高校「情報Ⅰ」単語帳 - 第一学習社「高等学校 情報Ⅰ」 - 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築

Society 5.0 【ソサエティ5.0】

日本政府の科学技術政策の中で提唱された未来社会の構想。ITの高度化と社会への浸透によりサイバー空間と物理空間を高度に融合し、経済の発展と社会課題の解決を図るとされる。

2016年度に始まった第5期科学技術基本計画の中で提唱されたコンセプトで、これまでの人類社会の変遷について、狩猟社会を「Society 1.0」、農耕社会を「2.0」、工業社会を「3.0」、現在の情報社会を「4.0」と位置付け、その次に訪れる段階という意味で「Society 5.0」を提唱している。

サイバーフィジカルシステム(CPS:Cyber-Physical System)を念頭に、ITシステム上に築かれたサイバー空間(仮想空間)と、我々が実際に暮らす現実世界(物理空間)を高度に連携、融合させる。産業や社会、人々の生活に革新(イノベーション)をもたらし、経済発展と社会の諸課題の解決を両立させた人間中心の社会を目指すとされる。

こうした社会を実現するための鍵となる技術として、クラウドコンピューティング、IoT(Internet of Things)およびセンシング技術、機械学習システムなどの人工知能(AI)技術、ビッグデータやデータ解析・シミュレーション技術、ロボットや自動運転車などの自動化技術などが挙げられている。

IoT 【Internet of Things】 ⭐⭐⭐

コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

自動車の位置情報をリアルタイムに集約して渋滞情報を配信するシステムや、人間の検針員に代わって電力メーターが電力会社と通信して電力使用量を申告するスマートメーター、大型の機械などにセンサーと通信機能を内蔵して稼働状況や故障箇所、交換が必要な部品などを製造元がリアルタイムに把握できるシステムなどが考案されている。

これまでの情報システムとの違いとして、個々の機器の取り扱うデータ量や処理量、通信量は少ないが機器の数が桁違いに膨大であることや、従来のコンピュータ製品が人の周りや特定の場所(建物や部屋)に集中しているのに対しIoT機器は世の中の様々な場所に分散して配置される点などがある。

こうした特徴を反映し、低コストで生産でき低消費電力で稼働するICチップや、多数の機器からデータを集約して解析したり、同時に多数の機器を制御するソフトウェア技術、低消費電力で遠距離通信が可能な無線技術、環境中から微小なエネルギーを取り出す技術(エナジーハーベスティング)などの研究・開発が進められている。

LPWA (Low Power Wide Area)

IoTに必須の要素として、装置の消費電力が少なく、多数の機器を一つのネットワークに収容できる広域的な無線通信技術があり、これを「LPWA」(Low Power Wide Area)と総称する。そのような通信方式で構築されたネットワークは「LPWAN」(Low Power Wide Area Network)とも呼ばれる。

IoTを実現するには、携帯電話網など従来からある広域無線技術に比べ、十~数十kmといった遠距離や広い範囲をカバーでき、乾電池などの乏しい電源でも数か月から数年は稼働できることが求められる。一方、人間がスマートフォンなどの通信機器に求めるような高速なデータ伝送能力は必ずしも必要なく、数十~数百kbps(キロビット毎秒)程度あれば実用に供することができる。

このような特性を備えた新しい通信方式をLPWAと呼び、具体的な規格として「Sigfox」「LoRa」「Wi-Fi HaLow」「Wi-SUN」「LTE-M」「NB-IoT」「RPMA」などの方式が提唱されている。

M2M/センサネットワークとの違い

以前から、機器同士を直接繋いで自律的にシステムを運用する「M2M」(Machine to Machine)や、通信可能なセンサーを分散配置して高度な監視や制御を可能にする「センサネットワーク」(WSN:Wireless Sensor Network)などの概念が存在し、これらはかなりの部分がIoTと重複している。

ただし、IoTはインターネットへの接続を前提とするのに対し、これらの技術は閉じた専用ネットワークや独自プロトコル(通信規約)での運用を想定している場合が多い。また、M2Mやセンサネットワークは特定の目的のために機械同士が情報のやり取りすることで処理が完結する仕組みであることが多いのに対し、IoTは接続された機器と人や外部の情報システムとの相互関係がより重視される傾向がある。

IoE (Internet of Everything)

「ありとあらゆるものが接続されたインターネット」という意味で、モノのインターネットと、人やデータ、情報、ソフトウェアなどが中心の従来からあるインターネットが統合された姿を指す。

とはいえ、従来のインターネットとの違いは多数のモノが接続されている点であるため、実際上はIoTとほぼ同義として用いられることが多い。主に米シスコシステムズ(Cisco Systems)社が提唱している用語である。

ITS 【Intelligent Transport Systems】

道路交通に情報技術や通信技術を応用し、交通問題の軽減、交通の効率化や高度化などをはかる技術や製品、サービスなどの総称。自動車や道路、標識や信号機などの道路設備、駐車場、公共交通、歩行者などに関連する、情報システムを応用した機器やサービス、制度などが含まれる。

日本では1995年に当時の警察庁、運輸省、建設省、郵政省、通産省が共同で全体構想を策定した。この中ではITS全体を、ナビゲーションシステムの高度化、自動料金収受システム、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化、公共交通の支援、商用車の効率化、歩行者等の支援、緊急車両の運行支援の9分野に整理している。

現在までに、VICS(道路交通情報通信システム)やETC(電子料金収受システム)、バスロケーションシステム、自動ブレーキシステム、車線維持支援システム、事故自動通報システムのように実用化や普及が進んでいるものが数多くある一方、トラックの自動隊列走行のように実験段階のものや、構想段階で足踏み状態の技術や施策もある。

検索エンジン 【サーチエンジン】

あるシステムに存在するデータやファイルを取得して内容の索引付けを行い、利用者がキーワードや条件を入力して検索できるようにしたシステム。そのような機能に特化したソフトウェアなどのことを指す場合と、Web上の情報を検索するネットサービスやWebサイトを指す場合がある。

広義には、ある情報システムやストレージ(記憶装置)などに保管されたファイルやデータの集合を読み込んで、どのような情報がどこに存在するといった索引(インデックス)を作成し、利用者が入力したキーワードや検索条件に合致するデータを探し出して列挙するシステム全般を指す。

特に、外部のソフトウェアなどに組み込まれて検索機能を提供する、部品化されたソフトウェアのことをこのように呼ぶことが多い。企業内のデータベースなどを検索するシステムや、コンピュータ内に保存された文書ファイルなどを検索するシステムが存在する。

Web検索エンジン

狭義には、Web上で公開されているWebページや画像、動画、文書ファイルなどを対象に、ソフトウェアによって自動的に様々なサイトのデータを収集して索引付けし、様々な条件で検索できるようにしたインターネット上のサービスのことを検索サイトという。現代では単に検索サイトといった場合はこちらを指すのが一般的となっている。

検索サイトはWebクローラー(crawler)あるいはロボット(bot)と呼ばれる巡回ソフトを用いて日々Web上で公開されている情報を収集し、テキスト(文字)情報などを抽出して索引付け(インデクシング)している。

利用者は検索サイトのサイト上のフォームから検索したい語やフレーズなどを入力すると、それらが含まれるページの一覧を作成して返答する。このページはSERP(Search Engine Result Page)と呼ばれ、検索ソフトウェアによって検索条件との関連度が高いと判断されたページやサイトから順番に、ページのURLやタイトル、内容の要約などが表示される。

2000年前後のインターネット普及期にはアメリカを中心に様々な検索サイトサービスが勃興し覇を競ったが、2010年代には世界的には米グーグル(Google)社の「Google」が支配的な地位を確立し、二番手の米マイクロソフト(Microsoft)社「Bing」(ビング)を大きく引き離している。

日米Yahoo!(ヤフー)のようにかつては自前の検索サイトを開発・運用していたが、自社製システムは廃止してWeb検索機能をGoogleやBingに委託するようになったネット大手も多い。中国の「百度」(Baidu/バイドゥ)や韓国の「NAVER」(ネイバー)、ロシアの「Yandex」(ヤンデックス)のように、国内大手の方が強い国もある。

SNS 【Social Networking Service】 ⭐⭐⭐

人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス。友人・知人間のコミュニケーションを円滑にする手段や場を提供したり、趣味や嗜好、居住地域、出身校、あるいは「友人の友人」といった共通点や繋がりを通じて新たな人間関係を構築する場を提供するサービスで、Webサイトや専用のスマートフォンアプリなどで閲覧・利用することができる。

主な特徴

サービスにより機能や特徴が大きく異なるが、多くのサービスに見られる典型的な機能としては、別の会員を「友人」や「購読者」「被購読者」などに登録する機能、自分のプロフィールや写真を公開する機能、同じサービス上の別の会員にメッセージを送る機能、自らのスペースに文章や写真、動画などを投稿して友人などに見せる機能がある。

サービスによっては、複数の会員でメッセージ交換や情報共有ができるコミュニティ機能、イベントの予定や友人の誕生日などを共有したり当日に知らせたりしてくれるカレンダーあるいはスケジュール機能などがある。

多くの商用サービスではサイト内に広告を掲載するなどして、登録や基本的なサービスの利用を無料としているが、一部の機能を有料で提供しているサービスもある。

SNSの種類

多くのサービスはメールアドレスなどがあれば誰でも登録できるが、普及し始めた当初は人の繋がりを重視して「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっているサービスが多かった。

現在でも、何らかの形で参加資格を限定し、登録時に紹介や審査などが必要なサービスがある。また、参加自体が自由でも、テーマや分野などがあらかじめ設定され、関係や関心のある人の参加を募っているサービスなどもある。

企業などが従業員を対象に運用する「社内SNS」や、大学が教職員や在学生、卒業生を対象に運用する「学内SNS」もあり、業務上の連絡や情報共有に使われたり、業務とは切り離して参加者間の交流の促進のために利用されたりする。「OpenPNE」や「Mastodon」など自らSNSを開設・運用することができるサーバ向けソフトウェアもあり、これを利用したプライベートな集団内のサービスも存在する。

歴史と著名なサービス

2003年頃アメリカを中心に相次いで誕生し、国内事業者によるサービスも2004年頃から普及し始めた。世界的には、初期に登録資格を有名大の学生に絞って人気を博し、後に世界最大のソーシャルネットワークに成長した「Facebook」(フェイスブック)や、短いつぶやきを投稿・共有するマイクロブログ型の「Twitter」(ツイッター:現X)、写真の投稿・共有を中心とする「Instagram」(インスタグラム)、ビジネス・職業上の繋がりに絞った「LinkedIn」(リンクトイン)などが有名である。

日本独自のサービスとしては一時会員数1000万人を超え社会現象ともなった「mixi」(ミクシィ)などが有名だが、近年ではFacebookなど海外事業者に押され利用が低迷しており、オンラインゲーム運営・提供に業態転換するなどしている。

SNS的なサービスの広がり

近年では様々なWebサイトやネットサービス、スマートフォンアプリなどに「ソーシャルな」機能が組み込まれる事例が増えており、何がSNSで何がそうでないか明確に区別することは難しくなりつつある。

例えば、料理レシピ投稿サイトの「クックパッド」(Cookpad)や、スマートフォン利用者間でチャットや音声通話などを提供する「LINE」(ライン)などにも、集団の形成を支援するコミュニティ機能や日記の投稿・共有機能などがあり、これらのサービスをSNSの一種に含める場合もある。

SNSの功罪

SNSによって、一度繋がりの途絶えた古い友人と交流を再開したり、現実に頻繁に会うことは難しい多人数と日常的な繋がりを保ったり、身の回りに同好の士がいなくてもSNSで発見してコミュニティを形成できるなど、SNSのおかげで人間関係が充実した利用者は数多くいる。

一方で、不用意に個人情報や顔写真などを公開してしまい悪意に晒されたり、素性のよくわからない人と交流を持ちトラブルに巻き込まれたり、自分の周囲では特に問題視されなかった話がネット上で拡散されるうちに非難の書き込みが殺到してしまう(「炎上」と呼ばれる現象)など、SNSによって新たに引き起こされる問題もある。

また、SNSが様々な人の間に普及し、継続して利用する期間が長くなるに連れ、上司や家族など「望まれざる」相手とのSNS上での関係や対応に苦慮したり、知り合いの(大抵は良いことしか書かれていない)書き込みを読んで自分の身上と比較してしまったり、興味が湧かない話題でも毎回反応を迫られているように感じて精神的に疲弊する「SNS疲れ」といった問題に直面し、SNSの利用を断って離れる人も増えている。

VR 【Virtual Reality】

人間の感覚器官に働きかけ、現実ではないが実質的に現実のように感じられる環境を人工的に作り出す技術。3次元CGで現実のような光景を映し出す技術を指すことが多い。

身体に装着する機器や、コンピュータにより合成した映像・音響などの効果により、3次元空間内に利用者の身体を投影し、空間への没入感(immersion)を生じさせる。空間内では移動や行動が可能で、利用者の動作に応じてリアルタイムに変化や応答が得られる対話性、双方向性(interactivity)を備えている。

感覚器へのフィードバック(sensory feedback)はディスプレイ装置やスピーカー、ヘッドフォンを用いた視聴覚へのものが主になるが、身体に密着する装置で接触や圧迫を行い触覚に働きかけたり、味覚や嗅覚へ人工的に働きかける技術の研究も進められている。

具体的な方式には様々なものが提唱されており、頭部に装着してすっぽりと視界を覆う「ヘッドマウントディスプレイ」(HMD:Head-Mount Display)を用いた手法が特に有名となっているほか、手を包み込んで動きを入力したり力学的なフィードバックを与える手袋型の「データグローブ」(data glove)などの方式が有望と考えられている。

日本語では “virtual reality” の訳語として「仮想現実」という語が定着しているが、「仮想」には「仮に想定した」「偽の」「実際には存在しない」といったニュアンスがある一方、“virtual” は「名目上は異なるが実質的には同じである」という意味であり、訳語として不適切であるとする指摘もある。

様々な人工現実感

狭義のVRは完全に人工的に生成した非現実の空間を用いるものを指すが、広義には現実の光景や音声、過去の映像などをコンピュータに取り込んで、人工的に生成した要素と組み合わせる方式も含まれる。

後者のうち、離れた場所の様子をVRによって再現し、その中に実際にいるような感覚を生じさせるシステムを「テレイグジステンス」(telexistence)あるいは「テレプレゼンス」(telepresence)という。眼前の光景に人工的に生成した映像や情報を付加するシステムを「拡張現実感」(AR:Augmented Reality)あるいは「複合現実感」(MR:Mixed Reality)などと呼ぶ。

近年では、(狭義の)VRやAR、MRなどを含む総称としての広義の人工現実感のことを「XR」(X Reality/Cross Reality/Extended Reality)と呼ぶことが多い。

また、フィクションに登場したり将来開発されることが期待される、現実と区別がつかないほど進歩したVRシステムのことは「アーティフィシャルリアリティ」(AR:Artificial Reality)あるいは「シミュレーテッドリアリティ」(Simulated Reality)などと呼ばれることもある。

AR 【Augmented Reality】

現実の環境から視覚や聴覚、触覚などの知覚に与えられる情報を、コンピュータによる処理で追加あるいは削減、変化させる技術の総称。

コンピュータがカメラやマイク、GPS、各種のセンサーなどで得たその場所や周囲の状況に関する情報を元に、現実世界から得られた画像や映像、音声などに加工を施して利用者に提供する。データグローブなど身体に装着する機器を用いて触覚に働きかけるシステムも研究されている。

実装例として、スマートフォンのカメラを通じて得た外界の映像に、リアルタイムにキャラクターの画像を重ね、あたかもその場所にキャラクターが出現したかのように演出するビデオゲームなどがある。

また、ゴーグルや眼鏡のように眼前に装着できる透過型のディスプレイに、装着者の見ている対象物に関連する文字や画像、映像などを重ね合わせて表示することで、肉眼では見えない部分を見えるようにしたり、関連情報を提供したりするシステムの研究開発も進んでいる。

こうした専用の装具を用いて、医師が手術の際に患部を見ながら一部分の拡大表示や患者の身体状態などを確認できるようにしたり、軍隊で兵士が装着して戦場の様子やセンサーが捕らえた敵の状態を重ね合わせて表示するといった応用が期待されている。

オープンソースソフトウェア 【OSS】

開発者がプログラミング言語などで書かれたソースコードを公開し、自由に取り扱えることを宣言しているソフトウェア。誰でも制約なくソースコードを入手、利用、複製、再配布、改変などをすることができる。

ソフトウェア開発では人間に理解しやすいプログラミング言語などを用いて「ソースコード」(source code)というコンピュータプログラムを作成し、これをコンピュータが解釈・実行しやすい形式のプログラムに変換して実行する。

企業などが製品として開発するソフトウェアなどの場合、ソースコードは企業秘密として公開せず、実行可能プログラムのみを販売する方式が多い。このようなソフトウェアを「プロプライエタリソフトウェア」(proprietary software)と呼び、利用者はソースコードを入手できないか、できても契約により強い制約が課される。

一方、オープンソースソフトウェアではプログラムの著作権者である開発者が著作権の一部の行使を凍結し、誰でも自由にソースコードを入手して、使用だけでなく販売を含む再配布、動作の解析や一部の改変、自作ソフトウェアへの同梱や機能としての組み込みなどを行うことができる。これらは無償で行うことができ、開発者へ問い合わせたり許諾を得る必要もない。

ただし、著作権が放棄されたわけではなく、著作者や利用者の権利や制限などを定めた「オープンソースライセンス」(open source license)という利用許諾契約に基づいて配布される。利用者はソフトウェアの取り扱いに際して、このライセンスに書かれた条項を遵守する法的な義務を負う。

オープンソースソフトウェアは個人や小規模な開発者集団が自作のソフトウェアを善意で公開する例が多く、インターネット上にはボランティア開発者が集う「オープンソースコミュニティ」が数多く存在する。企業などが製品をオープンソース化して普及に努め、法人ユーザーとのサポート契約や関連ネットサービスの利用料などで利益を得るという「ビジネスとしてのオープンソース」も定着している。

EC 【Electronic Commerce】 ⭐⭐

データ通信やコンピュータなど電子的な手段を介して行う商取引の総称。狭義にはインターネットを通じて遠隔地間で行う商取引を指す。より狭義には、Webサイトなどを通じて企業が消費者に商品を販売するネット通販を指す場合もある。

取引主体の組み合わせにより、企業(法人)間のECを「B to B EC」(B2B/Business to Business)、企業と消費者のECを「B to C EC」(B2C/Business to Consumer)、消費者間のECを「C to C EC」(C2C/Consumer to Consumer)という。

最も一般的なB to C ECには、物品のオンラインショップ(電子商店)やオンラインモール(電子商店街)、交通機関や興行のオンラインチケット販売、宿泊施設や飲食店などのオンライン予約、動画・音声・ビデオゲーム・電子書籍などデジタルコンテンツのオンライン販売、金融商品のオンライントレード、オンラインバンキングなどが含まれる。

また、B to B ECには、eマーケットプレイス(電子市場)や電子調達(eプロキュアメント)、EDI(電子データ交換)、ネット広告(販売)などが含まれる。C to C ECとしてはネットオークションやフリマアプリ、フードデリバリー、民泊アプリ、ライドシェアなどがある。

実際の店舗を構える場合に比べ少ない費用や人員でビジネスを始めることができ、地理的な制約に縛られず離れた場所の顧客を相手に取引することができる。ただし、競合相手も同じ条件であるため、分野によっては実店舗より競争が激しく、全国や全世界といった大きな規模で寡占や「勝者総取り」現象が生じる場合がある。

オンラインショップ 【ECサイト】

インターネットを通じて商品を販売するWebサイトなどのこと。狭義には物品の販売を行う通販サイトを指すが、広義にはサービスや金融商品などを販売するサイトも含まれる。

取扱い製品の紹介ページや購入手続きのページなどで構成され、利用者はほしい商品を選択して配送先や決済情報などを入力・送信することにより、購入の申し込みを行なうことができる。商品は宅配便などで購入者の元に届けられる。決済方法としてはクレジットカードや銀行振込、電子マネーなどによる事前入金のほか、運送事業者の代金引換配達などを利用できる場合がある。

インターネット上には様々な事業者の開設する多種多様なネットショップがあり、一般の商店で販売している大抵のものはオンラインで購入できる状態となっている。当初は書籍やコンピュータ、家電製品、CD/DVD、ゲームソフトなどを取り扱うネットショップが成長したが、次第に様々な製品分野に広まり、日用品や加工食品、衣料品、旅行商品などでも普及が進んでいる。

一方、高額な商品や、複雑な手続き、打ち合わせなどが必要な商品ではその特性上ネットショップはあまり利用されない。また、衛生管理の問題から生鮮食品を取り扱うネットショップの実現は難しかったが、近年では大手スーパーマーケットチェーンが実店舗の周囲に独自の配送網を築くなどの手法でネットショップを開設しており、「ネットスーパー」(オンラインスーパー)とも呼ばれる。

様々なネットショップを一つに集め、横断的に商品を検索・比較したり、共通の手続きや登録情報で購入できるようにするなどのサービスを提供するWebサイトもあり、現実世界のショッピングモールになぞらえて「オンラインモール」(電子商店街、サイバーモール)と呼ばれる。

ブロックチェーン

一定の形式や内容のデータの塊を改竄困難な形で時系列に連結していく技術。内容が随時追加されていくデータ群を複数の独立した対等な主体の間で安全に共有することができる。仮想通貨(暗号通貨/暗号資産)の開発を通じて誕生し、他の用途へも応用されている。

ブロックチェーンを用いて記録されたデータはインターネットなどを通じて参加者間で複製、共有されるが、途中の一部を改竄しても全体を整合性のある状態にすることは困難な性質があり、特定の管理者や管理システムが存在しなくても真正なデータを共有することができる。

この性質を応用し、ネットワークに参加する二者間の取引を記録した台帳データを参加者間で共有しつつ、取引の発生に応じて追記していく分散型台帳を実現することができる。この台帳によって値の移動を追跡、検証可能な方法で記録したものを一種の通貨として利用する試みを暗号通貨という。

ハッシュ値とPoW(Proof of Work)

各ブロックには記録されるデータと共に、一つ前のブロックのデータから算出したハッシュ値が添付される。ハッシュ値はデータの長さによらず固定長の短いデータで、元になるデータが少しでも変化すると規則性なくまったく異なる値になるという性質がある。

これにより、チェーンの途中にあるブロックの内容を改変すると、次のブロックに記録されたハッシュ値と一致しなくなる。これを整合するように改変しても、今度はその次のブロックのハッシュ値と一致しなくなるため、後続のすべてのブロックを連結し直さなければならない。

単にハッシュ計算をやり直して連結し直すだけならばデータ量によってはすぐにできる場合もあるが、多くのブロックチェーン技術ではハッシュ値が特定の条件を満たすようブロックに短いデータ(nonce:ナンスという)を追加する。適切なナンス値を発見するには多数の候補値を用意して条件を満たすまで何度も繰り返しハッシュ値を算出し直す膨大な総当り計算が必要となる。

あるブロックのハッシュ値が条件を満たすことができるナンス値が発見されると、ようやくブロックを閉じて連結することができる。この工程を「PoW」(Proof of Work)と呼び、ビットコインなどのシステムではナンス値を算出した利用者に報酬として新たに暗号通貨を発行する仕組みになっている(コインのマイニングと呼ばれる)。

算出に時間がかかるナンス値が各ブロック毎に用意されていることにより、攻撃者が途中のブロックを改竄しても、後続のすべてのブロックのナンス値の割り出しをやり直さなければ正しいチェーンを得ることができず、改竄を極めて困難にすることができる。システムによってはPoWの代わりにPoS(Proof of State)など別の仕組みを用いる場合もある。

歴史

2008年に「Satoshi Nakamoto」(サトシ・ナカモト)という日本人風の名を名乗る匿名の人物(身元が分からず個人なのか集団や機関なのかも不明)が暗号通貨ネットワークの「ビットコイン」(Bitcoin)を立ち上げ、同時に公開された論文の中でその原理をブロックチェーンの語で紹介したのが最初である。

その後、ビットコインを模した暗号通貨が数多く作られ、インターネット上の交換所を通じて現金との間で、あるいは暗号通貨間で活発に取引が行われている。現在は主に投資用の資産として売買されており、通貨としての機能、すなわちモノやサービスの売買の決済、支払い手段としてはほとんど普及していない。

台帳に取引記録以外の情報を載せることで様々な仕組みを構築することもでき、ある種のプログラムを搭載して条件に応じて自動的に実行する「スマートコントラクト」などが提唱されている。2015年頃からブロックチェーンを金融取引などへ適用する試験的な取り組みなどが活発になっているが、今のところ暗号通貨のように既存の技術や制度では実現できない、あるいは決定的に優位性のある用途は見つかっていない。

電子マネー 【電子通貨】 ⭐⭐⭐

貨幣価値の蓄積や移動を電子的な手段によって行う決済システムやサービス、装置などのうち、主に現実の貨幣や紙幣の代替として利用するために設計されたもの。また、そのための専用の装置などに蓄積され、店頭などで支払いに充当することができる貨幣価値のこと。

ストアドバリュー型

実店舗で利用される電子マネーとしては、非接触ICカードやスマートフォンなどで貨幣価値を表すデータを蓄積・管理し、店頭の端末と無線通信を行って支払いを行う方式がよく用いられる。カードや端末へは手持ちの現金や銀行口座、クレジットカードなどから繰り返し「入金」することができ、蓄積された残高の範囲内で現金の代わりに支払いに当てることができる。

この方式では、JR東日本の「Suica」や首都圏私鉄・バス事業者連合の「PASMO」をはじめとする交通系ICカードが大都市圏を中心で広く普及しているほか、楽天Edyやイオングループの「WAON」、セブン&アイグループの「nanaco」など流通系ICカードも普及している。

ポストペイ型

一般的には事前に入金が必要なプリペイド(前払い)方式のものを電子マネーというが、「iD」や「QUICPay」のように事前入金なしに利用できて、後日、銀行口座の引き落としやクレジットカードなどで支払いを行うポストペイ(後払い)方式のサービスもある。ポストペイ方式は実質的にはクレジットカードの付加サービスあるいはクレジット決済の一種とみなされる。

プリペイドカード型

また、事前に一定額を支払うと引き換えに発行されるコード番号などを入力することで、同額の決済を行えるサービス・システムもあり、ネットサービスやオンラインゲーム、オンラインショップなどでの支払いや、スマートフォンなどでのアプリやコンテンツの購入などでよく利用される。

コード番号の記載されたカードがコンビニエンスストアなどで販売されているほか、店頭で一定額を支払うとレジからコードの記載されたレシートが発行されたり、銀行振込やクレジット決済で一定額を入金すると事前に登録したメールアドレスなどにコードが送られてくる、といった仕組みを採用しているサービスもある。

「WebMoney」や「BitCoin」など専業の事業者が運営し、提携している各社のサービスで利用できるものと、米アップル(Apple)社の「Apple Gift Card」や米グーグル(Google)社の「Google Playギフトカード」、米アマゾンドットコム(Amazon.com)社の「Amazonギフトカード」のように、自社サービスの決済に利用するために販売されるものがある。

仮想通貨との違い

電子マネーは日本円など現実の通貨の価値をデジタルデータに置き換えて蓄積・交換するための仕組みだが、これとは別に、それ自体を独立した一つの通貨のように用いることのできる、デジタルデータで表された価値の蓄積・交換システムも存在し、「仮想通貨」(virtual currency)あるいは「暗号通貨」(cryptocurrency)と呼ばれる。

キャッシュレス決済 【電子決済】

商品やサービスの代金支払いなどを、現金の受け渡しや金融機関での手続きなどではなく、電子的なデータ交換によって行うこと。

銀行口座やクレジットカードなどを利用する電子決済方式として、インターネット上でのクレジットカード決済(カード番号などをオンラインで送信する)やインターネットバンキングによる相手口座への送金、キャッシュカードで店頭での支払いを行うデビットカード決済などがある。

事前に決済事業者に入金した額の範囲で支払いを行うことができる決済方式を「電子マネー」あるいは「ストアドバリュー型電子決済」という。利用者はカード購入や入金端末操作、銀行振り込み、クレジットカード決済などで決済サービス上での貨幣価値を入手し、提携店舗やネットサービスでの支払いに充てることができる。

これには交通系ICカードなどのICカード型電子マネー、店舗でカードを購入するうプリペイドカード型電子マネー、オンラインで入金や決済を行うネットワーク型電子マネー、スマートフォンの短距離無線通信を利用するモバイル決済、QRコードで決済情報を伝達するQRコード決済などが含まれる。

2000年代初頭のインターネット普及や非接触ICカード技術の進歩により広まった決済方式で、ECサイトやネットサービスでの支払いにオンラインのクレジット決済やネットバンキングがよく利用される。店舗での支払いなど現金を代替する用途は日本では大都市圏での交通系ICカード以外なかなか普及しなかったが、2010年代後半頃からモバイル決済やQRコード決済が急激に浸透しつつある。

人工知能 【AI】 ⭐⭐⭐

人間にしかできなかったような高度に知的な作業や判断をコンピュータを中心とする人工的なシステムにより行えるようにしたもの。

人類は未だに人間の脳の振る舞いや知能の仕組みを完全には解明していないため、AIにも明快な定義は与えられていない。また、情報技術の進歩に伴って時代によってAIとされるシステムの具体的な内容は大きく変化してきている。

特に、前の時代にAIの一分野として研究・開発が進められていたものが、技術が成熟し実用化や普及が進むとAIとは呼ばれなくなり、より高度で研究途上のものが新たにAIとして注目される傾向がある。この現象は「AI効果」と呼ばれ、例として文字認識技術(OCR)や検索エンジン、かな漢字変換システム、ロボット掃除機などが挙げられる。

2000年代後半以降にAIとされるものは、大量のデータから規則性やルールなどを学習し、与えられた課題に対して推論や回答、情報の合成などを行う機械学習(ML:Machine Learning)を基礎とするものが主流となっている。

特に、人間の神経回路を模したニューラルネットワーク(NN:Neural Network)で深い階層のモデルを構築し、精度の高い推論を行うディープラーニング(深層学習)研究に大きな進展があり、これに基づく研究や開発が盛んになっている。

応用分野として、チェスや将棋、将棋など知的なゲームで対局するシステム、画像や映像に映る物体や人物を識別する画像認識システム(コンピュータビジョン)、人間の発話を聞き取って内容を理解する音声認識システム、言葉を組み立てて声として発する音声合成システム、ロボットや自動車など機械の高度で自律的な制御システム(自動運転など)、自動要約や質問応答システム、高度で自然な機械翻訳といった様々な自然言語処理などがよく知られる。

機械学習 【マシンラーニング】

コンピュータプログラムにある分野のデータを繰り返し与えることで内在する規則性などを学習させ、未知のデータが与えられた際に学習結果に当てはめて予測や判断、分類などを行えるようにする仕組み。現代の人工知能(AI)研究における最も有力な手法の一つ。

例えば、数字を手書きした画像と、そこに写っている数字をペアにした学習データをたくさん用意し、一定のアルゴリズム(計算手順)に従って次々にこれを処理していくと、画像のパターンから写っている数字を予測する学習モデルを作ることができる。学習済みのシステムに未知の手書き数字の画像を与えると、そこに写っている数字を推論して回答できるようになる。

従来このような仕組みを作ろうとすると、各数字の画像に現れる特徴的なパターンを人間が整理して、判断基準としてプログラムに組み込む必要があるが、機械学習ではデータから特徴を抽出して特定の結果(答え)に紐付ける操作をコンピュータが自動的に行うため、人間は学習させたい内容を表すデータを与えるだけでよい。

教師あり学習 (supervised learning)

機械学習の手法のうち、「例題と答え」という形式に整理された「教師データ」に適合するようにモデルを構築していく方式を「教師あり学習」という。例題を入力すると対応する答えを出力するようにモデルを調整していく。

人間が既に答えを知っているような判断や作業を自動化したい場合に有効な手法で応用範囲も広いが、生のデータを「例題と答えのペア」という形式に(人手によって)整理しなければならない。学習データの質や潜在的な問題点がそのまま精度や結果に反映されてしまう難点もある。

教師なし学習 (unsupervised learning)

人間が基準や正解を与えずに学習データを分析させ、システムが自律的に何らかの規則性や傾向を見出す方式を「教師なし学習」という。与えられたデータ群を何らかの目的をもって解析し、特徴の似たデータのグループ分けなどを行えるようにする。

人間にも正解が分からない課題についての知見を得たい場合や、大量のデータから規則性を探索したい場合などに有効な手法で、データの前処理が少なく現実世界にある多様な大量のデータを素材にできる。ただし、結果が何を意味するかは人間による解釈が必要で、人間にとって有用な結果が得られるよう制御するのが難しく精度も安定させにくいなどの課題がある。

強化学習 (reinforcement learning)

システムの行動に対して評価(報酬)が与えられ、行動の試行錯誤を繰り返して評価を最大化するような行動パターンを学習させる方式を「強化学習」という。機械の制御や競技、ゲームなどを行うAIの訓練に適している。

他の学習手法と異なり、人間がまとまった形で学習データを与えることはせず、システムは現在の状況を入力として行動を選択する。行動の結果は評価(値)としてシステムに伝達され、どのような行動が好ましい結果に繋がるかを繰り返し試行錯誤しながら学習していく。

人工知能・深層学習との関係

「人工知能」(AI:Artificial Intelligence)とは人間の知的な営みの一部を何らかの形で模倣するITシステム全般を指す総称であり、初期のAI研究では対象についての知識やルール、判断基準などを人間がプログラムの一部として直に記述する手法が一般的だった。

しかし、このような手法では知識の記述に手間がかかり、特定の狭い分野であっても人間のような判断を下せるシステムを実現するには途方も無い時間とコストが必要になってしまう。この限界を打ち破るため、人間は学習の仕方だけをプログラムとして実装し、実際の知識の獲得はデータを大量に与えて自動処理するという機械学習の手法が考案された。

機械学習の具体的な方式にはSVM(サポートベクターマシン)やベイジアンネットワーク、決定木(デシジョンツリー)学習、データクラスタリングなど様々な手法があるが、人間の脳の神経回路の網状の繋がりに着想を得た「ニューラルネットワーク」(NN:Neural Network)が有力な方式として台頭した。

2010年代になると、ネットワークの階層を従来より深く設定(4層以上)した「ディープニューラルネットワーク」(DNN:Deep Nueral Network)が目覚ましい発展を遂げ、機械学習研究・開発の中核として注目されるようになった。このDNNに基づく機械学習のことを「深層学習」あるいは「ディープラーニング」(deep learning)という。

データマイニング

蓄積された大量のデータを統計学や数理解析などの技法を用いて分析し、これまで知られていなかった規則性や傾向など、何らかの未知の有用な知見を得ること。

「マイニング」(mining)とは「採掘」の意味で、膨大なデータの集積を鉱山に、そこから有用な知見を見出すことを資源の採掘になぞらえている。適用分野や目的、対象となるデータの種類は多種多様だが、ビジネスの分野では企業が業務に関連して記録したデータ(過去の取引記録、行動履歴など)を元に、意思決定や計画立案、販売促進などに有効な知見を得るために行われることが多い。

例えば、小売店の商品の売上データの履歴は、それ自体は会計上の手続きや監査などの業務にしか使われないが、データマイニングの手法で統計的に処理することで、これまで知られていなかった「商品Aと商品Bを一緒に購入する顧客が多い」といった傾向が分かる場合がある。これにより、AとBの売り場を統合するといった販売促進施策を行うことが可能となる。

商業分野だけでなく、自然言語処理やパターン認識、人工知能などの研究などでも利用される。分析・解析の手法も様々だが、代表的な手法としては、頻度の高いパターンの抽出や、相関関係にある項目の組の発見、データの特徴や共通点に基づく分類、過去の傾向に基づく将来の予測などがある。

近年では、一般的なシステムやソフトウェアでの解析が困難な巨大なデータセットである「ビッグデータ」を対象とした解析手法や、人工知能の一分野である機械学習、特に先進的な手法である「ディープラーニング」を応用したマイニング手法などが活発に研究・開発されている。

ビッグデータ ⭐⭐⭐

従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しいような巨大なデータ群。明確な定義があるわけではなく、企業向け情報システムメーカーのマーケティング用語として多用されている。

多くの場合、ビッグデータとは単に量が多いだけでなく、様々な種類・形式が含まれる非構造化データ・非定型的データであり、さらに、日々膨大に生成・記録される時系列性・リアルタイム性のあるようなものを指すことが多い。

今までは管理しきれないため見過ごされてきたそのようなデータ群を記録・保管して即座に解析することで、ビジネスや社会に有用な知見を得たり、これまでにないような新たな仕組みやシステムを産み出す可能性が高まるとされている。

米大手IT調査会社ガートナー(Gartner)社では、ビッグデータを特徴づける要素として、データの大きさ(Volume)、入出力や処理の速度(Verocity)、データの種類や情報源の多様性(Variety)を挙げ、これら3つの「V」のいずれか、あるいは複数が極めて高いものがビッグデータであるとしている。これに価値(Value)や正確性(Veracity)を加える提案もある。

コンピュータやソフトウェアの技術の進歩は速く、具体的にどのような量や速度、多様さであればビッグデータと言えるかは時代により異なる。ビッグデータという用語がビジネスの文脈で広まった2010年代前半にはデータ量が数テラバイト程度のものも含まれたが、2010年代後半になるとペタバイト(1000テラバイト)級やそれ以上のものがこのように呼ばれることが多い。

近年ではスマートフォンやSNS、電子決済、オンライン通販の浸透により人間が日々の活動で生み出す情報のデータ化が進み、また、IoT(Internet of Things)やM2M、機器の制御の自動化などの進展により人工物から収集されるデータも爆発的に増大している。

また、人工知能(AI)の構築・運用手法として、膨大なデータから規則性やルールなどを見出し、予測や推論、分類、人間の作業の自動化などを行う機械学習(ML:Machine Learning)、中でも、多階層のニューラルネットワークで機械学習を行う深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる手法が台頭している。

このような背景から、膨大なデータを的確、効率的に扱う技術上の要請はますます高まっており、統計やデータ分析、大容量データを扱う手法やアルゴリズムなどに精通した「データサイエンティスト」(data scientist)と呼ばれる専門職の育成が急務とされている。

ユニバーサルデザイン 【UD】 ⭐⭐⭐

すべての人が等しく使うことができる、あるいは使いやすいデザイン・設計のこと。より現実的には、なるべく多くの人が同じように使えることを目指すデザイン原則を表す。

言語や文化、人種、性別、年齢、体型、利き腕、障害の有無や程度といった違いによらず、できるだけ多くの人が同じものを同じように利用できるよう配慮されたデザインのことを意味する。

「バリアフリー」を始めとする従来の考え方では、「高齢者用」「左利き用」「車椅子用」のように特性に応じた専用のデザインを用意する発想が基本だったが、ユニバーサルデザインではこうした発想を極力排し、単一のデザインで万人が利用できることを目指している。

ユニバーサルデザインという用語は1985年に米ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス(Ronald Mace)教授によって提唱されたが、それ以前から実践されていた考え方を整理して名前をつけたものとされる。氏はユニバーサルデザインの7つの原則として「公平に使える」「柔軟性がある」「簡単で自明」「必要なことがすぐに理解できる」「間違いを許容する」「弱い力で使える」「十分な大きさと空間」を唱えている。

ユニバーサルデザインの具体例として、施設内の案内などを言葉ではなく絵文字で伝えるピクトグラム、様々な視覚特性を持つ人による調査・テストを経て開発された視認性の高いフォント、容器に刻まれた凹凸を触れば何が入っているか識別できるシャンプーやコンディショナー、手や指の状態によらず持ちやすく使いやすい文房具やカトラリーなどがある。

アクセシビリティ ⭐⭐⭐

近づきやすさ、利用しやすさ、などの意味を持つ英単語で、IT分野では、機器やソフトウェア、システム、情報、サービスなどが身体の状態や能力の違いによらず様々な人から同じように利用できる状態やその度合いのことを指す。

高齢や障害、病気、あるいは他の身体的・認知機能的な特性により運動や視聴覚機能に制約や偏りがあっても、機器やソフトウェアの操作、情報の入手、ネットサービスの利用などが可能である状態を意味する。

例えば、マウスなどによる画面上の位置指定が困難な場合に備え、キーボードやボタン型の入力装置、音声認識など他の入力機能のみで操作が行えるようにしたり、視力や視覚の状況に応じて、画面表示や文字の拡大、画面上の文字の読み上げなどの機能を選択できるといったように、様々な人が利用できるような備えが行われている状態を指す。

単にアクセシビリティといった場合はWebページについての「Webアクセシビリティ」のことを指すことが多い。また、IT分野以外でも、例えば建物や施設、設備などへの出入りや内部の移動のしやすさ、利用しやすさ(段差がない、スロープやエレベーターが整備されている等)のことをアクセシビリティということもあるが、これは日本語では「バリアフリー」(barrier free)という外来語で表現されることが多い(厳密にはバリアフリーはアクセシビリティより狭い概念を指すとする見解もある)。

ユーザビリティ 【使用性】 ⭐⭐⭐

機器やソフトウェア、Webサイトなどの使いやすさ、使い勝手のこと。利用者が対象を操作して目的を達するまでの間に、迷ったり、間違えたり、ストレスを感じたりすることなく使用できる度合いを表す概念である。

国際規格のISO 9241-11では、ユーザビリティを「特定の利用状況において、特定の利用者によって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、利用者の満足度の度合い」と定義している。漠然とした「使いやすさ」よりは限定された概念で、ある人がある状況下である目的を達することがどれくらい容易であるかを表している。

ユーザビリティは利用者への情報やメッセージの提示の仕方やタイミング、言い回し、操作要素や選択肢の提示の仕方、操作の理解のしやすさや結果の想像しやすさ、操作のしやすさや誤りにくさ、誤操作に対する案内や回復過程の丁寧さ、利用者の操作に応じた表示や状況の変化(インタラクション)などの総体で構成される。

高いユーザビリティのために必要な実践は対象の種類(機器・ソフトウェア・Webページ等)や想定される利用者の属性、文脈や利用目的によって異なるため個別性が高く、ある状況では良い事例とされたものが別の文脈では悪い事例になる場合もある。

開発者が期待するユーザビリティが備わっているかどうか確かめるには、利用者(やそれに近い属性の人物)の協力を得て実際に使ってみてもらい、想定通りの操作が行われるか、利用者が不満や戸惑いを感じないかなどをテストするのが有効であるとされる。このような試験を「ユーザーテスト」(user testing)あるいは「ユーザビリティテスト」(usability testing)という。

デジタルデバイド 【情報格差】 ⭐⭐

パソコンやスマートフォン、インターネットなどのデジタル技術に触れたり使いこなしたりできる人と、そうでない人の間に生じる、貧富や機会、社会的地位などの格差。個人や集団の間に生じる格差と、地域間や国家間で生じる格差がある。

コンピュータや通信ネットワークが職場や日常生活に深く入り込み、それを活用できる者はより豊かで便利な生活や、高い職業的、社会的地位を獲得できる一方、何らかの理由により情報技術の恩恵を受けられない人々は社会から阻害され、より困難な状況に追い込まれてしまう。こうした状況をデジタルデバイドという。

主な要因

デジタルデバイドは様々な要因により発生し、拡大する。例えば、子どもや若者は技術や知識を比較的容易に習得し、進んで習慣的に利用するようになることが多いが、中高年や高齢者が新たにコンピュータの操作法などを覚えるのは困難で、生活習慣に取り入れることにも抵抗感があることが少なくない。

また、貧困のために情報機器やソフトウェア、サービスなどの購入が困難だったり、身体機能の障害や発達特性などから機器の操作が困難で情報技術の恩恵を受けられない場合もある。元々存在した様々な格差がデジタルデバイドにより拡大したり固定化してしまうという側面がある。

地域間の格差

地域や国家の単位でデジタルデバイドが生じることもある。通信インフラの普及度合いや、所得水準と情報機器の価格の関係、技術の習得・利用の前提となる十分な教育が受けられるか、インフラ整備や技術・機器の導入・教育を担う技術者などの人材が十分にいるか、といった点により、地域や国家ごとに格差が生じる。

ここでも、元々豊かな先進国やインフラがいち早く整備され人材豊富な大都市などが情報技術でさらに発展し豊かになる一方、情報技術に十分アクセスできない発展途上国や農村部などがデジタル環境でも取り残されるという、格差の拡大・固定化の問題がある。

サイバー犯罪 【ハイテク犯罪】 ⭐⭐

コンピュータや通信ネットワークを用いて行われる犯罪の総称。主にインターネット上で行われる犯罪行為を指すことが多い。

どのような行為が該当するかは各国の法律によって異なるが、日本では不正アクセス、DoS攻撃、ネット詐欺(フィッシングや架空請求など)、オンライン不正送金、著作物の無断複製や配布、わいせつ物などの公開や譲渡、SNSなどにおける誹謗中傷や業務妨害などが罪に問われる。

関連する法律としては刑法や不正アクセス禁止法、著作権法、不正競争防止法などがあり、法律上の罪種としては電磁的記録不正作出(データ改竄など)、電子計算機損壊等業務妨害(遠隔操作によるデータ消去など)、電子計算機使用詐欺(クレジットカード番号窃取・不正使用など)、不正指令電磁的記録作成(コンピュータウイルスの開発・配布など)、偽計業務妨害(ネット上の犯罪予告など)、著作権侵害、名誉毀損、信用毀損(風説の流布など)、わいせつ物公然陳列・頒布などが該当する。

犯人がインターネットを通じて犯行を行ったり、犯行現場がネット上であるようなものを指すことが多いが、クレジットカードのスキミングのように、ネットとは無関係に電子的な手段を利用した犯罪も含まれる。

サイバー犯罪自体は各国の刑事司法制度で裁かれるが、国家をまたぐ不正アクセス事件などに対処するため、2001年にサイバー犯罪条約が成立(発効は2004年)し、加盟諸国が国内法を整備して捜査などで協力している(日本は2012年批准)。

サイバー犯罪のうち、何らかの政治的な示威などのために大規模に行われる不正アクセスやDoS攻撃などのことを「サイバーテロ」(cyberterrorism)という。また、敵対する国家間や国家に準じる勢力の間で互いに攻撃を加え合う行為は「サイバー戦争」(cyberwarfare)という。

サイバー攻撃 【サイバーアタック】

あるコンピュータシステムやネットワーク、電子機器などに対し、正規の利用権限を持たない悪意のある第三者が不正な手段で働きかけ、機能不全や停止に追い込んだり、データの改竄や詐取、遠隔操作などを行うこと。

特定の組織や集団、個人を狙ったものと、不特定多数を無差別に攻撃するものがある。政治的な示威行為として行われるものは「サイバーテロ」(cyberterrorism)、国家間などで行われるものは「サイバー戦争」(cyberwarfare)と呼ばれることもある。

具体的な活動として、Webサーバに侵入してサイトの内容を改竄したり、情報システムに侵入して機密情報や個人情報を盗み出したり、大量のアクセスを集中させてサーバや回線を機能不全に追い込んだり(DoS攻撃/DDoS攻撃)、アクセス権限を不正に取得して本人になりすましてシステムを操作したり、システムを使用不能にして回復手段の提供に身代金を要求したり(ランサムウェア)といった事例が挙げられる。

攻撃者がインターネットなどを通じて標的システムに直接働きかけて攻撃を実行する手法と、コンピュータウイルスやトロイの木馬などのマルウェアを感染させ、その働きにより攻撃する手法がある。両者を組み合わせ、送り込んだマルウェアに外部から指令を送って遠隔操作する手法もある。

サイバーテロ (cyberterrorism)

サイバー攻撃のうち、政治的な要求や脅迫、示威などを目的に行われるものを「サイバーテロリズム」(cyberterrorism)、略してサイバーテロという。

特定の個人や集団が政治的な意図や動機に基づいて行うインターネットやコンピュータシステムを利用した攻撃活動で、対象に打撃を与えて政治的な主張を宣伝したり、何らかの要求に従うよう求めたり、標的側の行いに対する報復であると称したりする。

官公庁や軍、マスメディア、社会インフラ、通信網、交通機関、金融機関、医療機関など、国家や社会、人命、財産にとって重要な機能に損害を与えることを狙った攻撃が典型的だが、Webサイトの改竄や活動妨害(DoS攻撃)のような攻撃では特定の国家や民族に属するというだけで広汎・無差別に対象が選択される場合もある。

マルウェア 【悪意のあるソフトウェア】 ⭐⭐⭐

コンピュータの正常な動作を妨げたり、利用者やコンピュータに害を成す不正な動作を行うソフトウェアの総称。コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬などが含まれる。

“malicious software” (悪意のあるソフトウェア)を短縮した略語で、悪意に基づいて開発され、利用者やコンピュータに不正・有害な動作を行う様々なコンピュータプログラムを総称する。

コンピュータウイルスやワーム、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェア、ボット、バックドア、一部の悪質なアドウェアなどが含まれる。キーロガーのように正規の用途で用いる場合もマルウェアとなる場合もあるものもある。

利用者の知らない間に、あるいは欺くような手法でコンピュータに侵入し、記憶装置に保存されたプログラムやデータを改変、消去したり、重要あるいは秘密のデータを通信ネットワークを通じて外部に漏洩したり、利用者の操作や入力を監視して攻撃者に報告したり、外部から遠隔操作できる窓口を開いたり、ネットワークを通じて他のコンピュータを攻撃したりする。

「マルウェア」という用語は専門家や技術者以外の一般的な認知度が低く、また、マルウェアに含まれるソフトウェアの分類や違いなどもあまり浸透していないため、マスメディアなどでは「コンピュータウイルス」という用語をマルウェアのような意味で総称的に用いることがある。

マルウェア対策

マルウェアに対抗するため、これを検知・駆除するソフトウェアを用いることがある。歴史的にウイルス対策から発展したため「アンチウイルスソフト」(anti-virus software)と呼ばれる。企業などでは伝送途上の通信内容からマルウェアを検知する「アンチウイルスゲートウェイ」なども用いられる。

マルウェアの検知には、ストレージ内のファイルなどを既知のマルウェアの特徴的なパターンと照合する「パターンマッチング法」や、マルウェアに特徴的な振る舞いを検知する「ヒューリスティック法」、隔離された実行環境で実際に実行してみる「ビヘイビア法」などの検知手法が用いられる。

マルウェアの中にはソフトウェアやハードウェアに存在する保安上の欠陥(脆弱性)を悪用して侵入・感染するものも多いため、セキュリティソフトなどに頼るだけでなく、老朽機材の入れ替え、ソフトウェアの適時の更新、不要な機能の停止などの対応も適切に行う必要がある。

テクノストレス

コンピュータを扱うことが原因で起きる失調症状の総称。コンピュータに適応できないために生じるテクノ不安症や、過剰に適応したために生じるテクノ依存症などの種類がある。「テクノストレス」という名称は、1984年にアメリカの臨床心理学者クレイグ・ブロード(Craig Brod)氏が名づけた。

テクノ不安症 (techno-anxiety)

コンピュータに適応できないことが原因で生じる精神的な失調症状をテクノ不安症という。具体的な症状は、動悸、息切れ、肩こり、めまいなどの自律神経の失調や、鬱などである。

社会の隅々までコンピュータが普及しつつある現在、会社の業務などで好むと好まざるとに関わらずコンピュータを使う必要に迫られる人が増えている。そのうち、コンピュータになじめず、操作を苦痛に感じる人は、そのことで強いストレスを感じ、体調を崩してしまうことがある。

テクノ依存症 (techno-addiction)

コンピュータに過剰に適応し、あるいは没頭しすぎることが原因で生じる精神的な失調症状をテクノ依存症という。コンピュータがないと不安に感じたり、人付き合いを煩わしいと感じるようになる。

具体的な症状としては、自分の限界が分からなくなる、時間の感覚がなくなる、邪魔されるのが我慢できなくなる、あいまいさを受け入れられなくなる、「はい/いいえ」「正解/不正解」式のやり取りや思考を好むようになる、人と接することを嫌うようになる、人を見下すようになる、などがある。

パソコンやゲーム機、インターネットなどのデジタル技術が短期間のうちに急激に普及した先進国や経済新興国では、主に若者の間で、ゲームやネット(最近ではネットゲーム)にのめりこんでしまい、実社会の生活に支障をきたしたり、正常な対人関係を結べなくなったりする「中毒」症状が目立つようになり、社会問題化している。

VDT症候群 (IT眼症/テクノストレス眼症/VDT障害)

パソコンのディスプレイなどのVDTを長時間見続けながら作業を行うことによって発生する、身体的・精神的疾患の総称。直接的な身体的疾患の例としては眼精疲労や視力低下、目のかすみ、目の痛み、ドライアイ、めまいなどが挙げられる。これらの症状の原因は、VDTの輝度やコントラストが強すぎることや、長時間VDTを注視するさいにまばたきの回数が減ることなどである。

このほかにも、VDTの前で長時間姿勢を固定して作業することによる肩こりや腰痛など体の痛み、キーボード操作によって起こる腱鞘炎などの身体的症状もVDT障害に含まれる。精神的疾患の例としては単調なデータ入力作業などを長時間行うことによって起こる情緒不安定や不眠などがある。

厚生労働省では、2002年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定し、その中でVDT障害を防ぐための作業管理のしかたや、VDT障害を起こさない適切なVDT機器の基準、健康管理の方針などをまとめている。

ドライアイ (dry eyes)

目の疾患の一つで、涙液の減少により眼球の表面が乾燥し、傷や障害が生じるもの。

目が疲れる、目に痛みを感じる、目が乾いた感じがする、目が重たい、10秒以上目を開けていられないなどの症状が現れる。短時間で回復することが多いため軽視されがちだが、症状が頻発したり長引いたりすると角膜などを損傷して視力の低下を招く恐れもあるので、慢性的に症状を感じる場合は早めに受診したほうがよい。予防や症状の軽減のためには、一定の間隔をおいて目を休ませる。意識的にまばたきの回数を増やす、部屋の湿度を高めに保つ、眼科医の処方する目薬などで目の潤いを保つ、などの方法がある。

本来、眼球はまばたき動作により適量の涙が提供され、ゴミや細菌から守られているが、集中して一点を見つめ続けるとまばたきの回数が減り、涙量が減ってしまう。そのため眼球の十分な保護ができなくなって、眼球が乾燥し、傷つきやすくなってしまう。先天的にまばたきの少ない人、コンタクトレンズを常用している人は特にドライアイにかかりやすい。

空気の乾燥した季節や、エアコンの運転などで乾燥した空間で起こりやすく、コンピュータでの作業やテレビの視聴、ビデオゲームの操作など、同じ場所を長時間凝視し続けることで起こることが多い。電子機器の普及により発症が顕著になった現代病のひとつとされる。

炎上 ⭐⭐

ある人物や組織の行いや発言などについて、SNSやWebサイトのコメント欄などで不特定多数のネット利用者から批判や非難、中傷などが殺到する現象。

ある人物や組織の振る舞いやネット上で公表されたコンテンツなどに関連して、多くネット利用者が反感や不快感、嫌悪感、正義感に基づく怒りなどネガティブな感情を覚え、短時間の間に批判的な投稿が殺到する現象を指す。

喝采や応援など肯定的、好意的な反応が殺到する状態は炎上とは言わないが、人によって賛否や反応が大きく分かれ、肯定派と否定派に分かれて議論の応酬や非難合戦、喧嘩状態に発展したものはやはり炎上とされる。

多くの発言者は匿名であり、中には批判や非難の域を超えて暴言や誹謗中傷を行う者もいる。中傷発言は法律上の名誉毀損となり、言われた側が訴え出れば民事上の損害賠償請求や刑事上の名誉毀損罪や侮辱罪の対象となる。過去の炎上事件でも匿名の投稿者が法手続きに則って身元を調べられ、賠償や刑事罰に至った例が数多くある。

炎上の類型

報道などを起点としてニュースサイトのコメント欄や電子掲示板(BBS)、SNSなどに投稿が相次ぐ場合と、当事者のSNS投稿やブログ記事、動画のコメント欄など、本人に属する場に投稿が相次ぐ場合がある。後者のような本人に対して直接発言が殺到する状況を「コメントスクラム」と呼ぶこともある。

デマやでっち上げ、誤報、誤解など批判対象の事実自体が存在しない場合、当該事案と無関係な人物や組織が誤解や安易な推測などで当事者とされた場合にも、誤りを信じた利用者によって炎上状態に至る場合がある。誤った情報を流したり広めた利用者が刑事罰を受けるなどしているが、悲惨な事故や事件が起きる度に虚偽に基づく炎上が繰り返されており、社会問題となっている。

用語

日本における炎上現象は、ネット利用者の間で匿名掲示板やブログが広く普及・浸透した2000年代中頃に見られるようになったとされる。「炎上」という呼称の起源は明確ではないが、一説には、野球で投手が連打を浴びて大量失点する「炎上」になぞらえて匿名掲示板の利用者が用い始めたとされる。

俗に、炎上現象に関連して起きる状況を火事や燃焼に例えることがある。例えば、関連コメントの投稿が収束することを「鎮火」、コメントの勢いが増すような発言や行動を当事者や関係者が新たに起こすことを「燃料」あるいは「燃料投下」、直接の当事者ではない関係者や擁護者に批判の矛先が向くことを「類焼」あるいは「延焼」などということがある。

あえて物議を醸すような発言や行為、トラブルなどを公表し、狙って炎上を引き起こす者もいる。炎上によって知名度の向上、ネットサービス上での閲覧数や動画再生数などの増加を図り、金銭的な利益を得るために行われるもので、「炎上商法」「炎上マーケティング」と呼ばれる。

デジタルタトゥー

ある人物についてインターネット上に公表・拡散された情報が、複製を繰り返して半永久的に残存し、本人が容易に消せなくなること。

「タトゥー」(tattoo)とは入れ墨のことで、一度体に刻んだ入れ墨が自然には消えずに生涯残り続けるように、ネット上に現れた自分についての情報が消えずに残り続ける状態を表している。

SNSやブログなどの利用者が投稿した情報は本人の操作により消去することができるが、検索エンジンのキャッシュやWebアーカイブサービスに複製されたり、他の利用者の投稿に引用、複製された場合には容易に消去させることができなくなる。

これにより、ある人物について本人あるいは他人が過去に公開した情報が時間が経ってもネット上に残存し続け、本人に不都合があっても手続きが煩雑すぎてすべて消去するのは事実上不可能になる現象をデジタルタトゥーという。

デジタルタトゥーとなりうるのは、本人と識別できる情報(個人情報や芸名など)に紐付いた本人の過去の属性や行動、所属などに関する情報(SNSの書き込み、学歴・職歴など)、本人が写っている写真や動画、本人について他人が名指しで言及、指摘、暴露した情報などである。

特に問題となるのは本人についての悪い情報が残り続ける現象で、過去の犯罪やSNSへの悪ふざけ投稿などが「炎上」して多くのサイトに取り上げられ罰を受けた後も容易に検索できてしまう事例や、元恋人に逆恨みされ腹いせに暴露投稿されたセンシティブな写真が複製され続ける問題などがよく知られる。

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