高校「情報Ⅰ」単語帳 - 日本文教「情報Ⅰ」 - 情報社会における個人の果たす役割と責任

個人情報 【PII】 ⭐⭐⭐

ある特定の生存する個人を識別することができる情報。また、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別できるような情報。

主な個人情報としては、氏名や性別、住所、電話番号、電子メールアドレス、勤務先、生年月日、顔写真、SNSやネットサービスなどのユーザー名、クレジットカード番号や銀行の口座番号、日本のマイナンバー(個人番号)や米国の社会保障番号(SSN)など行政が個人に割り当てた識別番号などがある。

ただし、名簿のように複数の項目が個人に結び付けられて列挙されていたり、そのような情報と容易に組み合わせられるような形態になっている必要があり、例えば、「0から始まるランダムな11桁の番号1万個のリスト」は、その中にたまたま誰かの電話番号が含まれるかもしれないが、それ自体は個人情報とは言えない。

一方、特定の個人に属する情報でも、人物の識別・同定に直接は繋がらないようなものは「パーソナルデータ」(personal data)と呼ばれ区別される。例えば、携帯端末の位置情報、商品の購入履歴などが含まれる。

これらは(狭義の)個人情報そのものとはみなされないが、複数の情報源からのデータを突き合わせることなどにより個人の特定や捕捉に利用できる場合があるため、個人のプライバシーの一種として個人情報に準じる適切な管理や保護を行う必要がある。

個人情報保護法 【個人情報の保護に関する法律】 ⭐⭐⭐

個人情報に関して本人の権利や利益を保護するため、個人情報を取り扱う事業者などに一定の義務を課す法律。2003年5月に成立し、2005年4月1日に全面施行された。

体系的・継続的に個人情報を保有・利用するすべての団体や事業者に対し、取得や保存・利用に関する義務や、違反時の罰則などを定めている。当初は5000件を超える個人情報を所有する事業者のみが規制の対象だったが、2017年の大幅改正でこの要件が撤廃され小規模な事業者や町内会のような団体も対象となった。

個人情報を取り扱う事業者は、個人情報の収集にあたって利用目的を特定することや、目的外の個人情報の収拾・取扱の禁止、収集手段および目的の公表、不正な手段による個人情報取得の禁止、個人情報の保護に必要な措置を講じること、本人から申し出があったときは速やかに保有する開示・訂正・削除に応じること、本人の同意を得ない第三者への譲渡の禁止などの義務が課される。

違反した場合は内閣府の外局である個人情報保護委員会による勧告や命令が行われ、従わない場合は最大で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される。

個人情報の種類

保護の対象となる個人情報は、生存する個人の氏名や生年月日、住所、電話番号など、個人の特定・識別に用いることができるものが該当する。顔写真や所属先のメールアドレス、金融機関の口座番号のように他の情報と組み合わせれば個人を特定できる符号なども含まれる。

また、DNA配列や指紋、声紋、顔貌、虹彩など身体に固有の特徴を符号化したデータ、マイナンバーやパスポート番号、運転免許証番号など公的な識別番号・符号も2017年改正で対象に追加された。

個人情報のうち、差別や偏見に繋がりかねず慎重な取り扱いが求められる項目を「要配慮個人情報」と定義し、本人の明示的な同意を得ずに取得したり第三者に提供することが禁じられている。これには人種や信条、社会的身分、病歴、犯歴、犯罪被害事実などが該当する。

一方、特定の個人を割り出せないように一部のデータをランダムな符号で置き換えるなど復元不能な変換処理を行った「匿名加工情報」については、本人の同意を得ずに第三者提供などの利用ができることが定められている

公的機関の責務

国や地方公共団体は事業者等がこの法律に則って適切に個人情報を取り扱うよう、制度の周知・広報や指針の策定など、適切な措置を講ずることが定められている。

なお、この法律が対象とするのは民間が保有する個人情報の取り扱いであり、国や自治体、独立行政法人など公的機関自身が保有する個人情報については、行政機関個人情報保護法など別の法制度によって規定される。

知的財産 【IP】 ⭐⭐

人間の知的活動によって創作された表現や、商業上有用になりうる情報や標識など、財産性のある無体物。各国の法制度や条約により、知的財産の考案者などに認められる排他的な使用権などの諸権利を「知的財産権」(IPR:Intellectual Property Rights)という。

知的財産には様々な種類があり、法律で権利保護の対象となっているものには著作物(著作権)や実演(著作隣接権)、発明(特許権)、商標(商標権)、意匠(意匠権)、肖像(肖像権)、物品の形状(実用新案権)などがある。商業上の利益に繋がる特許権、実用新案権、意匠権、商標権は「産業財産権」あるいは「工業所有権」とも呼ばれる。

広義には、営業秘密(企業秘密)や植物の品種(育成者権)、農畜産物の産地表示(地域ブランド)、インターネット上のドメイン名、文字の書体(フォント)、半導体の回路設計(回路配置利用権)なども含まれる。肖像については人格権と財産権(パブリシティ権)に分けて考えることもある。

一方、ある事柄について体系的に記録・蓄積されたデータなど、経済的な価値のある情報の一種だが、それ自体は法律上の保護の対象とならない知的財産もある。また、主にビデオゲーム産業を中心とするエンターテインメント業界では、知名度や過去の実績が顕著な、有力な作品タイトルやシリーズ、キャラクターなどを指して知的財産という意味で「IP」という用語を用いる。

知的財産権 【知的所有権】 ⭐⭐⭐

人間の知的活動により生み出された創作物など、物理的実体を伴わない財産(無体物)について、その考案者などに法的に認められた財産権のこと。一般的には著作権や特許権、商標権、意匠権、肖像権、営業秘密などが含まれる。

大きく分けて、人間の知的活動によって創作された表現に対して認められる「著作権」、商業上有用になりうる情報や標識などに対して認められる「産業財産権」(工業所有権)、この二つに属さないその他の権利に分かれる。

著作権は思想や感情を創作的に表現した者がその表現の利用を独占できる権利で、複製権や上演権、公衆送信権、貸与権、翻案権など様々な権利で構成される。また、音楽などの場合には実演家や記録物の製作者、放送事業者などに著作を利用した実演などに対する「著作隣接権」が認められ、広義にはこれも知的財産権の一種とみなすことがある。

産業財産権は企業などの経済活動に関連する情報などを保護する権利で、発明に認められる「特許権」、有用なアイデアなどに認められる「実用新案権」、工業製品のデザインや特徴的な外観に認められる「意匠権」、営業活動に用いる名称や標識などに認められる「商標権」などが含まれる。

これ以外にも、IC(集積回路)の設計など半導体の回路配置を保護する「回路配置利用権」、品種改良で産み出された有用な植物を保護する「育成者権」、企業の営業上のノウハウや秘密の情報などを保護する「営業秘密」(企業秘密)、著名人の容姿を写した記録物の持つ商業的な価値を保護する(財産権としての)「肖像権」、インターネット上のドメイン名を保護する権利などがある。

産業財産権 (工業所有権)

知的所有権のうち、企業や経済活動に関わりの深いものを産業財産権(industrial property right)あるいは工業所有権と総称する。日本では商標権、特許権、意匠権、実用新案権がこれに含まれる。

国際的には、1883年にパリで締結された「産業財産権の保護に関するパリ条約」(パリ条約)および、その最新の改正版であるストックホルム改正条約(1967年)によって規定された諸権利のことを意味し、「特許、実用新案、意匠、商標、サービス・マーク、商号、原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関するもの」(特許庁訳)と規定されている。

日本では明治時代にパリ条約の訳文に「工業所有権」の語が用いられ、一般にも定着したが、2002年の「知的財産戦略大綱」以降、政府公式の文書などでは「産業財産権」の語を用いるようになっている。

知的財産権 【知的所有権】 ⭐⭐⭐

人間の知的活動により生み出された創作物など、物理的実体を伴わない財産(無体物)について、その考案者などに法的に認められた財産権のこと。一般的には著作権や特許権、商標権、意匠権、肖像権、営業秘密などが含まれる。

大きく分けて、人間の知的活動によって創作された表現に対して認められる「著作権」、商業上有用になりうる情報や標識などに対して認められる「産業財産権」(工業所有権)、この二つに属さないその他の権利に分かれる。

著作権は思想や感情を創作的に表現した者がその表現の利用を独占できる権利で、複製権や上演権、公衆送信権、貸与権、翻案権など様々な権利で構成される。また、音楽などの場合には実演家や記録物の製作者、放送事業者などに著作を利用した実演などに対する「著作隣接権」が認められ、広義にはこれも産業財産権の一種とみなすことがある。

産業財産権は企業などの経済活動に関連する情報などを保護する権利で、発明に認められる「特許権」、有用なアイデアなどに認められる「実用新案権」、工業製品のデザインや特徴的な外観に認められる「意匠権」、営業活動に用いる名称や標識などに認められる「商標権」などが含まれる。

これ以外にも、IC(集積回路)の設計など半導体の回路配置を保護する「回路配置利用権」、品種改良で産み出された有用な植物を保護する「育成者権」、企業の営業上のノウハウや秘密の情報などを保護する「営業秘密」(企業秘密)、著名人の容姿を写した記録物の持つ商業的な価値を保護する(財産権としての)「肖像権」、インターネット上のドメイン名を保護する権利などがある。

産業財産権 (工業所有権)

知的所有権のうち、企業や経済活動に関わりの深いものを産業財産権(industrial property right)あるいは工業所有権と総称する。日本では商標権、特許権、意匠権、実用新案権がこれに含まれる。

国際的には、1883年にパリで締結された「産業財産権の保護に関するパリ条約」(パリ条約)および、その最新の改正版であるストックホルム改正条約(1967年)によって規定された諸権利のことを意味し、「特許、実用新案、意匠、商標、サービス・マーク、商号、原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止に関するもの」(特許庁訳)と規定されている。

日本では明治時代にパリ条約の訳文に「工業所有権」の語が用いられ、一般にも定着したが、2002年の「知的財産戦略大綱」以降、政府公式の文書などでは「産業財産権」の語を用いるようになっている。

特許権 【パテント】 ⭐⭐⭐

知的財産権の一種で、新たな発明を一定期間、独占的に使用する権利。日本では特許法によって保護され、特許庁に出願して登録されると権利が発効する。

発明を審査・登録して出願者に権利を付与する行政手続きを「特許」というが、一般には特許登録された発明(特許発明)のことを指して特許ということが多い。

特許権の対象となる発明とは、自然科学の法則を応用して新たに考案された物や方法、物を生産する手段などで、特許発明として登録されるには新規性や進歩性、産業への応用可能性がなければならない。

出願された内容がすでに公知の場合や、科学的に実在を確認できない原理や存在に基いている場合、自然科学の法則を利用していない場合、既存の技術よりあらゆる面で劣っている場合、産業における有用性が見込めない場合、公序良俗や法律に反する目的や手段を含む場合などは、審査により却下される。

特許発明の出願者には独占的な使用権が認められ、発明を許諾なく使用した者に対し、使用の差し止めや損害賠償を請求することができる。特許権の有効期間は日本の現在の制度では出願から20年間で、原則として延長はできないが、薬品などごく一部の分野に限って5年間の延長が認められる。登録中は毎年特許庁に特許料を収めなければならず、これを怠ると20年を待たずに特許権は消滅する。

特許発明の内容は特許庁によって公開され、誰でもその詳細を知ることができる。また、特許権は商標権のように任意の期間延長することはできず、存続期間が終了すると誰でも自由にその発明を利用できるようになる。

このため、自社の優位を少しでも長く維持したい企業や、知的財産権の保護体制が未整備な国への技術流出を恐れる企業では、自社独自の技術などをあえて特許出願せず、秘密を厳重に管理して守ろうとする場合もある。

実用新案権 ⭐⭐⭐

知的財産権の一種で、新たに考案された物の形状や構造などを一定期間、独占的に使用する権利。日本では実用新案法によって保護され、特許庁に出願して登録されると権利が発効する。登録された形状などのことを「実用新案」という。

実用新案権の対象となるのは、自然科学の法則を応用して新たに考案された物体・物品の形状や構造、またその組み合わせで、特許権とは異なり、何かを実現するための方法や、化学物質、コンピュータプログラムなどは含まれない。技術水準が高度でなくてもよい点も特許と異なる。

実用新案の出願者には独占的な使用権が認められ、許諾なく使用した者に対し、使用の差し止めや損害賠償を請求することができる。実用新案権の有効期間は日本の現在の制度では出願から10年間で、延長はできない。

実用新案は特許庁への出願時には特許のように審査はされず、そのまま登録される。ただし、模倣者への使用の差止請求など権利を行使するには、同庁に技術評価書の作成を請求して相手方にこれを提示しなければならず、この技術評価が事実上の審査となっている。技術評価によって新規性がないなど否定的な評価が下されても直ちに登録が抹消されるわけではないが、権利行使は事実上不可能となる。

意匠権 ⭐⭐⭐

知的財産権の一種で、工業製品のデザインや特徴的な外観を一定期間、独占的に使用する権利。日本では意匠法によって保護され、特許庁に出願して登録されると権利が発効する。

意匠権の対象となるのは美感を起こさせる物体の形状、模様、色彩、およびこれらの組み合わせで、新規性や創作性があり、工業的に利用できる(量産できる)ものでなければならない。

美術品のように量産できないものや、機能を実現するための形状・構造、外観に表れない内部構造、既存・先願の意匠と同一あるいは類似しているもの、すでに有名なブランドや製品などと誤認・混同する恐れのあるもの、公序良俗に反するものなどは登録することができない。

意匠を登録するには特許庁に出願書とともに図面や写真、見本などを提出して審査を受け、要件を満たすと登録される。出願者には当該意匠および類似する意匠について独占的に使用する権利が認められ、許諾なく使用した者に対し、使用の差し止めや損害賠償を請求することができる。意匠権の有効期間は日本の現在の制度では登録から20年間で、延長はできない。

登録された意匠は同庁により公開されるが、申請すれば登録から3年に限り非公開(秘密)とすることができる。秘密意匠について権利を行使するには同庁から登録を証明する書類を取得して相手方に提示しなければならない。

商標権 【登録商標】 ⭐⭐⭐

知的財産権の一種で、製品やサービスの名称やロゴなど、商業上の標識として用いられる文字の並びや図形などを独占的に使用する権利。日本では商標法によって保護され、特許庁に出願して受理されると権利が発効する。

商標として登録できるのは、文字や記号、平面図形、立体図形、またこれらの組み合わせで、2015年の商標法改正で新たに、動き(図形などの特徴的な移動や変形)、位置(対象物の中で標識が掲示される位置)、色(シンボルカラーなど、単色または複数色の組み合わせ)、音(サウンドロゴなど)、ホログラムが新たに対象となった。

特許庁に登録され、保護の対象となった商標のことを「登録商標」という。権利者は登録商標や類似する商標を許諾なく使用した者に対し、使用の差し止めや損害賠償を請求することができる。登録は10年間有効で、申請により10年ずつ延長することができる。出願や登録、延長にはそれぞれ手数料がかかる。

商標登録は分類ごとに行われ、登録時に対象となる商品やサービスの分類(指定商品・指定役務)を指定しなければならない。分類ごとに出願料・登録料がかかるため、すべての分類を網羅する商標を登録するには巨額の費用がかかる。

指定外の分類では他者がその商標を自由に使用することができ、自らの商標として登録することもできる。実際、シンプルな製品名称などでは分類ごとに商標権者が異なるということもよくある。ただし、すでに有名な製品名などと同じか類似する商標の登録は認められないことが多いほか、無断で使用すると商標法上は問題なくても不正競争防止法など他の法律に抵触することがある。

商標登録は出願すれば必ず認められるとは限らず、一般名詞や地名、公序良俗に反する言葉や図形、日本や他国の国旗、商品の誤認や混同が起こるような名称(指定商品がうどんなのに出願商標が「○○ラーメン」など)、既存の登録商標に類似する商標などは審査により却下される。

名称やロゴなどが登録商標であることを示すには、「登録商標」「registered trademark」といった文言の他に、「®」「(R)」といった記号が用いられることがある。また、名称などが一般名詞等ではなく商標であることを示すために「trademark」「TM」「(TM)」(サービスの場合は「servicemark」「SM」「(SM)」とも)といった文言が用いられることがあるが、これは登録していない商標について用いられることが多い。

肖像権 ⭐⭐⭐

自分の容姿、容貌を写した写真や映像を勝手に公表されない権利。日本では明文で規定した法律は無いが、民法上の不法行為などとして肖像権侵害が認められる場合がある。

自分についての情報を勝手に公開されないプライバシー権(人格権の一部)としての性質と、芸能人など容貌に経済的な価値がある場合に、無断で商業的に利用されないパブリシティ権(財産権の一部)としての性質がある。

日本では肖像権そのものを規定した法は無く、肖像権の侵害が刑事事件として扱われることはないが、憲法の幸福追求権や民法の人格権、財産権の侵害として、民事で差止請求や損害賠償請求が認められた判例はいくつも存在し、実質的な権利としてある程度確立している。

このうち、無名の一般人の肖像については主に人格権、プライバシー権が問題となり、インターネットで誹謗中傷を受けるなど肖像の公開・利用によって受忍限度を超える精神的苦痛を受けた場合などに公表の差し止めや損害賠償が認められている。

また、著名人の肖像については主に財産権、パブリシティ権が問題となり、無断で肖像を著作物や製品の広告や包装などに用いて利益を得るなどした場合には、差し止めや賠償が認められることがある。著名人の場合でも、週刊誌が勝手にプライベートの姿を隠し撮りし公表するなどプライバシー権の侵害が争われる事例は存在する。

ちなみに、競走馬のパブリシティ権が争われた、いわゆる「ダービースタリオン事件」の控訴審判決(2002年東京高裁)では、著名人のパブリシティ権は自然人(人間)の人格権に根ざして派生的に生じた権利であるとされ、(この事件で争われた競走馬のように)人間以外の有名な生き物や無生物を写した肖像には肖像権は存在しないとするのが通説となっている。

著作権 【コピーライト】 ⭐⭐⭐

知的財産権の一種で、思想や感情を創作的に表現した者がその表現の利用を独占できる権利。日本では著作物を創作した時点で自然に発生し、作者の死後50年後まで認められる。

著作権法では対象となる著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定しており、小説や随筆、論文、絵画、写真、図形、立体造形物、建築、音楽、映画、コンピュータプログラムなどがこれに該当する。新聞や雑誌、辞書などは要素の選択や配列といった編集に創作性が認められ、編集著作物として保護される。

一方、思想や感情ではない単なるデータや、創作性に乏しい他人の作品のコピーや誰が書いても同じになるような定型文書、文芸・学術・美術・音楽に含まれない日用品や工業製品、法令や判決文、行政機関などの発行する通達等の文書などは除外される。また、アイデアなどはそれを記したものはその表現が著作物として保護の対象となるが、アイデアそれ自体は著作物ではないため対象外である。

著作者に認められる権利はいくつかあり、大別すると、著作者の人格的利益を保護する著作者人格権、著作物の利用を独占的に制御することを認める財産権としての(狭義の)著作権に分かれる。また、音楽などの場合には著作者以外にも実演家やレコード製作者、放送事業者に著作隣接権が発生する。

人格権には公表権、氏名表示件、同一性保持権などが含まれ、著作権(財産権)には、複製権、上演権、公衆送信権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用についての権利などが含まれる。音楽の実演家などには、著作隣接権として、その実演についての同一性保持権や録音権、放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権などが認められる。

著作者人格権 ⭐⭐⭐

著作権の一種で、主に著作者の人格的利益を保護するための権利。公表権や氏名表示権、同一性保持権などが含まれる。

著作権を構成する諸権利は大きく分けて、著作物の財産としての権利を保護する著作財産権(狭義の著作権)、著作者の意思や感情を尊重し精神的に傷つけられないよう保護する著作者人格権、実演家などに与えられる著作隣接権に分類される。

著作者人格権は著作物の公表の仕方などを著作者がコントロールできるようにする権利で、不本意な形で著作物が流通するのを防止する。具体的な権利として、著作物を無断で公表されない「公表権」、著作者名の表記の仕方(実名、匿名、ペンネームなど)を決定する「氏名表示権」、著作物を無断で改変されない「同一性保持権」がよく知られる。

また、国によっては、不名誉な場な方法で著作物を公表されない「名誉声望保持権」や、出版の中止や公表の停止を求めることができる「出版権廃絶請求権」、出版社などに修正版への差し替えを要求できる「修正増減請求権」などが認められる場合がある。

著作者人格権は著作者本人の人格、精神にまつわる権利のため、著作財産権とは異なり譲渡や相続、貸与などができないか制限される(一身専属性)。ベルヌ条約では著作者の死後も著作者人格権は存続すると定められており、日本の著作権法では権利自体の相続の規定は無いものの、きょうだいや孫といった2親等以内の親族などに権利侵害に対する差止請求権などを認めている。

公衆送信権

著作権を構成する権利の一つで、公衆が直接受信することを目的として著作物を通信技術を用いて送信する権利。著作物を放送で流す権利などが該当する。

日本の著作権法では第23条に規定があり、広く一般の人々が受信、視聴、閲覧などするために無線や有線の通信によって著作物を広域的に送信、配信する権利を指す。典型的にはテレビやラジオなどの放送、有線放送などがこれにあたる。ただし、プログラムの著作物(ソフトウェア)を除き、同じ建物の中で送信すること(館内アナウンスや校内放送)は公衆送信には当たらないとされる。

また、インターネット上のサーバに蓄積したデータを利用者の求めに応じて配信する方式などのことは「自動公衆送信」と定義され、著作物を自動公衆送信が可能な状態に置く(サーバにファイルをアップロードするなど)権利を「送信可能化権」という。インターネットの普及に伴い、1997年の著作権法改正時に公衆送信権とは別に新たに送信可能化権についての規定が追加された。

情報セキュリティ ⭐⭐⭐

情報を詐取や改竄などから保護しつつ、必要に応じて利用可能な状態を維持すること。また、そのために講じる措置や対策などの総体。

一般には、情報の「機密性」(confidentiality)、「完全性」(integrity)、「可用性」(availability)の三つの性質を維持することと理解される。これらの頭文字を組み合わせて「情報セキュリティのC.I.A.」と呼ぶ。国際標準のISO/IEC 27000シリーズなどでも、この三要素を情報セキュリティの構成要件としている。

情報の機密性とは正当な権限を持った者だけが情報に触れることができる状態を、完全性とは情報の破損や欠落がなく正確さを保っている状態を、可用性とは正当な権限のある者が必要なときに情報に触れることができる状態を、それぞれ表す。

また、これに加えて「真正性」(authenticity)や「責任追跡性」(accountability)、「信頼性」(reliability)、「否認防止」(non-repudiation)などの要素を情報セキュリティの要件の一部とする場合もある。

情報セキュリティが脅かされると、外部の攻撃者や内部犯による機密情報や個人情報などの漏洩や改竄、消去などの被害が生じる。企業などの組織が取り扱う情報の安全を確保するには、これらの要素に留意しながら、適切なコンピュータシステムによる保管や管理、認証やアクセス制御、暗号化などの実施、適切な利用手順の整備や利用者に対する啓発などが必要となる。

インテグリティ 【完全性】 ⭐⭐⭐

誠実、正直、完全(性)、全体性、整合性、統合性、などの意味を持つ英単語。ITの分野では、システムやデータの整合性、無矛盾性、一貫性などの意味で用いられることが多い。

データインテグリティ (data integrity/データ完全性)

データの処理・読み込み・書き込み・保管・転送などに際して、目的のデータが常に揃っていて、内容に誤りや欠けが無いこと(および、それが保証されていること)をデータの完全性という。日本語で「完全性」の訳語が当てられることもある。

データベースにおける正規化や制約の設定などが不十分でデータ間の関係に矛盾が生じたり、装置の障害やソフトウェアのバグによって内容の欠損や変質が起きたり、外部の攻撃者によって改竄されたりすると、完全性が損なわれることになる。

機密性 ⭐⭐⭐

情報セキュリティの基本的な概念の一つで、正当な権限を持った者だけが情報に触れることができる状態。また、そのような状態を確保・維持すること。

正規に許可を得た人だけが、認められた範囲内で情報に触れることができ、故意や誤りによる情報の漏洩や改竄、削除などを引き起こすことができない状態を表す。

機密性を確保するには、利用者の識別や認証、所属や権限に応じた情報や機能へのアクセス制御、情報の閲覧や複製、移動に関する履歴の記録や監査などが適切に行われる必要がある。

「完全性」(Integrity)「可用性」(Availability)と合わせて、情報セキュリティの三要素、または、それぞれの英単語の頭文字を取って「C.I.A.」と呼ばれることがある。

可用性 【アベイラビリティ】 ⭐⭐⭐

システムなどが使用できる状態を維持し続ける能力。利用者などから見て、必要なときに使用可能な状態が継続されている度合いを表したもの。

可用性の高さは、使用可能であるべき時間のうち実際に使用可能であった時間の割合(稼働率)で示されることが多い。例えば、24時間365日の稼働が求められるシステムの稼働率が99.9999%であるとすると、年間平均で約31.5秒間使用不能な時間が生じることを意味する。

重要な業務システムなどに用いるため、装置の二重化や複数のコンピュータによるクラスタリングなどの措置を講じ、装置の故障やメンテナンスがあってもシステムが提供する機能やサービスが停止・中断しない状態を「高可用性」(HA:High Availability)という。

似た概念に「信頼性」(reliablity)があるが、これは機器などの故障、破損、障害の起きにくさ、停止しにくさを指す。定量的には、単位期間あたりに故障が起きる確率である故障率や、故障から次の故障までの平均期間である平均故障間隔(MTBF)などで表される。

ある一つの装置などについては可用性の高さと信頼性の高さは一致することもあるが、複雑・大規模なシステムでは、装置やシステムを複数用意して一つが停止しても全体が停止しないようにすることで、低い信頼性の要素を組み合わせて高い可用性を確保することもできる。

情報システムに求められる特性として、可用性、信頼性、保守性(整備や修理のしやすさ)の3つの頭文字を繋げた「RAS」(Reliability Availability Serviceability)や、さらに完全性(Integrity)、機密性(Security)の2つを追加した「RASIS」の概念がよく用いられる。

情報セキュリティポリシー ⭐⭐⭐

企業などの組織が取り扱う情報やコンピュータシステムを安全に保つための基本方針や対策基準などを定めたもの。広義には、具体的な規約や実施手順、管理規定などを含む場合がある。

情報部門などの提案や助言などを得ながら経営層が策定し、全社に周知すべきものとされる。基本方針など一部は、その組織の情報管理についての考え方や取り組み方を表明する文書として外部や一般にも公開される。

基本方針には、ポリシーの適用範囲、対象となる情報資産、実施体制、各員・部門の役割や責務、実施・策定すべき施策や規約、遵守する法令や指針などが記述される。これに基づき、組織内に存在する人員や部門、情報などに合わせて具体的に何をどのような脅威から守るのか、誰が何をすべき・すべきでないか、誰に何を許可する・許可しないか、といった方針をセキュリティ対策基準として策定する。

基本方針のみ、あるいは対策基準までをポリシーの範囲とする場合が多く、これらに基づいて実施手順や運用規約、社内規定など個別具体的なルールが定められる。内部の人員にはこれら具体的な規約が手順書やマニュアルなどの形で周知・徹底される。

セキュリティポリシーは技術的な対策や専門家、専任スタッフだけでは適切な情報資産の管理に限界があることを踏まえ、全社の人や組織がどのように情報やシステムを安全に運用していくか観点で策定される。このため、作成しただけで具体的な行動に反映されなければ意味がなく、また、施行後も運用状況や外部環境の変化などに合わせて繰り返し見直しや改善を行うことが重要とされる。

セキュリティホール ⭐⭐

コンピュータシステムに生じた保安上の弱点や欠陥。悪意ある人物やプログラムがシステムを不正に操作したり、データを不正に取得・変更することができるようになってしまう不具合のこと。現在ではほぼ同義の「脆弱性」(vulnerability)という語が用いられる。

システムを構成する機器や装置、ソフトウェア、あるいはデータ形式や通信規約(プロトコル)などに含まれる、設計上あるいは実装上の誤りや見過ごしなどにより生じる不具合のうち、システムの安全性(セキュリティ)を脅かす潜在的な危険性を持つものを指す。

攻撃者はこれを発見し悪用することで、システム上で本来の権限を超えた操作を実行したり、本来は見ることのできないデータを盗み取ったり、編集権限の無いデータを改ざん、削除したり、他のシステムへの侵入や攻撃の踏み台に使用したりすることができるようになる。攻撃はコンピュータウイルスやインターネットワームのような形で自動化されている場合もあり、知らない間にこれらに感染し損害を被ったり、他のシステムへ感染を広げてしまうことがある。

セキュリティホールの多くはソフトウェアの問題により発生するため、欠陥の発見されたソフトウェアは開発者が修正プログラム(セキュリティパッチ)を配布することが多い。インターネットが普及した現在ではセキュリティホールを放置するといつ外部からの攻撃に晒されるか分からないため、ソフトウェアは常に最新の状態に更新することが奨励されている。

ファイアウォール ⭐⭐⭐

ネットワークの境界などに設置され、内外の通信を中継・監視し、外部の攻撃から内部を保護するためのソフトウェアや機器、システムなどのこと。

原義は「防火壁」で、外部から攻撃のために送り込まれるデータに対する防御を、火事の炎を遮断して延焼を防ぐことになぞらえている。「FW」「F/W」などの略号で示されることもある。

一般的な構成では、ファイアウォールに内部ネットワーク(LAN)の回線とインターネットなど外部ネットワーク(WAN)の回線を両方つなぎ、内部と外部の境界をまたぐ通信が必ずファイアウォールを通過するようにして、一定の基準に従って不正と判断した通信を遮断する。

サーバコンピュータ上でソフトウェアとして動作するものと、専用の通信機器(アプライアンス)として提供されるもの、ルータなどのネットワーク機器の機能の一つとして統合されているものがあり、防御対象や規模などに応じて選択する。パソコン向けのセキュリティソフトやオペレーティングシステム(OS)にはファイアウォール機能が含まれることもある。

パケットフィルタリング方式

ファイアウォールが通信の可否を判断する方式には様々なものがあるが、最も一般的なのは「パケットフィルタリング」(packet filtering)と呼ばれる方式で、内外を通過するパケットの制御情報(ヘッダ)を読み取り、あらかじめ指定された条件に基づいて通過か破棄かの判定を行う。

よく用いられる条件として、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、プロトコルの種類(ICMP/UDP/TCP)、送信元ポート番号、宛先ポート番号、通信の方向(内部→外部/外部→内部)などがあり、これらの組み合わせによって可否を指定することができる。

形式的な判定だけでなく、TCPコネクションの状態などを一定の過去まで記録しておき、過去の通信と辻褄の合わない奇妙な制御情報が記載されたパケットが届くと攻撃の試みであるとみなして拒絶する「ステートフルパケットインスペクション」(SPI)など、高度な判断が可能な製品もある。

他の方式

パケットフィルタ方式は原則としてIP(Internet Protocol)の制御情報を利用するが、トランスポート層のTCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)のレベルで通信の中継を行うものを「サーキットレベルゲートウェイ」という。SOCKSなどが該当し、通過や遮断の制御だけでなく、NATのようにプライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの変換なども行う。

また、さらに上位のHTTPなど個別のアプリケーション層のプロトコルの制御情報を用いて通信制御を行うものは「アプリケーションレベルゲートウェイ」という。プロキシサーバなどが該当し、アドレス変換やコンテンツのキャッシュ、ウイルスチェックなどの機能も合わせて提供される。

パーソナルファイアウォール

家庭などでパソコンに導入する個人向けの製品は「パーソナルファイアウォール」(PFW:Personal Firewall)と呼ばれる。パソコンと外部の機器とのネットワーク通信を監視し、あらかじめ指定された条件に基づいて許可された通信以外を遮断する。

単体の製品やフリーソフトウェアがあるほか、セキュリティソフトウェア企業などでは、アンチウイルスソフトなどと共に統合セキュリティソフトウェア(「○○インターネットセキュリティ」といった製品)の機能の一部として提供している場合がある。Windowsでは標準で内蔵されている「Windows Defender」にパーソナルファイアウォール機能が組み込まれている。

パケットフィルタリング 【PF】

通信機器やコンピュータの持つネットワーク制御機能の一つで、外部から受信したデータ(パケット)を管理者などが設定した一定の基準に従って通したり破棄したりすること。ルータなどの中継装置はパケットの転送時に、コンピュータなどの端末は自分宛てのパケットの着信時に行う。

受信したIPパケットやその中のTCPパケット、UDPデータグラムのヘッダ部分などを解析し、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、送信元ポート番号、宛先ポート番号、プロトコルの種類などの情報を取得する。これを元に、あらかじめ設定された条件と比較して、パケットを通過させるか破棄するかを判断する。条件の指定は「列挙した条件に適合するもの以外すべて通過」と「列挙した条件に適合するもの以外すべて破棄」のいずれかの方式で行う。

どのような条件によって通過あるいは破棄させるかは機器やネットワーク管理者が任意に設定することができるが、当該組織のネットワーク運用ポリシーに照らして、最低限通過させる必要のあるパケット以外は破棄するという設定にすることが多い。外部からの攻撃に悪用されることを極力防ぐためである。

マルウェア 【悪意のあるソフトウェア】 ⭐⭐⭐

コンピュータの正常な動作を妨げたり、利用者やコンピュータに害を成す不正な動作を行うソフトウェアの総称。コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬などが含まれる。

“malicious software” (悪意のあるソフトウェア)を短縮した略語で、悪意に基づいて開発され、利用者やコンピュータに不正・有害な動作を行う様々なコンピュータプログラムを総称する。

コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェア、ボット、バックドア、一部の悪質なアドウェアなどが含まれる。キーロガーのように正規の用途で用いる場合もマルウェアとなる場合もあるものもある。

利用者の知らない間に、あるいは欺くような手法でコンピュータに侵入し、記憶装置に保存されたプログラムやデータを改変、消去したり、重要あるいは秘密のデータを通信ネットワークを通じて外部に漏洩したり、利用者の操作や入力を監視して攻撃者に報告したり、外部から遠隔操作できる窓口を開いたり、ネットワークを通じて他のコンピュータを攻撃したりする。

「マルウェア」という用語は専門家や技術者以外の一般的な認知度が低く、また、マルウェアに含まれるソフトウェアの分類や違いなどもあまり浸透していないため、マスメディアなどでは「コンピュータウイルス」という用語をマルウェアのような意味で総称的に用いることがある。

マルウェア対策

マルウェアに対抗するため、これを検知・駆除するソフトウェアを用いることがある。歴史的にウイルス対策から発展したため「アンチウイルスソフト」(anti-virus software)と呼ばれる。企業などでは伝送途上の通信内容からマルウェアを検知する「アンチウイルスゲートウェイ」なども用いられる。

マルウェアの検知には、ストレージ内のファイルなどを既知のマルウェアの特徴的なパターンと照合する「パターンマッチング法」や、マルウェアに特徴的な振る舞いを検知する「ヒューリスティック法」、隔離された実行環境で実際に実行してみる「ビヘイビア法」などの検知手法が用いられる。

マルウェアの中にはソフトウェアやハードウェアに存在する保安上の欠陥(脆弱性)を悪用して侵入・感染するものも多いため、セキュリティソフトなどに頼るだけでなく、老朽機材の入れ替え、ソフトウェアの適時の更新、不要な機能の停止などの対応も適切に行う必要がある。

コンピュータウイルス ⭐⭐⭐

コンピュータの正常な利用を妨げる有害なコンピュータプログラムの一種で、他のプログラムの一部として自らを複製し、そのプログラムが起動されると便乗して悪質な処理を実行に移すもの。

生物の体に潜り込んで害を成す微生物のウイルスに似ていることからこのように呼ばれ、コンピュータ関連の文脈であることが明らかな場合は単に「ウイルス」と呼ばれることも多い。広義には不正・有害なソフトウェアの総称として用いられることがあるが、本来これは「マルウェア」(malware)と呼ぶべきであるとされる。

ウイルスの感染

コンピュータウイルスは自ら単体のプログラムとして起動する能力はなく、「宿主」となる他の(正常な)プログラムの一部として自らを「感染」させ、その動作を改変して起動時に自らを実行するよう仕向ける。感染したプログラムが起動されると様々な不正・有害な処理を行うほか、他のプログラムへ自らを複製して次々に増殖していく。

ウイルスに感染したプログラムファイルが、光学ディスクやUSBメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体(記録メディア)、インターネットや構内ネットワーク(LAN)などを通じて他のコンピュータへ移動し、そこで起動されることにより、別のコンピュータへ次々に感染が広まっていくこともある。

ウイルスの挙動

コンピュータウイルスは記憶装置に保存されたプログラムやデータを破壊、改変、消去したり、秘密あるいは重要なデータを利用者の知らないうちにネットワークを通じて外部に送信したりといった不正・有害な動作を行う。

こうした振る舞いは感染後すぐに実行に移すとは限らず、一定時間の経過後や攻撃者の指定した日時に実行したり、システムの状態を監視して何らかの条件が満たされると実行するものもある。稀に、繰り返し感染するだけで何も有害な振る舞いを行わない愉快犯的なものもあり、これをウイルスとみなさない場合もある。

ウイルス対策

コンピュータウイルスに感染したプログラムを発見し、また、感染前の状態に戻したりする働きをするソフトウェアを「アンチウイルスソフト」(anti-virus software)あるいは「ワクチンソフト」(vaccine software)などと呼ぶ。

ウイルスの検知には、ストレージ内のファイルなどを既知のウイルスの特徴的なパターンと照合する「パターンマッチング法」や、ウイルスに特徴的な振る舞いを検知する「ヒューリスティック法」、隔離された実行環境で実際に実行してみる「ビヘイビア法」などの検知手法が用いられる。

ウイルス検知のみを行い回復は利用者や他のツールに頼るシステムと、ファイルに含まれる不正なコードの除去を試みるシステムがある。企業などのネットワークでは、伝送途上の通信内容からウイルスを検知して流入を阻止する「アンチウイルスゲートウェイ」なども用いられる。

他のマルウェアとの違い

コンピュータウイルスのような開発者が悪意に基づいて開発・配布している有害なソフトウェアを総称して「マルウェア」(malware:悪意のあるソフトウェア)という。この用語はあまり普及しておらず、総称の意味で「コンピュータウイルス」と呼ぶことも多い。

ウイルスの他に、プログラムファイルへの感染などはせず、自ら単体のプログラムとして起動し、主にネットワークを通じて他のコンピュータへの感染を広める「ワーム」(worm)、一見何か有用な働きをするソフトウェアのように振る舞うが、その裏で利用者に気づかれないように有害な動作を行う「トロイの木馬」(Trojan horse)などがある。

他にも、感染先のコンピュータのストレージを暗号化し、復号のために攻撃者への「身代金」の支払いを求める「ランサムウェア」(ransomware)、攻撃者が遠隔から操作できるネットワーク上の「窓口」を設ける「バックドア」(backdoor)、利用者の操作やコンピュータ内の処理、データ送受信などを盗聴して攻撃者に報告する「スパイウェア」(spyware)など様々な類型があり、これらの複数に該当する複合型のマルウェアも多い。

アンチウイルスソフト 【ウイルス対策ソフト】 ⭐⭐

コンピュータ内部に忍び込んだコンピュータウイルスを検知、除去するソフトウェア。狭義のウイルスに限らず、スパイウェアやトロイの木馬などマルウェア全般を対象とするシステムが一般的である。

コンピュータの外部記憶装置(ストレージ)に保存された実行可能ファイルなどの一部として感染したウイルスや、メモリ上で実行されているウイルスを探し出し、機能を停止して取り除く。感染したファイルからはウイルス部分の除去を試み、成功すれば感染前の正常な状態に戻すが、除去が不可能な場合は感染が広まらないよう隔離する。

トロイの木馬、ワーム、スパイウェアなどウイルス以外の悪意のあるソフトウェア(マルウェア)を検知、除去する機能や、外部との通信やソフトウェアの実行状況を監視するなどしてウイルスの侵入、感染を直前に察知して防御、遮断する機能を持ったものもある。

ウイルス検知手法

アンチウイルスソフトがウイルスを検知する手法には大きく分けて二つの手法がある。一つはパターンマッチング法で、これまでに発見されたウイルスについて、そのプログラムコードの特徴的な一部を採取、登録したデータベース(パターンファイル、ウイルス定義ファイルなどと呼ばれる)を用意する。

これに該当するパターンが含まれていないか、実行ファイルなどをしらみつぶしに調べていく手法である。パターンファイルはインターネットなどを通じてメーカーから定期的に最新のものが送られてきて更新されるようになっている製品が多い。

もう一つはヒューリスティック法で、一般的なプログラムではありえないようなウイルスに特徴的な異常な挙動(重要なシステムファイルを書き換えようとする等)の有無を調べる。一部の特殊なシステムファイルなどをウイルスと誤認することもあるが、パターンマッチング法の苦手な未知のウイルスや、既存のウイルスの一部が改変された亜種などにも対応できる。

提供形態・動作形態

一般によく利用されるのは、パソコンにアプリケーションとして導入され、そのパソコンに保存されたデータを監視するソフトウェアだが、近年では総合的なセキュリティソフトの機能の一部として統合されて提供されることが多い。

サーバ上で動作してネットワークを通じて送受信するデータを監視するシステムもある。中継機器上でネットワーク内外を通過するデータを対象に監視やウイルス除去を行うのに特化した製品は「アンチウイルスゲートウェイ」と呼ばれる。

アンチウイルスソフト 【ウイルス対策ソフト】 ⭐⭐

コンピュータ内部に忍び込んだコンピュータウイルスを検知、除去するソフトウェア。狭義のウイルスに限らず、スパイウェアやトロイの木馬などマルウェア全般を対象とするシステムが一般的である。

コンピュータの外部記憶装置(ストレージ)に保存された実行可能ファイルなどの一部として感染したウイルスや、メモリ上で実行されているウイルスを探し出し、機能を停止して取り除く。感染したファイルからはウイルス部分の除去を試み、成功すれば感染前の正常な状態に戻すが、除去が不可能な場合は感染が広まらないよう隔離する。

トロイの木馬、ワーム、スパイウェアなどウイルス以外の悪意のあるソフトウェア(マルウェア)を検知、除去する機能や、外部との通信やソフトウェアの実行状況を監視するなどしてウイルスの侵入、感染を直前に察知して防御、遮断する機能を持ったものもある。

ウイルス検知手法

アンチウイルスソフトがウイルスを検知する手法には大きく分けて二つの手法がある。一つはパターンマッチング法で、これまでに発見されたウイルスについて、そのプログラムコードの特徴的な一部を採取、登録したデータベース(パターンファイル、ウイルス定義ファイルなどと呼ばれる)を用意する。

これに該当するパターンが含まれていないか、実行ファイルなどをしらみつぶしに調べていく手法である。パターンファイルはインターネットなどを通じてメーカーから定期的に最新のものが送られてきて更新されるようになっている製品が多い。

もう一つはヒューリスティック法で、一般的なプログラムではありえないようなウイルスに特徴的な異常な挙動(重要なシステムファイルを書き換えようとする等)の有無を調べる。一部の特殊なシステムファイルなどをウイルスと誤認することもあるが、パターンマッチング法の苦手な未知のウイルスや、既存のウイルスの一部が改変された亜種などにも対応できる。

提供形態・動作形態

一般によく利用されるのは、パソコンにアプリケーションとして導入され、そのパソコンに保存されたデータを監視するソフトウェアだが、近年では総合的なセキュリティソフトの機能の一部として統合されて提供されることが多い。

サーバ上で動作してネットワークを通じて送受信するデータを監視するシステムもある。中継機器上でネットワーク内外を通過するデータを対象に監視やウイルス除去を行うのに特化した製品は「アンチウイルスゲートウェイ」と呼ばれる。

サイバー犯罪 【ハイテク犯罪】 ⭐⭐

コンピュータや通信ネットワークを用いて行われる犯罪の総称。主にインターネット上で行われる犯罪行為を指すことが多い。

どのような行為が該当するかは各国の法律によって異なるが、日本では不正アクセス、DoS攻撃、ネット詐欺(フィッシングや架空請求など)、オンライン不正送金、著作物の無断複製や配布、わいせつ物などの公開や譲渡、SNSなどにおける誹謗中傷や業務妨害などが罪に問われる。

関連する法律としては刑法や不正アクセス禁止法、著作権法、不正競争防止法などがあり、法律上の罪種としては電磁的記録不正作出(データ改竄など)、電子計算機損壊等業務妨害(遠隔操作によるデータ消去など)、電子計算機使用詐欺(クレジットカード番号窃取・不正使用など)、不正指令電磁的記録作成(コンピュータウイルスの開発・配布など)、偽計業務妨害(ネット上の犯罪予告など)、著作権侵害、名誉毀損、信用毀損(風説の流布など)、わいせつ物公然陳列・頒布などが該当する。

犯人がインターネットを通じて犯行を行ったり、犯行現場がネット上であるようなものを指すことが多いが、クレジットカードのスキミングのように、ネットとは無関係に電子的な手段を利用した犯罪も含まれる。

サイバー犯罪自体は各国の刑事司法制度で裁かれるが、国家をまたぐ不正アクセス事件などに対処するため、2001年にサイバー犯罪条約が成立(発効は2004年)し、加盟諸国が国内法を整備して捜査などで協力している(日本は2012年批准)。

サイバー犯罪のうち、何らかの政治的な示威などのために大規模に行われる不正アクセスやDoS攻撃などのことを「サイバーテロ」(cyberterrorism)という。また、敵対する国家間や国家に準じる勢力の間で互いに攻撃を加え合う行為は「サイバー戦争」(cyberwarfare)という。

サイバー攻撃 【サイバーアタック】

あるコンピュータシステムやネットワーク、電子機器などに対し、正規の利用権限を持たない悪意のある第三者が不正な手段で働きかけ、機能不全や停止に追い込んだり、データの改竄や詐取、遠隔操作などを行うこと。

特定の組織や集団、個人を狙ったものと、不特定多数を無差別に攻撃するものがある。政治的な示威行為として行われるものは「サイバーテロ」(cyberterrorism)、国家間などで行われるものは「サイバー戦争」(cyberwarfare)と呼ばれることもある。

具体的な活動として、Webサーバに侵入してサイトの内容を改竄したり、情報システムに侵入して機密情報や個人情報を盗み出したり、大量のアクセスを集中させてサーバや回線を機能不全に追い込んだり(DoS攻撃/DDoS攻撃)、アクセス権限を不正に取得して本人になりすましてシステムを操作したり、システムを使用不能にして回復手段の提供に身代金を要求したり(ランサムウェア)といった事例が挙げられる。

攻撃者がインターネットなどを通じて標的システムに直接働きかけて攻撃を実行する手法と、コンピュータウイルスやトロイの木馬などのマルウェアを感染させ、その働きにより攻撃する手法がある。両者を組み合わせ、送り込んだマルウェアに外部から指令を送って遠隔操作する手法もある。

サイバーテロ (cyberterrorism)

サイバー攻撃のうち、政治的な要求や脅迫、示威などを目的に行われるものを「サイバーテロリズム」(cyberterrorism)、略してサイバーテロという。

特定の個人や集団が政治的な意図や動機に基づいて行うインターネットやコンピュータシステムを利用した攻撃活動で、対象に打撃を与えて政治的な主張を宣伝したり、何らかの要求に従うよう求めたり、標的側の行いに対する報復であると称したりする。

官公庁や軍、マスメディア、社会インフラ、通信網、交通機関、金融機関、医療機関など、国家や社会、人命、財産にとって重要な機能に損害を与えることを狙った攻撃が典型的だが、Webサイトの改竄や活動妨害(DoS攻撃)のような攻撃では特定の国家や民族に属するというだけで広汎・無差別に対象が選択される場合もある。

サイバー犯罪 【ハイテク犯罪】

コンピュータや通信ネットワークを用いて行われる犯罪の総称。主にインターネット上で行われる犯罪行為を指すことが多い。

どのような行為が該当するかは各国の法律によって異なるが、日本では不正アクセス、DoS攻撃、ネット詐欺(フィッシングや架空請求など)、オンライン不正送金、著作物の無断複製や配布、わいせつ物などの公開や譲渡、SNSなどにおける誹謗中傷や業務妨害などが罪に問われる。

関連する法律としては刑法や不正アクセス禁止法、著作権法、不正競争防止法などがあり、法律上の罪種としては電磁的記録不正作出(データ改竄など)、電子計算機損壊等業務妨害(遠隔操作によるデータ消去など)、電子計算機使用詐欺(クレジットカード番号窃取・不正使用など)、不正指令電磁的記録作成(コンピュータウイルスの開発・配布など)、偽計業務妨害(ネット上の犯罪予告など)、著作権侵害、名誉毀損、信用毀損(風説の流布など)、わいせつ物公然陳列・頒布などが該当する。

犯人がインターネットを通じて犯行を行ったり、犯行現場がネット上であるようなものを指すことが多いが、クレジットカードのスキミングのように、ネットとは無関係に電子的な手段を利用した犯罪も含まれる。

ネットワーク犯罪自体は各国の刑事司法制度で裁かれるが、国家をまたぐ不正アクセス事件などに対処するため、2001年にサイバー犯罪条約が成立(発効は2004年)し、加盟諸国が国内法を整備して捜査などで協力している(日本は2012年批准)。

ネットワーク犯罪のうち、何らかの政治的な示威などのために大規模に行われる不正アクセスやDoS攻撃などのことを「サイバーテロ」(cyberterrorism)という。また、敵対する国家間や国家に準じる勢力の間で互いに攻撃を加え合う行為は「サイバー戦争」(cyberwarfare)という。

不正アクセス禁止法 【不正アクセス行為の禁止等に関する法律】 ⭐⭐⭐

通信回線を通じて利用権限のないコンピュータを非正規な方法で操作することを禁じ、違反者を罰する日本の法律。1999年に成立し、2000年に2月に施行された。

アクセス制御を行っているコンピュータやそのようなコンピュータに守られているコンピュータに対し、通信回線やネットワークを通じてアクセスし、本来制限されている機能を利用可能にすることを禁じている。違反した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課される。

制限を回避する行為として、他人の識別符号(パスワードなど)を盗み取って本人になりすましたり、識別符号以外の、制限を免れるための何らかの情報(ソフトウェアの脆弱性を攻撃するコードなど)を送り込むことを挙げている。

2012年の改正で、他人の識別符号を不正に取得する行為、不正アクセスを助長する行為(識別符号の不正な提供など)、不正に取得された識別符号を保管する行為が新たに禁止され、違反者には30万円以下の罰金が課されるようになった。

また、コンピュータのアクセス管理者に対しては識別符号の管理やアクセス制御機能などについて適切な防御措置を取る努力義務が課されており、都道府県公安委員会に対しては被害にあったアクセス管理者から支援を要請されたら必要な情報の提供や助言などの援助するよう定めている。

ソーシャルエンジニアリング 【ソーシャルハッキング】 ⭐⭐⭐

コンピュータシステムにアクセスするために必要な情報(パスワードなど)やその手がかりを、それを知る本人や周辺者への接触や接近を通じて盗み取る手法の総称。

コンピュータウイルスや通信の盗聴のような情報システムに直接介入する攻撃手法を用いず、物理的に本人の周辺に近づいて、人間の行動や心理に生じる隙を利用して重要な情報を得る手法を指す。

例えば、本人が端末にパスワードや暗証番号を入力しているところに近づいて、背後から肩越しに入力内容を盗み見る「ショルダーハック」(shoulder surfing)がよく知られる。

他にも、本人が席を外した隙にメモや付箋を盗み見たり、ゴミとして捨てられた書類などを盗んだり、身分を詐称して電話をかけて情報を聞き出すといった手法が知られている。情報の盗み取りだけでなく、本人にしかできない手続きを本人になりすまして行わせる手法も含む場合がある。

また、架空請求詐欺やフィッシングのように、虚偽の発信元や内容を記した電子メールやショートメッセージなどで受信者を騙し、ウイルス感染や偽サイトへの誘導、金銭の詐取など狙う手法も、電子的な手段を用いているがソーシャルエンジニアリングの一種に分類される場合もある。

ワンクリック詐欺 【ワンクリック料金請求】 ⭐⭐

インターネットを通じて行われる不当料金請求の手口の一つで、Webページを開くといきなり料金請求の画面が表示される方式。

無差別に大量に送信される勧誘メールなどからサイトにアクセスすると、ページを開いただけで「登録が完了しました」「料金をお支払いください」などのメッセージが突然表示され、金額や振込先などが表示される。

請求画面には、アクセスした人のIPアドレスや端末の機種名(スマートフォンなどの場合)、Webブラウザやオペレーティングシステム(OS)の種類、位置情報サービスなどから割り出した大まかな現在地の情報などが表示されることが多い。

これらの情報は普段からブラウザがサーバ側に提供しているものであり、これを元に氏名や住所、電話番号などの個人情報を割り出すことはできない。「個人情報を取得したので支払いが無い場合は法的措置を取る」といった恫喝的なメッセージが記載されることもある。

サイトにアクセスしただけで、あるいは十分な契約についての説明と明確な意思表示なしに契約が成立することはないので、このような請求は法的に無効であり、料金を支払う必要はない。また、自らサイト側に申告しない限り、個人情報が業者の手に渡ってしつこい督促に会うということもないので、このような画面に出くわしても無視してページを閉じて良い。

架空請求メール 【架空請求詐欺】

架空の料金請求を無作為に電子メールで送付し、不当な支払いを要求する詐欺。請求の内容は適当にでっち上げたでたらめで、請求元の組織名や請求対象の商品やサービス自体が創作である場合も多い。

何らかの方法で入手したメールアドレスのリストに無差別に架空の請求を送りつけ、騙された被害者に犯人の銀行口座などに料金を振り込ませるという手口である。請求の名目として有料アダルトサイトの利用料や出会い系サイトの登録料金、オンライン通販の商品代金などを挙げる事例が多い。

請求を行う事業者を名乗るパターンの他に、事業者から債権を買い取った回収業者を名乗ったり、IPアドレスなど適当な識別番号を記載して身元を把握しているように装ったり、文面に「期限までに支払いがない場合は法的措置を取る」などの脅しを入れて不安を煽るなど、手口は年々巧妙化している。

請求書を送りつけられた人の中には、過去に自分が使った別の事業者の請求と勘違いしたり、身に覚えがなくても「手切れ」のつもりで振り込んでしまったり、家族が使ったと思いこんで支払ってしまう例もある。

このような手口の詐欺メールは2002年頃から広く見られるようになり、ネット利用詐欺の定番の手口として定着している。電子メールだけでなく、携帯電話番号のリストを用いて架空請求のSMS(ショートメッセージ)を送信する手口や、郵便はがきを用いた同様の手口もよく知られている。

フィッシング 【フィッシング詐欺】 ⭐⭐⭐

金融機関などからの正規のメールやWebサイトを装い、暗証番号やクレジットカード番号などを詐取する詐欺。利用者を騙して重要な情報を入力させることを狙う。

「釣り」を意味する “fishing” が語源で、釣り針の先に付けた餌やルアーに獲物が食いつく様子を釣りに例えた表現だが、偽装の手法が洗練されている(sophisticated)ことから “phishing” と綴るようになったとする説がある。

フィッシングの代表的な手口は以下のとおり。メールの送信者名を金融機関の窓口などのアドレスにしたメールを無差別に送りつけ、本文には個人情報を入力するよう促す案内文とWebページへのリンクが載っている。

リンクをクリックするとその金融機関の正規のWebサイトと、個人情報入力用のポップアップウィンドウが表示される。メインウィンドウに表示されるサイトは「本物」で、ポップアップページは「偽者」である。本物を見て安心した利用者がポップアップに表示された入力フォームに暗証番号やパスワード、クレジットカード番号などの秘密を入力・送信すると、犯人に情報が送信される。

フィッシング攻撃者は、URLに使用される特殊な書式を利用してあたかも本物のドメインにリンクしているかのように見せたり、ポップアップウィンドウのアドレスバーを非表示にするなど非常に巧妙な手口を利用しており、「釣られる」被害者が続出している。

フィッシングへの対応策としては、送信者欄を信用しない、フォームの送受信にSSLが利用されているか確認する、メールに示された連絡方法(リンクなど)以外の正規のものと確認できている電話番号やURLなどから案内が本物かどうかを確認する、などが挙げられる。

スピアフィッシング (spear phishing)

特定の人物を狙い、偽のメールを送ったりウイルスを仕込んだりしてパスワードや個人情報などを詐取する詐欺。もとは魚釣りの用語で、銛(もり)や水中銃で魚を突き刺す釣り方のこと。

大手銀行のオンラインバンキングなど有名なサービスの不特定多数の利用者を狙う通常のフィッシングとは異なり、対象の素性を調査した上で、その個人に合わせた手法が個別に考案されるのが特徴である。

例えば、大企業の支店に勤務する社員に「本社の情報システム部の者だが調査に必要なのであなたのパスワードを教えてほしい」といったメールを送り、だまされた社員から聞き出したパスワードを使ってその企業のネットワークに不正侵入するといった手が使われる。他にも、上司や取引先に成りすまして業務上の機密情報や知的財産を詐取するといった事例が報告されている。

ファーミング詐欺 (pharming)

有名な金融機関やオンラインショップのサイトをそっくりに真似た偽のサイトを作り、DNSサーバの情報を書き換えることで利用者を誘導し、暗証番号やクレジットカード番号などを詐取する詐欺。フィッシング詐欺の手口の一つ。

通常、Webサイトにアクセスするにはドメイン名を含んだURLを入力するが、ドメイン名は通信事業者などが管理するDNSサーバによってIPアドレスに変換され、対応するIPアドレスを持ったサーバにアクセスすることになる。

ファーミングを行う攻撃者は、このDNSサーバの管理するドメインとアドレスの対応表を不正に書き換え(DNSキャッシュポイズニング)、利用者がドメインを問い合わせると偽のアドレスを返すよう細工する。

利用者は自分の利用している金融機関などの正しいURLにアクセスしているつもりで、攻撃者の運用するそっくりな偽のサイトに誘導され、不正に情報を詐取される。なお、パソコンの中にもドメインとアドレスを対応付けるhostsファイルというファイルが保存されており、ウイルスなどを使ってこれを書き換えることで偽のサイトに誘導する手法もある。

フィッシング詐欺は偽の案内メールなどで利用者を「一本釣り」にする手法だが、DNSサーバに不正な情報を流すことでそのサーバを利用する利用者を丸ごと偽のサイトに誘導する様子を農業(farming)に例え、ファーミングと名付けられた。綴りが本来の "farming" ではなく "pharming" なのはフィッシング詐欺を "phishing" と綴るのを踏襲したもので、"sophisticated" (洗練された) が語源と言われている。

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