高校「情報Ⅰ」単語帳 - 実教出版「図説情報Ⅰ」 - 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築

ICタグ 【IC tag】

コンピュータシステムによる自動的な物品の認識・識別に用いられる、無線通信のためのICチップを内蔵した小さな荷札(タグ)などのこと。

内蔵した半導体メモリに固有の識別番号などの情報を記憶し、外部の読み取り装置からの電波に応答して送信する。物体に取り付けた電子タグと無線で更新して存在の認識や識別を自動化するシステムをRFID(Radio Frequency Identification)という。

形状やサイズは用途や性能に応じて様々で、荷札のようなラベル型の他にもカード型、コイン型、スティック型などがある。通信可能距離は数cm程度と装置に近接させて使用する前提のものから、最長で100m程度までのものがある。

物流における商品や荷物の識別、移動や加工などの履歴の記録や追跡、小売店舗での商品の単品管理や盗難防止(万引き防止タグ)、図書館の蔵書管理などに応用されている。

バーコードタグとの違い

従来のバーコードが記載されたタグは人の手で読み取り装置をかざして一つずつ読み取る必要があるが、電子タグでは装置を一定の距離に近接させるだけでよく、近くにある複数のタグを同時に読み取ることができ、作業の自動化や省力化、高速化が可能となる。

無線を用いるため、金属に覆われて通信できない状況にならないよう注意すれば、タグの表面は必ずしも露出していなくてよく、物品が積み重なっていたり梱包したままでもよい。表面の汚れなどを気にする必要もない。

識別情報は半導体メモリに格納されており、フラッシュメモリなどを記憶媒体とするものは外部との通信により内容の追加や書き換え、消去に対応しているものもある。複雑で高度な情報の管理やタグの再利用などが可能である。

アクティブタグとパッシブタグ

構造の違いにより、アクティブタグ(active tag/能動タグ)とパッシブタグ(passive tag/受動タグ)、両者の中間のセミアクティブタグ(semi-active tag/電源内蔵だが受動的にしか動作しない)に分類される。

アクティブタグは内部に電池を内蔵し、その電力により通信回路を駆動して通信する。数十m程度と遠距離の通信が可能で、一定時間ごとに定期的に情報を送信するといった能動的な使い方ができる。構造が複雑で部品点数が多いため一定以上の小型化や低コスト化は難しく、また、電池切れにより機能を停止する。

パッシブタグは内部に電源を持たず、外部からの無線通信用の電波から電力を得て回路を駆動する。周波数帯や通信方式によっても異なるが、数十cmから数mまで通信可能なものある。電源が不要で壊れなければ半永久的に使用でき、10円以下といった極めて低コストの製品や数mm角といった極めて小さな製品が開発されている。

QRコード 【Quick Response code】

データを平面上の正方形の領域に表された図形パターンで表すことができる2次元コードの方式の一つ。現在のデンソーウェーブが1994年に開発したもので、「QRコード」は同社の登録商標。1999年にJIS X 0510、2000年にISO/IEC 18004として標準化され、様々な分野で広く普及している。

小さな正方形の点を縦横同じ数だけ並べたマトリックス型2次元コードで、一辺に21個並べた「バージョン1」から、177個並べた「バージョン40」まで、40通りの仕様が用意されている。点の数が多いほうがたくさんの情報を記録できるが、必要な面積は大きくなっていく。

コード領域の三方の角には、中心が黒く塗りつぶされた大きな「回」の字型の「切り出しシンボル」(ファインダパターン)が配置されており、360度どの向きから読み取っても正確に情報が読み出せるようになっている。

記録できる情報量はバージョン40の場合で最大23,648ビットである。文字は独自のコード体系および符号化方式で表され、カナや漢字を含む文字列は最長1,817文字、アルファベットと数字だけなら4,296文字、数字だけなら7,089文字まで記録できる。

データには冗長性を持たせてあり、一部が汚損して読み取れなくてもデータを復元することができる。誤り訂正率は5段階から選択でき、最も低いもので約7%、最も高いもので約50%までの汚損に対応できる。誤り訂正率は高いほどより多くの冗長なデータが必要となるため、記録できるデータ量はその分少なくなる。

同社では自動車工場のカンバン(現品札)の自動読み取り、倉庫や配送の管理の効率化など、産業機器の自動化推進の一環としてQRコードを開発したが、汎用性の高さ、データ密度の高さ、高度な誤り訂正機能、読み取り向きが自由であるなど使い勝手の良さ、関連特許を開放して利用料を求めなかったことなどから、IT分野を中心に広く浸透している。

携帯電話のカメラ機能と組み合わせてインターネット上のURLやメールアドレス、サービス上のID情報などの告知や伝達に使われたり、乗り物の乗車券や搭乗券、イベントや施設のチケットレス入場、キャッシュレス決済などでよく用いられる。

IoT 【Internet of Things】 ⭐⭐⭐

コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステムや、人間の検針員に代わって電力メーターが電力会社と通信して電力使用量を申告するスマートメーター、大型の機械などにセンサーと通信機能を内蔵して稼働状況や故障箇所、交換が必要な部品などを製造元がリアルタイムに把握できるシステムなどが考案されている。

これまでの情報システムとの違いとして、個々の機器の取り扱うデータ量や処理量、通信量は少ないが機器の数が桁違いに膨大であることや、従来のコンピュータ製品が人の周りや特定の場所(建物や部屋)に集中しているのに対しIoT機器は世の中の様々な場所に分散して配置される点などがある。

こうした特徴を反映し、低コストで生産でき低消費電力で稼働するICチップや、多数の機器からデータを集約して解析したり、同時に多数の機器を制御するソフトウェア技術、低消費電力で遠距離通信が可能な無線技術、環境中から微小なエネルギーを取り出す技術(エナジーハーベスティング)などの研究・開発が進められている。

LPWA (Low Power Wide Area)

IoTに必須の要素として、装置の消費電力が少なく、多数の機器を一つのネットワークに収容できる広域的な無線通信技術があり、これを「LPWA」(Low Power Wide Area)と総称する。そのような通信方式で構築されたネットワークは「LPWAN」(Low Power Wide Area Network)とも呼ばれる。

IoTを実現するには、携帯電話網など従来からある広域無線技術に比べ、十~数十kmといった遠距離や広い範囲をカバーでき、乾電池などの乏しい電源でも数か月から数年は稼働できることが求められる。一方、人間がスマートフォンなどの通信機器に求めるような高速なデータ伝送能力は必ずしも必要なく、数十~数百kbps(キロビット毎秒)程度あれば実用に供することができる。

このような特性を備えた新しい通信方式をLPWAと呼び、具体的な規格として「Sigfox」「LoRa」「Wi-Fi HaLow」「Wi-SUN」「LTE-M」「NB-IoT」「RPMA」などの方式が提唱されている。

M2M/センサネットワークとの違い

以前から、機器同士を直接繋いで自律的にシステムを運用する「M2M」(Machine to Machine)や、通信可能なセンサーを分散配置して高度な監視や制御を可能にする「センサネットワーク」(WSN:Wireless Sensor Network)などの概念が存在し、これらはかなりの部分がIoTと重複している。

ただし、IoTはインターネットへの接続を前提とするのに対し、これらの技術は閉じた専用ネットワークや独自プロトコル(通信規約)での運用を想定している場合が多い。また、M2Mやセンサネットワークは特定の目的のために機械同士が情報のやり取りすることで処理が完結する仕組みであることが多いのに対し、IoTは接続された機器と人や外部の情報システムとの相互関係がより重視される傾向がある。

IoE (Internet of Everything)

「ありとあらゆるものが接続されたインターネット」という意味で、モノのインターネットと、人やデータ、情報、ソフトウェアなどが中心の従来からあるインターネットが統合された姿を指す。

とはいえ、従来のインターネットとの違いは多数のモノが接続されている点であるため、実際上はIoTとほぼ同義として用いられることが多い。主に米シスコシステムズ(Cisco Systems)社が提唱している用語である。

SNS 【Social Networking Service】 ⭐⭐⭐

人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス。友人・知人間のコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供したり、趣味や嗜好、居住地域、出身校、あるいは「友人の友人」といった共通点や繋がりを通じて新たな人間関係を構築する場を提供するサービスで、Webサイトや専用のスマートフォンアプリなどで閲覧・利用することができる。

主な特徴

サービスにより機能や特徴が大きく異なるが、多くのサービスに見られる典型的な機能としては、別の会員を「友人」や「購読者」「被購読者」などに登録する機能、自分のプロフィールや写真を公開する機能、同じサービス上の別の会員にメッセージを送る機能、自らのスペースに文章や写真、動画などを投稿して友人などに見せる機能がある。

サービスによっては、複数の会員でメッセージ交換や情報共有ができるコミュニティ機能、イベントの予定や友人の誕生日などを共有したり当日に知らせたりしてくれるカレンダーあるいはスケジュール機能などがある。

多くの商用サービスではサイト内に広告を掲載するなどして、登録や基本的なサービスの利用を無料としているが、一部の機能を有料で提供しているサービスもある。

SNSの種類

多くのサービスはメールアドレスなどがあれば誰でも登録できるが、普及し始めた当初は人の繋がりを重視して「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっているサービスが多かった。

現在でも、何らかの形で参加資格を限定し、登録時に紹介や審査などが必要なサービスがある。また、参加自体が自由でも、テーマや分野などがあらかじめ設定され、関係や関心のある人の参加を募っているサービスなどもある。

企業などが従業員を対象に運用する「社内SNS」や、大学が教職員や在学生、卒業生を対象に運用する「学内SNS」もあり、業務上の連絡や情報共有に使われたり、業務とは切り離して参加者間の交流の促進のために利用されたりする。「OpenPNE」や「Mastodon」など自らSNSを開設・運用することができるサーバ向けソフトウェアもあり、これを利用したプライベートな集団内のサービスも存在する。

歴史と著名なサービス

2003年頃アメリカを中心に相次いで誕生し、国内事業者によるサービスも2004年頃から普及し始めた。世界的には、初期に登録資格を有名大の学生に絞って人気を博し、後に世界最大のソーシャルネットワークに成長した「Facebook」(フェイスブック)や、短いつぶやきを投稿・共有するマイクロブログ型の「Twitter」(ツイッター:現X)、写真の投稿・共有を中心とする「Instagram」(インスタグラム)、ビジネス・職業上の繋がりに絞った「LinkedIn」(リンクトイン)などが有名である。

日本独自のサービスとしては一時会員数1000万人を超え社会現象ともなった「mixi」(ミクシィ)などが有名だが、近年ではFacebookなど海外事業者に押され利用が低迷しており、オンラインゲーム運営・提供に業態転換するなどしている。

SNS的なサービスの広がり

近年では様々なWebサイトやネットサービス、スマートフォンアプリなどに「ソーシャルな」機能が組み込まれる事例が増えており、何がSNSで何がそうでないか明確に区別することは難しくなりつつある。

例えば、料理レシピ投稿サイトの「クックパッド」(Cookpad)や、スマートフォン利用者間でチャットや音声通話などを提供する「LINE」(ライン)などにも、集団の形成を支援するコミュニティ機能や日記の投稿・共有機能などがあり、これらのサービスをSNSの一種に含める場合もある。

SNSの功罪

SNSによって、一度繋がりの途絶えた古い友人と交流を再開したり、現実に頻繁に会うことは難しい多人数と日常的な繋がりを保ったり、身の回りに同好の士がいなくてもSNSで発見してコミュニティを形成できるなど、SNSのおかげで人間関係が充実した利用者は数多くいる。

一方で、不用意に個人情報や顔写真などを公開してしまい悪意に晒されたり、素性のよくわからない人と交流を持ちトラブルに巻き込まれたり、自分の周囲では特に問題視されなかった話がネット上で拡散されるうちに非難の書き込みが殺到してしまう(「炎上」と呼ばれる現象)など、SNSによって新たに引き起こされる問題もある。

また、SNSが様々な人の間に普及し、継続して利用する期間が長くなるに連れ、上司や家族など「望まれざる」相手とのSNS上での関係や対応に苦慮したり、知り合いの(大抵は良いことしか書かれていない)書き込みを読んで自分の身上と比較してしまったり、興味が湧かない話題でも毎回反応を迫られているように感じて精神的に疲弊する「SNS疲れ」といった問題に直面し、SNSの利用を断って離れる人も増えている。

Twitter 【ツイッター】

今していること、感じたこと、他の利用者へのメッセージなどを「つぶやき」のような形式で280文字(日本語などは140文字)以内の短い文章にして投稿するスタイルのブログサービス。

短文を投稿していくスタイルのサイトは当初「ミニブログ」「マイクロブログ」などと分類されたが、現在ではFacebook(フェイスブック)などと同じSNSサービスの一種であるとみなされることが多い。“twitter”とは英語で、さえずる、ぺちゃくちゃ喋る、くすくす笑う、といった意味の英単語で、日本では「ツイッター」「トゥイッター」などと発音される。英語では “t” の音はあまり強調されず「トゥイラァ」に近い発音となる。

Twitterは2006年7月に米オブビアス(Obvious)社(現Twitter社)によって英語版のサービスが開始された。その後、日本国内での利用が米国内に次いで多かったことから、2008年4月に他言語版としては初となる日本語版のサービスが開始された。

2017年には全世界で3億2000万人以上、そのうち日本には4500万人以上のアクティブな利用者が存在すると発表されており、世界的に展開しているSNSサービスの中では日本で突出して人気の高いサービスとしても知られる。

Twitterはメールアドレスなどを登録すれば誰でも無料で利用できる。加入すると自分専用のWebページが作成され、そこに自分の発言を投稿する。Twitterにおける個々の発言は「ツイート」(tweet)と呼ばれる。

特定の他の利用者に向けて「あて先」を指定する書式も用意されており、文字通り「おしゃべり」に使うこともできる。公開アカウントの発言はWeb上に広く公開され、Twitter加入者以外も読むことができるが、アカウントを非公開設定にすれば、特別に関係を結んだ利用者以外は読むことができなくなる。

「フォロー」(follow)と呼ばれる機能で他の利用者を登録すると、その人の発言をリアルタイムに受信することができる。通常の操作画面では自分の発言とフォローした人の発言が(原則として)時系列に並んで次々に新しい発言が追加されていくようになっており、この発言の流れを「タイムライン」(TL:Time Line)という。他の利用者が自分をフォローして発言を受信することもあり、これを自分の「フォロワー」(follower)という。

他のSNSサービスの「友達」機能とは異なり、フォローは一方向の関係であり、フォローした相手が自分をフォローするとは限らない。友人・知人などの間柄では互いにフォローし合う「相互フォロー」の関係を結ぶことも多いが、有名人のアカウントなどは本人がフォローする人に比べフォロワーの方が桁違いに多い場合もある。

ツイート (tweet)

Twitterにおける一回分の書き込みを「ツイート」(tweet)と呼び、発言を投稿することを「ツイートする」(tweeting)という。日本語では「つぶやき」と呼ばれることもある。“tweet”の原義は「(小鳥の)さえずり」で、短い発言を頻繁に投稿する様子を鳥のさえずりになぞらえている。

当初はどの言語でも一回の発言は140文字以内に制限されていたが、現在では英語などは280文字までで、日本語や中国語、韓国語などの文字は2文字分にカウントされる(すべて日本語なら140文字まで)。発言内にいわゆるUnicode絵文字を混在させたり、画像や動画、GIFアニメーション、GPS位置情報などを添付して発言とともに表示させることもできる。

リツイート (RT/retweet)

Twitterで他の利用者の発言を転載すること。また、転載した発言。自分のフォロワーのタイムラインにその発言を知らせるために行なう。

当初は「RT @ユーザー名 当該発言」のような書式で、自分の発言としてつぶやく方式だったが、その後、Twitter社が公式の機能として実装し、自分の発言とは区別して元の発言をそのままフォロワーに流すことができるようになった。

また、単に発言をそのまま転載するだけでなく、自らの発言を添えてタイムラインに掲載することもでき、「引用リツイート」(引用RT)あるいは「QT」(Quoted Tweet)などと呼ばれる。

人工知能 【AI】 ⭐⭐⭐

人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断をコンピュータを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたもの。

人類は未だに人間の脳の振る舞いや知能の仕組みを完全には解明していないため、AIにも明快な定義は与えられていない。また、情報技術の進歩に伴って時代によってAIとされるシステムの具体的な内容は大きく変化してきている。

特に、前の時代にAIの一分野として研究・開発が進められていたものが、技術が成熟し実用化や普及が進むとAIとは呼ばれなくなり、より高度で研究途上のものが新たにAIとして注目される傾向がある。この現象は「AI効果」と呼ばれ、例として文字認識技術(OCR)や検索エンジン、かな漢字変換システム、ロボット掃除機などが挙げられる。

2000年代後半以降にAIとされるものは、大量のデータから規則性やルールなどを学習し、与えられた課題に対して推論や回答、情報の合成などを行う機械学習(ML:Machine Learning)を基礎とするものが主流となっている。

特に、人間の神経回路を模したニューラルネットワーク(NN:Neural Network)で深い階層のモデルを構築し、精度の高い推論を行うディープラーニング(深層学習)研究に大きな進展があり、これに基づく研究や開発が盛んになっている。

応用分野として、チェスや将棋、将棋など知的なゲームで対局するシステム、画像や映像に映る物体や人物を識別する画像認識システム(コンピュータビジョン)、人間の発話を聞き取って内容を理解する音声認識システム、言葉を組み立てて声として発する音声合成システム、ロボットや自動車など機械の高度で自律的な制御システム(自動運転など)、自動要約や質問応答システム、高度で自然な機械翻訳といった様々な自然言語処理などがよく知られる。

データマイニング

蓄積された大量のデータを統計学や数理解析などの技法を用いて分析し、これまで知られていなかった規則性や傾向など、何らかの未知の有用な知見を得ること。

「マイニング」(mining)とは「採掘」の意味で、膨大なデータの集積を鉱山に、そこから有用な知見を見出すことを資源の採掘になぞらえている。適用分野や目的、対象となるデータの種類は多種多様だが、ビジネスの分野では企業が業務に関連して記録したデータ(過去の取引記録、行動履歴など)を元に、意思決定や計画立案、販売促進などに有効な知見を得るために行われることが多い。

例えば、小売店の商品の売上データの履歴は、それ自体は会計上の手続きや監査などの業務にしか使われないが、データマイニングの手法で統計的に処理することで、これまで知られていなかった「商品Aと商品Bを一緒に購入する顧客が多い」といった傾向が分かる場合がある。これにより、AとBの売り場を統合するといった販売促進施策を行うことが可能となる。

商業分野だけでなく、自然言語処理やパターン認識、人工知能などの研究などでも利用される。分析・解析の手法も様々だが、代表的な手法としては、頻度の高いパターンの抽出や、相関関係にある項目の組の発見、データの特徴や共通点に基づく分類、過去の傾向に基づく将来の予測などがある。

近年では、一般的なシステムやソフトウェアでの解析が困難な巨大なデータセットである「ビッグデータ」を対象とした解析手法や、人工知能の一分野である機械学習、特に先進的な手法である「ディープラーニング」を応用したマイニング手法などが活発に研究・開発されている。

データサイエンス

統計解析や数理解析、コンピュータによる処理などを駆使して大量のデータを解析・分析し、有用な知見を導く手法を研究する学問領域。

現代ではコンピュータや通信技術の発達で大量のデータの記録や蓄積、伝送が可能となった。これを様々な手法を駆使して処理、解析し、学術研究やビジネスなど人間の社会的な活動にとって有用な知見を導き出す方法論を研究するのがデータサイエンスである。

人間の知的活動と機械によるデータ処理を橋渡しするという性質上、様々な既存の学問や技術を横断的に活用する学際的な側面を持っている。統計や数理解析、線形代数、機械学習、データモデリングなどの数理科学やコンピュータ科学の知見、データベース操作やデータ形式の理解、プログラミング、データ加工・変換・処理といったエンジニアリング領域の技法が総合的に求められる。

データサイエンスを修め、あるいは研究する人材を「データサイエンティスト」(data scientist)という。日本では2011年頃からビッグデータ活用の重要性が叫ばれるようになるなか、データ活用を推進する具体的な人材像として2013年頃からデータサイエンティストという職種が認識され始めた。十分な技能を持ったデータサイエンティストは常に人材不足であるとされ、今後もそのニーズは高まっていくと予想されている。

ビッグデータ ⭐⭐⭐

従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しいような巨大なデータ群。明確な定義があるわけではなく、企業向け情報システムメーカーのマーケティング用語として多用されている。

多くの場合、ビッグデータとは単に量が多いだけでなく、様々な種類・形式が含まれる非構造化データ・非定型的データであり、さらに、日々膨大に生成・記録される時系列性・リアルタイム性のあるようなものを指すことが多い。

今までは管理しきれないため見過ごされてきたそのようなデータ群を記録・保管して即座に解析することで、ビジネスや社会に有用な知見を得たり、これまでにないような新たな仕組みやシステムを産み出す可能性が高まるとされている。

米大手IT調査会社ガートナー(Gartner)社では、ビッグデータを特徴づける要素として、データの大きさ(Volume)、入出力や処理の速度(Verocity)、データの種類や情報源の多様性(Variety)を挙げ、これら3つの「V」のいずれか、あるいは複数が極めて高いものがビッグデータであるとしている。これに価値(Value)や正確性(Veracity)を加える提案もある。

コンピュータやソフトウェアの技術の進歩は速く、具体的にどのような量や速度、多様さであればビッグデータと言えるかは時代により異なる。ビッグデータという用語がビジネスの文脈で広まった2010年代前半にはデータ量が数テラバイト程度のものも含まれたが、2010年代後半になるとペタバイト(1000テラバイト)級やそれ以上のものがこのように呼ばれることが多い。

近年ではスマートフォンやSNS、電子決済、オンライン通販の浸透により人間が日々の活動で生み出す情報のデータ化が進み、また、IoT(Internet of Things)やM2M、機器の制御の自動化などの進展により人工物から収集されるデータも爆発的に増大している。

また、人工知能(AI)の構築・運用手法として、膨大なデータから規則性やルールなどを見出し、予測や推論、分類、人間の作業の自動化などを行う機械学習(ML:Machine Learning)、中でも、多階層のニューラルネットワークで機械学習を行う深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる手法が台頭している。

このような背景から、膨大なデータを的確、効率的に扱う技術上の要請はますます高まっており、統計やデータ分析、大容量データを扱う手法やアルゴリズムなどに精通した「データサイエンティスト」(data scientist)と呼ばれる専門職の育成が急務とされている。

ユニバーサルデザイン 【UD】 ⭐⭐⭐

すべての人が等しく使うことができる、あるいは使いやすいデザイン・設計のこと。より現実的には、なるべく多くの人が同じように使えることを目指すデザイン原則を表す。

言語や文化、人種、性別、年齢、体型、利き腕、障害の有無や程度といった違いによらず、できるだけ多くの人が同じものを同じように利用できるよう配慮されたデザインのことを意味する。

「バリアフリー」を始めとする従来の考え方では、「高齢者用」「左利き用」「車椅子用」のように特性に応じた専用のデザインを用意する発想が基本だったが、ユニバーサルデザインではこうした発想を極力排し、単一のデザインで万人が利用できることを目指している。

ユニバーサルデザインという用語は1985年に米ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス(Ronald Mace)教授によって提唱されたが、それ以前から実践されていた考え方を整理して名前をつけたものとされる。氏はユニバーサルデザインの7つの原則として「公平に使える」「柔軟性がある」「簡単で自明」「必要なことがすぐに理解できる」「間違いを許容する」「弱い力で使える」「十分な大きさと空間」を唱えている。

ユニバーサルデザインの具体例として、施設内の案内などを言葉ではなく絵文字で伝えるピクトグラム、様々な視覚特性を持つ人による調査・テストを経て開発された視認性の高いフォント、容器に刻まれた凹凸を触れば何が入っているか識別できるシャンプーやコンディショナー、手や指の状態によらず持ちやすく使いやすい文房具やカトラリーなどがある。

アクセシビリティ ⭐⭐⭐

近づきやすさ、利用しやすさ、などの意味を持つ英単語で、IT分野では、機器やソフトウェア、システム、情報、サービスなどが身体の状態や能力の違いによらず様々な人から同じように利用できる状態やその度合いのことを指す。

高齢や障害、病気、あるいは他の身体的・認知機能的な特性により運動や視聴覚機能に制約や偏りがあっても、機器やソフトウェアの操作、情報の入手、ネットサービスの利用などが可能である状態を意味する。

例えば、マウスなどによる画面上の位置指定が困難な場合に備え、キーボードやボタン型の入力装置、音声認識など他の入力機能のみで操作が行えるようにしたり、視力や視覚の状況に応じて、画面表示や文字の拡大、画面上の文字の読み上げなどの機能を選択できるといったように、様々な人が利用できるような備えが行われている状態を指す。

単にアクセシビリティといった場合はWebページについての「Webアクセシビリティ」のことを指すことが多い。また、IT分野以外でも、例えば建物や施設、設備などへの出入りや内部の移動のしやすさ、利用しやすさ(段差がない、スロープやエレベーターが整備されている等)のことをアクセシビリティということもあるが、これは日本語では「バリアフリー」(barrier free)という外来語で表現されることが多い(厳密にはバリアフリーはアクセシビリティより狭い概念を指すとする見解もある)。

デジタルデバイド 【情報格差】 ⭐⭐

パソコンやスマートフォン、インターネットなどのデジタル技術に触れたり使いこなしたりできる人と、そうでない人の間に生じる、貧富や機会、社会的地位などの格差。個人や集団の間に生じる格差と、地域間や国家間で生じる格差がある。

コンピュータや通信ネットワークが職場や日常生活に深く入り込み、それを活用できる者はより豊かで便利な生活や、高い職業的、社会的地位を獲得できる一方、何らかの理由により情報技術の恩恵を受けられない人々は社会から阻害され、より困難な状況に追い込まれてしまう。こうした状況をデジタルデバイドという。

主な要因

デジタルデバイドは様々な要因により発生し、拡大する。例えば、子どもや若者は技術や知識を比較的容易に習得し、進んで習慣的に利用するようになることが多いが、中高年や高齢者が新たにコンピュータの操作法などを覚えるのは困難で、生活習慣に取り入れることにも抵抗感があることが少なくない。

また、貧困のために情報機器やソフトウェア、サービスなどの購入が困難だったり、身体機能の障害や発達特性などから機器の操作が困難で情報技術の恩恵を受けられない場合もある。元々存在した様々な格差がデジタルデバイドにより拡大したり固定化してしまうという側面がある。

地域間の格差

地域や国家の単位でデジタルデバイドが生じることもある。通信インフラの普及度合いや、所得水準と情報機器の価格の関係、技術の習得・利用の前提となる十分な教育が受けられるか、インフラ整備や技術・機器の導入・教育を担う技術者などの人材が十分にいるか、といった点により、地域や国家ごとに格差が生じる。

ここでも、元々豊かな先進国やインフラがいち早く整備され人材豊富な大都市などが情報技術でさらに発展し豊かになる一方、情報技術に十分アクセスできない発展途上国や農村部などがデジタル環境でも取り残されるという、格差の拡大・固定化の問題がある。

サイバー犯罪 【ハイテク犯罪】 ⭐⭐

コンピュータや通信ネットワークを用いて行われる犯罪の総称。主にインターネット上で行われる犯罪行為を指すことが多い。

どのような行為が該当するかは各国の法律によって異なるが、日本では不正アクセス、DoS攻撃、ネット詐欺(フィッシングや架空請求など)、オンライン不正送金、著作物の無断複製や配布、わいせつ物などの公開や譲渡、SNSなどにおける誹謗中傷や業務妨害などが罪に問われる。

関連する法律としては刑法や不正アクセス禁止法、著作権法、不正競争防止法などがあり、法律上の罪種としては電磁的記録不正作出(データ改竄など)、電子計算機損壊等業務妨害(遠隔操作によるデータ消去など)、電子計算機使用詐欺(クレジットカード番号窃取・不正使用など)、不正指令電磁的記録作成(コンピュータウイルスの開発・配布など)、偽計業務妨害(ネット上の犯罪予告など)、著作権侵害、名誉毀損、信用毀損(風説の流布など)、わいせつ物公然陳列・頒布などが該当する。

犯人がインターネットを通じて犯行を行ったり、犯行現場がネット上であるようなものを指すことが多いが、クレジットカードのスキミングのように、ネットとは無関係に電子的な手段を利用した犯罪も含まれる。

サイバー犯罪自体は各国の刑事司法制度で裁かれるが、国家をまたぐ不正アクセス事件などに対処するため、2001年にサイバー犯罪条約が成立(発効は2004年)し、加盟諸国が国内法を整備して捜査などで協力している(日本は2012年批准)。

サイバー犯罪のうち、何らかの政治的な示威などのために大規模に行われる不正アクセスやDoS攻撃などのことを「サイバーテロ」(cyberterrorism)という。また、敵対する国家間や国家に準じる勢力の間で互いに攻撃を加え合う行為は「サイバー戦争」(cyberwarfare)という。

マルウェア 【悪意のあるソフトウェア】 ⭐⭐⭐

コンピュータの正常な動作を妨げたり、利用者やコンピュータに害を成す不正な動作を行うソフトウェアの総称。コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬などが含まれる。

“malicious software” (悪意のあるソフトウェア)を短縮した略語で、悪意に基づいて開発され、利用者やコンピュータに不正・有害な動作を行う様々なコンピュータプログラムを総称する。

コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェア、ボット、バックドア、一部の悪質なアドウェアなどが含まれる。キーロガーのように正規の用途で用いる場合もマルウェアとなる場合もあるものもある。

利用者の知らない間に、あるいは欺くような手法でコンピュータに侵入し、記憶装置に保存されたプログラムやデータを改変、消去したり、重要あるいは秘密のデータを通信ネットワークを通じて外部に漏洩したり、利用者の操作や入力を監視して攻撃者に報告したり、外部から遠隔操作できる窓口を開いたり、ネットワークを通じて他のコンピュータを攻撃したりする。

「マルウェア」という用語は専門家や技術者以外の一般的な認知度が低く、また、マルウェアに含まれるソフトウェアの分類や違いなどもあまり浸透していないため、マスメディアなどでは「コンピュータウイルス」という用語をマルウェアのような意味で総称的に用いることがある。

マルウェア対策

マルウェアに対抗するため、これを検知・駆除するソフトウェアを用いることがある。歴史的にウイルス対策から発展したため「アンチウイルスソフト」(anti-virus software)と呼ばれる。企業などでは伝送途上の通信内容からマルウェアを検知する「アンチウイルスゲートウェイ」なども用いられる。

マルウェアの検知には、ストレージ内のファイルなどを既知のマルウェアの特徴的なパターンと照合する「パターンマッチング法」や、マルウェアに特徴的な振る舞いを検知する「ヒューリスティック法」、隔離された実行環境で実際に実行してみる「ビヘイビア法」などの検知手法が用いられる。

マルウェアの中にはソフトウェアやハードウェアに存在する保安上の欠陥(脆弱性)を悪用して侵入・感染するものも多いため、セキュリティソフトなどに頼るだけでなく、老朽機材の入れ替え、ソフトウェアの適時の更新、不要な機能の停止などの対応も適切に行う必要がある。

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