高校「情報Ⅰ」単語帳 - 日本文教「情報Ⅰ 図説と実習」 - コンピュータの仕組み

コンピュータ 【電子計算機】

与えられた手順に従って複雑な計算を自動的に行う機械。特に、電子回路などを用いてデジタルデータの入出力、演算、変換などを連続的に行うことができ、詳細な処理手順を人間などが記述して与えることで、様々な用途に用いることができる電気機械のこと。

歴史的には手回しで歯車などを駆動する機械式の自動計算機なども存在したが、現代でコンピュータと呼ばれる機械は一般に、マイクロプロセッサ(CPU/MPU)や半導体メモリなどの半導体集積回路(ICチップ)を中心に構成され、記憶装置に記録されたオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトといったコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行するものを指す。

コンピュータの分類

一般的にコンピュータそのものとみなされる機器には、個人向けの汎用コンピュータである「パーソナルコンピュータ」(PC:Personal Computer/パソコン)や、企業や官公庁などの情報システムで用いられる大規模・高性能コンピュータである「サーバ」(server)や「メインフレーム」(mainframe computer)、科学技術計算などに用いる超高性能コンピュータである「スーパーコンピュータ」(supercomputer)などがある。

また、現代の電気機器の多くは内部の装置の制御などのために機器内部に小型のコンピュータシステムを内蔵しており「組み込みシステム」(embedded system)と呼ばれる。

このような組み込み型のコンピュータを備えた機器には携帯電話・スマートフォンやタブレット端末、ビデオゲーム機、通信装置やネットワーク機器、テレビ受像機、ビデオレコーダー、デジタルカメラ、電子制御の家電製品や産業機械、輸送機械などがある。

コンピュータの構成

一般的なコンピュータは、プログラムの実行状況や各装置の状態を制御する「制御装置」、データの計算や加工を行う「演算装置」、データを記録する「記憶装置」、人間や他の機器など外界との情報のやり取りを行う「入力装置」および「出力装置」などで構成される。この五つの要素を「コンピュータの五大装置」(五大機能)と呼ぶこともある。

このうち、制御装置と演算装置は現代では一つの装置や半導体チップとして統合されていることが多く、これを「処理装置」(PU:Processing Unit)という。コンピュータシステム全体の制御を司る中心的な処理装置のことを「中央処理装置」(CPU:Central Processsing Unit)という。

記憶装置は当座の動作に必要なプログラムやデータの一時的な記憶に用いる「主記憶装置」(メインメモリ)と、永続的な記録に用いる「外部記憶装置」(ストレージ)あるいは「補助記憶装置」に分かれていることが多い。

計算手順はCPUに対する命令の列を記憶装置にデータとして記録し、順に読み出して実行していく方式(プログラム内蔵方式)になっており、これを「コンピュータプログラム」あるいは単にプログラムという。

ハードウェア ⭐⭐⭐

コンピュータ本体や内部の装置、周辺機器などの物理的な実体を伴う装置や機器、およびその部品、部材のこと。それ自体には形がないソフトウェアと対比される。

コンピュータの場合、処理装置や記憶装置、入出力装置、電子基板、ケーブル類、筐体などの部品や部材、およびその総体として物理的実体としてのコンピュータのことをハードウェアという。「ハード」と略されることも多く、「HW」「H/W」などの略号で示されることもある。

これに対し、コンピュータプログラムやデータなど、それ自体は物理的な実体を伴わない要素のことを「ソフトウェア」(software)と総称する。ソフトウェアの記録や伝送、表示や実行には必ず何らかのハードウェアが必要となる。

コンピュータ以外の分野でも、施設や設備、機器、部品、資材といった物理的実体をハードウェアと呼ぶことがあり、付随する非物理的な要素と対比する文脈で用いられる。例えば、劇場の建物や設備をハードウェア、そこで催される公演をソフトウェアと呼んだり、教育機関の校舎や備品をハードウェア、提供される教育プログラムをソフトウェアと呼んだりすることがある。

英語の “hardware” の原義は金物、金属製品という意味で、機械や生活用品などについて、木製のものなどと対比して金属製であることを表す言葉だった。現代では金属製かどうかはあまり重視されず、工具や冶具、装置、設備、資材、軍用装備品などを広く総称する言葉として用いられることが多い。

制御装置 ⭐⭐⭐

機械やシステムの構成要素のうち、主に他の要素の動作の制御などの機能を担うもの。コンピュータの場合はCPUの機能の一部として内蔵されている。

コンピュータの制御装置

コンピュータを構成する装置のうち、他の装置の制御を行うものを制御装置と呼ぶ。演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置と合わせてコンピュータの五大装置という。

現代のコンピュータではほとんどの場合、演算装置と共に中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)という装置の一部として実装される。また、CPUはマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)と呼ばれる単一の半導体集積回路(ICチップ)の形で提供されている。

制御装置は演算装置やレジスタ(CPU内部の記憶回路)を操作して命令の実行制御を行ったり、メインメモリ(RAM)などの記憶装置とプロセッサ間のデータや命令の読み出しや書き込みの制御、外部の装置との信号の入出力制御などを行う。

初期のコンピュータの設計では演算装置とは独立・分離していたが、現代のプロセッサにおいては両者が統合されて一体的に設計されるため、両者の区別にはほとんど意味がなくなり、「実行ユニット」「プロセッサコア」のような用語で呼ばれることも多い。

ALU 【Arithmetic and Logic Unit】 ⭐⭐⭐

コンピュータを構成する基本的な装置の一つで、算術演算(四則演算)や論理演算などの計算を行う装置。現代のコンピュータでは制御装置とともにマイクロプロセッサ(CPU/MPU)などの論理回路の一部として実装されている。

加算器や論理演算器などの演算回路を持ち、整数の加減算、論理否定(NOT)、論理和(OR)、論理積(AND)、排他的論理和(XOR)などの基本的な演算を行うことができる。

これらの回路を組み合わせて、乗算や除算、余剰、実数(浮動小数点数)演算、否定論理和(NOR)、否定論理積(NAND)などの演算ができるようになっているものもある。

入力装置 【入力機器】 ⭐⭐⭐

コンピュータなどの機器本体にデータや情報、指示などを与えるための装置。一般的には人間が操作して入力を行う装置のことを指し、手指の動きや打鍵を電気信号に変換して伝達するキーボードやマウス、タッチパネルなどが該当する。

コンピュータの登場以前から、ボタンやレバー、ツマミ、ペダルなどの入力装置が機械の操作に用いられてきたが、情報機器ではこれらに加えてより複雑で汎用的な情報入力を実現するため、多数の操作要素や高度な機構を持つ装置が発明された。

例えば、文字が刻印された小さな鍵盤が敷き詰められたキーボード、手で位置や移動を入力するためのマウスなどのポインティングデバイス、画面表示と位置入力を兼用するタッチパネルなどが発達した。特殊なゴーグルなどを利用して視線の方向を検知し、画面上の位置を指示して入力する装置なども開発されている。

ビデオゲームでは、数種類のボタンやスティック、加速度センサーなどを手のひらサイズに収めたゲームコントローラ(ジョイパッド/ジョイスティック)が最も一般的な入力装置として用いられるほか、カメラやセンサーなどを組みわせて四肢の動きを検知するシステムが用いられたり、実在の機械を模した専用の装置(ハンドルやレバー、フットペダルを組み合わせたレースゲーム用筐体など)が用いられることもある。

広義には、人間の動作に限らず外界から情報を取り込んで電気信号やデジタルデータとしてコンピュータに伝達する機器全般が含まれる。マイクやイメージスキャナ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、バーコードリーダー、指紋センサー、X線撮影装置、超音波診断装置、光学式読み取り装置(OCRやOMR)などである。

出力装置 【アウトプットデバイス】 ⭐⭐⭐

コンピュータが扱う情報を利用者に認識できる形式で提示する装置。ディスプレイやプリンタ、スピーカーなどが含まれる。

コンピュータシステムを構成する主要な装置の一つで、データを人間に認識できる形で外部に物理的に出力する装置である。光の像を投影して画面を映し出すディスプレイ(モニタ)やプロジェクタ、紙などに印字・印刷を行うプリンタやプロッタ、音声を発するスピーカーやイヤフォンなどが該当する。

主に人間の視覚や聴覚に働きかける原理の機器が多いが、振動で情報を知らせるバイブレーターや、ゲームコントローラなどで操作感(押しやすさ、回しやすさなど)を状況に応じて変化させるフォースフィードバック機構など、触覚を利用する装置もある。

映画館や体験型アミューズメント施設などに見られる、映像に合わせて霧や風を吹き出す装置なども広義には出力装置の一種と言える。未だ研究段階ながら、香り(触覚)や味(味覚)を動的に合成してコンピュータからの出力とする装置も構想されている。

これに対し、人間や環境、外部の機器から情報を取り込んでデータとしてコンピュータ本体に伝える装置を「入力装置」(input device:インプットデバイス)といい、キーボードやマウス、タッチパネル、ゲームコントローラ、マイク、イメージスキャナ、各種センサーなどが含まれる。

出力装置と入力装置を合わせて「入出力装置」(I/O device)と総称することもある。イヤホンマイクやプリンタ複合機(イメージスキャナとしても利用できるプリンタ)、振動機能付きコントローラなど、入出力の両方の機能を一体的に提供する装置もある。

マザーボード 【MB】

コンピュータのメインの電子基板で、CPU(マイクロプロセッサ)やメモリ、各種の制御用ICチップなど主要な部品を装着し、配線を通じて通電したり相互に通信できるようにするもの。

プラスチックなどでできたプリント基板の一種で、表面や内部に各装置を結ぶ金属配線や制御用の半導体チップ(チップセットなど)、電気的な制御を行うためのコンデンサーなどの電子部品などが高密度に実装されている。

CPUやメモリモジュール(RAM)、拡張カードなどを装着するためのスロットやソケットなどの接続端子、電源ユニットからのコードを差し込む電源コネクタ、ストレージ(外部記憶装置)など周辺機器を接続するためのケーブルを差し込むコネクタなども配置されている。

コネクタの一部は筐体背面などにむき出しになるよう設計されていることが多く、外付けの周辺機器や入出力装置(キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、スピーカーなど)などのケーブルを差し込むことができる。

BIOS/UEFI

表面に実装されたROMチップやフラッシュメモリなどに「ファームウェア」あるいは「BIOS」と総称されるコンピュータプログラムが格納されており、各装置に対する基本的な制御機能などを提供する。オペレーティングシステム(OS)などはハードウェア制御のためにBIOSの機能を呼び出している。

一般的なパソコン向けのマザーボード製品では「UEFI」規格に則って設計されたプログラムが内蔵されており、メーカーや機種が違っても同じOSやアプリケーションを利用することができる。起動時に特殊なキー操作で設定画面に移行することができ、ハードウェアの設定や構成の確認や変更などを行うことができる。

マザーボードの規格

いわゆるWindowsパソコンのデスクトップ型やタワー型、PCサーバ向けの製品では、異なるメーカーの部品を組み合わせて使えるよう、マザーボードの形状や寸法、主要な部品の配置などの標準規格が決められている。

マザーボードの規格(フォームファクタ)では基板の形状や寸法、コネクタ類の種類や位置、電源ユニットおよび電気的な仕様などを定めており、筐体やボード、搭載するチップ類やカード類のメーカーが違っても、同じ規格に対応していれば組み合わせて用いることができる。

パソコン普及の初期に最も一般的に用いられたのは、米IBM社の「PC/AT」のマザーボードの仕様をコピーした「AT仕様」の製品で、いわゆるPC/AT互換機の普及とともに事実上の標準として広まった。

その後、CPU大手の米インテル(Intel)社などが主導して「ATX仕様」が策定され、現在もデスクトップ型やタワー型のパソコン製品で広く用いられている。「MicroATX」「E-ATX」「FlexATX」など用途ごとにサイズや配置が異なる派生規格が存在する。

メインメモリ 【主記憶装置】 ⭐⭐⭐

コンピュータ内部でデータやプログラムを記憶する記憶装置のうち、中央処理装置(CPU)と基板上の電気配線などを通じて直に接続されたもの。「メモリ」「RAM」とも呼ばれる。

CPUの命令によって直に読み書きが可能な記憶装置で、実行中のプログラムコードや当座の処理に必要なデータなどが保存される。外部記憶装置(ストレージ)に比べ読み書き動作は桁違いに高速だが、単価が高いため機器に搭載できる容量は何桁か少ないのが一般的である。

現代のコンピュータでメインメモリとして用いられるのは半導体記憶装置(半導体メモリ)のRAM(Random Access Memory)の一種であるDRAM(Dynamic RAM)がほとんどで、機器の電源を切るなどして装置への通電を止めると記憶内容が失われるという特性がある。

このため、データやプログラムの永続的な保管にはストレージを用い、コンピュータの起動時にメインメモリに必要なプログラムなどを読み込んで実行するという動作が基本となっている。

また、現代のCPU製品の多くは内部にDRAMよりも高速な「キャッシュメモリ」と呼ばれる記憶回路を内蔵しているが、これはDRAMとのやり取りを高速化する一時的な保管場所としてのみ用いられ、プログラムから明示的に動作を制御することはできないようになっている。

ストレージ 【外部記憶装置】 ⭐⭐⭐

コンピュータの主要な構成要素の一つで、データを永続的に記憶する装置。磁気ディスク(ハードディスクなど)や光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)、フラッシュメモリ装置(USBメモリ/メモリカード/SSDなど)、磁気テープなどがこれにあたる。

一般的には通電しなくても記憶内容が維持される記憶装置を指し、コンピュータが利用するプログラムやデータなどを長期間に渡って固定的に保存したり、他の機器へのデータの運搬や複製、配布などのために用いられる。

コンピュータ内には補助記憶装置とは別に、半導体記憶素子などでデータの記憶を行う主記憶装置(メインメモリ)が内蔵されており、利用者がプログラムを起動してデータの処理を行う際には補助記憶装置から必要なものをメモリに呼び出して使う。

同じコンピュータに搭載される装置同士で比較すると、補助記憶装置はメモリに比べて記憶容量が数桁(数十~数千倍)大きく、容量あたりのコストが数桁小さいが、読み書きに要する時間が数桁大きい。一般的な構成のコンピュータではメインメモリ容量の百倍から千倍程度の容量の固定内蔵ストレージを用意することが多い。

記録原理による分類

補助記憶装置装置は駆動装置(ドライブ)が記憶媒体(メディア)を操作して、記憶素子の物理状態に信号を対応付けて記録する。様々な動作原理の装置があり、主に磁気を利用するもの、レーザー光を利用するもの、電荷(半導体素子)を利用するものに分けられる。

磁気記録方式の補助記憶装置には磁気テープやハードディスク、フロッピーディスクなどがある。平たい媒体表面の磁性体の磁化状態を変化させて信号を記録する装置で、媒体を薄いテープ状にしてリールに巻き取った「磁気テープ」と、平たい円盤(ディスク)状にして中心軸(スピンドル)で高速に回転させる「磁気ディスク」に分かれる。

一昔前まで補助記憶装置の大半を占めていた方式で、現在でもパソコンに内蔵される固定補助記憶装置としてハードディスクがよく用いられる。磁気テープは容量あたりの単価が極めて安いという特徴から、現在でも企業や官公庁などの大規模なデータ保管に用いられることがある。

光学記録方式の補助記憶装置はCDやDVD、Blu-ray Discなどの光学ディスクで、信号を媒体表面の細かな凹凸や化学的な状態の変化として記録し、高速で回転させながらレーザー光を照射して反射光の変化を読み取る。

製造時にデータを記録する読み出し専用ディスクと利用時にデータの書き込みや上書きができる追記型や書き換え型のディスクがあり、前者は映像やソフトウェアなどのコンテンツの販売で、後者は映像の録画やデータのバックアップ、機器間のデータの運搬などでよく利用される。

近年では、読み出し専用メモリ(ROM)から発展した書き換え可能な不揮発メモリ(電源を落としても内容が消えない半導体メモリ)であるフラッシュメモリの大容量化、低価格化が進み、補助記憶装置装置として広く普及している。ハードディスクの代わりに固定内蔵ストレージとして用いられる「SSD」(Solid State Drive)、携帯機器の内蔵ストレージ、データの運搬に用いられるUSBメモリやメモリーカードなどがフラッシュメモリを応用した補助記憶装置である。

<$Fig:storagecomparison|center|true>

ハードディスク 【HDD】 ⭐⭐

コンピュータなどの代表的なストレージ(外部記憶装置)の一つで、薄くて硬い円盤(ディスク)の表面に塗布した磁性体の磁化状態を変化させてデータを記録するもの。一台あたりの容量が大きく容量あたりの単価が安いため、パソコンなどに内蔵されるストレージとして標準的な存在となっている。

構造・原理

装置内にはガラスや金属でできたプラッタ(platter)と呼ばれる円盤型の記憶媒体が数枚封入されており、表面には磁性体が塗布されている。これを回転軸で高速(毎分数千回)で回転させ、アームの先端に取り付けられた磁気ヘッドを近接させる。特定の箇所の磁化状態を変化させることでデータを書き込むことができ、状態を読み取ることでデータを読み出すことができる。

プラッタの直径は主流の製品で3.5インチ(約8.9cm)だが、小型の機器向けに2.5インチや1インチの製品も存在する。一台の装置にプラッタが1~8枚程度備え付けられ、通常はその両面を記録に用いる。内部的な制御や区画分けはプラッタごとに行われるが、外部から見た記憶領域としては全体で一つとなる。

他媒体との比較

「ハードディスク」とは硬い円盤という意味だが、これはフロッピーディスクなどのようにプラッタの素材に柔らかいプラスチックフィルムなどを用いる装置と対比した表現である。フロッピーディスクなどは記憶媒体と駆動装置(ドライブ)が分離していてディスクだけを取り外して交換したり持ち運べるが、ハードディスクはディスクとドライブが一体化しているため、「ハードディスクドライブ」(HDD:Hard Disk Drive)とも呼ばれる。

磁気ディスクや光学ディスクなどの中では最も記録密度が高く、同じ世代で比較すると装置(媒体)一台あたりの記憶容量は飛び抜けて大きい。読み書きも高速で、パソコンやサーバなどのコンピュータ製品では基幹的な記憶媒体として広く普及している。ドライブ一体型なこともあり一台あたりの価格が高いことや、振動に弱いという難点もある。

SSDへの置き換え

装置の寸法や接続仕様をハードディスクに揃え、内部の記憶媒体をフラッシュメモリに置き換えた製品はSSD(Solid State Drive)と呼ばれ、ハードディスクの代替として近年急速に浸透している。

読み書き速度が桁違いに速く衝撃にも強いという長所があるが、半導体メモリのため価格が高く一台あたりの容量も少ないという欠点があった。近年では低価格化と記憶容量の向上が劇的に進み、従来のハードディスクの用途を置き換える形で普及が加速している。

接続方式

コンピュータ本体に内蔵されるハードディスクの場合、接続インターフェースとして初期にはIDE/ATA(パソコン向け)やSCSI(サーバ・ワークステーション向け)が、2000年代以降はSATA(Serial ATA)が主に用いられている。独自の筐体を持ちケーブルでコンピュータと繋ぐ外付けの装置もあり、USBやIEEE 1394、eSATAなどの規格で接続される。

USB 【Universal Serial Bus】

主にコンピュータと周辺機器を繋ぐのに用いられるコネクタおよびデータ伝送方式の標準規格。キーボードやマウス、プリンタ、外部ストレージ装置などの接続方式として広く普及しており、スマートフォンなどモバイル機器の充電や外部との通信でも標準的な接続方式となっている。

金属線ケーブルで機器間を結び、データ通信や電力供給を行うことができる。シリアル伝送方式を採用したバス型(信号線共有型)の接続規格で、一つの伝送路を最大127台までの機器で共有することができる。

コンピュータ側には通常1~4つ程度のポート(差込口)が用意されており、これで足りない場合は「USBハブ」と呼ばれる集線装置を介してポートを増やすことができる。機器本体の電源を落とさずにコネクタを着脱する「ホットプラグ」に対応している。

初期に普及した規格(USB 1.1)では12Mbps(メガビット毎秒)、最新の規格(USB4)では80Gbps(ギガビット毎秒)までの通信速度に対応する。当初はキーボードやマウスなどの入出力装置から普及が始まったが、通信速度が向上するに連れて、ネットワークアダプタ(EthernetアダプタやWi-Fiアダプタ)や外部接続の光学ドライブ、ハードディスクなどに利用が広がっていった。

フラッシュメモリを内蔵した親指大のストレージ装置である「USBメモリ」もよく使われており、以前のフロッピーディスクや書き込み型光学ディスク(CD-R/DVD-Rなど)に代わって手軽なデータの受け渡し手段として普及している。日常的にはこれを指して「USB」と呼ぶことも多い。

コネクタ形状

<$Img:USB-Connector.jpg|right|USB-Type Aコネクタ[PD]|https://commons.wikimedia.org/wiki/File:USB-Connector-Standard.jpg>

コンピュータ側を想定した大きなコネクタ形状と、周辺機器側を想定した小さなコネクタ形状が規定されている。当初はコンピュータ側は長方形の「USB Type-A」、プリンタなどケーブルが別になっている周辺機器では正方形に近い「USB Type-B」が用いられた。

USB 2.0ではデジタルカメラなど小型の機器向けに、小さな台形に近い形状の「ミニUSB」(Mini-A/Mini-B/Mini-AB)が規定された。Aはコンピュータ側、Bは携帯機器側、ABは携帯機器同士の接続(USB On-The-Go)用だったが、B以外は廃止になり、Type-AとMini-Bを両端に持つケーブルが一般的となった。Miniよりもさらに小型化された「マイクロUSB」(Mirco-A/Micro-B)も規定され、スマートフォンやタブレット端末などでよく利用されている。

USB 3.0ではType-BとMicro-Bの形状が変更になり、従来と互換性のない形になった。新たな小型のコネクタ仕様として「USB Type-C」が規定され、これまでのすべてのコネクタを置き換える新世代の標準として普及が進められている。USB4以降はType-Cのみが標準とされ、過去のコネクタ形状は廃止となった。

給電機能

<$Img:USB-Bus-Power.png|right|>

USBにはデータ通信だけでなくケーブルの金属線を利用した送電(電力供給)についての仕様も定めており、装置を駆動するのに必要な電力の供給やバッテリー充電などに用いられている。小さな電力であれば電源ケーブルをコンセントから別に引いてくる必要がなく、利便性が大きく向上した。

初期の規格から存在する「USBバスパワー」では、電圧5V、電流500mA、電力2.5Wまでの給電が可能で、キーボードなどの大きな電力を必要としない装置の駆動に用いられる。プリンタやハードディスクなど消費電力の大きな機器には足りないため、電源ケーブルで別途給電する必要がある。スマートフォンなど小型の機器や携帯機器ではUSBバスパワーが標準の充電方式になっていることも多い。

USB 3.1では従来より大電力の「USBパワーデリバリー」(USB PD:Power Delivery)が導入され、USB Type-Cケーブルを用いて100Wまでの電力供給が可能となった。液晶ディスプレイやコンピュータ本体などの電源ケーブルを代用できるほか、給電方向の切り替え、数珠繋ぎに他の機器を経由しての給電にも対応している。

USBデバイスクラス (USB device class)

<$Img:USB-Icon.png|right|>

USBでは機器の種類ごとに標準の動作仕様と対応するドライバ仕様を「USBデバイスクラス」として規定しており、この範囲内の動作についてはオペレーティングシステム(OS)に付属する汎用ドライバだけで利用することができる。USBメモリを別のコンピュータに挿してすぐにデータが移せるのもこの仕組みを利用している。

以前の接続規格では個別の製品ごとに必ず製造元が提供するドライバソフトを導入しなければ通信できなかったが、デバイスクラスで規定された一般的な機能は個別のドライバ不要で動作する。機器に固有の機能を利用したい場合などには、これまで通り付属のドライバを導入して利用する形となる。

HDMI 【High-Definition Multimedia Interface】

映像や音声をデジタル信号として伝送するインターフェース規格の一つ。パソコンやスマートフォン、ゲーム機、デジタル家電などと、テレビ、ディスプレイなどの表示装置を接続する方式の標準として広く普及している。

ケーブルやコネクタ、信号形式などの物理的な仕様と、データの伝送制御についての仕様を定めている。1本のケーブルで映像信号、音声信号、制御信号をすべて合成して送受信するため、取り回しが容易である。データ圧縮やアナログ信号への変換などを行わず直接デジタルデータとして出力機器まで伝送するため、伝送途上で品質が劣化することがない。

映像や音声をそのまま伝送するのではなく、コピー防止技術の「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection)によりデータを暗号化して送受信する。認証を受けた正規の出力先以外の装置で伝送信号を読み取って、映像や音声のデジタルコピーを作成することはできないようになっている。

コネクタの種類は「タイプA」から「タイプE」までの5種類が規定されている。このうち、パソコンやディスプレイなど据え置き型の機器に用いられる標準的なタイプAと、デジタルビデオカメラなどに用いられるやや小型の「タイプC」(ミニHDMI)、デジタルカメラやスマートフォンなどに用いられる小型の「タイプD」(マイクロHDMI)がほとんどを占める。

異なる製造元の製品間で互換性を確保するための認証プログラムがあり、HDMI対応製品は検査機関による試験を受けて合格しなければならない。また、対応製品のメーカーはライセンス管理団体に加盟し会費および製品一つあたりに賦課されるロイヤリティを支払わなければならず、ケーブルの価格が他方式より高額であると指摘されることが多い。

歴史

コンピュータとディスプレイのデジタル伝送仕様「DVI」(Digital Visual Interface)を発展させた仕様で、物理層の信号伝送に「TMDS」(Transition-Minimized Differential Signaling)を用いるなど共通点が多い。暗号化に対応したことで著作権で保護されたコンテンツのデジタル出力が可能になった。

最初の規格であるHDMI 1.0は2002年に発表され、米シリコンイメージ(Silicon Image、現Lattice Semiconductor)社を中心とする企業連合が規格を策定した。動画は最高でフルHD(1920×1080)サイズ、毎秒60フレーム(1080/60p)に対応し、音声はサンプリング周波数192kHz、量子化24ビットの品質を最大8チャンネルまで同時に伝送できる。

2006年の「HDMI 1.3」では48bppまでの色深度に対応し、2009年の「HDMI 1.4」ではタイプC(ミニHDMI)、タイプD(マイクロHDMI)コネクタの追加、USB Type-Cコネクタへの対応、4K解像度(3840×2160、4096×2160)への対応などが行われた。2017年の「HDMI 2.1」では8K解像度(7680×4320)や可変リフレッシュレート(VRR)に対応した。

CPU 【Central Processing Unit】 ⭐⭐⭐

コンピュータの主要な構成要素の一つで、他の装置・回路の制御やデータの演算などを行う装置。演算装置と制御装置を統合したもので、現代では一枚のICチップに集積されたマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)を用いる。

CPUはメインメモリ(RAM)に格納された機械語(マシン語)のプログラムを、バスを通じて一命令ずつ順番に読み出し(フェッチ)、その内容を解釈して行うべき動作を決定(デコード)し、内部の回路を駆動して実際に処理を実行する。現代のCPUの多くはマイクロプログラム制御方式を採用しており、機械語の一命令は、より細かな動作(マイクロコード)の組み合わせに分解されてから実行される。

命令セット

CPUは実行可能な命令の体系が決まっており、これを命令セット(instruction set)あるいは命令セットアーキテクチャ(ISA:Instruction Set Architecture)という。記憶装置から読み出されたどのようなビット列がどのような動作に対応するかを定めたもので、機械語のプログラムはこれを用いて記述される。

命令セットは各CPUの機種ごとに固有だが、同じメーカーの同じ系列の製品では同じ命令セットが採用されることが多く、その場合は異なる製品が同じプログラムを実行することができる。同じ命令セットでも製品の世代が下るに連れて新しい命令が追加されることが多く、新しいCPUは古いCPU向けのプログラムも実行できる一方、古いCPUは新しい命令セットのプログラムは実行できないという関係になる(後方互換性)。

有力なメーカーの製品には、別のメーカーが同じ命令セットを採用した互換CPU製品を開発・販売することもある。例えば、米インテル(Intel)社のx86命令セットは広く普及しており対応ソフトウェアが豊富なため、これをそのまま実行できる互換CPUを米AMD社などが製造している。

構造

一般的なCPUの内部は、命令の解釈や他の回路への動作の指示などを行う制御ユニット、論理演算や算術演算を行う演算ユニット(ALU:Arithmetic and Logic Unit)、データの一時的な記憶を行うレジスタ、外部との通信を行うインターフェース回路などで構成される。

また、レジスタとメインメモリのあまりに大きな速度差、容量差を埋めるため、両者の中間の速度と容量を併せ持つキャッシュメモリが内蔵されることが多く、浮動小数点演算に特化した演算ユニット(FPU:Floating-Point Unit)なども標準搭載されることが多い。

以前はマザーボード上のチップセットや単体のICチップとして提供されてきた、メモリコントローラやI/Oコントローラ、グラフィックス処理(GPU)などの機能が統合された製品も数多く登場している。コンピュータに必要な機能のほとんどをCPUの内部に統合した製品はSoC(System-on-a-Chip)と呼ばれる。

性能

内部の演算回路やレジスタが一回の動作でまとめて伝送、保存、処理できるビット数が決まっており、この値が大きいほど一度に多くのデータを処理でき、また、広大なメモリ空間を一元的に管理できる。

一度にnビットのデータを処理できるCPUをnビットCPUというように呼び、CPUが発明された当初は4ビットであったが、8ビット、16ビット、32ビットと拡張されてゆき、現代では64ビットCPUが広く普及している。

また、ほとんどのCPUはコンピュータ内部の特殊な回路から一定周期で発信されるクロック信号に合わせて動作するようにできている。より高い周波数の信号で動作するものほど、単位時間あたりに多くの動作を行うことができ、性能が高い。例えば、2GHz(ギガヘルツ:毎秒10億回)で動作するCPUと1GHzのCPUならば、他の仕様が同じなら約2倍の速度差がある。

並行処理

単純な構造のCPUは一つの命令列から一つずつ順番に命令を取り出し実行していくが、現在のCPU製品の多くは、何らかの形で複数の命令、あるいは複数の命令列を同時並行に処理できる機能を内蔵しており、クロックあたりの性能を引き上げている。

よく用いられるのはパイプライン処理で、一つの命令を複数の段階に分割してそれぞれを別の回路で実行することにより、いくつかの命令の実行を並行して進めることができる。ある命令が実行段階にあるとき、次の命令がデコードを、その次の命令がフェッチを行うといったように、前の命令の完了を待たずに空いた回路に先行して次の命令を投入する方式である。

また、大抵の命令は限られた回路しか利用しないという性質を利用して、空いている回路で実行できる別の命令を同時に投入する方式を同時マルチスレッディング(SMT:Simultaneous Multithreading)という。擬似的に二つのプログラムを並行に実行することができ、最良の場合で数割の性能向上が果たせる。Intel社のCPUに内蔵されるハイパースレッディング(Hyper-Threading)機能が有名である。

一つの半導体チップの内部に、命令の解釈・実行を行うユニット(CPUコア)自体を複数搭載するという手法も広まっており、マルチコアプロセッサ(multi-core processor)という。それぞれが独立して別のプログラムを並列に実行でき、複数のCPUを搭載するのとほとんど同じ効果を得ることができる。ちなみに、一台のコンピュータに複数のCPUを内蔵する方式はマルチプロセッサ(multiprocessor)という。

レジスタ ⭐⭐

マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部にある、演算や実行状態の保持に用いる記憶素子。最も高速な記憶装置だが、一般的なCPU製品で数個から数十個(容量に換算して数十バイト程度)と数が限られる。GPUなど特殊なプロセッサでは数万個(数百キロバイト)のレジスタを内蔵するものもある。

演算などの処理を行うためのデータをメインメモリ(RAM)やキャッシュメモリから読み出して置いたり、計算結果や途中経過などを保持したり、読み込みや書き出しを行うメモリ上のアドレス(番地)などを指し示したりするために用いられる。メモリ内の記憶素子のように番地によって識別されるのではなく、それぞれ個別の識別名が与えられている。

命令によって役割が決まっているものを専用レジスタ、特定の役割が割り当てられておらずプログラムの都合で様々な用途に使い回せるものを汎用レジスタという。プログラムからアクセスできずプロセッサ自身が内部的に使用するための特殊なレジスタ(内部レジスタ)を持つ製品もある。

専用レジスタの種類や役割はプロセッサの仕様により異なるが、多くの製品に共通するものとして、アキュムレータ、データレジスタ、アドレスレジスタ、インデックスレジスタ、ベースレジスタ、スタックポインタ、ステータスレジスタ(フラグレジスタ)、プログラムカウンタなどがある。

論理回路 ⭐⭐

デジタル信号を処理して論理演算や記憶などを行うための電子回路。単純な論理演算を行う回路を膨大な数組み合わせればCPU(MPU/マイクロプロセッサ)のような複雑な装置を作ることができる。

二状態のいずれかを取るデジタル信号を入力および出力とする論理素子を配線で結び、様々な論理演算や記憶を行う回路を構成する。信号の状態は論理的には2進数の「0」と「1」、あるいは真偽値(真理値/ブール値)の「真」と「偽」に対応し、物理的には電圧の高低で表すことが多い。高電圧を「真」や「1」に対応付ける方式を「正論理」、逆を「負論理」という。

論理素子は「論理ゲート」(logic gate)とも呼ばれ、何らかの論理演算を行う機能を持った単体の素子である。一つ以上の入力を取り、所定の演算を行って一つの信号を出力する。実際の電子回路上では抵抗やトランジスタなど複数の電子部品を組み合わせて実装される。図で表す際の記号には標準規格があり、MIL記号やJIS記号などがよく用いられる。

基本的なゲートとして、否定(NOT)演算を行う「NOTゲート」、論理和(OR)演算を行う「ORゲート」、論理積(AND)演算を行う「ANDゲート」、排他的論理和(XOR)演算を行う「XORゲート」、否定論理和(NOR)演算を行う「NORゲート」、否定論理積(NAND)演算を行う「NANDゲート」などがある。複雑な挙動の論理回路もほとんどがこれらの組み合わせで構成されている。

<$Fig:logic|center|false>

現在の入力のみから出力を決定する回路を「組み合わせ回路」(combinational logic)と呼び、加算を行う加算器のように演算を行う回路などが該当する。一方、内部に状態を持ち、過去の入力で変更された現在の内部状態と入力を組み合わせて出力を決定する回路を「順序回路」(sequential logic)という。フリップフロップ回路(ラッチ回路)やカウンタ回路などが該当する。

論理演算 【ブーリアン演算】

真(true)と偽(false)の二通りの状態を取る真偽値(真理値/ブール値)の間で行われる演算。コンピュータでは真を1に、偽を0に対応付けたビット演算として行われることが多い。

入力が一つの単項演算として、入力値の反対の値を出力する「否定」(NOT A:Aではない)がある。入力が二つの二項演算には、どちらかが真なら真を出力する「論理和」(A OR B:AまたはB)、両者とも真の時のみ真を出力する「論理積」(A AND B:AかつB)、両者が異なる時に真を出力する「排他的論理和」(XOR:eXclusive OR)がある。

電子回路などでは、論理和と否定を組み合わせた「否定論理和」(NOR:Not OR)、論理積と否定を組み合わせた「否定論理積」(NAND:Not AND)が用いられることもある。排他的論理和と否定を組み合わせた「否定排他的論理和」(XNOR)は値が同じとき真、異なるとき偽となるため「同値」(EQ:equal)とも呼ばれる。

<$Fig:logic|center|false>

三項以上を計算する際は二項ずつの計算を繰り返すことで結果が得られる。その際、四則演算のように交換法則や分配法則、結合法則、ド・モルガンの法則などが成り立つ。すべての論理演算はNOT、AND、ORの三つの組み合わせで構成できるが、この三つはすべてNANDの組み合わせで構成でき、NANDだけですべての論理演算を記述できることが知られている。

コンピュータでは真偽値自体の演算(プログラミング言語におけるブール型の値の演算など)の他に、真を1、偽を0に置き換えてビット間で論理演算を行うことがある。ビット列について論理演算を行う場合は二つのビット列のぞれぞれ対応する位置にあるビット同士で論理演算を行う。

このような演算方式を真偽値の論理演算と区別して「ビット演算」(bitwise operation)と呼ぶこともある。なお、ビット演算には論理演算に相当する演算以外にも、シフト演算やローテート演算などビット列を左右に移動する操作もある。

プログラミング言語では算術演算などと並んで最も基本的な演算の一つとして論理演算が用意されていることが多く、論理演算子によって式を記述する。演算子は「&&」のような記号を用いる場合と、「and」のような英単語をそのまま用いる場合がある。C言語の「&」と「&&」のように、論理演算と対応するビット演算にはそれぞれ別の演算子が与えられていることが多い。

真理値表 【真偽表】 ⭐⭐

ある論理回路や論理式について、考えられるすべての入力の組み合わせと、対応する出力を一つの表に書き表したもの。

真理値(ブール値/真偽値)は論理演算などで用いられる値で、「真」(true)と「偽」(false)の2値のいずれかを取る値である。コンピュータ上ではすべての情報を「1」と「0」を並べた2進数で表すため、真と1を、偽と0を対応付けて論理回路で様々な処理を行う。

真理値表は論理演算の入力値と出力値の対応関係を図に表したもので、一般的な形式では表の左側の列に入力を、右側の列に出力をそれぞれ並べる。各行に入力の組み合わせと、その時の出力を記入していく。各項には「1」(あるいは「真」「Truth」「T」)か「0」(あるいは「偽」「False」「F」)のどちらかを記入する。

行数

<$Fig:truthtable|right|true>

入力が1つ(NOT演算)の場合は入力「0」と「1」の2行で表され、入力が2つの場合は「0-0」「0-1」「1-0」「1-1」の4行となる。同様に、3入力では8行、4入力では16行というように、2の入力数乗が表の行数となる。

列数

ある特定の論理演算の結果を示す場合は出力は1列となるが、複数の異なる演算について結果を比較するために、それぞれの演算ごとに列を用意する(列名部分に演算内容を記述する)場合もある。論理回路の動作を示す表の場合には、出力の数だけ列を用意し、それぞれの演算結果を書き込んでいく。

ベン図 【Venn diagram】

集合間の関係を表す図法の一つ。集合の範囲を円などの図形で表し、図形の重なりによって共通部分を表現するもの。概ね3つ程度までの集合の関係を表すのに用いられる。

19世紀の終わり頃、イギリスの数学者ジョン・ベン(John Venn)によって考案された図法である。まず大きな長方形などで描画範囲を設定し、これをすべての要素が含まれる全体集合とする(この領域は設定しない場合もある)。個々の集合は円や楕円などの図形で表される。集合間に共通の要素がある場合、図形の一部を重ねて表現する。

集合Aを円で表すとき、Aの外側はAの補集合(A、Ac)を表す。集合Bも円で表すと、両者の重なった領域が共通部分(A∩B)、重なりも含め両者を合わせた領域が和集合(A∪B)を表す。BがAに完全に含まれる場合、BはAの部分集合(A⊃B)となる。

3つ以上の集合の関係も図示できるが、4つ以上は重なり方の組み合わせを漏らさず図示するのが難しくなるため、あまり用いられない。説明のために集合ごとに色や模様で塗り分けたり、現在着目している領域のみを着色することが多い。黒で塗られた領域は元が存在しないことを表すため、塗り分けで黒を用いることは控える。

集合演算の結果を視覚的に分かりやすく表すことができるため、これを論理演算の図示に応用することもある。変数を円に対応付け、円の内部を真(true)または1、外側を偽(false)または0に対応付ける。例えば、2変数PとQの場合、円Pの外側がPの論理否定(not P/¬P)、円の重なりが論理積(P and Q/P∧Q)、両円を合わせた領域が論理和(P or Q/P∨Q)に対応する。

AND回路 【AND gate】 ⭐⭐

基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力がいずれも「H」(Hight:高電圧)のときのみ出力が「H」となり、それ以外の場合は出力が「L」(Low:低電圧)となるもの。論理積(AND)演算を行う回路である。

正論理の場合、入力の両方が「H」のとき出力が「H」となり、片方あるいは両方が「L」のとき出力が「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット論理積(ビットAND)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のAND演算を行うことができる。

現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。AND回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路(のみ)の組み合わせでAND回路を構成することができる。

OR回路 【OR gate】 ⭐⭐

基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力のいずれもが「L」(Low:低電圧)のときに出力が「L」となり、それ以外の場合は出力が「H」(High:高電圧)となるもの。論理和(OR)演算を行う回路である。

正論理の場合、入力の片方あるいは両方が「H」のとき出力が「H」となり、両方「L」のときのみ出力が「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット論理和(ビットOR)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のOR演算を行うことができる。

現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。OR回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路(のみ)の組み合わせでOR回路を構成することができる。

NOT回路 【NOT gate】 ⭐⭐

基本的な論理回路の一つで、一つの入力と一つの出力を持ち、入力の逆の状態を出力するもの。論理否定(NOT)演算を行う回路である。

入力が「H」(High:高電圧)なら出力は「L」(Low:低電圧)、入力が「L」なら出力は「H」となる。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット否定(ビットNOT)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のNOT演算を行うことができる。

最も基本的な論理ゲートの一つで、様々なデジタル回路の構成部品として用いられる。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。NOT回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路を用いてNOT回路を構成することができる。

ビット ⭐⭐⭐

情報量の最小単位で、二つの選択肢から一つを特定する情報の量。コンピュータなどでは0と1のいずれかを取る二進数の一桁として表される。

語源は “binary digit” (二進法の数字)を繋げて省略した表現と言われる。情報をすべてビット列に置き換えて扱うことを「デジタル」(digital)という。1ビットのデータが表す情報量は、投げたコインの表裏のように、二つの状態のいずれであるかを示すことができる。

複数のビットを連ねて一つのデータとすることで、2ビットなら4状態(22)、3ビットなら8状態(23)といったように、より多い選択肢を識別できる。一般に、nビットのデータは2のn乗個までの選択肢からなる情報を表現することができる。

例えば、大文字のラテンアルファベットは「A」から「Z」の26文字であるため、これを識別するのには4ビット(16値)では足りず、5ビット(32値)が必要となる。小文字を加えると52文字であるため、6ビット(64値)が必要となる。

派生単位

データの読み書きや伝送を行う場合、その速さを表す単位として1秒あたりの伝送ビット数であるビット毎秒(bps:bit per second)という派生単位が用いられる。

また、実用上はビットでは値が大きくなりすぎて不便なことも多いため、8ビットをまとめて一つのデータとした「バイト」(byte)という単位を用いる場面も多い。かつて何ビットを1バイトとするか機種により様々に分かれていた(7ビットバイトや9ビットバイトなどが存在した)名残りで、8ビットの集まりを「オクテット」(octet)とも呼ぶ。

倍量単位

大きな量を表す際には、SI単位系に則って接頭辞を付した倍量単位を用いる場合がある。

  • 1000ビットを「キロビット」(kbit:kilobit)
  • 100万ビットを「メガビット」(Mbit:megabit)
  • 10億ビットを「ギガビット」(Gbit:gigabit)
  • 1兆ビットを「テラビット」(Tbit:terabit)
  • 1000兆ビットを「ペタビット」(Pbit:petabit)
  • 100京ビットを「エクサビット」(Ebit:exabit)

という。また、コンピュータでは2の冪乗を区切りとするのが都合が良いことが多いため、独自の接頭辞を付した倍量単位が用いられることもある。

  • 210(1024)ビットを「キビビット」(Kibit:kibibit)
  • 220(約104万)ビットを「メビビット」あるいは「ミービビット」(Mibit:mebibit)
  • 230(約10億7千万)ビットを「ギビビット」(Gibit:gibibit)
  • 240(約1兆1千億)ビットを「テビビット」あるいは「ティービビット」(Tibit:tebibit)
  • 250(約1126兆)ビットを「ペビビット」あるいは「ピービビット」(Pibit:pebibit)
  • 260(約115京)ビットを「エクスビビット」あるいは「イクシビビット」(Eibit:exibibit)

という。この2進専用の接頭辞はIEC(国際電気標準会議)が標準化しており、一般にはあまり馴染みがないが記憶容量の表記などで用いられることがある。

算術演算子

プログラミング言語などで用いられる演算子のうち、四則演算(加減乗除)などの算術的な計算を行うもの。和を表す「+」、差を表す「-」などのこと。

ほとんどの言語では加減算は算術・数学と同じ「+」「-」を用いる。半角文字(ASCII文字)には乗算記号「×」と除算記号「÷」が用意されていないため、それぞれ「*」(アスタリスク)、「/」(スラッシュ)で代用することが多い。

一般の算術にはない記号として、剰余(割り算の余り)を求める演算子(C言語系の「%」など)や、累乗を求める演算子(BASIC系の「^」、PythonやJavaScriptの「**」など)が用意されている言語もある。

整数型の変数の値に1を加算するインクリメント演算子(C言語系の「++」など)や、同じく1を減算するデクリメント演算子(同「--」など)を算術演算に分類する場合もある。

オーバーフロー 【桁あふれ】

あふれ(る)、あふれ出たもの、という意味の英単語。ITの分野では、数値の計算結果がその格納領域に収まる範囲を超えること(算術オーバーフロー/桁あふれ)や、与えられたデータが多すぎて指定の領域に収まりきらないこと(バッファオーバーフローなど)を指す。

算術オーバーフロー

コンピュータ内部で一般的な数値データを格納するメインメモリ上の領域やCPU内部のレジスタは、一つの数値を決まったデータ量で表すようにできており、取り扱える数値の大きさや桁数に上限がある。

数値を計算した結果がこの上限を超え、正しく格納・表現できなくなってしまうことを「オーバーフロー」という。例えば、1バイトの符号なし整数型は0から255までの整数を表現できるため、「150×2」という計算の結果を格納しようとすると上限を超えてしまいオーバーフローとなる。

オーバーフローが発生した際の対処方法として、例外を引き起こして例外処理ルーチンによって何らかの対処を行う場合、実行時エラーを出力してプログラムを停止する場合、表現可能な上限値を設定する場合、上限を超えたことを示す特殊な値を格納する場合、単に無視する場合などがある。

オーバーフローを無視してそのまま処理を続行した場合、あふれた上位の桁が消滅して奇妙な値が計算結果となったり、メモリ領域上の隣接する無関係の区画にあふれた数値データの一部を書き込んで内容を破損させてしまうといった事象が起きる場合もある。

負数や浮動小数点数の場合

オーバーフローが起きるかどうかは桁の大きさの問題であるため、符号付き整数の場合には負数の値が下限を超えた場合(絶対値の桁数が上限を超えた場合)にも発生する。また、浮動小数点の場合には指数部の大きさが上限値よりも大きくなった場合にそれ以上大きな値を表すことができずオーバーフローとなる。

アンダーフロー(underflow)

浮動小数点数において、値の絶対値が小さくなりすぎ(小数点以下の0の桁数が長くなりすぎ)て正しく値を表現できなくなる現象を「アンダーフロー」(underflow)という。指数部が下限値より小さくなることで発生し、0に置き換えられてしまうことで除算や乗算の結果が大きく狂うといったことが起きる。

メモリ領域のオーバーフロー

外部からデータを受け取ってメモリ上の領域に保存するようなプログラムで、指定された領域のサイズを超えてデータを受け取ってしまい、隣接する別の区画にデータをあふれさせてしまうことを「オーバーフロー」あるいは「オーバーラン」(overrun)ということがある。

無関係の領域にデータを書き込んでしまうことにより、処理が停止したり、予期しない動作が発生することがある。バッファ領域について発生するものを「バッファオーバーフロー」、スタック領域について発生するものを「スタックオーバーフロー」という。

ネットワークを通じて外部からコンピュータを乗っ取る攻撃手法の一つとして、不正なデータを送りつけて受信プログラムにわざとオーバーフローを発生させ、攻撃用のプログラムコードを実行するよう仕向ける手法があり、「バッファオーバーフロー攻撃」と呼ばれる。

丸め誤差 ⭐⭐

長い桁や無限桁の小数を扱う際に、これを有限桁で表すためにある桁以降の値を捨ててしまうことにより生じる誤差のこと。コンピュータでは浮動小数点型の数値計算などで現れる。

循環小数や無理数、長い桁の小数などを計算する場合に、浮動小数点型や整数型の数値として表すため、これらのデータ型で表現可能な桁数より後ろの値を切り上げや切り捨て、四捨五入などによって捨て去ることがある。このような下位桁を削る処理を「丸める」(丸め処理)と呼び、このとき捨てた値によって本来の値との間に生じるズレを丸め誤差という。

コンピュータは数値を2進法を用いて限られた桁数で表現するため、丸め誤差は整数と実数の間だけでなく、仮数部の桁数の異なる浮動小数点型(float型とdouble型など)の間や、十進数では有限桁の小数値を2進数で表現しようとすると循環小数になってしまう場合(十進数の0.1を2進数で表すと0.00011001100110011…となる)などでも生じることがある。

丸め誤差は取り扱える桁数の制約から仕方なく生じるため、完全に回避することは困難だが、数値の表現形式や計算手順を工夫して影響を小さく抑えることは可能な場合もある。

ソフトウェア ⭐⭐⭐

コンピュータを動作させる命令の集まりであるコンピュータプログラムを組み合わせ、何らかの機能や目的を果たすようまとめたもの。プログラムが動作するのに必要なデータも含まれる。

コンピュータを構成する電子回路や装置などの物理的実体を「ハードウェア」(hardware)と呼ぶのに対し、それ自体は形を持たないプログラムや付随するデータなどをソフトウェアという。物理的には記憶装置(ストレージやメモリなど)の記録媒体における電気的あるいは磁気的、光学的な信号として存在する。

ソフトウェアはその役割により、ハードウェアの制御や他のソフトウェアへの基盤的な機能の提供、利用者への基本的な操作手段の提供などを行なう「オペレーティングシステム」(OS:Operating System/基本ソフト)と、特定の個別的な機能や目的のために作られた「アプリケーションソフト」(application software/応用ソフト)に大別される。

これらに加え、ハードウェアに組み込まれ基本的な制御を行う「ファームウェア」(firmware)や、OSとアプリケーションソフトの中間で特定分野の基本機能や共通機能を提供する「ミドルウェア」(middleware)などの分類が用いられることもある。

日本語の外来語としては慣用的に「ソフト」と略称することが多いが、英語の “soft” は「柔らかい」という形容詞の意味しかなく、組織名や製品名のネーミングなどで接頭辞や接尾辞のように用いられる場合などを除き、省略せず “software” と綴る。「SW」「S/W」などの略号で示されることもある。

プログラム以外の用例

コンピュータプログラムは含まないが、何らかの機器を介して内容の再生や鑑賞を行う記録物のことをソフトウェアと呼ぶ場合がある。例えば、音楽CDのような音声の記録物を「音楽ソフト」、DVD-Videoのような動画の記録物を「映像ソフト」のように呼ぶ。

IT関連以外の分野でも、施設や設備、機器、道具などの物理的実体と対比して、組織や業務、事業、催し、知識、技能、情報、記録といった人間の活動に属する無形の事柄をソフトウェアと呼ぶ場合がある。

記録物やイベントなどの用法については「コンテンツ」(content)もほぼ同義語であり、20世紀にはソフトと呼ぶことが多かった分野や業界でも現在ではコンテンツと呼ぶ方が一般的な場合が多い。

OS 【Operating System】 ⭐⭐⭐

ソフトウェアの種類の一つで、機器の基本的な管理や制御のための機能や、多くのソフトウェアが共通して利用する基本的な機能などを実装した、システム全体を管理するソフトウェア。

CPU(MPU/マイクロプロセッサ)や主記憶装置(メインメモリ)、外部記憶装置(ストレージ)、入出力装置などコンピュータのハードウェア資源の管理、外部の別の装置やネットワークとのデータ通信の制御などが主な役割で、コンピュータに電源が投入されると最初に起動し、電源が落とされるまで動作し続ける。

利用者に対するコンピュータの基本的な操作手段も提供し、入力装置による操作の受け付けや出力装置への情報の提示、基本ソフト自体が備える様々な機能の実行、記憶装置内に格納されたプログラムの起動や終了、ストレージに格納されたファイルやディレクトリの操作などを行うことができる。

アプリケーションソフトとの関係

基本ソフトの機能を利用し、OSの上で動作するソフトウェアを「アプリケーションソフト」(application software/応用ソフト)という。アプリケーションの開発者は、呼び出し規約(API:Application Programming Interface)に基づいて基本ソフトの提供する機能を利用することができ、開発の手間を省き操作性を統一することができる。

また、ハードウェアの仕様の細かな違いは基本ソフトが吸収してくれるため、ある基本ソフト向けに開発されたアプリケーションは、基本的にはその基本ソフトが動作する他のコンピュータでも使用できる。ただし、CPUの種類が異なるなど根本的な仕様が異なる場合は、同じOSでも機種ごとに調整されたプログラムが必要となる。

OSの種類

OSは動作する機器の種類や目的などに応じていくつかの異なるタイプに分かれる。最も一般的なのはパソコンやサーバなどの汎用コンピュータ向けの汎用OSで、サーバコンピュータの運用に特化した「サーバOS」、利用者が操作する端末での利用を想定した「クライアントOS」などに分かれる。

汎用OS以外にも、デジタル家電や産業機械などに制御用として組み込まれた特定目的の専用コンピュータの制御に特化した「組み込みOS」がある。中でも、乗り物の駆動装置の制御など、リアルタイム性の高い制御プログラムの実行に特化した設計のOSは「リアルタイムOS」と呼ばれる。

パソコン向けのOSとして広く利用されているものには米マイクロソフト(Microsoft)社の「Windows」シリーズや米アップル(Apple)社の「macOS」(旧Mac OS X)シリーズなどがある。サーバ向けのOSとしては「Linux」などのいわゆるUNIX系OSや、サーバ向けWindowsである「Windows Server」シリーズなどがよく知られる。スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器では米グーグル(Google)社の「Android」とApple社の「iOS」(iPad OS/watchOS)が市場を二分する。

OS 【Operating System】 ⭐⭐⭐

ソフトウェアの種類の一つで、機器の基本的な管理や制御のための機能や、多くのソフトウェアが共通して利用する基本的な機能などを実装した、システム全体を管理するソフトウェア。

CPU(MPU/マイクロプロセッサ)や主記憶装置(メインメモリ)、外部記憶装置(ストレージ)、入出力装置などコンピュータのハードウェア資源の管理、外部の別の装置やネットワークとのデータ通信の制御などが主な役割で、コンピュータに電源が投入されると最初に起動し、電源が落とされるまで動作し続ける。

利用者に対するコンピュータの基本的な操作手段も提供し、入力装置による操作の受け付けや出力装置への情報の提示、オペレーティングシステム自体が備える様々な機能の実行、記憶装置内に格納されたプログラムの起動や終了、ストレージに格納されたファイルやディレクトリの操作などを行うことができる。

アプリケーションソフトとの関係

オペレーティングシステムの機能を利用し、OSの上で動作するソフトウェアを「アプリケーションソフト」(application software/応用ソフト)という。アプリケーションの開発者は、呼び出し規約(API:Application Programming Interface)に基づいてオペレーティングシステムの提供する機能を利用することができ、開発の手間を省き操作性を統一することができる。

また、ハードウェアの仕様の細かな違いはオペレーティングシステムが吸収してくれるため、あるオペレーティングシステム向けに開発されたアプリケーションは、基本的にはそのオペレーティングシステムが動作する他のコンピュータでも使用できる。ただし、CPUの種類が異なるなど根本的な仕様が異なる場合は、同じOSでも機種ごとに調整されたプログラムが必要となる。

OSの種類

OSは動作する機器の種類や目的などに応じていくつかの異なるタイプに分かれる。最も一般的なのはパソコンやサーバなどの汎用コンピュータ向けの汎用OSで、サーバコンピュータの運用に特化した「サーバOS」、利用者が操作する端末での利用を想定した「クライアントOS」などに分かれる。

汎用OS以外にも、デジタル家電や産業機械などに制御用として組み込まれた特定目的の専用コンピュータの制御に特化した「組み込みOS」がある。中でも、乗り物の駆動装置の制御など、リアルタイム性の高い制御プログラムの実行に特化した設計のOSは「リアルタイムOS」と呼ばれる。

パソコン向けのOSとして広く利用されているものには米マイクロソフト(Microsoft)社の「Windows」シリーズや米アップル(Apple)社の「macOS」(旧Mac OS X)シリーズなどがある。サーバ向けのOSとしては「Linux」などのいわゆるUNIX系OSや、サーバ向けWindowsである「Windows Server」シリーズなどがよく知られる。スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器では米グーグル(Google)社の「Android」とApple社の「iOS」(iPad OS/watchOS)が市場を二分する。

アプリケーションソフト 【アプリ】 ⭐⭐⭐

ある特定の機能や目的のために開発・使用されるソフトウェア。利用者が目的に応じて導入し、オペレーティングシステム(OS)の上で動作させる。

現代のコンピュータではOSが機器(ハードウェア)を管理・制御しており、アプリケーションソフトはOSの機能を利用して動作する。「アプリケーション」(application)あるいは「アプリ」(app)と略されたり「応用ソフト」と訳されることもある。

用途や目的に応じて多種多様なアプリケーションソフトがあり、日常的に利用される代表的なものだけでも、ワープロソフトや表計算ソフト、画像閲覧・編集ソフト、動画・音楽再生ソフト(メディアプレーヤー)、ゲームソフト、Webブラウザ、電子メールソフト、カレンダー・スケジュール管理ソフト、電卓ソフト、カメラ撮影ソフト、地図閲覧ソフトなどがある。

企業などの業務で使われる、プレゼンテーションソフトやデータベースソフト、財務会計ソフト、人事管理ソフト、在庫管理ソフト、プロジェクト管理ソフト、文書管理ソフト、生産管理ソフトなどもアプリケーションソフトの一種である。

提供方法の違い

アプリケーションソフトは無償配布あるいは販売されているパッケージを利用者が入手・購入してオペレーティングシステム(OS)に組み込む作業を行うことで使用可能となる。この作業を「インストール」(install/installation)という。OS製品の中にはいくつかのアプリケーションソフトがあらかじめ組み込まれている(プリインストール)ものもある。

大企業や官公庁などが自社の業務に用いるアプリケーションソフトの中には、市販のパッケージソフトではなく自社で開発、あるいは外部の専門の事業者に委託して開発させた「カスタムアプリケーション」もある。市販のものに比べ開発コストはかかるが、自社業務に特化した仕様となっている。

業務などで用いる大規模なアプリケーションソフトの場合、コンピュータに導入された単体のソフトウェアで機能が完結しているとは限らず、機能やデータを提供する「サーバ」と利用者が操作する「クライアント」が連携して動作する「クライアントサーバ型」の構造になっているものもある。

モバイルアプリ/Webアプリ

近年ではスマートフォンやタブレット端末などの携帯機器にタッチ操作できるアプリケーションソフトを導入してパソコンなどの代わりに利用する場面が増えている。これらは「モバイルアプリケーション」と呼ばれ、慣用的に「アプリ」(app)と略されることが多い。

スマートフォンなどには機器や専用OSの開発元が「アプリストア」と呼ばれるネットサービスにアクセスするためのアプリをあらかじめ組み込んで販売しており、利用者はストアからほしいアプリを選んで端末に組み込んで使用する。iPhoneなどのiOS端末では米アップル(Apple)社の「App Store」のみが利用でき、Android端末では米グーグル(Google)社の「Google Playストア」が標準的なストアである。

また、SNSやECサイトなどのネットサービスでは、Webサイトに動的な要素を組み込んでアプリケーションソフトのように振る舞わせ、Webブラウザから操作する方式も広く普及している。このような実装形態を「Webアプリケーション」と呼ぶ。

他のソフトウェアとの違い

コンピュータのハードウェアに対する基本的な制御機能や、様々なソフトウェアが共通して利用する機能をまとめたソフトウェアは「オペレーティングシステム」(OS:Operating System、基本ソフト)と呼ばれる。また、OSとしての制御機能は持たないが、多くのアプリケーションソフトが必要とする特定分野のまとまった機能を提供するソフトウェアは「ミドルウェア」(middleware)と呼ばれる。

アプリケーションソフトの中でも、ファイルやフォルダの圧縮・解凍や、コンピュータウイルスの探知・駆除、記憶装置(メモリ・ストレージ)管理など、システムや他のソフトウェアの機能を補ったり、性能や操作性、安全性を向上させたりするものは「ユーティリティソフト」(utility software)と呼び、アプリケーションソフトとは別の分類とする場合もある。

アプリケーションソフトという用語や分類は、パソコンのように利用者が目的に応じて後からソフトウェアを追加して使用できる汎用コンピュータについて主に用いられ、組み込みソフトウェア(家電の制御ソフトなど)や特定用途の専用コンピュータなどでは、OSなどのシステム系のソフトウェアとアプリケーションソフトの区別や境目が明確でない場合もある。

プログラム ⭐⭐⭐

予定(表)、計画(表)、課程、式次第などの意味を持つ英単語。ITの分野では、コンピュータに行わせる処理を記述したコンピュータプログラムのことを略して単にプログラムということが多い。

コンピュータプログラム (computer program)

コンピュータが行うべき処理を順序立てて記述したもの。広義の「ソフトウェア」の一部であるが、実用上はプログラムとソフトウェアはほとんど同義のように扱われることが多い。

現代のコンピュータではプログラムは一定の形式に従ってデータとして表現され、記憶装置(メインメモリ)に格納される。実行時にはCPU(中央処理装置)がプログラムに記述された命令を順番に読み出して解釈・実行していく。

プログラムを作成する作業や工程を「プログラミング」(programming)、これを行う人や職種のことを「プログラマ」(programmer)という。人間がプログラムを記述する際には、人間が理解しやすい人工言語である「プログラミング言語」(programming language)を使うことが多い。プログラミング言語で記述されたプログラムを「ソースコード」(source code)という。

ソースコードはコンピュータが解釈・実行することができないため、コンパイラなどの変換ソフトによってコンピュータが解釈・実行できる機械語(マシン語)などで構成された「オブジェクトコード」(object code)に変換されてから実行される。スクリプト言語のように、この変換処理を開発時には行わず、実行時にインタプリタなどのソフトウェアによって動的に行う場合もある。

ソースコード 【ソースプログラム】 ⭐⭐

プログラミング言語などの人間が理解・記述しやすい言語やデータ形式を用いて書き記されたコンピュータプログラムのこと。プログラムに限らず、人工言語や一定の規約・形式に基いて記述された複雑なデータ構造の定義・宣言などのこともソースコードと呼ぶ場合がある。

コンピュータへの指示や一連の処理手順などをプログラミング言語によって文字データの羅列として表記したもので、そのままではコンピュータ(のCPU)では実行できないため、CPUが直に解釈できる命令コードの体系である機械語(マシン語)によるプログラムに変換されて実行される。

変換後の機械語による実行可能プログラムを「オブジェクトコード」(object code)、「オブジェクトプログラム」(object program)、「ネイティブコード」(native code)、「ネイティブプログラム」(native program)、「バイナリコード」(binary code)などと呼ぶ。

実行可能形式への変換

ソースコードからオブジェクトコードへの変換はソフトウェアによって自動的に行うのが一般的となっている。アセンブリ言語で記述されたソースコードを変換することを「アセンブル」(assemble)、そのようなソフトウェアを「アセンブラ」(assembler)という。

アセンブリ言語以外の高水準言語で記述されたソースコードを一括して変換することは「コンパイル」(compile)と言い、そのようなソフトウェアを「コンパイラ」(compiler)という。実行時に少しずつ変換しながら並行して実行するソフトウェアもあり、「インタプリタ」(interpreter)と呼ばれる。

開発時にソースコードから直接オブジェクトコードへ変換せずに、特定の機種やオペレーティングシステム(OS)の仕様・実装に依存しない機械語風の独自言語による表現(中間コード)に変換して配布し、実行時に中間コードからCPU固有の機械語に変換するという二段階の変換方式を用いる言語や処理系もある。

ソースコードの作成

ソースコードは多くの場合、人間がキーボードなどを操作して文字を入力して記述する。この作業・工程を「コーディング」(coding)という。ソースコードはテキストデータの一種であるため文書編集ソフトで作成することはできず、テキストエディタや統合開発環境(IDE)に付属する専用のコードエディタなどを用いることが多い。

必ずしも人間が記述するとは限らず、何らかの元になるデータや入力からソフトウェアによって生成したり、別の言語で記述されたソースコードを変換して生成したり、オブジェクトコードを逆変換してソースコードに戻したりといった方法で、ソフトウェアが自動的・機械的に作成する場合もある。

ソースコードの公開・非公開

日本を含む多くの国でソースコードは著作物の一種として著作権で保護されている。販売される商用ソフトウェア製品の多くは、ソースコードを企業秘密として非公開とし、人間に可読でない中間コードやオブジェクトコードによる実行プログラムのみを利用者に提供している。

一方、ソースコードを公開し、誰でも自由に入手、利用、改変、再配布、販売などができるようにしている場合もある。そのようなソフトウェアを、ソースコードがオープンになっているという意味で「オープンソースソフトウェア」(OSS:Open Source Software)という。ボランティアのプログラマが個人あるいは共同で開発しているソフトウェアに多いが、企業がOSSを開発・公開している例も多く見られる。

ホーム画面への追加方法
1.ブラウザの 共有ボタンのアイコン 共有ボタンをタップ
2.メニューの「ホーム画面に追加」をタップ
閉じる