高校「情報Ⅰ」単語帳 - 東京書籍「新編情報Ⅰ」 - 問題を発見・解決する方法
情報 【インフォメーション】 ⭐⭐⭐
物事の事情を人に伝えるもの。また、それを文字や図表、画像、音声、映像などを使って表現したもの。
人が知覚したときに何らかの意味を想起させ、思考や行動に影響を与えるものを指し、人にとって意味を成さないノイズやランダムなパターンをも含む「データ」(data)とは区別される。
ただし、情報科学・情報理論の分野では、情報の意味や価値判断の側面をひとまず捨象して、量的側面からその伝達や保存、変換について検討しており、この場合の「情報」は基本的にはデータと区別されない。
また、科学的な文脈では、人間の存在を仮定せず、何らかの物理的実体に影響を及ぼすパターンを情報とみなす考え方もある。例えば、生物のDNAは人類誕生前から生命の発生・生育に影響を与えており、また、人間がそれを観測・解釈するかどうかとその働きとは無関係だが、これも一種の情報であるとみなす立場である。
政治や軍事などの分野では、「情報機関」のように諜報に近い意味合いで情報という語を用いる場合がある。一般的な意味での「情報」は英語で “information” というが、諜報の意味で用いる場合は “intelligence” に対応する。
データ ⭐⭐⭐
何かを文字や符号、数値などのまとまりとして表現したもの。人間にとって意味のあるものや、データを人間が解釈した結果のことを情報と呼ぶ。
ITの分野でデータといった場合には、コンピュータで保存や加工、伝送などが可能なデジタルデータ(digital data)を指す。これは信号や情報をすべて「0」あるいは「1」のいずれかを取る「ビット」(bit)と呼ばれる情報の最小単位を並べて表現したもので、情報の種類や形式によらず同じ装置や処理によって扱うことが可能となる。
また、文脈によっては、コンピュータが扱うデータ全体のうち、コンピュータプログラム以外のものをデータと呼ぶことがある。プログラムが取り扱う対象となる情報や信号などを特定の形式で表したものを指す。
英語の “data” はもともと “datum” (データム)の複数形だったが、現在では不可算名詞として扱うことが多い。
データ量/データ長
データにも量(data quantity)の概念があり、多いほどたくさんの情報や信号を表現することができる。デジタル化されたデータの量は、データを表現するビット列の長さで表されるため、データ長(data length)とも呼ばれる。量の単位としてはビットをそのまま用いる。
実用上は8ビットを一つの単位とした「バイト」(byte)を用いることが多く、また、大きな数を表すときは物理量と同じようにキロ(kilo/1000倍)、メガ(mega/100万倍)、ギガ(giga/10億倍)、テラ(tera/1兆倍)などの接頭辞を先頭につける。
メディア ⭐⭐⭐
媒体、媒質、伝達手段、中間などの意味を持つ英単語。“medium” の複数形。情報の伝達や記録に用いられる物体や装置、およびこれを利用して人に情報を伝達・配布する仕組みや事業、組織などを指すことが多い。
一般の外来語としては、人が人に情報を伝えたり広く報じるのに用いるモノや仕組みを指し、広義には電話や手紙、書籍、テレビ、映画、電子メール、Webサイトなど様々な伝達手段が含まれる。
狭義には、社会の不特定多数の人々に向けて広く情報を発信する「マスメディア」(mass media)のことをメディアと呼ぶことが多い。現代では日常的に多くの人が接するテレビ放送、ラジオ放送、新聞、雑誌の4つを指し、これを「マス4媒体」「4大メディア」などという。
マスメディアと同じように、インターネットを通じて広く一般に情報を発信、公開するネットサービスやWebサイトなどのことを「ネットメディア」「Webメディア」「オンラインメディア」などと呼ぶ。Webサイトやブログ、メールマガジン、動画配信サービス、動画サービス上のチャンネルなどが含まれ、マスメディア企業がネットメディアも並行して運用する例も多く見られる。
記録メディア・伝送メディア
ITの分野では、一般の用法に加え、データの記録・保管に用いる物体や装置を「記録メディア」、信号やデータを伝送するケーブルや内部の信号線、あるいは電波など伝送の媒介となる物理現象を「伝送メディア」という。
記録メディア(記憶メディアとも呼ばれる)の例としては、磁気テープ、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)、フラッシュメモリ(SSD/USBメモリなど/メモリーカード)などがある。伝送メディアの例としては金属線ケーブル(銅線ケーブル/メタルケーブル)、光ファイバーケーブル、電波、赤外線、電子基板上の金属配線などがある。
ブレインストーミング 【ブレスト】 ⭐⭐⭐
集団で行うアイデアの発想法の一つで、参加者が集まって会合を開き、思いつくまま次々自由にアイデアを発言し、互いに刺激し合ってより豊かな発想を促していく手法。
一人では考えつかないようなアイデアを導き出すために行われる会議で、結論を得たり決定を行うことは目的ではない。出た意見やアイデアは会議後に整理したり分析したりして、その後の過程に役立てる。
アイデアをより豊かで創造的なものにするための原則がある。「他の参加者の意見を否定・批判しない」「突飛・奇抜・乱雑・常識外れな意見も歓迎する」「質より量を重視する」「他の参加者の意見から連想したり自分の意見を加えて発展させる」の4つである。
1942年に大手広告代理店グループBBDO創業者の一人として知られるアレックス・オズボーン(Alex Faickney Osborn)氏が著書 “How to Think Up” で提唱したのが始まりとされる。ブレーンストーミングのように集団で創発的な活動を行う技法としては他にKJ法やバズセッションがよく知られる。
トレードオフ ⭐⭐⭐
矛盾、二律背反、交換(条件)、妥協点、代償、見返り、取引、歩み寄り、折り合い、などの意味を持つ英語表現。ある物事について求められる複数の条件や要素などが、同時に満たしたり高めたりすることができない関係、すなわち「あちらを立てればこちらが立たず」の関係にあること。
例えば、列車の停車駅数を増やせば利便性は高まるが、比例して所要時間が伸びてゆく、といった関係のことを指す。日常的には、高品質な製品ほど高価格、収入増のため働く時間を増やすほど自由な時間が減るといった形で多く人が体感している。
ITの分野では、処理を高速化しようとすると記憶装置の占有容量が増える(時間と空間のトレードオフ)、音声や動画などのデータを不可逆圧縮すると圧縮率を高めるほど品質が低下していく、といったトレードオフがよく見られる。ビジネスにおけるコストと品質のトレードオフ(安かろう悪かろう)はシステム開発などITビジネスでも普遍的に見られる。
トレードオフは二者間の関係について言う場合が多いが、賃貸住宅の家賃・広さ・立地の関係や、情報システムの信頼性・性能・コストの関係のように、三者以上について、いずれか一つしか満たすことができない、あるいは、いずれか一つを諦めねばならない、といった形で現れる場合もある。
マインドマップ 【Mind Map】
思考を図に表して整理する手法の一つ。中心となる概念から連想される概念を放射状に配置して繋いでいく。イギリスのアンソニー・ブザン(Anthony P. Buzan)氏が考案した手法で、「マインドマップ」は同氏が設立した英ブザン社の登録商標。
情報を階層的に整理し、視覚的に図示する手法である。中心になるキーワードを決めて紙面の中心に書き入れ、関連するキーワードを放射状に周囲に向かう曲線の傍らに書き入れる。各キーワードから更に枝分かれする曲線を書き入れ、関連するキーワードを配置していく。
ブザン氏が提唱した描画法では、無地の紙を横置きにして、中心から描き始める。枝は曲線で描き、一つの枝には一つのキーワードを対応付ける。木のように中心に近い枝ほど太く、周辺ほど細くしていく。画像や記号、色分けなど絵画的な要素をふんだんに用いるべきとされる。
もとは紙に手書きする図法だが、現代ではコンピュータ上のソフトウェアとしてマインドマップを作図できるものも開発されている。ブザン社は各国に支社を設けてインストラクターの公認制度やセミナー事業などを展開している。「マインドマップ」「Mind Map」は図法の一般名ではなく同社の登録商標であるため、無許諾で製品名やサービス名などの一部に用いることはできない。
KJ法 【KJ method】 ⭐⭐
多数の関連する情報群を分類・分析するための手法の一つ。小さなカードに項目を一つずつ書き出し、グループ化することで情報を整理する。
まず、手元にある情報やデータを小さなカードに一枚一項目で書き出し、広い場所にばらばらに置く。互いに関連が強い、あるいは同じ種類のものを集めてグループ化し、グループの見出しのカードを置く。数が多い場合はグループ同士を集めて大グループを作り、さらに何段階かこの作業を繰り返す。
グループ分けが完了したら、各グループ間の関連性が分かるようにグループを配置しなおし、別の紙にその様子を写しとる。そこに枠や線分、矢印などを書き入れ、それぞれの関連性を明らかにする。この図解を元にテーマを選定したり、文章化してまとめたりする。
1967年に東京工業大学教授で文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したもので、フィールドワークで集めた知見を整理するための手法として開発された。「KJ」は同氏の氏名のイニシャルに由来する。製造業の品質管理の手法を体系化した「新QC7つ道具」の一つとしても採用されており、こちらでは「親和図法」の名称で知られる。
ロジックツリー ⭐
論理的思考のために用いられる作図法の一つで、対象を段階的に構成要素に分解していく様子を枝分かれしていく樹形図の形で示したもの。
物事の内訳や分類、問題の原因などを図示する技法の一つである。左端に大本の事象を書き入れ、そこから構成要素を右側に枝分かれさせる。各要素を細分化した要素をさらに右側に枝分かれさせ、この手順を繰り返して段階的に詳細化していく。
ある要素を構成要素へ分解する際には、細分化された要素をすべて足し合わせると左側の元になった要素全体を表すように心がける。このような分解法は「漏れなく、重複なく」という英語表現の頭文字をとって「MECE」(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)と呼ばれる。
ロジックツリーは様々な場面や対象に適用できる汎用的な技法で、構成要素に分解するものを「要素分解ツリー」(Whatツリー)、事象の原因を探求するものを「原因追求ツリー」(Whyツリー)、問題の解決策を探求するものを「問題解決ツリー」(Howツリー)と呼ぶことがある。組織の目標管理などでは「KPIツリー」もよく用いられる。
アローダイアグラム 【PERT図】 ⭐
複数の要素の間を、それらの関係を意味する矢印で結んだ図。特に、複数の工程や手順の間の前後関係を矢印の向きによって表した図。
プロジェクトマネジメントではプロジェクトを構成する工程の前後関係を一覧して把握するために作成される。このような図を用いて計画や管理を行う手法を「PERT」(Program Evaluation and Review Technique)ということから、「PERT図」(パート図)とも呼ばれる。
複数の工程からなるプロジェクトでは、工程間に「前の工程が終わらないと次の工程が始められない」という依存関係が存在する場合がある。一方で、どちらを先に行っても良い、並列に進めても良いという関係になっているものもある。
PERT図では矢印が個々の工程を表しており、内容と所要時間を付記する。工程間に依存関係がある場合、間に丸印(◯)で表される「結合点」を挟んで矢印同士を連結する。プロジェクトの開始と終了も結合点として表す。すべての工程を配置すると、開始から終了までどの順序で工程を進めればよいか、どの工程を並列に進められるかを一覧できるようになる。
開始から終了までの間には、いくつかの経路が現れることがあるが、経路上の工程の所要時間を足し合わせていくと、それぞれの経路全体の所要時間を求めることができる。その中で最も所要時間が長い経路は、プロジェクト全体の最短工期を表しており、これを「クリティカルパス」(critical path)という。
クリティカルパスに現れない工程をどんなに急いでも工期は短縮しないため、遅延を防止したり工期を短縮するにはクリティカルパス上の工程に注力する必要がある。このようにクリティカルパスに着目してマネジメント活動を行う手法を「クリティカルパス法」(CPM:Critical Path Method)という。
ガントチャート 【Gantt chart】 ⭐
プロジェクトの工程管理などで用いられる図表の一つで、縦に並んだ棒グラフの列で計画や進捗を視覚的に表したもの。各棒グラフが工程を表し、横方向が時間の経過を表している。
1910年代にアメリカの機械エンジニア、経営コンサルタントのヘンリー・ガント(Henry L. Gantt)が考案した図で、横軸に時間、縦軸に工程を並べた二次元の表を用意し、各工程の開始から終了までを帯として書き入れていく。
プロジェクトの開始時にはスケジュールを表す帯が並んでいるだけだが、時間が進むに従って工程の進捗状況や完了などが書き込まれていく。進捗度合いに応じて帯の色や柄を塗り分けて状況を視覚的に表現する場合もある。
表の左端に並んだ工程には場所や担当、開始日や終了日、見積もり工数などを書き入れたり、大項目から小項目へ階層状に分割して各工程の全体での位置が分かるようにすることがある。
工程間に依存関係(工程Aが終わらなければ工程Bに着手できないという関係)がある場合には前工程の終了と次工程の開始を矢印で結ぶが、複雑で大規模なプロジェクトでは矢印が交錯して直感的に把握しにくいという問題もある。
全体の計画や進捗をひと目で確認できる図法として現在も広く普及している。表部分に記載する項目や内容、グラフ部分に書き入れる注釈や進捗の表現方法などに様々なバリエーションがあり、分野や企業、部署によって異なる規約で運用される。
特性要因図 【魚骨図】
製品の品質管理などでよく用いられる図の一種で、対象の持つ特性とその要因と思われるものを階層的に図示したもの。ある事象がどのような要因に組み合わせによって成り、個々の要因がどのような要素に分解されるかを一覧することができる。
表記法にはいくつかのバリエーションがあるが、よく知られる一般的な手法では、特性を図の右端中央に大きく記し、その左に特性に向かう長い矢印を水平に引く。特性の要因と思われるものは図の上下に配し、それぞれ中央の長い矢印に向かって矢印を引く。
さらに各要因について、その要因や構成要素と思われるものがあるときは周辺に記し、矢印に向かって小さな矢印を引く。この作業を段階的に繰り返していき、より小さな要因へ分解していく。最終的には、支流が合流して大河となり海に注ぐように、無数の細かい要因が次第に大きな要因となって特性が生じている関係性が図示される。
特性要因図は中央の大きな矢印を魚の背骨に、そこに集まる各要因の矢印が肋骨になぞらえて「魚骨図」「フィッシュボーンチャート」などと呼ばれることもある。より実用的には、見やすさや付加情報の書き込みやすさなどから組織図やトーナメント表のように上から下に向かって枝分かれする表のような形式で作成されることも多い。
作業などの実施前に、想定される問題とその要因を列挙して対策を講じるために作成するものを「管理用特性要因図」、問題が発生した後に、その原因を検証するために実際に起きたことを元に作成するものを「解析用特性要因図」ということがある。