今後もそのニーズは高まっていくと予想されている。

ユニバーサルデザイン 【UD】 ⭐⭐⭐

すべての人が等しく使うことができる、あるいは使いやすいデザイン・設計のこと。より現実的には、なるべく多くの人が同じように使えることを目指すデザイン原則を表す。

言語や文化、人種、性別、年齢、体型、利き腕、障害の有無や程度といった違いによらず、できるだけ多くの人が同じものを同じように利用できるよう配慮されたデザインのことを意味する。

「バリアフリー」を始めとする従来の考え方では、「高齢者用」「左利き用」「車椅子用」のように特性に応じた専用のデザインを用意する発想が基本だったが、ユニバーサルデザインではこうした発想を極力排し、単一のデザインで万人が利用できることを目指している。

ユニバーサルデザインという用語は1985年に米ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス(Ronald Mace)教授によって提唱されたが、それ以前から実践されていた考え方を整理して名前をつけたものとされる。氏はユニバーサルデザインの7つの原則として「公平に使える」「柔軟性がある」「簡単で自明」「必要なことがすぐに理解できる」「間違いを許容する」「弱い力で使える」「十分な大きさと空間」を唱えている。

ユニバーサルデザインの具体例として、施設内の案内などを言葉ではなく絵文字で伝えるピクトグラム、様々な視覚特性を持つ人による調査・テストを経て開発された視認性の高いフォント、容器に刻まれた凹凸を触れば何が入っているか識別できるシャンプーやコンディショナー、手や指の状態によらず持ちやすく使いやすい文房具やカトラリーなどがある。

カラーユニバーサルデザイン 【CUD】

印刷物や映像、Webページなどをデザインする際に、色の見え方が多数派とは異なる人にも情報がきちんと伝わるよう配慮された配色や構成にすること。

どんな身体的な特性がある人も等しく使うことができる、あるいは使いやすいデザイン・設計のことを「ユニバーサルデザイン」(universal design)というが、これを表現物の配色に適用し、色覚の特性によらず認識することができる、あるいは見やすいデザインを目指す考え方である。

人間の色覚(色の感じ方)は一様ではなく個人差があり、先天的な色覚異常や、緑内障、白内障など目の病気によっても大きな影響を受ける。カラーユニバーサルデザインでは、色によって情報の認知に差が生じないよう「なるべく多くに人が見分けやすい配色を選ぶ」「色が見分けられなくても情報が伝わるようにする」「色の名前を併記するなど色を言葉で伝達できるようにする」という3つの原則に沿ってデザインを進める。

カラーユニバーサルデザインは生物学者の伊藤啓氏と医学者の岡部正隆氏が「カラーバリアフリー」(color barrier-free)として提唱し始めたもので、2004年に両氏が中心となってNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)が設立された。以降は「カラーユニバーサルデザイン」の名称で普及活動が進められている。同法人では見分けやすい色の組み合わせを集めた推奨配色セットを公表したり、カラーユニバーサルデザインに配慮した製品などの認証制度の運用などを行っている。

アクセシビリティ ⭐⭐⭐

近づきやすさ、利用しやすさ、などの意味を持つ英単語で、IT分野では、機器やソフトウェア、システム、情報、サービスなどが身体の状態や能力の違いによらず様々な人から同じように利用できる状態やその度合いのことを指す。

高齢や障害、病気、あるいは他の身体的・認知機能的な特性により運動や視聴覚機能に制約や偏りがあっても、機器やソフトウェアの操作、情報の入手、ネットサービスの利用などが可能である状態を意味する。

例えば、マウスなどによる画面上の位置指定が困難な場合に備え、キーボードやボタン型の入力装置、音声認識など他の入力機能のみで操作が行えるようにしたり、視力や視覚の状況に応じて、画面表示や文字の拡大、画面上の文字の読み上げなどの機能を選択できるといったように、様々な人が利用できるような備えが行われている状態を指す。

単にアクセシビリティといった場合はWebページについての「Webアクセシビリティ」のことを指すことが多い。また、IT分野以外でも、例えば建物や施設、設備などへの出入りや内部の移動のしやすさ、利用しやすさ(段差がない、スロープやエレベーターが整備されている等)のことをアクセシビリティということもあるが、これは日本語では「バリアフリー」(barrier free)という外来語で表現されることが多い(厳密にはバリアフリーはアクセシビリティより狭い概念を指すとする見解もある)。

ユーザビリティ 【使用性】 ⭐⭐⭐

機器やソフトウェア、Webサイトなどの使いやすさ、使い勝手のこと。利用者が対象を操作して目的を達するまでの間に、迷ったり、間違えたり、ストレスを感じたりすることなく使用できる度合いを表す概念である。

国際規格のISO 9241-11では、ユーザビリティを「特定の利用状況において、特定の利用者によって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、利用者の満足度の度合い」と定義している。漠然とした「使いやすさ」よりは限定された概念で、ある人がある状況下である目的を達することがどれくらい容易であるかを表している。

ユーザビリティは利用者への情報やメッセージの提示の仕方やタイミング、言い回し、操作要素や選択肢の提示の仕方、操作の理解のしやすさや結果の想像しやすさ、操作のしやすさや誤りにくさ、誤操作に対する案内や回復過程の丁寧さ、利用者の操作に応じた表示や状況の変化(インタラクション)などの総体で構成される。

高いユーザビリティのために必要な実践は対象の種類(機器・ソフトウェア・Webページ等)や想定される利用者の属性、文脈や利用目的によって異なるため個別性が高く、ある状況では良い事例とされたものが別の文脈では悪い事例になる場合もある。

開発者が期待するユーザビリティが備わっているかどうか確かめるには、利用者(やそれに近い属性の人物)の協力を得て実際に使ってみてもらい、想定通りの操作が行われるか、利用者が不満や戸惑いを感じないかなどをテストするのが有効であるとされる。このような試験を「ユーザーテスト」(user testing)あるいは「ユーザビリティテスト」(usability testing)という。

デジタルデバイド 【情報格差】 ⭐⭐

パソコンやスマートフォン、インターネットなどのデジタル技術に触れたり使いこなしたりできる人と、そうでない人の間に生じる、貧富や機会、社会的地位などの格差。個人や集団の間に生じる格差と、地域間や国家間で生じる格差がある。

コンピュータや通信ネットワークが職場や日常生活に深く入り込み、それを活用できる者はより豊かで便利な生活や、高い職業的、社会的地位を獲得できる一方、何らかの理由により情報技術の恩恵を受けられない人々は社会から阻害され、より困難な状況に追い込まれてしまう。こうした状況をデジタルデバイドという。

主な要因

デジタルデバイドは様々な要因により発生し、拡大する。例えば、子どもや若者は技術や知識を比較的容易に習得し、進んで習慣的に利用するようになることが多いが、中高年や高齢者が新たにコンピュータの操作法などを覚えるのは困難で、生活習慣に取り入れることにも抵抗感があることが少なくない。

また、貧困のために情報機器やソフトウェア、サービスなどの購入が困難だったり、身体機能の障害や発達特性などから機器の操作が困難で情報技術の恩恵を受けられない場合もある。元々存在した様々な格差がデジタルデバイドにより拡大したり固定化してしまうという側面がある。

地域間の格差

地域や国家の単位でデジタルデバイドが生じることもある。通信インフラの普及度合いや、所得水準と情報機器の価格の関係、技術の習得・利用の前提となる十分な教育が受けられるか、インフラ整備や技術・機器の導入・教育を担う技術者などの人材が十分にいるか、といった点により、地域や国家ごとに格差が生じる。

ここでも、元々豊かな先進国やインフラがいち早く整備され人材豊富な大都市などが情報技術でさらに発展し豊かになる一方、情報技術に十分アクセスできない発展途上国や農村部などがデジタル環境でも取り残されるという、格差の拡大・固定化の問題がある。

サイバー犯罪 【ハイテク犯罪】 ⭐⭐

コンピュータや通信ネットワークを用いて行われる犯罪の総称。主にインターネット上で行われる犯罪行為を指すことが多い。

どのような行為が該当するかは各国の法律によって異なるが、日本では不正アクセス、DoS攻撃、ネット詐欺(フィッシングや架空請求など)、オンライン不正送金、著作物の無断複製や配布、わいせつ物などの公開や譲渡、SNSなどにおける誹謗中傷や業務妨害などが罪に問われる。

関連する法律としては刑法や不正アクセス禁止法、著作権法、不正競争防止法などがあり、法律上の罪種としては電磁的記録不正作出(データ改竄など)、電子計算機損壊等業務妨害(遠隔操作によるデータ消去など)、電子計算機使用詐欺(クレジットカード番号窃取・不正使用など)、不正指令電磁的記録作成(コンピュータウイルスの開発・配布など)、偽計業務妨害(ネット上の犯罪予告など)、著作権侵害、名誉毀損、信用毀損(風説の流布など)、わいせつ物公然陳列・頒布などが該当する。

犯人がインターネットを通じて犯行を行ったり、犯行現場がネット上であるようなものを指すことが多いが、クレジットカードのスキミングのように、ネットとは無関係に電子的な手段を利用した犯罪も含まれる。

サイバー犯罪自体は各国の刑事司法制度で裁かれるが、国家をまたぐ不正アクセス事件などに対処するため、2001年にサイバー犯罪条約が成立(発効は2004年)し、加盟諸国が国内法を整備して捜査などで協力している(日本は2012年批准)。

サイバー犯罪のうち、何らかの政治的な示威などのために大規模に行われる不正アクセスやDoS攻撃などのことを「サイバーテロ」(cyberterrorism)という。また、敵対する国家間や国家に準じる勢力の間で互いに攻撃を加え合う行為は「サイバー戦争」(cyberwarfare)という。

ワンクリック詐欺 【ワンクリック料金請求】 ⭐⭐

インターネットを通じて行われる不当料金請求の手口の一つで、Webページを開くといきなり料金請求の画面が表示される方式。

無差別に大量に送信される勧誘メールなどからサイトにアクセスすると、ページを開いただけで「登録が完了しました」「料金をお支払いください」などのメッセージが突然表示され、金額や振込先などが表示される。

請求画面には、アクセスした人のIPアドレスや端末の機種名(スマートフォンなどの場合)、Webブラウザやオペレーティングシステム(OS)の種類、位置情報サービスなどから割り出した大まかな現在地の情報などが表示されることが多い。

これらの情報は普段からブラウザがサーバ側に提供しているものであり、これを元に氏名や住所、電話番号などの個人情報を割り出すことはできない。「個人情報を取得したので支払いが無い場合は法的措置を取る」といった恫喝的なメッセージが記載されることもある。

サイトにアクセスしただけで、あるいは十分な契約についての説明と明確な意思表示なしに契約が成立することはないので、このような請求は法的に無効であり、料金を支払う必要はない。また、自らサイト側に申告しない限り、個人情報が業者の手に渡ってしつこい督促に会うということもないので、このような画面に出くわしても無視してページを閉じて良い。

サイバー攻撃 【サイバーアタック】

あるコンピュータシステムやネットワーク、電子機器などに対し、正規の利用権限を持たない悪意のある第三者が不正な手段で働きかけ、機能不全や停止に追い込んだり、データの改竄や詐取、遠隔操作などを行うこと。

特定の組織や集団、個人を狙ったものと、不特定多数を無差別に攻撃するものがある。政治的な示威行為として行われるものは「サイバーテロ」(cyberterrorism)、国家間などで行われるものは「サイバー戦争」(cyberwarfare)と呼ばれることもある。

具体的な活動として、Webサーバに侵入してサイトの内容を改竄したり、情報システムに侵入して機密情報や個人情報を盗み出したり、大量のアクセスを集中させてサーバや回線を機能不全に追い込んだり(DoS攻撃/DDoS攻撃)、アクセス権限を不正に取得して本人になりすましてシステムを操作したり、システムを使用不能にして回復手段の提供に身代金を要求したり(ランサムウェア)といった事例が挙げられる。

攻撃者がインターネットなどを通じて標的システムに直接働きかけて攻撃を実行する手法と、コンピュータウイルスやトロイの木馬などのマルウェアを感染させ、その働きにより攻撃する手法がある。両者を組み合わせ、送り込んだマルウェアに外部から指令を送って遠隔操作する手法もある。

サイバーテロ (cyberterrorism)

サイバー攻撃のうち、政治的な要求や脅迫、示威などを目的に行われるものを「サイバーテロリズム」(cyberterrorism)、略してサイバーテロという。

特定の個人や集団が政治的な意図や動機に基づいて行うインターネットやコンピュータシステムを利用した攻撃活動で、対象に打撃を与えて政治的な主張を宣伝したり、何らかの要求に従うよう求めたり、標的側の行いに対する報復であると称したりする。

官公庁や軍、マスメディア、社会インフラ、通信網、交通機関、金融機関、医療機関など、国家や社会、人命、財産にとって重要な機能に損害を与えることを狙った攻撃が典型的だが、Webサイトの改竄や活動妨害(DoS攻撃)のような攻撃では特定の国家や民族に属するというだけで広汎・無差別に対象が選択される場合もある。

架空請求メール 【架空請求詐欺】

架空の料金請求を無作為に電子メールで送付し、不当な支払いを要求する詐欺。請求の内容は適当にでっち上げたでたらめで、請求元の組織名や請求対象の商品やサービス自体が創作である場合も多い。

何らかの方法で入手したメールアドレスのリストに無差別に架空の請求を送りつけ、騙された被害者に犯人の銀行口座などに料金を振り込ませるという手口である。請求の名目として有料アダルトサイトの利用料や出会い系サイトの登録料金、オンライン通販の商品代金などを挙げる事例が多い。

請求を行う事業者を名乗るパターンの他に、事業者から債権を買い取った回収業者を名乗ったり、IPアドレスなど適当な識別番号を記載して身元を把握しているように装ったり、文面に「期限までに支払いがない場合は法的措置を取る」などの脅しを入れて不安を煽るなど、手口は年々巧妙化している。

請求書を送りつけられた人の中には、過去に自分が使った別の事業者の請求と勘違いしたり、身に覚えがなくても「手切れ」のつもりで振り込んでしまったり、家族が使ったと思いこんで支払ってしまう例もある。

このような手口の詐欺メールは2002年頃から広く見られるようになり、ネット利用詐欺の定番の手口として定着している。電子メールだけでなく、携帯電話番号のリストを用いて架空請求のSMS(ショートメッセージ)を送信する手口や、郵便はがきを用いた同様の手口もよく知られている。

マルウェア 【悪意のあるソフトウェア】 ⭐⭐⭐

コンピュータの正常な動作を妨げたり、利用者やコンピュータに害を成す不正な動作を行うソフトウェアの総称。コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬などが含まれる。

“malicious software” (悪意のあるソフトウェア)を短縮した略語で、悪意に基づいて開発され、利用者やコンピュータに不正・有害な動作を行う様々なコンピュータプログラムを総称する。

コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェア、ボット、バックドア、一部の悪質なアドウェアなどが含まれる。キーロガーのように正規の用途で用いる場合もマルウェアとなる場合もあるものもある。

利用者の知らない間に、あるいは欺くような手法でコンピュータに侵入し、記憶装置に保存されたプログラムやデータを改変、消去したり、重要あるいは秘密のデータを通信ネットワークを通じて外部に漏洩したり、利用者の操作や入力を監視して攻撃者に報告したり、外部から遠隔操作できる窓口を開いたり、ネットワークを通じて他のコンピュータを攻撃したりする。

「マルウェア」という用語は専門家や技術者以外の一般的な認知度が低く、また、マルウェアに含まれるソフトウェアの分類や違いなどもあまり浸透していないため、マスメディアなどでは「コンピュータウイルス」という用語をマルウェアのような意味で総称的に用いることがある。

マルウェア対策

マルウェアに対抗するため、これを検知・駆除するソフトウェアを用いることがある。歴史的にウイルス対策から発展したため「アンチウイルスソフト」(anti-virus software)と呼ばれる。企業などでは伝送途上の通信内容からマルウェアを検知する「アンチウイルスゲートウェイ」なども用いられる。

マルウェアの検知には、ストレージ内のファイルなどを既知のマルウェアの特徴的なパターンと照合する「パターンマッチング法」や、マルウェアに特徴的な振る舞いを検知する「ヒューリスティック法」、隔離された実行環境で実際に実行してみる「ビヘイビア法」などの検知手法が用いられる。

マルウェアの中にはソフトウェアやハードウェアに存在する保安上の欠陥(脆弱性)を悪用して侵入・感染するものも多いため、セキュリティソフトなどに頼るだけでなく、老朽機材の入れ替え、ソフトウェアの適時の更新、不要な機能の停止などの対応も適切に行う必要がある。

テクノストレス

コンピュータを扱うことが原因で起きる失調症状の総称。コンピュータに適応できないために生じるテクノ不安症や、過剰に適応したために生じるテクノ依存症などの種類がある。「テクノストレス」という名称は、1984年にアメリカの臨床心理学者クレイグ・ブロード(Craig Brod)氏が名づけた。

テクノ不安症 (techno-anxiety)

コンピュータに適応できないことが原因で生じる精神的な失調症状をテクノ不安症という。具体的な症状は、動悸、息切れ、肩こり、めまいなどの自律神経の失調や、鬱などである。

社会の隅々までコンピュータが普及しつつある現在、会社の業務などで好むと好まざるとに関わらずコンピュータを使う必要に迫られる人が増えている。そのうち、コンピュータになじめず、操作を苦痛に感じる人は、そのことで強いストレスを感じ、体調を崩してしまうことがある。

テクノ依存症 (techno-addiction)

コンピュータに過剰に適応し、あるいは没頭しすぎることが原因で生じる精神的な失調症状をテクノ依存症という。コンピュータがないと不安に感じたり、人付き合いを煩わしいと感じるようになる。

具体的な症状としては、自分の限界が分からなくなる、時間の感覚がなくなる、邪魔されるのが我慢できなくなる、あいまいさを受け入れられなくなる、「はい/いいえ」「正解/不正解」式のやり取りや思考を好むようになる、人と接することを嫌うようになる、人を見下すようになる、などがある。

パソコンやゲーム機、インターネットなどのデジタル技術が短期間のうちに急激に普及した先進国や経済新興国では、主に若者の間で、ゲームやネット(最近ではネットゲーム)にのめりこんでしまい、実社会の生活に支障をきたしたり、正常な対人関係を結べなくなったりする「中毒」症状が目立つようになり、社会問題化している。

VDT症候群 (IT眼症/テクノストレス眼症/VDT障害)

パソコンのディスプレイなどのVDTを長時間見続けながら作業を行うことによって発生する、身体的・精神的疾患の総称。直接的な身体的疾患の例としては眼精疲労や視力低下、目のかすみ、目の痛み、ドライアイ、めまいなどが挙げられる。これらの症状の原因は、VDTの輝度やコントラストが強すぎることや、長時間VDTを注視するさいにまばたきの回数が減ることなどである。

このほかにも、VDTの前で長時間姿勢を固定して作業することによる肩こりや腰痛など体の痛み、キーボード操作によって起こる腱鞘炎などの身体的症状もVDT障害に含まれる。精神的疾患の例としては単調なデータ入力作業などを長時間行うことによって起こる情緒不安定や不眠などがある。

厚生労働省では、2002年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定し、その中でVDT障害を防ぐための作業管理のしかたや、VDT障害を起こさない適切なVDT機器の基準、健康管理の方針などをまとめている。

ドライアイ (dry eyes)

目の疾患の一つで、涙液の減少により眼球の表面が乾燥し、傷や障害が生じるもの。

目が疲れる、目に痛みを感じる、目が乾いた感じがする、目が重たい、10秒以上目を開けていられないなどの症状が現れる。短時間で回復することが多いため軽視されがちだが、症状が頻発したり長引いたりすると角膜などを損傷して視力の低下を招く恐れもあるので、慢性的に症状を感じる場合は早めに受診したほうがよい。予防や症状の軽減のためには、一定の間隔をおいて目を休ませる。意識的にまばたきの回数を増やす、部屋の湿度を高めに保つ、眼科医の処方する目薬などで目の潤いを保つ、などの方法がある。

本来、眼球はまばたき動作により適量の涙が提供され、ゴミや細菌から守られているが、集中して一点を見つめ続けるとまばたきの回数が減り、涙量が減ってしまう。そのため眼球の十分な保護ができなくなって、眼球が乾燥し、傷つきやすくなってしまう。先天的にまばたきの少ない人、コンタクトレンズを常用している人は特にドライアイにかかりやすい。

空気の乾燥した季節や、エアコンの運転などで乾燥した空間で起こりやすく、コンピュータでの作業やテレビの視聴、ビデオゲームの操作など、同じ場所を長時間凝視し続けることで起こることが多い。電子機器の普及により発症が顕著になった現代病のひとつとされる。

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