高校「情報Ⅰ」単語帳 - 数研出版「高等学校 情報Ⅰ」 - メディアの特性とコミュニケーション手段
アナログ ⭐⭐
機械で情報を扱う際の表現方法の一つで、情報を電圧の変化など連続的な物理量の変化に対応付けて表現し、保存・伝送する方式のこと。元の情報を高精度に表現することができるが、伝送や複製の際に劣化・変質を避けられない。
対義語は「デジタル」(digital)で、情報を離散的な数値に変換し、段階的な物理量として表現する。アナログで情報を扱う利点として、デジタル化では避けられない離散化に伴なう本来の信号からのズレ(量子化誤差)が生じないという点があり、情報の発生時点では正確に表現して記録することができる。
一方、保存や伝送、再生、複製に際して劣化やノイズによる影響を受けやすく、変化した情報は復元することができないため、伝送・複製を繰り返したり長年に渡って保存すると内容が失われたり変質してしまう難点がある。
かつて音楽の販売に用いられたレコード盤は、樹脂表面に刻まれた溝の凹凸の変化が音声信号の変化に直接対応付けられたアナログ記録方式だったが、コンパクトディスク(CD)では音声信号をサンプリング(標本化)して離散的な数値の列に変換し、これを表面の溝の凹凸にデジタル信号として記録している。
機器などの内部的にはデジタル処理が行われていても、人間には連続的に感じられる多段階の値で量を識別するような方式を便宜上アナログと呼ぶ場合がある。例えば、ゲーム機のコントローラの種類の一つで、方向の指示を多段階に滑らかに変化させられるものをアナログコントローラという。
1990年代頃までは、コンピュータなどによる情報のデジタル処理は限られた用途にのみ用いられてきたが、半導体チップやデジタル機器の性能向上や低価格化により、現代では身近な情報の多くがデジタル方式で保存、加工、伝送されるようになってきている。
比喩や誤用
コンピュータやデジタル方式の情報機器、通信サービスなどが普及するに連れ、旧来の機器や仕組み、考え方などを比喩的にアナログと称するようになった。
そのような用例の多くは情報の表現形式のデジタル・アナログとは無関係で、単に「コンピュータやインターネットによらない」という意味だったり、さらには「電気機械を使わない」ことを表していたりする。
中には本来の語義では誤用と思われる用例もある。例えば、ビデオゲームと対比してカードゲームやボードゲームを「アナログゲーム」と呼んだり、パソコンや電卓と対比してそろばんを「アナログな計算方法」と評することがあるが、これらが扱う情報は離散的な数値であり、電気機械を使っていないだけで情報の取り扱い方自体はデジタル的である。
デジタル 【ディジタル】 ⭐⭐
機械で情報を扱う際の表現方法の一つで、情報をすべて整数のような離散的な値の集合として表現し、段階的な物理量に対応付けて記憶・伝送する方式のこと。特に、情報を2進数の「0」と「1」の組み合わせに置き換えて表現する方式。
現代のコンピュータはデータをすべて2進数の値の列に置き換え、これをスイッチのオン・オフや電圧の高低など明確に区別できる2状態の物理量に対応させて保存・伝送する。これに合わせて、通信回線や記憶媒体などもデジタル方式で情報を取り扱うようになっている。
対義語は「アナログ」(analog)で、情報を連続した物理量で表現する方式を意味する。初期の情報機器はアナログテレビ放送や音楽レコードのようにアナログ方式で情報を記録・伝送していたが、現代ではコンピュータの普及に合わせて動画配信やCDのようにデジタル方式への置き換えが進んでいる。
デジタルで情報を扱う利点として、保存や伝送、再生、複製などを行う際に劣化やノイズの影響を受けにくく、伝送・複製を何度繰り返しても内容が変化しない点や、様々な種類の情報を数値の集合として同じように扱うことができ、情報の種類によって媒体の選択に制限を受けない点などがある。ただし、連続的に変化する信号を離散値に変換する際に、必ず本来の信号からのズレ(量子化誤差/標本化誤差)が生じる。
機器などの内部的にはデジタル処理が行われていても、人間には連続的に感じられる多段階の値で量を識別するような方式を便宜上アナログと呼ぶ場合がある。例えば、ゲーム機のコントローラの種類の一つで、方向の指示を多段階に滑らかに変化させられるものをアナログコントローラという。
比喩や誤用
コンピュータやデータ通信、デジタル方式の記憶媒体などが普及するに連れ、「デジタル」という語をコンピュータやインターネットに関連するものの総称、「アナログ」をその逆、すなわち「電気・電子技術に依らないもの」とする比喩的な用法が広まった。
このような用例の多くは本来の情報の表現形式の違いとは無関係に用いられるため、カードゲームやボードゲームなどをビデオゲームに対比して「アナログゲーム」と呼んだり、そろばんを計算機と対比して「アナログな計算方法」と呼んだりするが、これらは離散的な数値しか扱わないため、情報の扱い方そのものはデジタル的である。
サンプリング 【標本化】 ⭐⭐⭐
対象全体の中から何らかの基準や規則に基いて一部を取り出すこと。統計調査などで少数の調査対象を選び出すことや、信号のデジタル化などで一定周期で強度を測定することなどを指す。
アナログ信号のサンプリング
信号処理の手法の一つで、アナログ信号などの連続量の強度を一定の時間間隔で測定し、観測された値(標本値)の列として離散的に記録することを標本化ということが多い。デジタルデータとして記録したい場合は、値を整数などの離散値で表す「量子化」(quantization)処理が連続して行われる。
測定の間隔を「標本化周期」(sampling cycle:標本化周期)、その逆数である測定の頻度(単位時間あたりの回数)を「標本化周波数」(sampling frequency:標本化周波数)という。頻度の多寡は通常標本化周波数で表現され、単位として1秒あたりの回数を表す「Hz」(ヘルツ)が用いられる。
例えば、音声を44.1kHz(キロヘルツ:Hzの1000倍)で標本化する場合、音声信号の強度を毎秒4万4100回記録し、音声データを1秒あたり4万4100個の数値の列として表現する。44.1kHzは人間の可聴音をほぼカバーする周波数とされ、CD(コンパクトディスク)などの音声記録に用いられている。
統計・調査におけるサンプリング
統計や調査などの分野では、調査したい母集団全体を対象とすることが困難な場合に、集団を代表する少数の標本を抽出して対象とし、その結果から統計的に母集団の性質を推計する手法を標本化という。製品の出荷時検査や社会調査などで広く用いられ、標本から母集団の推定値を算出する方法や偏りのない標本の抽出方法などについて様々な手法が提唱されている。
音楽におけるサンプリング
音楽の分野では、楽曲の制作手法の一つで、既存の楽曲や何らかの音源からメロディや歌詞、あるいは音声そのものの断片を抽出し、引用したり繋ぎ合わせる技法を標本化という。また、録音した楽器の音や環境音、人や動物の声などを短い単位に分解し、再構成して楽曲に仕上げる手法のことを標本化ということもある。
サンプリング 【標本化】 ⭐⭐
対象全体の中から何らかの基準や規則に基いて一部を取り出すこと。統計調査などで少数の調査対象を選び出すことや、信号のデジタル化などで一定周期で強度を測定することなどを指す。
アナログ信号のサンプリング
信号処理の手法の一つで、アナログ信号などの連続量の強度を一定の時間間隔で測定し、観測された値(標本値)の列として離散的に記録することをサンプリングということが多い。デジタルデータとして記録したい場合は、値を整数などの離散値で表す「量子化」(quantization)処理が連続して行われる。
測定の間隔を「サンプリング周期」(sampling cycle:標本化周期)、その逆数である測定の頻度(単位時間あたりの回数)を「サンプリング周波数」(sampling frequency:標本化周波数)という。頻度の多寡は通常サンプリング周波数で表現され、単位として1秒あたりの回数を表す「Hz」(ヘルツ)が用いられる。
例えば、音声を44.1kHz(キロヘルツ:Hzの1000倍)でサンプリングする場合、音声信号の強度を毎秒4万4100回記録し、音声データを1秒あたり4万4100個の数値の列として表現する。44.1kHzは人間の可聴音をほぼカバーする周波数とされ、CD(コンパクトディスク)などの音声記録に用いられている。
統計・調査におけるサンプリング
統計や調査などの分野では、調査したい母集団全体を対象とすることが困難な場合に、集団を代表する少数の標本を抽出して対象とし、その結果から統計的に母集団の性質を推計する手法をサンプリングという。製品の出荷時検査や社会調査などで広く用いられ、標本から母集団の推定値を算出する方法や偏りのない標本の抽出方法などについて様々な手法が提唱されている。
音楽におけるサンプリング
音楽の分野では、楽曲の制作手法の一つで、既存の楽曲や何らかの音源からメロディや歌詞、あるいは音声そのものの断片を抽出し、引用したり繋ぎ合わせる技法をサンプリングという。また、録音した楽器の音や環境音、人や動物の声などを短い単位に分解し、再構成して楽曲に仕上げる手法のことをサンプリングということもある。
量子化 ⭐⭐⭐
アナログ信号などの連続量を整数などの離散値で近似的に表現すること。自然界から取り込んだ信号などをコンピュータで処理・保存できるようデジタルデータに置き換える際などによく行われる。
音や光、電気、電波など物理現象に伴う信号は本来連続量であるため、そのままではコンピュータなどの電子回路で取り扱うことができない。そこで、一定の決まった間隔で信号の強度を測定(標本化/サンプリング)し、決まった細かさの段階に当てはめて表していく。
例えば、4段階の値で量子化を行う系では、信号強度の測定値(標本)は0、1/3、2/3、1の中から最も近い値が選ばれる。0.1に近い標本は0、0.4に近い標本は1/3といった具合である。この段階の数が多いほど元の信号をより高い精度で忠実に表現することができるが、量子化後のデータ量はその分だけ増大する。
この細かさをビット数で表したものを「量子化ビット数」と呼び、これが1ビットであれば2段階(21)、8ビットならば256段階(28)、16ビットならば65,536段階(216)の細かさで強度を表現できる。
エンコード 【符号化】 ⭐⭐⭐
ある形式の情報を一定の規則に従って別の形式に変換すること。元の形式に復元可能な状態に変換することを指し、データ圧縮や暗号化、文字コードの変換などが該当する。
ある形式のアナログ信号やデジタルデータを特定の形式の符号(code)に置き換える操作を指す。得られた符号列に逆方向の変換を行って元の状態に戻す操作は「デコード」(decode)という。デコードによって符号化前の状態を復元することができるが、非可逆圧縮など完全に元の状態には戻せない方式もある。
例えば、動画データは極めてデータ量が大きいため、符号化処理によってデータの間引きや圧縮を行い、短い符号列に置き換えてから保存や伝送を行う。圧縮されたデータはそのままでは再生できないため、再生時にはデコード処理によって元のデータを取り出してから表示を行う。
ある方式の符号化処理を行う装置やソフトウェアを「エンコーダ」(encoder)、その方式でデコード処理を行うものを「デコーダ」(decoder)という。音声の録音と再生、映像の録画と再生など、状況に応じてどちらも行う可能性がある場合には、両者を一体化した「コーデック」(codec:encoder-decoder)を用いる。
ビット ⭐⭐⭐
情報量の最小単位で、二つの選択肢から一つを特定する情報の量。コンピュータなどでは0と1のいずれかを取る二進数の一桁として表される。
語源は “binary digit” (二進法の数字)を繋げて省略した表現と言われる。情報をすべてビット列に置き換えて扱うことを「デジタル」(digital)という。1ビットのデータが表す情報量は、投げたコインの表裏のように、二つの状態のいずれであるかを示すことができる。
複数のビットを連ねて一つのデータとすることで、2ビットなら4状態(22)、3ビットなら8状態(23)といったように、より多い選択肢を識別できる。一般に、nビットのデータは2のn乗個までの選択肢からなる情報を表現することができる。
例えば、大文字のラテンアルファベットは「A」から「Z」の26文字であるため、これを識別するのには4ビット(16値)では足りず、5ビット(32値)が必要となる。小文字を加えると52文字であるため、6ビット(64値)が必要となる。
派生単位
データの読み書きや伝送を行う場合、その速さを表す単位として1秒あたりの伝送ビット数であるビット毎秒(bps:bit per second)という派生単位が用いられる。
また、実用上はビットでは値が大きくなりすぎて不便なことも多いため、8ビットをまとめて一つのデータとした「バイト」(byte)という単位を用いる場面も多い。かつて何ビットを1バイトとするか機種により様々に分かれていた(7ビットバイトや9ビットバイトなどが存在した)名残りで、8ビットの集まりを「オクテット」(octet)とも呼ぶ。
倍量単位
大きな量を表す際には、SI単位系に則って接頭辞を付した倍量単位を用いる場合がある。
- 1000ビットを「キロビット」(kbit:kilobit)
- 100万ビットを「メガビット」(Mbit:megabit)
- 10億ビットを「ギガビット」(Gbit:gigabit)
- 1兆ビットを「テラビット」(Tbit:terabit)
- 1000兆ビットを「ペタビット」(Pbit:petabit)
- 100京ビットを「エクサビット」(Ebit:exabit)
という。また、コンピュータでは2の冪乗を区切りとするのが都合が良いことが多いため、独自の接頭辞を付した倍量単位が用いられることもある。
- 210(1024)ビットを「キビビット」(Kibit:kibibit)
- 220(約104万)ビットを「メビビット」あるいは「ミービビット」(Mibit:mebibit)
- 230(約10億7千万)ビットを「ギビビット」(Gibit:gibibit)
- 240(約1兆1千億)ビットを「テビビット」あるいは「ティービビット」(Tibit:tebibit)
- 250(約1126兆)ビットを「ペビビット」あるいは「ピービビット」(Pibit:pebibit)
- 260(約115京)ビットを「エクスビビット」あるいは「イクシビビット」(Eibit:exibibit)
という。この2進専用の接頭辞はIEC(国際電気標準会議)が標準化しており、一般にはあまり馴染みがないが記憶容量の表記などで用いられることがある。
SI接頭語 【SI prefix】 ⭐
国際的な単位の標準体系であるSI単位系で、桁数の長い大きな数や小さな数を簡潔に書き記すため、単位名の先頭に付け加える語。「センチメートル」の「センチ」などのことで、元の単位を何倍したものかを表す。
100倍、100分の1倍など10の累乗倍を表しており、1000倍と1000分の1倍までは1桁ごとに、以降は3桁ごとに定められている。「キロ」(kilo-)のような接頭語そのものと、「k」のように単位として記載するときに使う記号(接頭語記号)が定められている。
日常生活で馴染み深いのは、1000倍の「キロ」(kilo-/記号k)、100分の1倍の「センチ」(centi-/記号c)、1000分の1倍の「ミリ」(milli-/記号m)、100倍の「ヘクト」(hecto-/記号h)などである。10倍の「デカ」(deca-/記号da)、10分の1倍の「デシ」(deci-/記号d)などは省略できる桁数が少ないため日常的にはあまり用いられない。
工業や科学技術などでは、周波数のような巨大な数を扱うために、100万倍の「メガ」(mega-/記号M)、10億倍の「ギガ」(giga-/記号G)、1兆倍の「テラ」(tera-/記号T)などを、微小な世界の現象を扱うために100万分の1倍の「マイクロ」(micro-/記号μ)、10億分の1倍の「ナノ」(nano-/記号n)、1兆分の1倍の「ピコ」(pico-/記号p)などを用いることがある。
IT分野の接頭語
IT分野ではデータ量(ビットやバイト)やデータ伝送速度(ビット毎秒やバイト毎秒)で大きな数を扱うことが多く、「メガビット毎秒」(Mbps)や「テラバイト」(Tbytes)のようにキロ、メガ、ギガ、テラなどのSI接頭辞を頻繁に用いる。
コンピュータは数値を2進数で扱うため、数の区切りとして2の累乗の方が都合が良いことが多く、かつては1024(210)倍をキロと呼ぶなど、210倍ごとに接頭語を運用することがあった。
しかし、本来の接頭語とどちらの大きさを表しているのか分からず、正確に値を伝えるのが困難になってしまうことから、IEC(国際電気標準会議)では1024倍ごとの接頭語に独自の名前と記号を定義し、SI接頭辞は10の累乗以外の意味では使わないよう求めている。
新たに定められた2の累乗ごとの接頭語は、最も近いSI接頭辞の名前と「binary」(バイナリ:2進数の)を組み合わせた名前となっており、記号には「i」を追加する。例えば、210倍は「キロバイナリ」を略した「キビ」(kibi-/記号ki)、220倍は「メガバイナリ」を略した「メビ」あるいは「ミービ」(mebi-/記号Mi)、230倍は「ギガバイナリ」を略した「ギビ」(gibi-/記号Gi)といった具合である。
10進数 【10進法】 ⭐⭐
数を書き表す方法(記数法)の一つで、基数を十とした表記法のこと。人間が普段最も一般的に利用している位取り記数法で、通常、アラビア数字の「0」から「9」までのすべての数字を用いて数を表現する。
10進法では桁が一つ左へ移動する毎に値の重みが十倍に、右へ移動するごとに十分の一になる。すなわち、整数の右端の桁は一(100)の位、その左は十(101)の位、その左は百(102)の位、その左は千(103)の位、といった具合に各桁の重みが決まる。
コンピュータでは二つの状態の組み合わせで数値を表現する2進数の方が都合が良いため、人間などが10進法で入力した値は内部でまず2進数による表現に変換されてから記録、伝送、計算などを行うようになっている。また、処理結果を人間などに提示する場合も、内部の2進数による表現から10進法の表記に変換して出力される。2進表現を「バイナリ」(binary)、十進表現を「デシマル」(decimal)と呼ぶことがある。
「10進」と「十進」
どのような基数の表記でも、右から2桁目が1で右端が0の値はすべて「10」となり、それらはすべての異なる値である(2進数の「10」は2、8進数の「10」は8、16進数の「10」は16である)ため、基数が十であることを示すために「10進数」「10進法」とするのは紛らわしく不適切であるとする考え方もあり、そのような場合は「十」 (同様に英語圏では “ten” あるいは “decimal” )という表記が好まれる。
2進数 【二進数】 ⭐⭐⭐
数を書き表す方法(記数法)の一つで、基数を2(二)とした表記法のこと。アラビア数字の「0」と「1」を用いてすべての数を表現する。情報を2進法の値の連なりとして表現する手法を「デジタル」(digital)という。
普段我々が日常的な数字の読み書きや算術に用いる位取り記数法は「10進数」(十進数)で、一つの桁の表現に「0」から「9」の10種類の数字を使い、各桁の左の桁が10倍、右の桁は1/10を表している。
一方、2進法は一つの桁の表現が「0」と「1」の二通りしか無い記数法で、桁が一つ左へ移動する毎に値の重みが2倍に、右へ移動するごとに1/2倍になる。整数の右端の桁は1(20)の位、その左は2(21)の位、その左は4(22)の位、その左は8(23)の位…といった具合に各桁の重みが決まる。
<$Fig:binarynumber|center|true>例えば、2進法の「1101」は左端から順に「8の位」が1、「4の位」が1、「2の位」が0、「1の位」が1であるため、10進数では 1×8 + 1×4 + 0×2 + 1×1 の「13」となる。逆に、10進数の「21」は、2のべき乗の足し算で表すと 16 + 4 + 1、すなわち 24×1 + 23×0 + 22×1 + 21×0 + 20×1 と表せるため、2進数では「10101」となる。
2進数とビット・バイト
2進法は二つの状態の組み合わせですべての数を表現することができるため、これをスイッチのオン・オフや電圧の高低、磁石のN極とS極、電荷の有無など、対となる物理的な状態に対応させることにより、機械による情報の記憶や伝達、演算を容易に取り扱うことができるようになる。
現代の電子式のコンピュータは原則としてすべての情報を2進法のデータに置き換えて処理を行い、2進法の1桁に相当するデータ量の最小単位を「ビット」(bit)という。実用上はある程度まとまった桁数のビット列を対象にデータの保存や操作を行うため、8ビットに相当する「バイト」(byte)という単位が用いられることが多い。1バイトは8桁の2進法に相当するため、28=256種類の状態を表現できる。
16進数 【16進法】 ⭐⭐⭐
数を書き表す方法(記数法)の一つで、基数を16(十六)とした表記法のこと。アラビア数字(算用数字)の「0」から「9」、およびアルファベットの「A」から「F」を用いてすべての数を表現する。
普段我々が日常的な数字の読み書きや算術に用いる位取り記数法は10進数(十進数/10進法)で、一つの桁の表現に「0」から「9」の10種類の数字を使い、各桁の左の桁が10倍、右の桁は10分の1を表している。
一方、16進法では1の位、16の位、256の位…というように桁の重みが16倍ずつ変化する。16進法における「10」は10進数における「16」を意味する。小数点以下も同様で、小数点の右隣から順に、16分の1の位、256分の1の位、4096分の1の位…というように続く。
コンピュータはすべてのデータを2進数で表しており、これを8桁(8ビット)ずつまとめた「バイト」という単位でデータを取り扱う。16進法は一桁で2進数の4桁分(4ビット)の値を書き記すことができるため、1バイトのデータを「00」から「FF」までの2桁の16進法として表記する慣習がある。
表記法
<$Fig:hexadecimal|right|true>10進数の表記には「0」から「9」まで10種類の数字が必要なように、16進法では一桁を16種類の数字で表す必要がある。我々が日常的に使う数字は10種類しかないため、10から15までの数を一桁で表現するために「A」から「F」までの6つのアルファベットで代用することが多い。
その場合、「0」から「9」までは10進数の値と同じで、10進数の10を「A」、11を「B」、12を「C」、13を「D」、14を「E」、15を「F」でそれぞれ表す。例えば、「A0」は10進数の「160」(16×10)、「FF」は「255」(16×15+15)を表す。言語や処理系によるが、大文字と小文字は区別しない(どちらでもよい)ことが多い。
なお、複数の位取り表記法が混在する文書などの場合、記された数値がそれぞれ何進法なのかを明示するため「(9ABC)16」「(1234)10」のように右下に小さく10進表記で基数を記す場合がある。
各言語における表記
プログラミング言語やマークアップ言語などの数値リテラルでは、日常的な文書などと同じように単に数字を並べた表記は10進数とみなす場合が多く、16進法を記述する場合は先頭に特定の接頭辞を付けるなど特別な表記法を用いる。
多くの言語ではC言語などにならって「0xDEAD」のように先頭に「0x」を付記する表記法を採用しており、文字列中のコード参照では「¥x0D¥x0A」のように「¥x」(日本語圏以外では¥はバックスラッシュ)を用いる。
言語によっては「#x」(Schemeなど)「&h」(BASICなど)などを用いたり、末尾に「h」を付ける(一部のアセンブリ言語など)場合もある。HTMLやXMLなどにおける数値文字参照では「♪」のように「&#x」と「;」で挟む。
2の補数 ⭐
ある自然数を2進数(2進法)で表現した時に、足し合わせるとちょうど桁が一つ増える最小の数のこと。コンピュータにおける負の整数の表現や数値演算などに応用される。
2進数における「基数の補数」と呼ばれる数で、ある数に足し合わせることで桁が一つ増え、最上位桁(値は「1」となる)以外はすべて「0」となるような数を指す。例えば、8桁の2進数「10010110」に対する2の補数は「1101010」であり、両者を足し合わせるとちょうど9桁の「100000000」となる。
これに対し、元の数に足し合わせると桁上りせず最も大きな数(「1111…」とすべての桁が1になる)となる補数は「1の補数」(2進数における減基数の補数)と呼ばれる。コンピュータでは1の補数はビット反転(NOT演算)によって求めることができ、これに1を加えると2の補数となる。
なお、2進数に限定せず2の補数という場合は、3進数における減基数の補数を指す場合もある。元の数に足し合わせると桁上りせず「2222…」とすべての桁が2になる数のことである。
浮動小数点数 ⭐
コンピュータにおける数値の表現形式の一つで、数値を桁の並びを表す仮数部と小数点の位置を表す指数部に分割して表現する方式。小数点以下の値を含む数値の表現法として最も広く利用されている。
一つの数値を符号部(正負)、仮数部、指数部の3つのデータの組み合わせで表現(データ形式としては符号-指数-仮数の順に格納することが多い)する。仮数に基数(通常は2)を指数乗した値を乗じ、符号を付け加えたものが表現する数値となる。
例えば、「-4.375」は2進数では「-100.011」であり、仮数と指数に分離すると「-1.00011×1010」(値はすべて2進表記)となる。符号は正を0、負を1とすることが多いため、符号部の値は「1」、仮数部の値は「100011」、指数部の値は「10」となる。数値が0の場合は符号と指数は不定となるが、便宜上各部をすべて0としたもの(+0.0×100)を0の表現として扱うことが多い。
IEEE 754形式
浮動小数点数は全体のデータ長や仮数部と指数部のビット数の配分などで様々な形式が存在するが、広く普及している標準規格としてIEEE 754形式が知られる。
全体で16ビット(符号1+指数5+仮数10)の「半精度浮動小数点数」、32ビット(符号1+指数8+仮数23)の「単精度浮動小数点数」、64ビット(符号1+指数11+仮数52)の「倍精度浮動小数点数」、128ビット(符号1+指数15+仮数112)の「四倍精度浮動小数点数」の4つの形式が定められており、それぞれ表現できる数値の幅の異なる。実用上は単精度と倍精度がよく用いられ、プログラミング言語や論理回路などでもこの2つに標準で対応しているものが多い。
仮数の2進数表現は先頭が必ず1になる(2以上の数字は使わない)ため、これを省略して代わりに下位の桁の表現に回す手法(俗にケチ表現という)が用いられる。また、指数部を符号なし整数とするため、本来の値に最大値の半分-1を足した表現(俗にゲタ履き表現という)を用いる。例えば指数部が8ビットの場合は127を加え、128が1を、126が-1を表す。
単精度浮動小数点数 (single precision floating point number)
数値を仮数部と指数部に分けて表現する浮動小数点数の形式の一つで、一つの数値を32ビットのデータで表現する方式のこと。多くのプログラミング言語などでは単に浮動小数点といえば単精度を意味し、“float” などの名称で表されるデータ型が用意されている。
IEEE 754標準で規定された形式では32ビットのうち先頭1ビットが正負の符号部(0が正、1が負)、続く7ビットが指数部(基数は2)、残り24ビットが仮数部となる。表現できる値の大きさの範囲は十進表記で約1.2×10-38~約3.4×1038であり、精度は十進7桁程度となる。
倍精度浮動小数点数 (double precision floating point number)
数値を仮数部と指数部に分けて表現する浮動小数点数の形式の一つで、一つの数値を64ビットのデータで表現する方式のこと。多くのプログラミング言語などが高精度な数値計算のために組み込みデータ型として用意しており、 “double” などの名称で表される。
IEEE 754標準で規定された形式では64ビットのうち先頭1ビットが正負の符号部(0が正、1が負)、続く11ビットが指数部(基数は2)、残り52ビットが仮数部となる。表現できる値の大きさの範囲は十進表記で約2.2×10-308~約1.8×10308であり、精度は十進16桁程度となる。
チェックデジット 【チェックディジット】
数字列の誤りを検知するために付加される検査用の数字のこと。また、そのような数字を用いた誤り検出方式。バーコードや銀行の口座番号などに利用されている。
番号を伝達したり記録する際に誤りが生じたり、悪意の攻撃者が番号の改竄や偽造を試みると正規に発行した番号ではなくなるが、チェックディジットによる検査を行うことで簡単に誤った番号であることを検知することができる。
最もよく用いられる方式は、各桁の値に一定の規則に従った係数を乗じた値の和を求め、それを定められた係数で割った余りを末尾に付加する方法である。元の番号の数字が少しでも違っているとチェックディジットが全く異なる値になるため、誤りを検出することができる。
偶発的な誤りを検知することが主目的の場合は算出方法は簡易なものにして公開されるが、偽造の防止などが必要とされる場合は適合する番号が簡単に逆算できないような複雑な計算方法を採用したり、算出方法を非公開とすることもある。
パリティチェック 【奇偶検査】 ⭐
データの誤り検出方式の一つで、ビット列中に含まれる「1」の数が偶数か奇数かを表す符号を算出してデータに付加する手法。最も単純な誤り訂正符号で、1ビットの誤り検出しかできないが算出や検証が容易で高速なため広く普及している。
データはコンピュータ上では「0」と「1」が並んだビット列として表されるが、これを一定の長さのブロックごとに区切り、各ビットの値を足し合わせた値が奇数であるか偶数であるか(「1」の数が奇数か偶数か)を表す1ビットの値(パリティビット)を末尾に付加する。
パリティを含むデータを受け取った側は、各ブロックごとに同じようにパリティを算出し、付加されたものと比較する。両者が一致すれば、そのブロックには誤りが存在しないか偶数個あることが分かり、一致しなければ奇数個の誤りがあることが分かる。
実用上、短く区切られたブロック中に同時に複数の誤りが生じる確率は低いため、パリティが一致すれば誤りが無く、一致しなければ1ビットの誤りが生じたとみなしてデータの再送や破棄などの制御を行う。
偶数パリティと奇数パリティ
パリティビットの値は、ブロックの各ビットとパリティを足し合わせた時、その偶奇性が常に同じになるように設定される。
全体の和が偶数になるように決められる(ブロック中の1の数が奇数なら1、偶数なら0)ものを「偶数パリティ」(even parity)、奇数になるように決められる(1の数が奇数なら0、偶数なら1)ものを「奇数パリティ」(odd parity)という。
水平パリティと垂直パリティ
一定の長さのブロックごとにパリティを算出して末尾に付加する方式を「垂直パリティ」(vertical parity)と呼び、単にパリティチェックといった場合はこの方式を指すことが多い。
一方、連続する数ブロックごとに、各ブロックの同じ位置にあるビット群をグループ化してパリティを算出・付与する方式を「水平パリティ」(horizontal parity)という。
両者を併用した「垂直水平パリティ」が用いられる場合もあり、パリティ用の記憶容量は約2倍必要になるが、同じブロック中の偶数個の誤りを検出したり、1ビットの誤りの訂正を行うことができる。
パリティビット 【パリティデータ】 ⭐⭐
データの伝送や記録の際に生じる誤りを検知できるように算出・付加される符号の一つで、ビット列中に含まれる「1」の数が偶数か奇数かを表すもの。これを利用した誤り検出方式を「パリティチェック」(parity check)という。
データを0と1が並んだビット列で表したときに、各ビットの値を足し合わせた値が奇数であるか偶数であるか(「1」の数が奇数か偶数か)を1ビットの値として表す。
和が奇数のときに1とする(偶数なら0)ものを「偶数パリティ」(even parity)、偶数のときに1とするものを「奇数パリティ」(odd parity)という。パリティを足すことでどのビット列も偶奇性が同じになる(偶数パリティを含めた全ビットの和は常に偶数)という意味でこのように呼ばれる。
データの送り手(送信者や書き込み時)は元のデータに対して一定の長さごとにパリティビットを算出して付加する。受け手(受信者や読み込み時)は受け取ったデータから同じようにパリティビットを算出し、付加されたパリティビットと比較する。
両者のパリティビットが一致すれば、パリティを含めたビット列中には誤りが存在しないか偶数個存在し、一致しなければ奇数個の誤りが生じていることが分かる。一つのパリティビットだけではどの位置に誤りがあるかは分からず、正しい値に訂正することはできない。
バースト誤りのような特殊な状況を除き、通常の用途では短いビット列中に同時に複数の誤りが生じる可能性は低いため、実用上はパリティビットが一致しなければ1ビットの誤りが含まれ、一致すれば誤りが生じていないとみなすことが多い。
データ圧縮 【圧縮符号化】 ⭐⭐⭐
データを一定の計算手順で加工し、実質的な内容を損なわずにより短い符号列で表すこと。原則として得られた符号は逆の計算手順により元のデータに復元することができ、データの一部を損なって容量を減らす削減や間引きとは異なる。
同じ情報を短いデータ長で表現することで、記憶装置上で占有する領域を小さくすることができ、また、機器間をより短い時間や少ない回線の占有度で伝送することができる。ただし、圧縮後の符号列は元のデータを扱う処理系では利用できないため、使用前に必ず元の状態に戻す処理が必要となる。この復元処理は「解凍」「伸長」「展開」などと呼ばれる。
圧縮処理や解凍処理に費やされる計算量や計算時間などと引き換えにデータ量の縮減という成果を得ており、両者が見合わなければ圧縮を行う意義は失われる。例えば、データ伝送を高速化するためにデータ圧縮を導入したのに、圧縮、伝送、解凍の合計時間が元データの伝送時間を上回ってしまっては元も子もない。
圧縮の逆変換の呼称
圧縮(compress)後の符号列から元のデータを復元する逆方向の変換処理のことを英語では “decompress” (compressに否定の接頭辞de-を付したもの)というが、日本語では定まった訳がなく、解凍、伸長、展開などの用語が用いられる。
ファイルのアーカイバでは複数のファイルを一つの圧縮ファイルにまとめることが多いため、その中から指定されたものを取り出して元の状態に戻すことを「抽出」ということもある(英語でもこの文脈では “extract” を用いる)。
日本では1980年代にパソコン通信やファイル圧縮ソフトの付属文書などを通じて「解凍」という用語が広まった(対応して圧縮のことを凍結と呼ぶこともあったがこれは広まらなかった)ため、慣用的に解凍と呼ぶことが多いが、本来の語義として圧縮と解凍では意味が対応しておらず、解凍には容積の増減の意味はないことなどから批判も多い。
一方、伸長や展開は、伸ばす、広げるという意味は合っているが、圧縮の逆の動作としての元に戻すという意味合いは薄いとの批判もあり、あまり定着していない。
圧縮率と圧縮比
どのくらい圧縮できたかを圧縮率という用語で表すことがある。より小さい量に圧縮できたことを「圧縮率が高い」という。
実際には二つの異なる指標が圧縮率と呼ばれており、一つは圧縮後のデータ量の元のデータ量に対する比率、もう一つは削減量の元の量に対する比率である。いずれを指すのかは文脈により異なる。圧縮後にデータ量が元の10分の1になったことを、前者の指標では圧縮率10%、後者では90%と表現する。
一方、圧縮前と後のデータ量の比や倍率で圧縮の程度を表すこともあり、データ圧縮比と呼ばれる。10分の1に圧縮したことを10:1あるいは10倍と言い表す。
可逆圧縮と非可逆圧縮
完全に元のデータに戻せる符号列に変換する方式を「可逆圧縮」、元のデータの一部を削除・変形することで高い圧縮率を得る代わりに完全には元に戻せなくなる方式を「非可逆圧縮」あるいは「不可逆圧縮」という。
可逆圧縮はわずかでもデータの一部が異なれば元とはまったく違う意味になってしまう文字(テキスト)データやコンピュータプログラムの圧縮や汎用のファイル圧縮などで用いられ、通常単にデータ圧縮といえば可逆圧縮を指す。
非可逆圧縮は主に画像や音声、映像など元のデータに大きな情報の冗長性が含まれる対象に用いられる。人間の視覚や聴覚の特性を利用して、人間が気づきにくい形でデータの一部を改変・削除することで、劇的な高圧縮率を得ることができる。
元の情報を損なう変換を伴うため、非可逆圧縮は厳密にはデータ圧縮手法の一部ではないとする立場もある。また、非可逆圧縮アルゴリズムの中には、元データの形式変換や加工(この段階ではデータ長の縮減は伴わない)を行った後、データ圧縮自体は連長圧縮などの可逆圧縮により行う(すなわち、「非可逆」の工程では圧縮していない)ものも多い。
伸張 【解凍】 ⭐⭐⭐
データ圧縮されたファイルなどに逆変換を行い、圧縮前の状態に戻すこと。圧縮されたデータを処理する際には、原則として必ず伸張して元のデータ形式に戻す必要がある。
信号やデータを実質的な意味を保ったまま、一定の手順で変換してより短い符号列に置き換えることを「圧縮」(compress)という。これとは逆に、圧縮データを元に戻す操作・処理を英語では否定の接頭辞 “de-” をつけて “decompress” というが、日本語では定まった訳語がなく、「伸長」「展開」「解凍」「減圧」「抽出」などが用いられる。
日本では1980年代にパソコン通信やファイル圧縮ソフトの付属文書などを通じて「解凍」という用語が広まった。対応して圧縮のことを「凍結」と呼ぶこともあったが、これは広まらなかった。年配の人などは現在でも慣用的に解凍と呼ぶことが多いが、本来の語義として「圧縮」と「解凍」では意味が対応しておらず、解凍には容積の増減の意味はないことから批判も多い。
一方、「伸長」や「展開」は、伸ばす、広げるという意味は合っているが、圧縮の逆の動作としての元に戻すという意味合いは薄いとの批判もあり、あまり定着していない。また、ファイルのアーカイバでは複数のファイルを一つの圧縮ファイルにまとめることが多いため、その中から指定されたものを取り出して元の状態に戻すことを「抽出」ということもある。英語でもこの文脈では “decompress” ではなく “extract” を用いる。
データ圧縮率 ⭐
データを圧縮した際に、圧縮後のデータが元のデータのどのくらいの情報量に減ったかを表す割合。圧縮後の量の元の量に対する割合を100倍したパーセンテージで表すことが多いが、削減された量の元の量に対する割合とすることもある。
データ圧縮はデータを一定の規則で変換する処理の一つで、実質的な内容を損なわずにより短いデータに置き換えることができる。逆変換により元の状態に復元することができる。記憶装置の容量や通信回線の伝送量を節約したり、データの記録や伝送の性能を向上することができる。
データ圧縮によりどの程度圧縮することができたかを、圧縮前後のデータ量の割合で表したものを圧縮率という。例えば、100MBのファイルが10MBに圧縮された場合、圧縮後の容量に着目して10/100で「0.1」あるいはパーセンテージで「10%」を圧縮率とする。
もう一つ別の考え方として、圧縮によって削減できた容量に着目し、(100-10)/100の「0.9」または「90%」を圧縮率とする場合がある。前者は値が小さいほどより少ない量に圧縮できていることを表し、後者はその逆である。
通常は前者の圧縮前後の容量の比によって表す方法が用いられる。いずれの場合も、慣例として、より少ない量に圧縮された(よく圧縮できた)状態を「圧縮率が高い」、多い量に圧縮された(あまり圧縮できなかった)状態を「圧縮率が低い」と言い表す。
データ圧縮比
圧縮前と圧縮後のデータ量を比で表したものを「データ圧縮比」ということがある。100MBを10MBに圧縮した場合はこれを10:1、あるいは比の値である10倍と表す。この値が高いほどより小さく圧縮できていることになる。数値で表す場合は、(圧縮前後のデータ量の比とした場合の)圧縮率の逆数となるが、圧縮率と同じ値(この例では10%)を圧縮比としている例も見られる。
可逆圧縮 【ロスレス圧縮】 ⭐⭐⭐
データ圧縮方式のうち、圧縮符号化の過程で元のデータを一切毀損せず、完全に元通りに復元できるように圧縮する手法のこと。主にファイル圧縮や通信プロトコルなど、データの種類を特定しない汎用の保存形式や伝送方式で用いられる。
コンピュータプログラムや文字(テキスト)などのデータは、1ビットでも欠けたり変質するとその意味する内容自体が変わってしまうため、圧縮したデータを展開(解凍)したときに元のデータと完全に一致する可逆圧縮が行われる。
一方、画像や動画、音声などの場合には、人間の視聴覚が違いを感じ取りにくいように一部を省略・改変することで実質的な内容を維持しつつ劇的に圧縮率を高める「非可逆圧縮」(不可逆圧縮)が行われることがある。可逆圧縮は元のデータを完全に保存できるが、非可逆圧縮に比べ圧縮率は低い。
主な可逆圧縮アルゴリズムとしてはランレングス符号やハフマン符号、LZ77、LZSS、LZW、Deflateなどが知られる。ZIPやCAB、LZH、RAR、gzip、bzip2など汎用のファイル圧縮形式はすべて可逆圧縮を用いる。画像圧縮ではJPEGなどが非可逆圧縮、GIFやPNG、WebP、AVIF、Loassless JPEGなどが可逆圧縮である。
また、通常は非可逆圧縮が用いられることが多い音声圧縮でも、「ALAC」(Apple Lossless)や「FLAC」「WMA Lossless」など高音質のために可逆圧縮を用いるファイル形式があり、「ロスレス音源」と総称される。
なお、非可逆圧縮は実際には元のデータを圧縮しやすい状態に変換し、圧縮符号化自体は可逆圧縮アルゴリズムを用いて行うため、正確には圧縮方式そのものが可逆と非可逆に分かれているわけではないが、実用的にはこの変換処理も含めて圧縮方式や圧縮形式の仕様の一部とみなされるため、便宜上このような区分が常用されている。
非可逆圧縮 【不可逆圧縮】 ⭐⭐⭐
データ圧縮方式のうち、圧縮符号化の過程でデータの一部の欠落や改変を許容することで極めて効率よく圧縮する手法のこと。非可逆圧縮されたデータを伸長(解凍)しても元のデータには完全には一致しない。
コンピュータプログラムや文字などのデータは1ビットでも変化すればその意味する内容自体が変わってしまうが、画像や動画、音声などはデータ上は細部が僅かに異なっていても人間の視聴覚には違いが気付きにくい場合がある。
このような特性を活かし、人間が認識しにくい手法で元のデータの一部を省略・改変したり、別の表現形式へ変換するなどして、効率よく短い符号に圧縮する方式を非可逆圧縮という。
元のデータを一切毀損しない可逆圧縮とは異なり完全に元のデータを復元することはできないが、人間にほとんど違いがわからない程度の改変でも劇的に圧縮率を高めることができる利点がある。また、多くの方式では圧縮時に品質劣化の程度を指定することができ、品質を犠牲にして極端に小さな容量に圧縮することもできる。
画像や動画、音声の圧縮形式の多くが非可逆圧縮を採用しており、JPEG、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、H.264、H.265、MP3、AAC、WMAなど主要なデータ形式のほとんどが非可逆となっている。用途に応じて使い分けられるよう、Lossless JPEGやWMA Losslessのように仕様の一部として可逆圧縮を用意している形式もある。
なお、実際には元のデータを効率良く圧縮できる状態に変換し、圧縮符号化自体は可逆圧縮アルゴリズムを用いて行うため、正確には圧縮方式そのものが可逆と非可逆に分かれているわけではないが、実用的にはこの変換処理も含めて圧縮方式や圧縮形式の仕様の一部とみなされるため、便宜上このような区分が常用されている。
ランレングス圧縮 【連長圧縮】 ⭐⭐
最も基本的な圧縮アルゴリズムの一つで、連続して現れる符号を、繰り返しの回数を表す値に置き換える方式。圧縮によって内容を損なわない可逆圧縮を行う。
例えば、「AAAABBBBCCCC」という文字列を圧縮する場合、「A」が4回、「B」が4回、「C」が4回それぞれ連続しているため、各文字とその繰り返し回数を組み合わせて「4A4B4C」のように表すことができる。
展開する場合は「4A」を「AAAA」のように戻していくことで元の文字列が得られる。この例では元のデータの半分のデータ長に圧縮することができた。
この単純な方法では同じ符号が連続する箇所が少ないか存在しない場合、圧縮どころか逆にデータ長が大きく伸びてしまう場合がある。例えば、「ABCABC」は「1A1B1C1A1B1C」となってしまい、元の倍の長さになってしまう。
こうした事態を防ぐための手法がいくつか考案されている。例えば、繰り返し回数を表す数字が負数の場合は、その絶対値の長さだけ元のデータがそのまま記載されている区間が出現するという規則を追加する方式がよく知られる(PackBits方式)。
例えば、「AAAABCDEBBBB」は、単純な符号化では「4A1B1C1D1E4B」と12文字で表されるが、PackBits方式では中間の繰り返しのない4文字の先頭に「-4」(説明のため負号を付けて2文字で表しているが実際のデータ上は1文字分)を付加した「4A-4BCDE4B」となり、9文字で表すことができる。
ランレングス圧縮は余白の多い白黒2値画像のように、符号の種類が少なく繰り返し箇所が多い性質のデータで効率よく圧縮でき、ファクシミリの伝送符号や一部のビットマップ画像形式(BMP形式やPICT形式など)などに採用例がある。
Zip 【.zipファイル】 ⭐
複数のファイルを一つにまとめるアーカイブファイル形式、および、データを圧縮して容量を削減することができる圧縮ファイル形式の一つ。Windowsなどで標準的に用いられる。
Zip形式のファイルは内部に複数のファイルを格納でき、必要なものだけを展開して取り出すことができる。オペレーティングシステム(OS)のファイルシステムのように階層型(入れ子型)のディレクトリ(フォルダ)構造をそのまま取り込むことができる。ファイル名の標準の拡張子は「.zip」である。
ファイルの格納時にデータ圧縮を行うことができ、内容を維持したままファイルサイズを縮減することができる。この機能は本来はオプションで、圧縮せずにアーカイブすることもできるが、ほとんどの場合に圧縮機能が用いられるためZip形式は圧縮形式であると説明されることもある。
32ビットCRC方式の誤り検出符号を付与し、展開時にデータが破損していないか確かめることができる。ファイル作成時にパスワードを設定し、DES、3DES、RC2、RC4などの暗号アルゴリズムで内容を暗号化して格納する拡張仕様があり、展開時にはパスワード入力が必要となる。
圧縮方式
Zipのバージョン2.0からLZ77圧縮アルゴリズムとハフマン符号化を組み合わせたDeflate方式のデータ圧縮を利用することができるようになり、ファイル単位で圧縮を行い容量を削減することができる。これは内容を損なわない可逆圧縮(ロスレス圧縮)方式であり、どのような種類のデータも圧縮できる。
似た名称の圧縮ファイル形式に「gzip」や「bzip2」、「7z」(7-Zip)などがあるが、gzipはDeflate圧縮を用いるが記録形式としては別物で互換性がなく、bzip2は名前が似ているだけで特に共通点はない。7zはDeflateやbzip2を含む様々な圧縮形式に対応しているが記録形式はZipと異なる。
他のファイル形式での利用
データファイルに様々な種類の複合的なデータを収める必要があるアプリケーションソフトでは、特定のデータ形式やディレクトリ構造で複数のファイルを生成・配置し、これをまとめてZipで圧縮して一つのファイルにまとめたものを標準のファイル形式とする場合がある。
このようなファイルは格納されるデータ形式自体はZipファイルそのものだが、内容を展開するとそのアプリケーション固有のデータの集合体となるため、固有のファイル形式として独自の名称とファイル拡張子によって識別されることが多い。
このような方式を採用したフォーマットとして著名なものとして、Javaのソフトウェア配布に用いられるJAR形式(.jarファイル)、オフィスソフトの標準ファイル形式である「Open Office XML」(DOCXファイル、XLSXファイル、PPTXファイルなど)や「OpenDocument Format」(.odtファイル、.odsファイル、.odpファイルなど)がある。
歴史
Zipは1989年に米PKWARE社のフィル・カッツ(Phil Katz)氏が考案したもので、同社のMS-DOS向けのファイルアーカイブソフトウェア「PKZIP」の標準ファイル形式として発表された。同氏はZipの仕様を公表し、一切の権利を放棄したため、誰でも自由に利用できるようになり、主にMS-DOSやWindowsなどのプラットフォームで標準的なアーカイブ形式および圧縮形式として普及した。2015年にISO/IEC 21320として国際標準となっている。
RAR 【Roshal Archive】
汎用の可逆データ圧縮方式および圧縮ファイルの保存形式の一つ。ファイルの標準の拡張子は「.rar」。
Zip形式など他の著名な圧縮方式に比べ圧縮率が高く、ファイル分割機能や誤り訂正符号によるエラーの自動訂正機能を標準で備えるといった特徴から、通信回線が低速だったインターネット普及の初期に特に好まれた。
ファイル分割機能は圧縮後のデータを任意のサイズの複数のファイルに分割して保存する方式で、分割されたファイル群はファイル名の末尾が「.part01.rar」「.part02.rar」…といった規則で命名される(初期には拡張子が「.r00」「.r01」「.r02」のように変化する方式だった)。
他にも、解凍プログラムを圧縮ファイル自身に内蔵した自己解凍書庫の作成や、電子署名(デジタル署名)による改竄やすり替えの防止、パスワードにより保護された暗号化圧縮ファイルの作成などの仕様が規定されている。
もとはロシアのユージン・ローシャル(Eugene Roshal)氏とアレクサンダー・ローシャル(Alexander Roshal)氏の兄弟がMS-DOS向けに開発していた同名(RAR.EXE)の圧縮ソフト(およびWindows向けに移植されたWinRAR)で採用されていた形式で、のちに圧縮アルゴリズムとファイル形式の仕様が公開され他のソフトウェアにも広まった。
メディア ⭐⭐⭐
媒体、媒質、伝達手段、中間などの意味を持つ英単語。“medium” の複数形。情報の伝達や記録に用いられる物体や装置、およびこれを利用して人に情報を伝達・配布する仕組みや事業、組織などを指すことが多い。
一般の外来語としては、人が人に情報を伝えたり広く報じるのに用いるモノや仕組みを指し、広義には電話や手紙、書籍、テレビ、映画、電子メール、Webサイトなど様々な伝達手段が含まれる。
狭義には、社会の不特定多数の人々に向けて広く情報を発信する「マスメディア」(mass media)のことをメディアと呼ぶことが多い。現代では日常的に多くの人が接するテレビ放送、ラジオ放送、新聞、雑誌の4つを指し、これを「マス4媒体」「4大メディア」などという。
マスメディアと同じように、インターネットを通じて広く一般に情報を発信、公開するネットサービスやWebサイトなどのことを「ネットメディア」「Webメディア」「オンラインメディア」などと呼ぶ。Webサイトやブログ、メールマガジン、動画配信サービス、動画サービス上のチャンネルなどが含まれ、マスメディア企業がネットメディアも並行して運用する例も多く見られる。
記録メディア・伝送メディア
ITの分野では、一般の用法に加え、データの記録・保管に用いる物体や装置を「記録メディア」、信号やデータを伝送するケーブルや内部の信号線、あるいは電波など伝送の媒介となる物理現象を「伝送メディア」という。
記録メディア(記憶メディアとも呼ばれる)の例としては、磁気テープ、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)、フラッシュメモリ(SSD/USBメモリなど/メモリーカード)などがある。伝送メディアの例としては金属線ケーブル(銅線ケーブル/メタルケーブル)、光ファイバーケーブル、電波、赤外線、電子基板上の金属配線などがある。
メディアリテラシー ⭐⭐⭐
情報を伝達する媒体(メディア)を使いこなす基礎的な素養のこと。メディアを通じて情報を取得・収集し、取捨選択および評価・判断する能力や、自らの持つ情報をメディアを通して適切に発信できる能力を指す。
現代人は生活や仕事に必要な情報の多くをテレビや新聞、雑誌などのマスメディアやインターネット上のサイトやサービスなどの情報媒体を通じて得ているが、媒体にはそれぞれ物理的・技術的・商業的な制約や、発信者の立場や意図、経済的・政治的・思想的な背景などから偏りや歪みを避けることはできず、時には誤りや意図的な誇張、改変、虚偽などが含まれることもある。
情報の偏りにも様々な背景があり、例えば、紙面や放送時間の制約から送り手が重要でないと判断した話題が取り上げられなかったり扱いが小さくなることがある。商業的に運営されている媒体が大口広告スポンサーの不祥事を意図的に無視したり、自社や業界が関連する制度を取り上げる際に自らに有利な情報や論調を流すといった媒体の利害に基づく歪みが生じることもある。
また、政治や経済についての話題では、思想的に政権党に親和的な媒体とそうでない媒体で同じ事実について肯定的な論調と否定的な論調に分かれたり、特定の勢力に有利な、あるいは不利な情報を多く流すと行った操作が行われることも珍しくない。
情報の受け手としてのメディアリテラシーは、このような媒体の特性や限界、送り手の意図や背景などを読み解き、メディアから得た情報を鵜呑みにしたり全否定するのではなく、可能な限り客観的かつ正確に評価して活用できるようにする基本的な知識や技能の総体を指す。
1990年代まではメディアリテラシーといえばマスメディアの情報を読み取る受け手としての能力のみを指したが、現代ではインターネットを通じて誰でも公共に情報を発信することができるようになり、自らの持つ情報を適切な手段で発信する基礎的な能力もメディアリテラシーの範疇に含まれるようになった。こうした送り手としての素養はいわゆる「ネットリテラシー」の一部でもある。
マスメディア 【マスコミュニケーション】 ⭐
不特定多数の人に同時に同じ情報を伝達できる媒体(メディア)のこと。また、その運営機関。「メディア」と略されることもある。マスコミによる情報の一斉伝達を「マスコミュニケーション」(mass communication、マスコミ)というが、媒体や運営機関のことをマスコミということもある。
現代社会では一般に新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4つを指し、これらをマス4媒体(マスメディア4媒体、マスコミ4媒体)という。マスコミに流れる情報が社会に大きな影響を与えることから、その影響力の大きさを国家権力になぞらえ、行政、立法、司法に並ぶ「第4の権力」と呼ばれることもある。
また、あまり一般的な用法ではないが、伝達する情報の種類が限られていたり、情報の発信主体が極めて細分化・専門化していたり、特定集団内や個人間のコミュニケーションに用いる情報媒体でも、全体としての普及率や接触率が高い場合にはマスコミに含める場合がある。例えば、インターネット、書籍、映画、携帯電話、音楽・映像ソフト(CDやDVDなど)などをマスコミの一部とする場合がある。
何がマスコミとして機能するかは時代や科学技術、社会制度の変化によっても変遷し、例えば江戸時代の日本では立て札が一種のマスコミであり、テレビ放送の開始前は映画館で時事の話題を映像で伝える「ニュース映画」を上映していた。現在ではインターネットがマスコミの機能を持ち始めている。
多くの国で、マスコミの運営や所有者について法制度によって一定の規制あるいは保護が行われている。特に、国民の共有財産である電波周波数を専有するテレビやラジオなどの放送事業については免許制とし、一定の要件を満たした事業者が当局の規制・監督のもと運営する制度となっていることが多い。
新聞や雑誌についても税制や郵便料金を優遇するといった措置が行われることがある。例えば、日本では新聞に消費税の軽減税率が適用され、郵便制度では定期刊行物向けの割安な「第三種郵便物」という区分が用意されている。統制主義的な国家ではマスコミの運営を国が独占したり、報道内容の検閲など運営への国家の関与・介入が行われることが多い。
マスメディア 【マスコミュニケーション】 ⭐⭐
不特定多数の人に同時に同じ情報を伝達できる媒体(メディア)のこと。また、その運営機関。「メディア」と略されることもある。マスメディアによる情報の一斉伝達を「マスコミュニケーション」(mass communication、マスコミ)というが、媒体や運営機関のことをマスコミということもある。
現代社会では一般に新聞、雑誌、テレビ、ラジオの4つを指し、これらをマス4媒体(マスメディア4媒体、マスコミ4媒体)という。マスメディアに流れる情報が社会に大きな影響を与えることから、その影響力の大きさを国家権力になぞらえ、行政、立法、司法に並ぶ「第4の権力」と呼ばれることもある。
また、あまり一般的な用法ではないが、伝達する情報の種類が限られていたり、情報の発信主体が極めて細分化・専門化していたり、特定集団内や個人間のコミュニケーションに用いる情報媒体でも、全体としての普及率や接触率が高い場合にはマスメディアに含める場合がある。例えば、インターネット、書籍、映画、携帯電話、音楽・映像ソフト(CDやDVDなど)などをマスメディアの一部とする場合がある。
何がマスメディアとして機能するかは時代や科学技術、社会制度の変化によっても変遷し、例えば江戸時代の日本では立て札が一種のマスメディアであり、テレビ放送の開始前は映画館で時事の話題を映像で伝える「ニュース映画」を上映していた。現在ではインターネットがマスメディアの機能を持ち始めている。
多くの国で、マスメディアの運営や所有者について法制度によって一定の規制あるいは保護が行われている。特に、国民の共有財産である電波周波数を専有するテレビやラジオなどの放送事業については免許制とし、一定の要件を満たした事業者が当局の規制・監督のもと運営する制度となっていることが多い。
新聞や雑誌についても税制や郵便料金を優遇するといった措置が行われることがある。例えば、日本では新聞に消費税の軽減税率が適用され、郵便制度では定期刊行物向けの割安な「第三種郵便物」という区分が用意されている。統制主義的な国家ではマスメディアの運営を国が独占したり、報道内容の検閲など運営への国家の関与・介入が行われることが多い。
ハードディスク 【HDD】 ⭐⭐
コンピュータなどの代表的なストレージ(外部記憶装置)の一つで、薄くて硬い円盤(ディスク)の表面に塗布した磁性体の磁化状態を変化させてデータを記録するもの。一台あたりの容量が大きく容量あたりの単価が安いため、パソコンなどに内蔵されるストレージとして標準的な存在となっている。
構造・原理
装置内にはガラスや金属でできたプラッタ(platter)と呼ばれる円盤型の記憶媒体が数枚封入されており、表面には磁性体が塗布されている。これを回転軸で高速(毎分数千回)で回転させ、アームの先端に取り付けられた磁気ヘッドを近接させる。特定の箇所の磁化状態を変化させることでデータを書き込むことができ、状態を読み取ることでデータを読み出すことができる。
プラッタの直径は主流の製品で3.5インチ(約8.9cm)だが、小型の機器向けに2.5インチや1インチの製品も存在する。一台の装置にプラッタが1~8枚程度備え付けられ、通常はその両面を記録に用いる。内部的な制御や区画分けはプラッタごとに行われるが、外部から見た記憶領域としては全体で一つとなる。
他媒体との比較
「ハードディスク」とは硬い円盤という意味だが、これはフロッピーディスクなどのようにプラッタの素材に柔らかいプラスチックフィルムなどを用いる装置と対比した表現である。フロッピーディスクなどは記憶媒体と駆動装置(ドライブ)が分離していてディスクだけを取り外して交換したり持ち運べるが、ハードディスクはディスクとドライブが一体化しているため、「ハードディスクドライブ」(HDD:Hard Disk Drive)とも呼ばれる。
磁気ディスクや光学ディスクなどの中では最も記録密度が高く、同じ世代で比較すると装置(媒体)一台あたりの記憶容量は飛び抜けて大きい。読み書きも高速で、パソコンやサーバなどのコンピュータ製品では基幹的な記憶媒体として広く普及している。ドライブ一体型なこともあり一台あたりの価格が高いことや、振動に弱いという難点もある。
SSDへの置き換え
装置の寸法や接続仕様をハードディスクに揃え、内部の記憶媒体をフラッシュメモリに置き換えた製品はSSD(Solid State Drive)と呼ばれ、ハードディスクの代替として近年急速に浸透している。
読み書き速度が桁違いに速く衝撃にも強いという長所があるが、半導体メモリのため価格が高く一台あたりの容量も少ないという欠点があった。近年では低価格化と記憶容量の向上が劇的に進み、従来のハードディスクの用途を置き換える形で普及が加速している。
接続方式
コンピュータ本体に内蔵されるハードディスクの場合、接続インターフェースとして初期にはIDE/ATA(パソコン向け)やSCSI(サーバ・ワークステーション向け)が、2000年代以降はSATA(Serial ATA)が主に用いられている。独自の筐体を持ちケーブルでコンピュータと繋ぐ外付けの装置もあり、USBやIEEE 1394、eSATAなどの規格で接続される。
フラッシュメモリ ⭐
半導体素子を利用した記憶装置の一つで、何度も繰り返し書き込みができ、通電をやめても記憶内容が維持されるもの。近年、データを永続的に保存するストレージ(外部記憶装置)製品の記憶素子として急激に普及している。
フラッシュメモリは半導体メモリのうち、電源を落としても記録されたデータが消えない不揮発性メモリ(nonvolatile memory)に分類される。電気的に繰り返し自由に消去や再書き込みができる特徴はRAMと同じだが、技術的にはROM(の一種であるEEPROM)に由来するため「フラッシュROM」とも呼ばれる。
素子の構造や動作方式により大きくNAND型とNOR型の二種類に分かれる。最初に開発されたのはNOR型で、バイト単位で高速に読み出しができ、信頼性が高いが、後に開発されたNAND型の方が集積度を高めやすく、書き込みが高速であるという特徴の違いがある。
SLCとMLC
初期のフラッシュメモリはメモリセル(記憶素子)の電荷の有無にデジタル信号の「0」と「1」を対応付ける1ビット記録の素子(SLC:Single Level Cell/シングルレベルセル)が用いられた。後に、セルに投入した電荷量を段階的に識別することで1セルに複数ビットを保存できる素子(MLC:Multi-Level Cell/マルチレベルセル)が開発された。
初期のMLCは4段階識別・2ビット記録だったため、現在でもこれを指してMLCと呼ぶことが多いが、8段階識別・3ビット記録の「TLC」(Triple Level Cell/トリプルレベルセル)や、16段階識別・4ビット記録の「QLC」(Quad-Level Cell/クアッドレベルセル)も開発されており、MLCはこれら多値記録方式全体の総称を指すこともある。
特徴と用途
フラッシュメモリは磁気ディスクや光学ディスクなどに比べ、半導体素子に電気的にアクセスするためデータの読み書き速度が桁違いに速く、ドライブ装置に可動部がないため動作音もなく衝撃や振動にも強い。
ただし、素子の構造上劣化の進みが速く、初期には数百回程度、近年でも数万回程度の再書き込みによって素子が破損することが知られている。この点をカバーするため、制御回路により書き込み回数を各素子に均等に分散させる「ウェアレベリング」(wear leveling)と呼ばれる処理が行われる。
他方式のメディアに比べ価格も桁違いに高く小容量の製品しかなかったが、2000年代半ば頃からは量産効果や技術の進歩により飛躍的に低コスト化され、磁気ディスクなどの用途を奪う形で普及が拡大している。
主な用途としては、スマートフォンなどの携帯情報端末の内蔵ストレージや、数cm角の薄いプラスチックケースに収めたカード型の記憶媒体である「メモリーカード」、指先大の短い棒型や角型のケースに収めUSB端子でコンピュータに接続する「USBメモリ」などがある。
Web 【ウェブ】 ⭐⭐
インターネット上で標準的に用いられている文書の公開・閲覧システム。文字や図表、画像、動画などを組み合わせた文書を配布することができる。現代では様々なサービスやアプリケーションの運用基盤としても広く用いられる。
文書内の要素に別の文書を指し示す参照情報(ハイパーリンク)を埋め込むことができる「ハイパーテキスト」(hypertext)と呼ばれるシステムの一種である。“web” (ウェブ)とは「蜘蛛の巣」を意味する英単語で、多数の文書が互いにリンクを介して複雑に繋がり合っている様子を蜘蛛の巣の網目状の構造になぞらえている。
WebサーバとWebブラウザ
Webで情報を提供するコンピュータやソフトウェアを「Webサーバ」(web server)、利用者の操作によりサーバから情報を受信して表示や処理を行うコンピュータやソフトウェアを「Webクライアント」(web client)という。
Webクライアントのうち、受信したページの内容を整形して画面に表示し、人間が閲覧するために用いるものを特に「Webブラウザ」(web browser:ウェブブラウザ)という。サーバとクライアントの間の通信には「HTTP」(Hypertext Transfer Protocol)と呼ばれる通信規約(プロトコル)が標準的に用いられる。
Web上の情報資源の所在の指定には、「https://www.example.co.jp/index.html」といった形式の「URL」(Uniform Resource Locator)という表記法が用いられる。Webサーバを表すドメイン名(ホスト名)と、Webサーバ上での資源の位置を指し示すパス(階層的なディレクトリ名とファイル名の組み合わせ)を繋げた形式になっている。
WebページとWebサイト
Webにおける情報の基礎的な単位は「Webページ」(web page)で、見出しや文章などの文字情報をもとにHTML(Hypertext Markup Language)やCSS(Cascading Style Sheet)などのコンピュータ言語で構造や体裁、見栄えを記述する。
HTMLは記述された文字情報の中にソフトウェアへの制御情報を埋め込むことができる「マークアップ言語」(markup language)と呼ばれる言語で、「この部分が見出し」「本文はここからここまで」「段落の区切りはここ」といった指示を文書中に埋め込む形で記述することができる。
Webブラウザはこの制御情報に基づいて、タイトルを中央揃えにしたり、小見出しを太い大きな文字で表示したり、段落の間に空白を差し込むなど指定された整形や装飾を行い、閲覧者が文書の構造を把握しやすいように表示してくれる。
ページ内には文章だけでなく箇条書き(リスト)や表(テーブル)、図形、画像、動画、入力要素(フォーム)などを掲載することができる。画像や動画など文字で書き表せない要素は外部のファイルをURLで指定して埋め込むことができる。
要素のページ内での配置や大きさ、枠線や罫線、文字の字形(フォント)や色といった具体的な見栄えに関する指定項目(スタイルという)は、当初はHTMLで構造とともに記述していたが、CSSという専用の言語で構造とは別に指定する方式が主流となっている。
ページ内の要素には外部の他の資源(多くの場合は他のWebページ)のURLを指し示すリンクを設定することができ、ブラウザ画面に表示されたリンクを指定して開くよう指示(クリックやタップなど)すると、表示がリンク中のURLで指定されたページに切り替わる。簡単な操作でリンクをたどって次々に文書から文書へ表示を切り替えていくことができる。
このリンク機能を利用して、書籍のように複数のページ群をまとめた単位を「Webサイト」(web site)という。サイト内のページからは外部のサイトのページへリンクを張ることもでき、Web全体がリンクを介して連結された巨大な地球規模の文書データベースとなっている。
Webアプリケーション・Webサービス
Webサーバには静的なファイルの送信だけでなく、ブラウザからの要求に基づいて動的にコンピュータプログラムを実行し、何らかのデータ処理を行って結果をブラウザに応答することもできる。
また、Webブラウザにはページ上に記述された簡易なプログラム(スクリプトという)を実行し、サーバと任意のタイミングで通信したり、利用者の操作に応じて表示内容を変化させたりすることができる。
このような動的な仕組みを組み合わせ、サーバとブラウザが連携して利用者が対話的に操作することができるアプリケーションソフトを構築することができ、これを「Webアプリケーション」(web application)あるいは「Webサービス」(web service)という。著名な応用例として、ブラウザで買い物ができるオンラインショップ(ECサイト)や、利用者同士がコミュニケーションできるSNSなどのネットサービスがある。
歴史と名称
Webはインターネットがまだ学術機関を中心に利用されていた頃、1989年に欧州核物理学研究所(CERN)のティム・バーナーズ・リー(Tim Berners-Lee)氏が所内の論文公開・閲覧システムとして考案したものが基礎となっている。
1990年代にインターネットが一般に開放され普及していく過程で、電子メールなどと共にネットの代表的な応用システムとして広く利用されるようになった。2000年代中頃には主に日本を含む先進国で欠かすことのできない重要な情報インフラの一つに成長している。
もとは “World Wide Web”、略して “WWW” が正式名称で、現在も「https://www.example.jp/」のようにWebサーバのホスト名などにこの名が残っているもの。英語では次第に “the Web” (固有名詞のWeb)のように略されるようになり、さらに進んで現在では一般名詞の “web” がインターネットのWebを指すことが増えている。日本では当初「ホームページ」の名称で紹介され、現在も初心者向けの説明などで多用されるが、「ウェブ」「Web」の呼称が浸透しつつある。
Webブラウザ 【ウェブブラウザ】 ⭐⭐
Webページを閲覧するためのアプリケーションソフト。利用者の指定したWebページを管理するWebサーバへデータの送信を要求し、送られてきたHTMLファイルや画像ファイルなどを読み込んで指定されたレイアウトで表示する。
利用者の指定したアドレス(URL)にアクセスし、WebサーバからWebページを構成するHTMLファイルやスタイルシート(CSS)、スクリプト(JavaScript)、画像、音声、動画などのデータを受信して、一枚のページに組み立てて画面に表示する。
入力フォームを使用して利用者側からデータやファイルをWebサーバに送信したり、表示されたページの保存や印刷を行ったり、簡易なプログラム(スクリプト)の実行機能を利用して制作されたソフトウェアやアニメーションなどを再生・動作させることもできる。
主要なWebブラウザには、「プラグイン」「アドオン」「拡張機能」(エクステンション)などの名称で、第三者の開発した機能を追加する仕組みが備わっており、様々な企業や個人が開発した追加機能が公開されている。
読み込むWebページの指定は、URL(Webアドレス)を表示欄に利用者が直接入力するか、表示されたページ中にある他のページへのリンク(ハイパーリンク)を指定するか、利用者の保存したURLの一覧(ブックマーク/お気に入り)から選択するなどの方法で行う。
サーバとの通信はHTTP(Hypertext Transfer Protocol)と呼ばれる通信規約(プロトコル)によって行われ、その基盤としてインターネットなどで標準のTCP/IPが用いられる。SSL/TLSを用いて通信経路を暗号化(HTTPS)したり、ローカルファイルを読み込む機能も備えていることが多い。
Webブラウザの種類
一般的なフル機能のWebブラウザ製品の他に、画像や動画などメディアデータは無視して文字(テキスト)部分だけを抽出して表示する「テキストブラウザ」、文字情報を音声合成機能で読み上げる「音声ブラウザ」(読み上げブラウザ)などがある。
パソコン向けでは、米グーグル(Google)社の「Google Chrome」(グーグル・クローム)や米マイクロソフト(Microsoft)社の「Microsoft Edge」(マイクロソフト・エッジ)、米モジラ財団(Mozilla Foundation)の「Firefox」(ファイアーフォックス)が人気で、Mac(macOS)では開発元の米アップル(Apple)社の「Safari」(サファリ)が標準的に使われる。
スマートフォンやタブレット端末の場合、Androidでは標準で組み込まれるAndroid版Chromeが、iOS(iPhone/iPad)でもやはり標準で組み込まれるiOS版Safariが使われることが多い。また、これらの環境では標準ブラウザの機能を部品(モジュール)化したものをアプリケーションソフトに組み込む「WebView」(ウェブビュー)という仕組みがあり、多くのアプリがこの仕組みを利用してWebブラウザの機能を内蔵している。
ソーシャルメディア ⭐⭐
インターネット上で展開される情報メディアのあり方で、個人による情報発信や個人間のコミュニケーション、人の結びつきを利用した情報流通などといった社会的な要素を含んだメディアのこと。狭義にはいわゆる「SNS」(ソーシャルネットワーキングサービス)を指す。
利用者の発信した情報や利用者間の繋がりによってコンテンツを作り出す要素を持ったWebサイトやネットサービスなどを総称する用語である。電子掲示板(BBS)やブログ、ミニブログ、Wiki、SNS、動画共有サービス、動画配信サービス、ポッドキャスト、ソーシャルニュースサイト、ソーシャルブックマークサービス、レシピ共有サイト、各種レビューサイト、Q&Aサイトなどが含まれる。
メッセンジャーアプリやビデオ会議アプリなどのコミュニケーションツールもソーシャルメディアの一種とする場合がある。サイトやサービス自体はソーシャル的でない場合も、オンラインショップのレビュー投稿欄、フリマアプリの購入者評価欄などのようにソーシャルメディア的な要素が含まれる例がある。
従来のマスメディアは情報の発信に巨大な設備や組織、巨額の資金が必要だったため、情報の送り手の地位は少数の特権的な職業人によって占められていたが、ソーシャルメディアではメディアの閲覧者が同時に発信者としての資格を持ち、他の利用者に自身の責任で自由に情報を発信することができる。
また、大衆に画一的に同じ情報を複製して配信してきたマスメディアに対し、ソーシャルメディアでは多様な発信主体から閲覧者自身が必要とする情報源を選択したり、友人や同僚、同好の士などといった人間関係を利用して情報の流通を制御したりする仕組みが用意されていることが多い。
SNS 【Social Networking Service】 ⭐⭐⭐
人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス。友人・知人間のコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供したり、趣味や嗜好、居住地域、出身校、あるいは「友人の友人」といった共通点や繋がりを通じて新たな人間関係を構築する場を提供するサービスで、Webサイトや専用のスマートフォンアプリなどで閲覧・利用することができる。
主な特徴
サービスにより機能や特徴が大きく異なるが、多くのサービスに見られる典型的な機能としては、別の会員を「友人」や「購読者」「被購読者」などに登録する機能、自分のプロフィールや写真を公開する機能、同じサービス上の別の会員にメッセージを送る機能、自らのスペースに文章や写真、動画などを投稿して友人などに見せる機能がある。
サービスによっては、複数の会員でメッセージ交換や情報共有ができるコミュニティ機能、イベントの予定や友人の誕生日などを共有したり当日に知らせたりしてくれるカレンダーあるいはスケジュール機能などがある。
多くの商用サービスではサイト内に広告を掲載するなどして、登録や基本的なサービスの利用を無料としているが、一部の機能を有料で提供しているサービスもある。
SNSの種類
多くのサービスはメールアドレスなどがあれば誰でも登録できるが、普及し始めた当初は人の繋がりを重視して「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっているサービスが多かった。
現在でも、何らかの形で参加資格を限定し、登録時に紹介や審査などが必要なサービスがある。また、参加自体が自由でも、テーマや分野などがあらかじめ設定され、関係や関心のある人の参加を募っているサービスなどもある。
企業などが従業員を対象に運用する「社内SNS」や、大学が教職員や在学生、卒業生を対象に運用する「学内SNS」もあり、業務上の連絡や情報共有に使われたり、業務とは切り離して参加者間の交流の促進のために利用されたりする。「OpenPNE」や「Mastodon」など自らSNSを開設・運用することができるサーバ向けソフトウェアもあり、これを利用したプライベートな集団内のサービスも存在する。
歴史と著名なサービス
2003年頃アメリカを中心に相次いで誕生し、国内事業者によるサービスも2004年頃から普及し始めた。世界的には、初期に登録資格を有名大の学生に絞って人気を博し、後に世界最大のソーシャルネットワークに成長した「Facebook」(フェイスブック)や、短いつぶやきを投稿・共有するマイクロブログ型の「Twitter」(ツイッター:現X)、写真の投稿・共有を中心とする「Instagram」(インスタグラム)、ビジネス・職業上の繋がりに絞った「LinkedIn」(リンクトイン)などが有名である。
日本独自のサービスとしては一時会員数1000万人を超え社会現象ともなった「mixi」(ミクシィ)などが有名だが、近年ではFacebookなど海外事業者に押され利用が低迷しており、オンラインゲーム運営・提供に業態転換するなどしている。
SNS的なサービスの広がり
近年では様々なWebサイトやネットサービス、スマートフォンアプリなどに「ソーシャルな」機能が組み込まれる事例が増えており、何がSNSで何がそうでないか明確に区別することは難しくなりつつある。
例えば、料理レシピ投稿サイトの「クックパッド」(Cookpad)や、スマートフォン利用者間でチャットや音声通話などを提供する「LINE」(ライン)などにも、集団の形成を支援するコミュニティ機能や日記の投稿・共有機能などがあり、これらのサービスをSNSの一種に含める場合もある。
SNSの功罪
SNSによって、一度繋がりの途絶えた古い友人と交流を再開したり、現実に頻繁に会うことは難しい多人数と日常的な繋がりを保ったり、身の回りに同好の士がいなくてもSNSで発見してコミュニティを形成できるなど、SNSのおかげで人間関係が充実した利用者は数多くいる。
一方で、不用意に個人情報や顔写真などを公開してしまい悪意に晒されたり、素性のよくわからない人と交流を持ちトラブルに巻き込まれたり、自分の周囲では特に問題視されなかった話がネット上で拡散されるうちに非難の書き込みが殺到してしまう(「炎上」と呼ばれる現象)など、SNSによって新たに引き起こされる問題もある。
また、SNSが様々な人の間に普及し、継続して利用する期間が長くなるに連れ、上司や家族など「望まれざる」相手とのSNS上での関係や対応に苦慮したり、知り合いの(大抵は良いことしか書かれていない)書き込みを読んで自分の身上と比較してしまったり、興味が湧かない話題でも毎回反応を迫られているように感じて精神的に疲弊する「SNS疲れ」といった問題に直面し、SNSの利用を断って離れる人も増えている。
CGM 【Consumer Generated Media】
インターネットを通じて利用者からの情報提供や投稿を集めて内容が形成されるWebサイトやネットサービスなどのこと。SNSやブログ、Q&Aサイト、口コミサイト、レシピ投稿サイト、グルメサイト、写真共有サイト、動画共有サイト、イラスト投稿サイト、ウィキ(Wiki)などが該当する。
1990年代後半のWeb普及初期から電子掲示板(BBS)や個人運営の趣味的なWebサイトなどは存在したが、2000年代中頃になり、様々なテーマや形態で利用者の投稿を受け付け、主要なコンテンツとして提供するWebサイトが勃興した。これらを企業などから一方的に情報を配信する従来型のメディアと対比してCGMと総称する。
また、主要なコンテンツが企業などの制作・提供するものであっても、ページの一部に利用者から投稿された内容を表示する機能を備えたサイトも増え、CGMと合わせてUGC(User-Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)という。追加的なUGCとしてはニュース記事などのコメント欄、オンラインショップなどのレビュー(購入者による評価)などがある。
電子メール 【eメール】 ⭐⭐⭐
通信ネットワークを介してコンピュータなどの機器の間で文字を中心とするメッセージを送受信するシステム。郵便に似た仕組みを電子的な手段で実現したものであることからこのように呼ばれる。
広義には、電子的な手段でメッセージを交換するシステムやサービス、ソフトウェア全般を指し、携帯電話のSMSや、各種のネットサービスやアプリ内で提供される利用者間のメッセージ交換機能などを含む。
狭義には、SMTPやPOP3、IMAP4、MIMEなどインターネット標準の様々なプロトコル(通信規約)やデータ形式を組み合わせて構築されたメッセージ交換システムを指し、現代では単に電子メールといえば一般にこちらを表すことが多い。
メールアドレス
電子メールの送信元や宛先は住所や氏名の代わりに「メールアドレス」(email address)と呼ばれる統一された書式の文字列が用いられる。これは「JohnDoe@example.com」のように「アカウント名@ドメイン名」の形式で表され、ドメイン名の部分が利用者が所属・加入している組織の管理するネットワークの識別名を表し、アカウント名がその中での個人の識別名となる。
企業や行政機関、大学などがメールサーバを運用して所属者にメールアドレスを発行しているほか、インターネットサービスプロバイダ(ISP)や携帯電話事業者などがインターネット接続サービスの一環として加入者にメールアドレスを発行している。
また、ネットサービス事業者などが誰でも自由に無料でメールアドレスを取得して利用できる「フリーメール」(free email)サービスを提供している。一人の人物が立場ごとに複数のアドレスを使い分けたり、企業の代表アドレスのように特定の個人に紐付けられず組織や集団などで共有されるアドレスもある。
メールサーバとメールクライアント
インターネットに接続されたネットワークには「メールサーバ」(mail server)と呼ばれるコンピュータが設置され、利用者からの要請により外部のネットワークに向けてメールを送信したり、外部から利用者に宛てて送られてきたメールを受信し、本人の使うコンピュータに送り届ける。利用者や他のサーバに対する窓口であり、郵便制度における郵便局のような役割を果たす。
メールサーバ内には利用者ごとに私書箱に相当する受信メールの保管領域(メールボックス)が用意され、外部から着信したメールを一時的に保管する。利用者が手元で操作するメールソフト(メールクライアント、メーラーなどと呼ばれる)は通信回線を介してメールサーバに問い合わせ、メールボックス内のメールを受信して画面に表示する。
Webメール
利用者の操作画面をWebアプリケーションとして実装し、Webブラウザからアクセスしてメールの作成や送信、受信、閲覧、添付ファイルのダウンロードなどをできるようにしたシステムを「Webメール」(webmail)という。
フリーメールサービスの多くは標準の操作画面をWebメールの形で提供しており、メールクライアントなどを導入・設定しなくてもWebブラウザのみでメールの送受信を行うことができるようになっている。企業などの組織で運用されるメールシステムでもWebメールを提供する場合があり、自宅や出先のコンピュータなどからアクセスできるようになっている。
メッセージの形式
電子メールには原則として文字(テキスト)データのみを記載することができる。特別な記法や書式を用いずに素の状態の文字データのみが記されたメールを「テキストメール」という。WebページのようにHTMLやCSSなどの言語を用いて書式や装飾、レイアウトなどの指定が埋め込まれたものは「HTMLメール」という。
また、画像や音声、動画、データファイル、プログラムファイルなどテキスト形式ではないデータ(バイナリデータ)を一定の手順でテキストデータに変換して文字メッセージと一緒に送ることができる。こうしたデータをメッセージ中に埋め込む方式の標準として「MIME」(Multipurpose Internet Mail Extension/マイム)が規定されており、これを利用してメールに埋め込んだファイルを「添付ファイル」(attachment file)という。
電子メールの普及と応用
電子メールはWeb(WWW)と共にインターネットの主要な応用サービスとして広く普及し、情報機器間でメッセージを伝達する社会インフラとして機能している。現在ではパソコンやスマートフォン、タブレット端末などのオペレーティングシステム(OS)の多くは標準でメールクライアントを内蔵しており、誰でもすぐに利用できるようになっている。
電子メールシステムでは一通のメールを複数の宛先へ同時に送信する同報送信・一斉配信も容易なため、グループ共通のアドレスを用意してメンバー間の連絡や議論などに用いる「メーリングリスト」(mailing list)や、発行者が購読者に定期的にメールで情報を届ける「メールマガジン」(mail magazine)などの応用システムも活発に利用されている。
一方、広告メールを多数のメールアドレスに宛て無差別に送信する「スパムメール」(spam mail)や、添付ファイルの仕組みをコンピュータウイルスの感染経路に悪用する「ウイルスメール」(virus mail)、送信元を偽って受信者を騙し秘密の情報を詐取する「フィッシング」(phishing)など、電子メールを悪用した迷惑行為や犯罪なども起きており、社会問題ともなっている。
文字コード 【キャラクターコード】 ⭐⭐⭐
文字や記号をコンピュータ上でデータとして扱うために、一文字ずつ固有の識別番号を与えて区別できるようにした符号のこと。
コンピュータはすべての情報を「0」と「1」のを組み合わせたデジタルデータとして取り扱う。数値は2進数を用いることで容易に表現できるが、文字は字形そのものを画像や図形としてデータ化したものはデータ量が多く、これをそのまま繰り返し並べて文字データとすることは無駄が大きい。このため、各文字に短い識別番号(正確には0と1の並び:ビット列)を与えて数字の列として文字列を表現するようになった。この数字と文字の対応関係を定めた規約が文字コードである。
最も普及しているASCII文字コードは英数字や制御文字、記号などを収録した7ビット(7桁のビット列、十進数では0~127)のコード体系であり、例えばアルファベットの大文字の「A」は65番(ビット列で1000001)、小文字の「z」は122番(同1111010)などと定められている。あるデータ列がASCII文字列であることが分かっていれば、番号との対応関係を元に文字の並びを知ることができる。
文字集合と符号化方式
文字コードを定義するには、どの言語を対象にどの文字を収録するかを決めなければならず、まず収録する文字(の字形)を特定して列挙した文字集合(文字セット)を定める。その際、番号などは与えずにただ収録する文字群を定義したものをレパートリ、各文字に一意の番号を与えたものを符号化文字集合(CCS:Coded Character Set)という。
欧米圏の8ビット文字コード規格のように、符号化文字集合をそのまま文字コードとして利用することも多いが、漢字圏など収録文字数の多い言語では各文字に割り当てられた符号をどのようなビット列で表現するかについて、いくつかの異なる方式を定めている場合があり、これを文字符号化方式(CES:Character Encoding Scheme/文字エンコーディング)という。
例えば、代表的な日本語の符号化文字集合の一つであるJIS X 0208規格に定められた符号をそのまま文字コードとしたものを区点コードというが、この文字集合を対象とする符号化方式としてJISコードやShift JISコード、日本語EUC(EUC-JP)などが定められており、同じ文字でも符号化方式によってそれぞれ異なったビット列で表現される。世界中の文字を収録したUnicodeでも、同じ文字集合に対してUTF-8、UTF-16、UTF-32など複数の異なる符号化方式が定義されている。
文字化け ⭐⭐
コンピュータで文字が正しく表示・印刷されず、本来とは異なる不規則で意味不明な記号や文字の連なりとして現れること。
テキスト(文字)形式のデータを読み込んで表示しているのに、本来そのデータが表していた文字が表示されずに、まったく異なる文字や記号、制御文字、空白などが連なった意味をなさない文字に変質してしまっている現象を指す。
主な原因として、データ自体の破損(一部の欠落や変質)、文字コードの相違(元の文字コードとは異なるコードとして解釈しようとしている)、フォント環境の違い(その言語に対応するフォントが存在しない)などが挙げられる。
ちなみに、実行可能形式のプログラムや、画像や動画、音声を記録したデータなど、バイナリ形式のデータを何らかの理由でテキストとして表示しようとした場合にも、不規則な文字や記号の連なりが出現するが、元がテキスト形式ではないため文字化けとは呼ばない。
文字化けは主に2バイト以上の文字コードを用いる日中韓などの言語圏で起きるため、欧米圏ではあまり知られておらず、日本人がこの現象を欧米人に説明する際に用いていた “Mojibake” という単語がそのまま文字化けを表す専門用語として流通している。
文字コードの違い
ある文字コードや文字エンコーディングで表現された文字データを、別の文字コードとして解釈・表示しようとしてしまい、まったく異なる文字列に変わってしまう場合である。
そのデータがどのような文字コードで表現されているのか分からず、自動認識にも失敗して別のコードを選んでしまった場合や、そもそもソフトウェア側がその文字コードに最初から対応していない場合などに起きる。
日本語の電子メールやWebページなどでは、同じ言語でも異なる文字コードが併存しており、どれが使われているのか明確に指定がない場合にはこの種の文字化けが発生する。また、欧米圏のソフトウェアでは日本語などマルチバイト文字に対応していない場合があり、日本語などを入力すると化けて表示されることがある。
フォントの違い
文字コードが正しく認識できたとしても対応する文字を表示するためのフォントがシステム内に存在しない場合には、やはり正しく表示することはできない。日本語のWebページを日本語フォントの入っていない英語版のシステムで無理やり表示しようとした場合などに起きる。
また、同じ文字コードでも機種やOSによっては一部の領域に独自に拡張した文字群を当てはめている場合があり、このような機種依存文字を別のシステムで表示しようとした場合にも本来とは異なる表示になる。
ASCII 【American Standard Code for Information Interchange】 ⭐⭐⭐
アルファベットや数字、記号などを収録した文字コードの一つ。最も基本的な文字コードとして世界的に普及しており、他の多くの文字コードがASCIIの拡張になるよう実装されている。文字を7ビットの値(0~127)で表し、128文字が収録されている。
主に英語で必要な文字を収録したコード規格で、0番から127番までの番号(正確には2進数で0000000から1111111まで)について、各番号がどの文字を意味するかという対応関係を定めている。例えば英大文字の「A」はASCIIコードでは65番(16進数で41、2進数で1000001)で表される。
収録されているのはA~Z、a~zのラテンアルファベット(ローマ字)、0~9のアラビア数字、約物(引用符や括弧、疑問符、感嘆符、カンマ、ピリオドなど)、記号(数学記号やドルマーク、アットマークなど)、空白文字、制御文字(改行文字やタブ文字、古い通信制御文字など)などである。
1963年にASA(アメリカ規格協会、現在のANSI)が定めた規格で、1967年に国際標準化機構(ISO)がほぼ同じ内容をISO/IEC 646として標準化した。1970年代以降ほとんどのコンピュータやソフトウェアが標準の文字コードの一つとして対応しており、英文の文字情報の記述やコンピュータ言語の表記などに用いられている。一般的なキーボードにはASCII文字に対応するキーが配されている。
8ビット目を利用した拡張規格
ASCIIでは1文字を7ビットで表すが、現代のコンピュータのほとんどはデータの基本的な管理単位が1バイト(8ビット)であるため、実際には1文字を8ビットで表している。
残りの1ビットはもともとデータ伝送時の誤り検出符号(パリティビット)などとして用いられてきたが、電子回路や通信システムの信頼性向上などを受け、この1ビットを活用してASCIIを拡張する試みが行われるようになった。
ASCIIを拡張したコード体系では、0から127まではASCIIと同じで、ASCIIに規定の無い128~255の領域に独自の文字を割り当てている。例えば、日本国内で用いられたJIS X 0201では、この領域にカタカナ(いわゆる半角カナ)や句読点(。、)、鉤括弧(「」)を配置して限定的ながら日本語を使えるようにしている。
後にASCII拡張についても標準化の動きが起こり、8ビットコードや複数バイトコードの扱い、各国の拡張コードの切り替え方式などを定めたISO/IEC 2022や、これに基づいて具体的な8ビットの文字コードを規定したISO/IEC 8859などの規格が策定された。追加の文字を含めても1バイトで十分なヨーロッパ各国の言語などではISO/IEC 8859が標準的な文字コードとして普及している。
<$Fig:ascii|center|false>Unicode 【ISO/IEC 10646】 ⭐⭐⭐
文字コードの国際的な標準規格の一つで、世界中の様々な言語の文字を収録して通し番号を割り当て、同じコード体系のもとで使用できるようにしたもの。
コンピュータで文字データを扱うには、文字や記号の一つ一つに対応する番号(符号)を与え、文字の列を番号の列に変換する必要がある。文字と番号の対応関係を定めたルールを「文字コード」(character code)と呼び、従来は国や言語圏ごとに自分たちの使う文字のコード体系を定めて使用していた。
Unicodeは世界中の様々な言語の文字を集め、すべての文字や記号に重複しないようそれぞれ固有の番号を与えた文字コード規格である。世界の主な言語のほとんどの文字を収録しており、通貨記号や約物など文字と共に使われる記号や絵文字なども登録されている。
米大手IT企業を中心とする業界団体「Unicodeコンソーシアム」(Unicode Consortium)が仕様を策定・改訂しており、ほぼ同じものがISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の合同委員会によって「ISO/IEC 10646」として国際標準となっている。ISO/IEC側ではUnicodeに相当する文字集合の名称を「UCS」(Universal Coded Character Set)としている。
コードポイント
Unicodeでは、登録された文字のそれぞれについて「コードポイント」(code point:符号点、符号位置と訳される)と呼ばれる一意の通し番号を与えている。例えば、日本語のカタカナの「ア」には12450番が割り当てられており、説明文などでは16進数を用いて「U+30A2」のように表記する。
世界中のあらゆる言語の文字を収録するという目的のため、コードポイントは最長で21ビットの値(上限は1114111番、U+10FFFF)まで用意されている。初期の規格で世界の既存の文字コードに規定された文字の多くが収録されたが、独自の文字コードを持たなかった言語や、絵文字、古代文字、新設された通貨記号などを中心に、現在も毎年のように新しい文字が追加されている。
現在はコードポイント空間全体の約12%にあたる約15万文字が割り当て済みで、規格上は文字を規定しない「私用面」(企業などが独自に使用してよい)が約13万文字(約12%)分予約済みである。残りの約75%が未割り当てとなっている。
基本多言語面と追加多言語面
コードポイントの範囲のうち、16ビット(2バイト)の値で表現できる U+0000 から U+FFFF は「基本多言語面」(BMP:Basic Multilingual Plane)と呼ばれる。ラテンアルファベットやキリル文字、ギリシャ文字、ひらがな・カタカナ、ハングル、基本的な漢字など、主要な言語の文字のほとんどをカバーしている。
当初の規格はBMPのみの予定だったが、追加収録を希望する文字のすべてを登録しきれないことが明らかになり、後から U+10000~U+10FFFF の拡張領域が追加された。このうち、U+10000~U+1FFFF の範囲を「追加多言語面」(SMP:Supplementary Multilingual Plane/補助多言語面)と呼び、古代文字や絵文字などが収録されている。
日本語文字の扱い
日本語の文字は原則として日本語文字コードのJIS規格から収録されている。当初は「JIS X 0201」(いわゆる半角文字)、「JIS X 0208」(JIS基本漢字)、「JIS X 0212」(JIS補助漢字)に定められた文字を収録したが、後に「JIS X 0213」(JIS2000/JIS2004)のすべての漢字が収録された。
なお、JIS X 0213の一部の漢字についてはBMPには収まりきらず、東アジア各国・地域の追加漢字を収録する U+20000~U+2FFFF の領域(SIP:Supplementary Ideographic Plane/追加漢字面)に収録されている。
これら元になった規格の通り、半角カナも全角とは別に「HALFWIDTH KATAKANA LETTER A」(半角カタカナのア)等の名称で、全角英数字も「FULLWIDTH LATIN CAPITAL LETTER A」(全角ラテンアルファベット大文字A)等の名称でそれぞれ収録されている。
UTF (Unicode Transformation Format/UCS Transformation Format)
様々な事情から、文字をデータとして実際に記録・伝送する際には、文字集合で定められたコードポイントをそのままビット列で表すのではなく、一定の手順で特定の形式に変換する。この変換手順を「符号化方式」(文字エンコーディング)という。
Unicodeにも標準の符号化方式がいくつか定められており、用途や処理の都合に応じて使い分ける。全体を総称して「UTF」と呼び、Unicodeでは “Unicode Transformation Format” の略、ISO/IEC 10646では “UCS Transformation Format” の略とされる。
UTFには「UTF-8」「UTF-16」「UTF-32」の3種類があり(UTF-7もあるがIETF独自拡張)、同じUnicode文字列でも符号化が違えばまったく異なるバイト列として表現される。文字データの保存・交換用として最も一般的に使われるのはUTF-8で、単にUnicodeといえばUTF-8でエンコードされたデータを意味することが多い。
UnicodeとISO/IEC 10646
ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の合同委員会(JTC 1)は、1980年代後半に国際的な文字コード標準の策定を目指し、仕様の検討を始めた。当初の構想は4バイトのコードを用いて既存の各国の文字コードをほとんどそのまま収録・統合するというものだった。
1991年に民間の企業連合であるUnicodeコンソーシアムが設立され、Unicode規格が発表されると、公的な標準と業界標準の分裂を避けるためISO/IECとの間で一本化の調整が行われることになった。議論の末、Unicodeの仕様をほぼそのままISO/IEC標準として採用することになった。
同年に発行されたUnicode 1.0規格をほぼそのまま取り込む形で1993年にISO/IEC 10646-1規格の初版が標準化され、以降はUnicode側と仕様を擦り合わせながら改訂されていった。両者は用語法など細かな点に違いがあるものの、収録文字など仕様の実質は同一となっている。
JISコード 【ISO-2022-JP】 ⭐⭐
国際的な文字コード規格の一つであるISO/IEC 2022の枠組みに沿って定義された日本語の文字コードの一つ。文字コードを7ビット単位で符号化する方式を定めている。
文字コード規格で各文字に付けられた番号を一定の規則で符号化する方式を定めたもので、「エスケープシーケンス」(escape sequence)という特殊な制御文字を挿入することにより複数の文字集合(いわゆる半角文字と全角文字など)の切り替えを行う。同じコードでも直前のエスケープシーケンス次第で別の文字を指し示すことがあるため、文字列は先頭から順に読み込まなければならないという制約がある。
ASCII文字コードで定義された制御文字やラテン文字(いわゆる半角英数字・記号)に加え、JIS X 0208で定義された日本語文字(ひらがな、カタカナ、漢字)やギリシャ文字、キリル文字、全角記号などを記述できる。いわゆる半角カタカナは含まれていない。
最初の仕様は1993年にRFC 1468として標準化され、1997年にはJIS X 0208の改訂版に収録され国内の公的な標準規格となった。その後、JIS X 0212で定義された文字を扱えるようにしたISO-2022-JP-1(RFC 2237)などいくつかのバリエーションが策定された。
Unicodeの普及以前に、Shift JISコード、日本語EUCコード(EUC-JP)と並んで古くからよく用いられてきた有力な日本語文字コードの一つである。特に、1990年代後半のインターネットの一般への普及の初期に、8ビット単位の文字コードが欧米で開発された電子メールソフトウェアなどと相性が悪かった(7ビットコードしか想定していないものが多かった)ことなどから、電子メールで日本語を扱う際の事実上の標準として広まった。
EUC 【End-User Computing】 ⭐
企業などで情報システムを利用して現場で業務を行う従業員や部門(エンドユーザー、ユーザー部門)が、自らシステムやソフトウェアの開発・構築や運用・管理に携わること。
初期のEUC
1970年代後半にこの用語が使われだした頃のコンピュータは操作に専門的な技術を要する大型コンピュータで、業務部門の利用者は電算部門の専門の技術者やオペレータに端末の操作やデータの入出力の依頼をしてシステムを利用していた。
当時のEUCのコンセプトは、コンピュータに扱いやすい表示・操作システムを実装し、データ処理を必要とする利用者自身が端末を操作して様々な処理を実行するというもので、経営者や上級管理職向けのDSS(意思決定支援システム)などの形で結実した。
現在のEUC
1990年代後半頃になるとオフィスで一人一台パソコンが与えられ、従業員が自分で操作するのが次第に当たり前になっていき、通常のシステムの使用に関しては技術部門の仲介は不要になった。当初の意味でのEUCは浸透したと言える。
この頃からEUCの指す意味は徐々に変容していき、情報部門の用意したソフトウェアやパッケージ製品をそのまま利用するのに留まらず、業務に必要な個別のアプリケーションなどを利用者が自ら開発・運用することを指すようになっていった。
業務に必要なITシステムをゼロから構築することという極端な事例は少なく、パッケージソフトのマクロ機能(Excelマクロ等)やスクリプト機能(VBA等)などを利用して簡易な自動処理プログラムを開発したり、最新のIT機器を部署内で独自に導入して既存システムに接続するといった事例が多い。近年では既存システムの定型的・反復的な作業を自動化するRPA(Robotics Process Automation)が注目されている。
この意味でのEUCが無秩序に行われるとIT部門や管理部門の統制が及ばず、思わぬトラブルや多重投資などの問題を引き起こす(シャドーIT問題)ことがあるため、ガイドラインを定めるなど一定のルールのもとで実施する必要がある。
Shift JIS 【シフトJIS】 ⭐⭐
コンピュータで日本語を含む文字データを扱うために用いられる文字コード標準の一つ。Windowsなどが標準の日本語文字コードとして採用したことから広く普及した。
コンピュータで文字データを扱うには、文字や記号の一つ一つに対応する番号(符号)を与え、文字の列を番号の列に変換する必要がある。文字と番号の対応関係を定めた仕様を「符号化文字集合」、番号を具体的なビット列として表す変換ルールを「文字エンコーディング」という。
Shift JISは「JIS X 0201」や「JIS X 0208」などの標準規格で定められた符号化文字集合を対象とする文字エンコーディング仕様の一つで、JIS X 0201の半角英数字や制御文字、半角カタカナを1バイトで、JIS X 0208の全角文字を2バイトで表すことができる。
主な特徴
JIS漢字コードを対象としたエンコーディング方式には、いわゆる「JISコード」の通称で知られる「ISO-2022-JP」や、UNIX系OS向けに策定された「EUC-JP」(日本語EUC)もある。これらが連続したコード領域で文字を表すのに対し、Shift JISでは文字集合をいくつかに分割し、それぞれ異なる離れた領域へ移動(shift)させている。
これは、2バイト表現の1バイト目(先頭バイト)の値として、既存のいわゆる半角文字のコード領域、すなわち、ASCIIコード由来の英数字・記号文字・制御文字やJIS X 0201で追加された記号・半角カナ文字などの使用している値が出現するのを避けるためである。
ISO-2022-JPなどは1バイト目に8ビット文字コードと共通する値を使用しているため、どの文字コードの文字であるかをシステムに知らせるためにコード切り替えの印(エスケープシーケンス)をその都度挿入しなければならない。
一方、Shift JISは1バイト目に8ビット文字と重ならないようコードを配置しているため、1バイト目を読み込んだ時点ですぐにShift JISの文字であると判定でき、ASCII文字と漢字などが混在する文字列でもエスケープシーケンスを付加しなくてよいという利点がある。
ただし、2バイト目にASCII領域のコードが現れることは避けられないため、文字列データ中の任意の位置のバイトが半角文字なのかShift JIS文字の2バイト目なのかを他の手掛かりを用いずに知ることはできない。
また、2バイト目に16進数「5C」(92番、欧米ではバックスラッシュ、日本では円記号)が現れる文字があり、バックスラッシュや円記号にエスケープ文字などの特別な意味を与えているシステム(特に、日本語コードを考慮しない欧米製のソフトウェアなど)でうまく動作しないことがある。
歴史
Shift JISは1982年に日米のコンピュータ業界数社が共同で考案したとされ、米マイクロソフト(Microsoft)社が自社のパソコン向けオペレーティングシステム(OS)製品の「MS-DOS」や「Windows」に「CP932」(コードページ932)あるいは「MS漢字コード」として実装したことで広く普及した。
メーカー独自仕様だったことから長らく公的な規格とはなっていなかったが、1997年の「JIS X 0208」改訂版の附属書として仕様が掲載された。その後、2000年の「JIS X 0213」で「Shift_JISX0213」の名称で記載され、2004年のJIS X 0213改訂版では「Shift_JIS-2004」に改名されている。正式には「Shift_JIS」と間にアンダーバーを挟んで表記する。
JIS 【Japanese Industrial Standards】
産業標準化法に基づいて、産業分野の技術仕様などについて定められた日本の国家標準。日本産業標準調査会での審議、答申を経て、各分野の主務大臣により制定される。
各規格はAからZの部門記号により分類され、規格番号により識別される。これを「JIS X 0201」のように表記する。規模の大きな規格は部(part)に分割され、「JIS X 8341-3」のようにハイフン(-)に続いて枝番号を示して識別する。規格は制定後に改訂されることがあり、どの年度の版なのかを示すには「JIS X 0208:1997」のようにコロン(:)に続けて制定年を表記する。
IT関連の規格はX部門(情報処理)やQ部門(管理システム)に多く存在する。1987年にX部門が新設される前はC部門(電子機器及び電子機械)に分類されていた。
JISC (日本産業標準調査会/日本工業標準調査会)
工業製品などに関する日本の国家規格を検討する標準化機関をJISC(Japanese Industrial Standards Committee)という。産業標準化法に基いて経済産業省に設置された審議会で、標準規格案の調査、審議を行い、主務大臣に答申する。
JISに含まれる各規格分野を所管する主務大臣(多くは経産大臣)はJISCからの答申、建議を受けて規格を制定する。2019年までは「日本工業標準調査会」という名称だったが、制度改定で「日本産業標準調査会」に改称した。
ピクセル 【画素】 ⭐⭐⭐
デジタル画像や画面などを構成する最小単位である、色のついた微細な点のこと。また、その数を表す単位。単位を表す場合は “px” と略記されることもある。
コンピュータは画像をデジタルデータとして扱うため、固有の色情報を持つ点が縦横に規則正しく並んだ集合として表現する。この点のことをピクセルと呼び、それ以上小さな単位に分割することができない最小の要素となっている。
色深度 (color depth)
一つの画素にどのような色情報を持たせることができるかは画像形式やソフトウェア、表示・印刷媒体によって異なる。一画素を何ビットの色情報で表現するかを「色深度」(color depth)と呼び、「bpp」(bits per pixel:ビット毎ピクセル)という単位で表す。
最も単純で情報量が少ないのは各画素が1ビットの色情報を持つ方式(1bpp)で、各画素は2種類の色(ビットの0と1にそれぞれ対応)のいずれかとなる。通常はこれを白と黒に対応付け、白黒画像(2値画像、モノクロ2値)として扱う。
様々な色を扱う場合は色深度を大きく取り、8ビット(256色)や16ビット(65,536色)、24ビット(約1677万色)などが用いられる。24bppでは光の三原色(RGB:赤緑青)の各色を8ビット(256段階)で表すことができ、人間の目で識別できるほとんどの色を表現できるとされるため、「フルカラー」「トゥルーカラー」などと呼ばれる。
物理媒体におけるピクセルとドット
ディスプレイ装置などによる画面表示やプリンタによる印刷面も、色のついた微細な点を縦横に規則正しく並べた構造となっており、これもピクセルと呼ぶ。物理的な単位として「ドット」(dot)を用いる場合もある。
特に、プリンタではデジタル画像における一つのピクセルを複数の微小なインク滴やトナーの集合で表現する場合があり、ピクセルを構成する物理的な最小単位としてドットを用いることがある(ドットをピクセルと同義とする場合もある)。
物理的な媒体では表示・印刷面におけるピクセルの細かさが機器や機種によって異なり、幅1インチあたりに存在するピクセルの数である「ppi」(pixel per inch:ピクセル毎インチ)や隣り合うピクセルの中心間の距離である「画素ピッチ」(pixel pitch)などの単位で表す。
サブピクセル (subpixel)
物理媒体上では画素の色を原色の組み合わせで表現するため、ディスプレイなどの発光体では赤・緑・青の光の三原色(RGB)に対応する発光素子を、印刷物などの反射体ではシアン・マゼンタ・イエローの色の三原色(CMY)に対応するインク滴などを隣り合わせて一つの画素を表現する。
人間の目には三色が組み合わさって一つの色に見えるが、拡大すると各画素ごとに三色が規則正しく並んでいる様子が分かる。画素をこれらの三色に分解した構成単位を「サブピクセル」(subpixel:副画素)と呼ぶことがある。
ソフトウェアや機器によっては画像の表現をより精細にするため、サブピクセル単位で表示や印刷を制御する「サブピクセルレンダリング」(subpixel rendering)が行われる場合もある。
解像度 【レゾリューション】 ⭐⭐⭐
機器などの性能の尺度の一つで、対象をどこまで細かく観測あるいは描写できるかを表すもの。ITの分野では、画像や画面、紙面などを構成する画素(ピクセル/ドット)の密度を指すことが多い。
コンピュータは画像を色の付いた微細な点あるいは格子を縦横に規則正しく敷き詰めた集合として取り扱う。この点の細かさ、すなわち、物理的な単位長さあたりの点の数(画素密度)のことを一般に解像度という。
解像度が高いほど点は微細になり、より精細できめの細かい表現が可能となるが、データ量は点の数に比例して増大し、保存や伝送に大きな容量を必要とする。解像度が低くなると次第に個々の点や格子が視認できるようになり、モザイク状のぼやけた表現となる。
ディスプレイやプリンタなどの出力装置の場合には、画面に表示する像や、紙面へ印刷する像の微細さを表す。イメージスキャナやカメラなど画像・映像の入力装置の場合には、取り込んだ光学的な像を画素に分解する細かさ(分解能)を表す。
解像度の単位
単位は一般に幅1インチ(約2.54cm)あたりに並ぶ点の個数である「ピクセル毎インチ」(ppi:pixel per inch)あるいは「ドット毎インチ」(dpi:dot per inch)が用いられる。例えば、100ppiなら1インチを100の点に分解して扱うことを意味し、一つの画素は直径0.254mmの円か幅0.254mmの格子となる。
ppiとdpiはコンピュータ上での画像データの画素と装置の取り扱う微細な点が一対一に対応する場合には同一だが、装置の原理によっては複数のドットの集合によって一つのピクセルを表現する場合もあり、そのような機器では後者の方が数倍から十数倍大きくなる。
ディスプレイの画面解像度
ディスプレイ装置では本来の解像度の意味である画素密度(ppi)の他に、慣用的に画面の構成画素数(総画素数)のことを解像度ということがある。横方向の画素数を縦方向の画素数をかけ合わせたもので、1920×1080といったように記述する。
同じ総画素数の機種同士でも、画面の物理的なサイズが異なれば画素の大きさも異なるため、本来の意味での解像度(画素密度)は異なる。歴史的な経緯から、よく使われる画素数には通称がついており、例えば640×480は「VGA」、1024×768は「XGA」と呼ばれる。
JPEG 【Joint Photographic Experts Group】 ⭐⭐
静止画像のデータ圧縮形式の一つ。フルカラーの画像を多少の劣化を伴いながら高い圧縮率で符号化できるのが特徴で、写真など自然画像の記録に向いている。
画像の一部の不可逆的な変化や画質の劣化、情報の欠損を許容する代わりに極めて小さなデータに圧縮することができる「非可逆圧縮」(lossy compression)方式を採用しているのが大きな特徴で、圧縮前の状態に完全に復元することはできない。ファイル名の標準の拡張子は「.jpg」あるいは「.jpeg」である。
非可逆圧縮では画質の劣化の度合いが大きくなるほど圧縮率を高められるため、保存時にどの程度の画質とするかを係数の形で利用者が指定することができる。人間の目にはほとんど見分けがつかない画質でも元のデータの数分の一程度には圧縮することができ、最も低い画質では数十分の一から百分の一以下になることもある。
圧縮方式の特性やノイズの発生などから、図やグラフ、イラストなど同じ色が連続するのっぺりした質感の画像には向いておらず、写真や絵画など画素の色味が細かく変化する画像の保存に適している。このため、インターネットなどでは写真などの画像にはJPEGを使い、図表やアイコン、イラストなどの画像にはGIFやPNGなどで保存するなど、特徴の異なる画像形式を使い分けることが多い。
ベースラインとプログレッシブ
JPEGでは画像を8×8ピクセルの正方形の領域(ブロック)に分け、ブロックごとに色情報を記録していく。通常のデータ形式では左上のブロックから右下に向かって一段ずつ記録され、表示時には上から順番に画像が表示される。この方式を「ベースラインJPEG」という。
一方、各ブロックの情報を細かく分割し、何回かに分けて記録する方式も規定されており「プログレッシブJPEG」という。表示時にはまず全体がぼやけた画像で表示され、読み込みが進むにつれて次第に鮮明になっていく。低速回線で大きな画像を表示する際に素早く全体像が分かるため、Webサイトなどで用いられる。
ロスレスJPEG (Lossless JPEG/JPEG-LS)
JPEGでは元の状態に完全に復元できる「可逆圧縮」(lossless compression/ロスレス圧縮)を行う符号化方式も拡張仕様として追加されている。圧縮率は通常の非可逆圧縮を行う方式よりも悪いが、圧縮前の完全な画像を取り出すことができる。
1993年に追加された「Lossless JPEG」と1999年に追加された「JPEG-LS」の二方式があり、符号化方式やデータ形式が異なっている。後者の方が圧縮率が高く、復号後データのゆがみをパラメータで指定された誤差の範囲内に収めることができる「準可逆圧縮」(near-lossless compression/ニアロスレス圧縮)を行うこともできる。
可逆圧縮を行う画像形式としてはPNGなどが一般的であまり馴染みがないが、医用画像の保管システムなどに採用例がある。JPEGの後継規格のJPEG 2000やJPEG XR(HD Photo/JXR)には当初から可逆圧縮モードが用意されている。
標準規格
JPEG規格はISO/IEC JTC 1(ISOとIECの情報分野の合同委員会)とITU-Tの合同作業部会であるJoint Photographic Experts Groupが1992年に策定したもので、この部会の名称がそのまま画像形式の名称として用いられている。
策定された規格はITU-TではT.81として1992年に、ISO/IECではISO/IEC 10918として1994年に、ぞれぞれ標準化された。日本でも両規格を参照して同内容のものがJIS X 4301として1995年に国内規格化されている。
ファイル形式
JPEG規格では当初は画像データの圧縮符号化方式のみを定め、標準のファイル形式(コンテナフォーマット)を規定しなかったため、「JFIF」(JPEG File Interchange Format)と呼ばれる形式が広く普及し事実上の標準となった。
JPEG画像が保存されているファイル(拡張子が「.jpg」のファイル)は一般的にはJFIF形式か、あるいはその拡張形式のExif形式(カメラの撮影時などに使用)であることが多い。JFIF形式は2011年にITU-Tによって、2013年にISO/IECによってJPEG規格の一部として標準化されている。
ビットマップ画像 【ラスター画像】 ⭐⭐⭐
画像データの表現形式の一つで、画像を色のついた点(画素/ピクセル)が縦横に規則正しく並んだ矩形として表現したもの。画面表示や印刷の際には最終的にこの形式で出力する必要がある。
ディスプレイ画面への表示やプリンタによる印刷はビットマップ形式で行われるため、コンピュータでも基本的には画像をビットマップ画像として表現・保存・処理することが多い。ファイル形式としては無圧縮のBMP(Windows Bitmap)、可逆圧縮のGIFやPNG、不可逆圧縮のJPEGなどが有名である。
任意の画像を表現することができ、特に写真など図形の組み合わせでは表現できない画像の保存に適しているが、内容についての幾何学的な情報などは持たないため、拡大や縮小、変形、合成などの処理を行うと内容が不可逆に変質し、画質の劣化、不鮮明化の原因となる。
ビットマップ画像は縦横それぞれの画素数が決まっており、その積が画像を構成する総画素数となる。例えば横1024ピクセル×縦768ピクセルの画像ならば78万6432画素の色情報が並んだデータとして表現される。画像形式によっては解像度(単位長さあたりに並ぶ画素数)の情報を持つものがあり、表示や印刷の際の画像の実際の大きさに反映される。
色情報と色深度
個々の画素が持つ色情報の大きさを色深度(color depth)と呼び、色情報のビット数(bpp:bits per pixel)で表す。例えば、色深度が1bppの場合は各画素は0と1の二値の色情報を持ち、通常は0を黒、1を白に対応付けた白黒画像のことを意味する。
色情報はRGB(Red-Green-Blue)形式など色自体の属性を直接表記したものと、色に番号をつけ、番号と実際の色情報(RGB値など)の対応関係を別のデータとして与えるインデックスカラー(indexed color)方式がある。16~32bppの場合は前者の方式(RGBの各値を5~8ビットずつ並べる)であることが多く、8bppの場合は後者の場合が多い。8bpp(256色)はインデックスカラー以外にもモノクロ256階調のグレースケール形式(白黒と254段階の灰色)にも用いられる。
また、色情報として透明色を設定したり、各画素ごとに透明度(アルファ値)を設定できる形式もあり、他の画像と重ね合わせたときに背後の色が透ける表現ができる。32bppの場合はRGB各8ビットに透明度8ビット(256段階)とすることが多い。
ベクター画像
一方、画像を図形を表す数値情報の集合として表現した形式はベクター画像(ベクトルグラフィックス)と呼ばれる。画像を点や線分、面などの図形の描画情報の組み合わせとして表したもので、画質を劣化させることなく自由に拡大・縮小や変形ができる利点がある。表示や印刷を行う際には最終的に特定の画素数のビットマップ画像に変換(ラスタライズ)される。
ペイントソフト 【ペインティングソフト】 ⭐⭐
グラフィックスソフトの一種で、紙やキャンバスにペンや絵筆で絵を描くように画像を描画できるソフトウェア。
マウスなどを使ってカーソルをペン先や筆先のように動かし、画面上に絵を描いていくことができる。タッチパネル操作の機種では指や専用のスタイラスペンで画面に直に触れて描くこともできる。できた画像はビットマップ画像として保存される。
筆先の質感やタッチを自由に選択できるほか、画像の一部あるいは全体にぼかしやモザイク、水面の波紋などの特殊効果をかけられるフィルター機能、画像の一部を切り抜いたり変形したりする編集機能、複数の画像を重ね合わせるレイヤー機能などを備えているものが多い。
近年では、アニメーション制作を支援する製品、マンガ原稿の制作を支援する製品、複数人で共同作業できる製品、ペンタブレットでの操作を重視した製品、ネットサービスとしてWebブラウザ上で操作する製品など、様々な特色ある製品が登場している。
描画機能よりも、写真など既存の画像にフィルターや色の調整などの編集を行うことに力点を置いたソフトもあり、「フォトレタッチソフト」(photo editting software)と呼ばれる。また、ペイントソフトとは異なり、点や曲線、領域の塗りつぶしなどを組み合わせて図形やイラストレーションを作成するソフトは「ドローソフト」という。
「ペイントソフト」「ドローソフト」といった呼称は和製英語で、英語ではペイントソフトを “raster graphics editor” (ラスター画像編集ソフト)、ドローソフトを “vector graphics editor” (ベクター画像編集ソフト)といったように編集対象の画像形式によって呼び分けることが多い。
ベクター画像 【ベクターデータ】 ⭐⭐⭐
画像データの表現形式の一つで、画像を図形を表す数値情報の集合として表現したもの。拡大・縮小・変形しても画質が劣化せず、サイズや解像度によらず同じ品質の出力結果を得ることができる。
画像を単純な図形の集合として表現する方式で、輪郭などを構成する点の位置や、それらを結ぶ直線や曲線を表す方程式のパラメータ、変形・回転など操作情報、線や面の色情報などの組み合わせとして記述する。“vector” の表記は「ベクター」「ベクタ」「ベクトル」の揺れがあるが、意味の違いはない。
一方、画像を最小単位の小さな点である画素(ピクセル)の集合として表し、各画素の色情報を端から順に縦横に規則正しく並べた形式の画像データは「ビットマップ画像」(bitmap image)あるいは「ラスター画像」(raster image)と呼ばれる。
コンピュータのディスプレイやプリンタなどの出力装置はビットマップ方式で画像を扱うため、ベクター画像はそのままでは表示・印刷することができない。表示する際には画像の縦横の画素数を決めて、その範囲の中で実際に各図形を描画してビットマップ画像を得る。この描画処理のことを「ラスタライズ」(rasterization)という。
ビットマップ形式はどのような画像でも同じように記録できるが、ベクター画像は原理的に写真のような像の表現には向かず、文字や図、イラスト、デザインなど図形の組み合わせで表現しやすい像の記録に向いている。実際、コンピュータで扱う文字の形状データを収録したフォントデータの多くはベクター画像で表現されたアウトラインフォント(outline font)である。
ベクター画像を作成・編集するソフトウェアもあり、米アドビ社の「Adobe Illustrator」(アドビ・イラストレーター)などが有名である。汎用のベクター画像記録用の画像ファイル形式もいくつかあり、Illustrator標準の「AI形式」(.aiファイル)や、Webページなどでベクター画像を扱えるXMLベースの「SVG」(Scalable Vector Graphics)形式などがよく知られる。
ドローソフト 【ドローイングソフト】 ⭐⭐
画像の描画や編集を行うソフトウェアの一種で、画像を図形を組み合わせとして構成するベクター形式のイラストやデザインを作成するためのもの。
画面上でマウス操作やペン操作、タッチ操作により位置を指定して図形を描画していくソフトで、点や直線、曲線、多角形、円などの図形、アウトラインフォントの文字などを配置していき、これらに描画色を設定したり、囲まれた領域を塗りつぶすなどの編集を行って画像を作成する。
作成された画像は構成要素の点の座標や曲線方程式のパラメータなどの集合として表されたベクター画像として記述・保存されるため、算術的な変換により容易に変形や拡大・縮小を行うことができる。そのような変形処理によって画質が劣化しないという特徴がある。
1988年に初版が発売された米アドビ(Adobe)社の「Adobe Illustrator」(アドビ・イラストレーター)が本格的なプロ向けのソフトウェアとして広く普及している。他に米コーレル(Corel)社の「CorelDRAW」や、日本ではジャストシステムの「花子」などが有名で、「Inkscape」などのフリーソフトウェアもある。
主にベクター形式の画像を扱うソフトウェアとしては「CAD」(Computer Aided Design)ソフトなどもあるが、こちらは工業製品や建築物の設計図面の作成のための機能が充実しており、主にイラストレーションやグラフィックスの作成、デザインのために用いられるドローソフトとは区別される。
「Microsoft Visio」のようにダイアグラムなどの作図に特化したソフトウェアも、機能的な重複は大きいが主目的が異なるため区別されることが多い。ワープロソフトなどDTPソフトの中にも、線分や多角形、円、吹き出しなどドローソフトに似た簡易な作図機能を有するものは多くあり、この機能を「ドローツール」などと呼ぶこともある。
一方、同じ画像編集ソフトでも、画像を微細な色の付いた点(画素/ピクセル)の集合として取り扱うものを「ペイントソフト」と呼ぶ。絵画のようなきめ細かい描写や、写真の編集、合成などを行うことができるが、拡大や縮小、変形を行うと画質が劣化する。ドローソフトとは必要な画像の種類に応じて使い分ける必要がある。
階調 【階調数】 ⭐⭐⭐
コンピュータが画像を扱う際に、色の濃さや明るさを何段階で表現することができるかを表す数。この数が大きいほど細かな色や明るさの違いを表現できるが、画素あたりのデータ量は増大する。
自然界では色は光の波長によって異なり、連続量の一種だが、コンピュータで画像を扱う際にはこれを離散量(有限桁の数値)に変換する必要がある。その際、ある色の最も明るい(濃い)状態と暗い(薄い)状態の間を何段階で識別・表現することができるかを表す値が階調である。
モノクロの階調
最も単純な階調は白黒画像(モノクロ2階調)であり、すべての画素が真っ白と真っ黒のいずれかで表現される。色は「0」(黒)と「1」(白)の2値で識別され、各画素につき1ビットで表現することができる。
一方、一般に「モノクロ画像」あるいは「グレースケール画像」と呼ばれるものは白と黒の中間に明るさ(濃さ)の異なる複数の灰色を表現することができるものを指すことが多い。よく用いられる256階調(各画素の情報量は8ビット)のモノクロ画像では、白、黒、254段階の灰色の計256色を表現できる。
カラーの階調
カラー画像の場合は色を複数の原色に分解し、各色の階調の組み合わせで表現できる色の数が決まる。コンピュータ上で画像データを扱う際には色を赤(Red:R)・緑(Green:G)、青(Blue:B)の「光の3原色」に分解し、それぞれを同じ階調で表現することが多い。
人間の目にとって自然の光景と区別がつかない表現は、この各色について256段階(8ビット)程度の階調が必要であると言われており、これを「フルカラー」(full color)あるいは「トゥルーカラー」(true color)という。256の3乗で1677万7216色を表現することができる。
通常の用途ではフルカラーで十分なことが多いが、赤外線暗視映像のように特定の色味しか現れない特殊な表現の場合は単色256階調では色の境界が階段状になってしまうなど表現力が不足する場合がある。そのような状況にも対応できるよう、業務用の機器などでは内部的に各色10ビット(1024階調)や12ビット(4096階調)で表現するものもある。
ハイレゾオーディオ 【ハイレゾ音源】
CD(コンパクトディスク)の規格を上回る音質の音声データや、その録音・再生機器のこと。音声データは「ハイレゾ音源」と呼ばれることもある。
CDのオーディオ規格(CD-DA)では、音声をサンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16ビットで記録すると定められており、これは、音圧を毎秒44,100回計測し、65,536段階の数値として表現することに相当する。
ハイレゾ音源はこのいずれかあるいは両方がより高い状態で音声を記録・再生できるようにしたもので、サンプリング周波数が高い場合はCDよりも高い音が記録・再生でき、量子化ビット数が高い場合はより繊細な音の違いを表現することができる。実際の製品では96kHz、24ビットといった仕様のものが多い。
業界団体のJEITAによる定義では、DAT(Digital Audio Tape)相当のサンプリング周波数48kHzについては除外され、これを超える周波数が求められる。また、日本オーディオ協会の定義では、これらの条件に加えて可逆圧縮形式(リニアPCM/FLAC/Apple Lossless等)またはDSD(Direct Stream Digital)形式による記録、マイクやアンプなど信号を扱う機器の特性についての規定が含まれる。
PCM 【Pulse Code Modulation】 ⭐⭐
音声などのアナログ信号をデジタルデータに変換する方式の一つ。信号の強度を一定周期で標本化(サンプリング)したもの。そのまま保存すれば非圧縮音声データとなる。
音波をマイクなどでアナログ電気信号に変換し、その強度をサンプリング周波数に従って一定周期で測定する。各測定値は定められた量子化ビット数の範囲で整数値として記録する。
例えば、CDの音声はサンプリング周波数44.1kHz(キロヘルツ)、量子化16ビットのPCM方式で記録される。これは毎秒44,100回信号を測定し、その強度を65,536(216)段階の値で表していることを意味する。
サンプリング周波数と量子化ビット数を高めるほど高品質のデータを得ることができるが、その分データ量は増大する。標本化定理により、サンプリング周波数の半分の周波数までの信号は再現可能とされており、これを「ナイキスト周波数」という。
音声の場合は人間の可聴音の上限が20kHz程度であることが知られており、40kHzを超えるサンプリング周波数を用いれば録音データからおおむね自然な音が再生できるようになると言われる。
通常のPCM方式は「リニアPCM」(LPCM:Linear PCM)とも呼ばれ、毎回の標本化で得られたデータを単純に順番に並べた形式だが、一つ前のデータとの差分を記録していく方式を「DPCM」(Differential PCM:差分PCM)という。
さらに、DPCMの各標本の量子化ビット数を直前の標本の変動幅に応じて適応的に変化させる方式を「ADPCM」(Adaptive Defferential PCM:適応的差分PCM)という。PCMとほぼ同じ品質を保ちながら符号化後のデータ量を削減できるため、実用上はこちらが用いられることも多い。
MP3 【MPEG Audio Layer-3】 ⭐
音声データを圧縮する方式およびファイル形式の一つで、動画圧縮方式のMPEG-1で音声を記録するために策定されたもの。最も普及している音声圧縮形式の一つである。
元のデータを一定の規則に従って改変し、人間の聴覚が感じ取りにくい部分のデータを間引くことによって高い圧縮率を得ており、元のデータが完全には保存されない非可逆圧縮(不可逆圧縮)形式である。標準のファイル拡張子は「.mp3」。
ビットレート(1秒あたりの情報の表現に費やすデータ量)は32kbps(キロバイト毎秒)から320kbpsまで選択でき、音質を下げればより少ない容量に圧縮できる。CDに記録されたリニアPCM形式の無圧縮音声データ(サンプリング周波数44.1kHz、量子化16ビット、2chステレオ、ビットレート1411.2kbps)を圧縮する場合、概ね128kbps(約1/11)~192kbps(約1/7)程度までならほとんどの人にとって音質の違いが気にならないと言われる。
MP3は音声データの圧縮符号化方式(コーデック)とファイルへの格納形式(コンテナフォーマット)の両方を規定しているが、コーデックのみを使用してWAV(RIFF)ファイルなど他のコンテナ形式に格納したり、動画ファイルの音声部分に使用することができる。MP3ファイル形式には音声についての情報を記録する「ID3タグ」というデータ形式が規定されており、曲名やアーティスト名などを記録することができる。
歴史
MP3は1993年にドイツの産学連携研究機関、フラウンホーファー研究機構の集積回路研究所(Fraunhofer IIS)が開発したもので、同研究所は圧縮方式に関して特許を取得した。対応ソフトウェアの開発には特許使用料の支払いが必要なため、これを嫌ってMP3に対応しないメーカーなどもあった。2017年に特許権の保護期間が終了したため、現在では誰でも自由に利用することができる。
MPEG-1ではMP3の他に「Audio Layer-1」(MP1)および「Audio Layer-2」(MP2)の音声形式が規定され、それぞれ異なる方式で圧縮を行うため互換性はない。MPEG-2ではこれらに加えて「AAC」(Adavanced Audio Coding)と呼ばれる新しい方式が追加され、いずれかを選択して使用する形になった。MPEG-4では音声形式はAACに一本化されている。
フレーム ⭐⭐
骨組み(を作る)、枠、縁、額縁、台、骨格、枠組み、背景、構造物、構成、組み立てる、枠にはめる、立案する、でっち上げる、などの意味を持つ英単語。IT分野では動画の各瞬間の画像(コマ)や、通信回線でやり取りするデータの送受信単位などを指すことが多い。
一般の外来語としては、絵画や写真などを入れる額縁や、画像の周囲を囲む飾り枠、機械などの骨組み、物事の理解の枠組みや共通の考え方などを意味することが多い。IT関連では主に以下の意味で用いられる。
動画のフレーム
動画を構成する一枚一枚の静止画(コマ)のことをフレームという。コンピュータで動画を表示する際は、数十分の1秒といった極めて短い一定の時間間隔で次々に静止画像を切り替えて表示することで人間の目に動いているように見せている。
この一枚ずつの静止画像をフレームという。動画の滑らかさの指標として、1秒間に書き換えるフレームの数を表す「fps」(frames per second:フレーム毎秒)という単位がよく用いられる。例えば、60fpsの動画といった場合は毎秒60枚の画像を切り替えて表示している。
データの送受信単位としてのフレーム
イーサネット(Ethernet)などいくつかの通信方式や通信プロトコル(通信規約)では、データの送受信単位をフレームと呼ぶ。送りたいデータを一定の大きさに分割し、先頭に宛先アドレスなどの制御情報を付加したもので、最大長や制御情報の形式は各規格ごとに定められている。
一般に、物理層における信号の送受信を一定のまとまりのデータ単位ごとの送受信に編成する「リンク層」あるいは「データリンク層」における送受信単位をフレームと呼ぶことが多い。有線LANの標準であるイーサネットの送受信単位は「MACフレーム」あるいは「イーサネットフレーム」と呼ばれる。
Webページ/HTMLのフレーム表示
Webページの表示手法の一つで、Webブラウザの表示領域を縦または横に複数の領域に分割して、それぞれに別のページを表示できるようにしたものをフレームという。HTMLではframeset要素(タグ)およびframe要素で定義する。
また、ページ内に矩形(箱型)の領域を設けて元のページから分離し、別のページの内容を埋め込んで表示する方式もあり、「インラインフレーム」(inline frame)という。広告の表示などに応用されており、HTMLではiframe要素で定義する。
フレームレート ⭐⭐⭐
動画像の表示の滑らかさを表す指標の一つで、動画が1秒あたり何枚の(静止)画像によって構成されるかを表す数。1秒あたりのコマ数。単位は「フレーム毎秒」(fps:frames per second)で、1fpsは動画が1秒あたり1枚の画像で構成されている(1秒あたり1回書き換えられる)ことを表す。
動画やゲームなど表示内容が時系列に変化する像をコンピュータで表示する場合、静止画像を高速に切り替えて表示することで動いているように見せている。動画像を構成する静止画像を「フレーム」(frame)と呼び、単位時間あたりのフレーム数が多ければ多いほど自然に近い滑らかな動画像となる。
動画データなどの属性としてフレームレートという場合は、その動画が毎秒何枚の画像を繋ぎあわせてできたものなのかを表している。人間の目に自然な動画として映るのは概ね30fps程度かそれ以上と言われており、これを下回るとカクカクとぎこちなく動く印象を与えるとされる。
コンピュータや映像機器などの処理能力についてフレームレートという場合は、動画を撮影、記録、圧縮、再生などする際に、1秒あたりに処理可能な画像の枚数や画面の書き換え回数の上限を表す。動画の処理能力が高いほどフレームレートも高くなり、より滑らかな動画を作成したり再生したりできる。
一方、ディスプレイ装置の画面書き換え頻度を「リフレッシュレート」(refresh rate)と呼び、1秒あたりの書き換え回数を「Hz」(ヘルツ)で表す。60Hzなら毎秒60回再描画される。動画データやゲームのフレームレートが高くても、表示側のリフレッシュレートが低ければその上限がフレームレートの上限となる。
MPEG 【Moving Picture Experts Group】 ⭐
動画・音声データの圧縮方式の標準規格を検討するため、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)が1988年に合同で設置した専門家委員会。また、同委員会の勧告した規格群の総称。動画・音声データの圧縮方式の標準として広く普及している。
正式な組織名は「ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11」。ISOとIECが情報技術分野の標準化を合同で行うために設けた第一合同技術委員会(JTC 1)の副委員会(SC:subcommittee)29番、作業部会(WG:Working Group)11番という意味である。
同じSC 29には静止画像の圧縮符号化方式を扱う「WG 1」があり、「JPEG」(Joint Photographic Experts Group)の通称でよく知られている。ちなみに、SC 29の国際事務局は日本の工業標準調査会(JISC)が務めている。
これまでに、動画データ圧縮方式の「MPEG-1」や「MPEG-2」「MPEG-4」、付随する音声圧縮規格の「MP3」(MPEG Audio Layer-3)などの標準を策定してきた。メディアデータの圧縮符号化方式だけでなく、動画を扱うためのファイル形式や送信データ形式、メタデータの記述方式などの標準も策定している。
国際電気通信連合(ITU-T)とも連携し、「MPEG-2」と「H.262」、「MPEG-4/AVC」と「H.264」、「HEVC」と「H.265」のように合同で同じ仕様を策定し、それぞれが規格番号を付して標準として発表している規格もある。
MPEG諸規格は国際標準として仕様が公開され、誰でも入手して製品などに実装することができるが、一部の規格には企業などの特許技術を含み、権利者に別途ライセンス料を収める必要がある。MPEG-2およびMPEG-4では権利者が合同で特許管理団体MPEG LAを運営しており、窓口が一元化されている。