高校「情報Ⅰ」単語帳 - データの収集・整理・分析
オープンデータ ⭐⭐⭐
誰でも自由に入手や使用、加工、再配布などができるよう広く一般に公開されているデータ。特に、ソフトウェアなどによる自動処理に適した一定のデータ形式に整理・整形された機械可読(マシンリーダブル)なもの。
データの中には著作権などによって保護されていたり、所有者によって入手や利用に制限が課せられ、手続きや対価が必要なものが多くある。オープンデータはこのような制約から解放され、営利・非営利を問わず誰でも自由に使用や再配布が可能なデータを指す。
こうしたデータ公開が期待され、また積極的に行われているのは主に学術・科学分野や公共分野である。大学や研究機関の持つ科学的な資料や、政府や自治体などの公的機関の持つ公共的な情報や、事業などで調査・収集した統計データなどの公開が進められている。
行政などのデータ公開・提供はこれまでも白書やWebサイトなどの形で行われてきたが、これはもっぱら人間が閲覧するための文書として発行されたものであり、ソフトウェアで解析・加工するには人間の手で整形しなければならなかった。オープンデータではコンピュータ上での自動処理を前提としたデータ形式が求められ、XMLやCSVファイル、Excelファイル(XLSXファイル)などの形で提供される。
ある完結したひとまとまりのデータ集合を「データセット」と呼び、これを一つのファイルなどに(複雑・大規模な場合はいくつかに分割して)記録してWebサイトなどで公開する。複数のデータセットを公開する機関やサイトでは、どこにどんなデータセットがどのような形式で公開されているかをまとめた「データカタログ」が作成されることが多い。
2000年代後半頃から、米連邦政府の「Data.gov」や日本政府の「データカタログサイト」(DATA.GO.JP)など、政府機関が提供している様々なオープンデータをまとめたデータカタログや専用のWebサイトを公開する国が増えている。
全数調査 【悉皆調査】 ⭐
統計的な調査を行う際に、対象となる母集団全体を調査対象とする方式。国勢調査のように、標本の抽出などを行わずに対象すべてを虱潰しに調べる調査。
調査の対象となる母集団に含まれるすべての要素を一つ一つ調べる調査方式をこのように呼ぶ。一方、母集団の中から一定の基準や方法で少数の標本(サンプル)を抽出して調査する方式を「標本調査」という。
全数調査はすべての対象についてのデータを揃えることができるため、抽出調査で生じる標準誤差などの不確かさに影響されない。対象の総数が少ない場合は容易に実施できるが、日本人全体など母集団が巨大な場合には大きなコストや長い期間を要したり、そもそも不可能なこともある。
社会調査の多くは標本調査だが、国が5年ごとに実施する、国内の全居住者を対象とした「国勢調査」や、国内の全法人を対象に行われ企業の国勢調査とも言われる「経済センサス」は全数調査として行われている。これらは統計としての意義と共に他の標本調査の基礎となるデータを提供する意義がある。
標本調査 ⭐
統計的な調査を行う際に、対象となる母集団から一定の基準や方法で少数の標本(サンプル)を抽出し、これを対象に調査を実施する方式。社会調査や品質検査などで広く用いられる。
ある母集団に含まれるすべての要素を調査することを「全数調査」(悉皆調査)というが、社会調査の場合は膨大なコストや時間が必要になったり、母集団全体にアクセスすることがそもそも不可能であったりする。商品の品質検査などでは破壊的な検査を全数に行うことはできないという問題もある。
そこで、母集団から一定の方法で要素を抽出して調査を行う標本調査が広く行われている。抽出した要素を「標本」(sample)という。標本に対する調査結果から統計的な推計を行い、母集団全体の状態を推定する。標本による推計値と母集団の本当の値(真の値)とのズレ(乖離)を「標本誤差」という。標本数などから精度の予測は可能だが誤差をゼロにすることはできない。
標本の抽出法
抽出した標本の属性に偏りがあると母集団の状態を正しく推定できないため、なるべく母集団全体を代表する標本の組み合わせを選択する必要がある。適切な抽出方法は母集団の特性により様々で、抽出の枠組みと要素の選出方法を組み合わせて抽出方法を決定する。
抽出の枠組みは母集団を複数の枠に分割してそれぞれの枠から抽出することを指す。特に枠を設けず全体を対象とする「単純抽出」、重なりのない複数のカテゴリーに分けてそれぞれから選出する「層化抽出」(層別抽出)、ある属性が共通している(クラスターを形成している)がそれ以外の属性がバラけている集団から抽出する「集落抽出」(クラスターサンプリング)などがある。
枠(あるいは全体)からの要素の選出方法としては、くじ引きのようにランダムに選ぶ「無作為抽出」、「登録番号の末尾が00で終わる」といったようにある属性の値を規則的に選んでいく「系統抽出」などがある。大規模な調査では、抽出した要素の集合から再び抽出を行う「多段階抽出」(多くの場合は2段階抽出)が行われることもある。
正規化 【ノーマライズ】
データなどをある基準や形式に適合するように、一定の手順や規則に従って変形・変換すること。様々な分野で用いられる概念であり、それぞれ目的や方法などが大きく異なる。
リレーショナルデータベースの正規化
リレーショナルデータベース(RDBMS)では、データの保守性向上や処理の高速化を図るため、データベース内で同じ情報が複数の箇所に重複して記録されず、個々のテーブルは主キーから直接連想されるデータのみで構成されるよう設計するのが理想とされている。
この基準に基づいてデータ構造を再編する作業や操作のことをデータベースの正規化と呼び、正規化の度合いによって第1正規化から第5正規化、およびボイスコッド正規化などの種類に分類されている。
浮動小数点数の正規化
浮動小数点数を符号部、仮数部、指数部に分けてビット列で表す場合、同じ数を同じ符号化方式で表す場合でも仮数と指数の取り方によって複数の表現が可能となるが、標準となる形式を定めてこれに合わせて表現することを正規化という。
IEEE 754などの標準規格では有効数字の桁数が最大限に確保される表現に正規化するよう定められている。具体的には仮数部のビット列の左端の値が0以外になるように仮数を決め、それに合わせて指数が算出される。
XML文書の正規化
XML文書はテキスト形式を採用しているため、ホワイトスペースの扱いや要素の出現順序などに非常に寛容である。しかし、ソフトウェアにXML文書のデータを渡す場合や、データが改竄されていないことを証明するための署名などを行う場合には、XML文書を一定のルールに従って整形しなおす必要がある。
XMLの正規化は「Canonicalized XML」規格に定められたカノニカライズ(canonicalize)と、「XML Normalization」規格に定められたXML文書のノーマライズ(normalize)、XML規格本体に定められた属性値のノーマライズ(Attribute-Value Normalization)の3種類がある。
カノニカライズは論理的に同等の文書がバイナリデータのレベルで完全に一致するように整形する手順を定めており、XML文書が改竄されていないことを証明するための電子署名を有効に機能させるために必要となる。
XML文書のノーマライズは、ソフトウェアが文書の解釈や変換などを行いやすいように表記法を統一する処理を指す。XMLは名前空間を使用する場合などに意味的に同じ内容を複数の表記で書くことができるが、XML Normalization規格ではこれを一定の基準に基づいて統一された表記にすることを求めている。
属性値のノーマライズは、人間の入力の都合や見やすさなどのために様々な表記が混在する属性値を一定の基準で変換し、ソフトウェアが表記の揺れに影響されないようにする処理である。文字参照表現を参照先の文字自体で置き換えたり、改行文字やタブ文字を空白文字(16進数で20)に置き換えたり、連続する複数の空白を一文字に短縮するといった変換が行われる。
量的データ 【量的変数】 ⭐⭐⭐
調査や観測などで得られたデータのうち、物事の量的な側面を表す数値データのこと。長さ、重さ、人数、金額など大小や高低の程度を反映したデータである。
数で表され、数の大きさが量の多寡や性質の強さ、度合いを反映しているようなデータをこのように呼ぶ。物事の質的な側面を表す「質的データ」(質的変数)と対比される。
量的データを測る尺度のうち、数の間隔に意味があるものを「間隔尺度」という。数の間隔が量の大きさを反映している尺度で、温度の摂氏(℃)や年号などが当てはまる。原点が量的な「0」を表さないため値同士の比率には意味がない。
一方、間隔だけでなく値そのものの比に意味があるような尺度を「比例尺度」という。数がそのまま量の大きさを反映しているような尺度で、長さ、面積、体積、重さ、時間、速度、絶対温度、人数、金額など多くの量的データは比例尺度で表される。数で表されていても、数が順序や順位しか表さない、ランキングや段階評価、段位のような「順序尺度」のデータは含まない。
質的データ 【質的変数】 ⭐⭐⭐
調査や観測などで得られたデータのうち、物事の質的な側面を表すデータのこと。数で表されないような記録や、数値の場合は値自体や値同士の差の比率には意味がないようなデータである。
性別や血液型、「はい」「いいえ」を選択するアンケート項目、色、形状など、結果を数値で表すことができないデータや、数字で表されていても自動車ナンバーや電話番号のように大小に意味がない「名義尺度」のデータが含まれる。物事の量的な側面を表す「量的データ」(量的変数)と対比される。
また、数の大小が順位や順序を表していても、間隔や比には意味がない「順序尺度」の数値データも質的データに分類される。例えば、競技の順位、成績やアンケートなどの段階評価、検定制度の段位や級などは、上位と下位の区別はできても度合いを数量比較することはできないため質的データに分類される。
構造化データ ⭐⭐
項目の形式や順序など、明確に定義された構造に従って記述、配置されたデータ集合のこと。プログラムによって自動処理するために用いられることが多い。
リレーショナルデータベースのテーブルやCSVファイルのように、一件のレコードの構成、各項目のデータ型や形式、項目の並び順、項目やレコードの区切り文字などが事前に決まっており、同じ構成のレコードの繰り返しとしてデータを列挙したものを指すことが多い。
ソフトウェアによって容易に読み込んで内容を認識させることができ、大量のデータを集計したり分析するのに適している。人間がそのまま眺めて読みやすい形式とは限らず、ソフトウェアによって抽出や集計を行ったり、見やすいよう整形したり、レポートなど別の形式へ変換してから人間に供されることが多い。
一方、Webページや電子メール等のメッセージ、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどで作成した(見栄え重視の)文書ファイル、画像や音声、動画などのメディアデータといった、決まった形式や配置に従ってデータが並んでいるわけではない不定形なデータ群のことを「非構造化データ」(unstructured data)という。
Webページの構造化データ
WebページのHTMLコードは、Webブラウザにその文書の構造やレイアウトを伝達するという意味では構造化されているが、書かれている情報をサイト横断的に同じ形式に従って自動収集・処理できるような構造にはなっていない。
そこで、ソフトウェアが自動処理しやすいようページ内に書かれている内容を特定の規約に則って構造化データとして記述する手法が提唱されている。同じ情報を人間向けと機械向けに同じページに埋め込んでおき、ブラウザは人間向けのデータを表示し、Webロボットなどの自動処理プログラムは機械向けのデータを収集する。
様々な手法が提唱されているが、現在有力な方式はHTMLのヘッダ領域などにJSON-LD形式でスクリプトの形で情報を埋め込む手法で、Schema.orgという業界団体が情報の種類ごとにデータの記述形式(スキーマ)の標準を提案している。
例えば、ある行事の開催案内のWebページに、Schema.orgの定義する「Event」(行事)のスキーマで構造化データを埋め込むことで、巡回してきたロボットに行事名や主催、出演者、開催日時などを伝達することができる。
非構造化データ ⭐
項目の形式や順序などについて明確に定義された構造を持たない不定形なデータ集合のこと。主に人間が情報を把握するために作成されるデータ群で、コンピュータによる内容の自動処理には適さない。
コンピュータが扱うデータの多くは何らかの形式や構造に従って記録されているものが大半だが、非構造化データといった場合はリレーショナルデータベース(RDB)の表(テーブル)のように構成要素を分割、配列した構造を持たず、コンピュータプログラムによって要素を個別に把握して処理するような利用方法が難しいようなものを指す。
よく挙げられる例として、(人間が閲覧するための)Webページ、電子メールやメッセンジャーなどのメッセージ、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどで作成した(見栄え重視の)文書ファイル、画像や音声、動画などのメディアデータなどがある。
これらのデータはそれぞれ特定のデータ形式で記録されてはいるものの、主に人間が見聞きするために視聴覚的な構成を整えることを主眼に作成・編集されており、内部の構成要素をプログラムが自動認識できるような形になっていない。データベースのような検索性や再利用性は乏しく、情報として後から活用することが難しい。
一方、データベースのテーブルやCSVファイルのように、一件のレコードの構成、各項目のデータ型や形式、項目の並び順、項目やレコードの区切り文字などが事前に決まっており、同じ構成のレコードの繰り返しとしてデータを列挙したものを「構造化データ」(structured data)という。
異常値 ⭐
調査や測定、観測などで同種のデータをいくつも取得したとき、ミスなどで混入した誤った値のこと。また、単に傾向から大きく外れた値(外れ値)や、何らかの基準を超えて異状を示す値を指すこともある。
収集したデータ全体の分布が何らかの傾向を示すとき、この傾向から大きく外れた値のことを「外れ値」という。このうち、測定機器の不具合や故障、測定ミス、記入ミスなど、何らかの明確な原因によっておかしな値になってしまったものを異常値という。
ミスなどの不手際に限らず、人間の身長を示す値が「10m」になるなど、理論的に絶対に起こり得ない値を含むこともある。データを取る対象や方法によって、外れ値から異常値と他の外れ値を区別できる場合と、区別がつかない場合がある。文脈によっては外れ値のことを異常値と呼ぶ(両者を特に区別しない)場合もある。
また、医療における検査や、システムや機械の監視など、正常な状態と異常な状態を区別するために測定などを行う場合には、異常な状態を示す値のことを異常値と呼ぶことがある。この場合には値そのものは正しく得ることができており、「正しく捉えられなかった値」という意味合いはない。
外れ値 ⭐⭐⭐
調査や測定、観測などで同種のデータをいくつも取得したとき、全体のデータの傾向から大きく外れた値のこと。統計処理などの際に一定の基準を設けて除外することがある。
収集したデータ全体の分布が何らかの傾向を示すとき、この傾向から大きく外れた値のことを外れ値という。このうち、測定機器の不具合や記入ミスなど、何らかの誤りによっておかしな値になってしまったものは「異常値」という。対象や方法によって、異常値と異常値以外の外れ値を区別できる場合とできない場合がある。
外れ値を含んだデータをそのまま分析すると、平均値や相関係数などの統計量に大きな影響を与え、歪んだ結果が導き出されることがある。このため、一定の基準を設けて外れ値を取り除く操作を行うことがある。
よく用いられる手法として、箱ひげ図を描いて「第1四分位数-箱の幅×1.5以下」「第3四分位数+箱の幅×1.5以上」のデータを外れ値と判定する方法がある。また、平均値や標準偏差などから特定の統計量を算出し、基準値を設けて判定する方法もある。こうした検定にはスミルノフ・グラブス検定やトンプソン検定などが知られている。
なお、用意した結論に都合のよいデータのみを残してそれ以外を外れ値として排除することはデータの改竄とみなされる可能性があるため値の削除は慎重に行う必要がある。どんな調査や観測でも、現実の対象を調べれば全体の傾向から外れたサンプルが存在するのは普通のことであるため、異常値として理由が説明できる値以外は恣意的に取り除くべきではないとする考え方もある。
欠損値 【欠測値】 ⭐⭐⭐
調査や測定、観測などでデータを収集した際、あるデータの記録場所を参照してもデータが記録されておらずに欠けていること。一定周期で観測値を記録するシステムでデータが欠けた時刻がある場合などが該当する。
観測において、装置の不具合や操作ミスなどで測定値が得られなかった状態や、調査において特定の記入項目が空欄で記載されていない状態などを指す。値は存在するが傾向から大きく外れている「外れ値」や、装置故障やミスなどでおかしな値になってしまった「異常値」とは異なる。
観測における欠測などは機械的に取り除いて分析することが多いが、調査では記入が任意の項目が複数ある場合などに完全にデータが揃っているサンプルが十分な数揃わないこともある。そのような場合には欠損の多い項目を解析から外したり、平均値などの代表値で穴埋めしたり、他の項目の値が似ているサンプルのデータで補完するといった操作を行うことがある。
尺度 ⭐⭐
対象の測定や計量、評価などを行うときの基準。特に、結果を数字に対応付けるための規則を指すことが多い。定規やメジャーなど長さを測る道具を尺度と呼ぶこともある。
尺度水準 (level of measurement)
統計的な変数やその値を、情報の性質に基づいて分類したものを「尺度水準」という。1946年に米心理学者スタンレー・スティーブンズ(Stanley S. Stevens)が提唱した、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」の4段階に分類する考え方が広く普及している。
「名義尺度」(類別尺度)は対象や状態を区別するためだけに(便宜上の)数字を割り当てたもので、値が同じか異なるかしか評価することができない。順序や大きさ、比率などに意味はなく、計算を行うこともできない。例えば、電話番号の国番号は米国が1、日本が81だが、日本が何かの大きさで81位であるとか、何かが米国の81倍であるというわけではない。
「順序尺度」は数字の大小が順序を表すような尺度である。大きさを比較したり順位を付けることができるが、他の値との差や比率には意味がなく、計算を行うことはできない。競技の順位、成績やアンケートなどの5段階評価、検定制度の段位や級などが該当する。「将棋8段は4段より強い」とは言えるが、「2倍強い」といった比較はできない。
「間隔尺度」は数字が順序を表すとともに間隔に意味があるような尺度である。値の差が等しければ同じ間隔が空いていることを意味するが、「0」で表される点は便宜上置いたもので、値の比には意味がない。例えば、摂氏5度が15度になるのと15度が25度になるのは同じ幅だけ温度が上昇したと言えるが、摂氏15度は5度の3倍の温度やエネルギーであるとは言えない。
「比例尺度」(比率尺度)は数字が順序や間隔を表すともに、「0」に原点としての意味があり、値の比や割合も議論することができる尺度である。長さ、重さ、時間、速度、絶対温度などの物理量、金額などが該当する。これらの尺度水準には上下関係があり、名義、順序、間隔、比例の順に水準が高くなる。高い水準の尺度は自身より低い水準の尺度を兼ねている。
尺度 ⭐⭐
対象の測定や計量、評価などを行うときの基準。特に、結果を数字に対応付けるための規則を指すことが多い。定規やメジャーなど長さを測る道具を尺度水準と呼ぶこともある。
尺度水準 (level of measurement)
統計的な変数やその値を、情報の性質に基づいて分類したものを「尺度水準」という。1946年に米心理学者スタンレー・スティーブンズ(Stanley S. Stevens)が提唱した、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」の4段階に分類する考え方が広く普及している。
「名義尺度」(類別尺度)は対象や状態を区別するためだけに(便宜上の)数字を割り当てたもので、値が同じか異なるかしか評価することができない。順序や大きさ、比率などに意味はなく、計算を行うこともできない。例えば、電話番号の国番号は米国が1、日本が81だが、日本が何かの大きさで81位であるとか、何かが米国の81倍であるというわけではない。
「順序尺度」は数字の大小が順序を表すような尺度である。大きさを比較したり順位を付けることができるが、他の値との差や比率には意味がなく、計算を行うことはできない。競技の順位、成績やアンケートなどの5段階評価、検定制度の段位や級などが該当する。「将棋8段は4段より強い」とは言えるが、「2倍強い」といった比較はできない。
「間隔尺度」は数字が順序を表すとともに間隔に意味があるような尺度である。値の差が等しければ同じ間隔が空いていることを意味するが、「0」で表される点は便宜上置いたもので、値の比には意味がない。例えば、摂氏5度が15度になるのと15度が25度になるのは同じ幅だけ温度が上昇したと言えるが、摂氏15度は5度の3倍の温度やエネルギーであるとは言えない。
「比例尺度」(比率尺度)は数字が順序や間隔を表すともに、「0」に原点としての意味があり、値の比や割合も議論することができる尺度である。長さ、重さ、時間、速度、絶対温度などの物理量、金額などが該当する。これらの尺度水準には上下関係があり、名義、順序、間隔、比例の順に水準が高くなる。高い水準の尺度は自身より低い水準の尺度を兼ねている。
比例尺度 【比率尺度】 ⭐⭐
統計などで用いられる数値データの尺度のうち、数字が順序や間隔を表すともに、値の比や割合も議論することができるもの。
統計的な変数やその値を、情報の性質に基づいて分類したものを「尺度水準」という。1946年に米心理学者スタンレー・スティーブンズ(Stanley S. Stevens)が提唱した、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」の4段階に分類する考え方が広く普及している。
比例尺度は最も高い水準の尺度で、数字がそのまま何らかの量の大きさを表している。値の「0」は「存在しない」ことを表す原点であり、値の間隔や比には意味がある。加減乗除などの計算も行うことができ、すべての統計量を使うことができる。
例としては、長さや面積、体積、重さ、時間、速度、絶対温度などの物理量、金額、個数などが該当する。一段階低い水準の間隔尺度である摂氏では27℃が54℃になったからといって温度が2倍になったとは言えないが、絶対温度600K(約327℃)は300K(約27℃)の2倍の温度と言うことができる。
順序尺度 ⭐⭐⭐
統計などで用いられる数値データの尺度のうち、数字の大小が順番や順位を表すようなもの。大小や高低、前後の比較はできるが、値の差や比には意味がない。
統計的な変数やその値を、情報の性質に基づいて分類したものを「尺度水準」という。1946年に米心理学者スタンレー・スティーブンズ(Stanley S. Stevens)が提唱した、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」の4段階に分類する考え方が広く普及している。
順序尺度は名義尺度に次いで2番目に低い水準の尺度で、数字の大小で順序を表すことができる。大きさを比較したり順位を付けることができるが、値同士の差や他の値との比、割合などには意味がなく、値の計算を行うこともできない。統計量としては度数や最頻値に加え、中央値や四分位数、パーセンタイルなどが使用できる。
例としては、競技の順位、成績やアンケートなどの段階評価、検定制度の段位や級、自動車保険の等級、がんのステージ、国際原子力事象評価尺度などが該当する。「将棋8段は4段より強い」とは言えるが、「2倍強い」といった比較はできない。
間隔尺度 ⭐⭐⭐
統計などで用いられる数値データの尺度のうち、数字の大小が順序を表すと共に、2つの値の差の大きさに意味があるもの。値の比には意味がない。
統計的な変数やその値を、情報の性質に基づいて分類したものを「尺度水準」という。1946年に米心理学者スタンレー・スティーブンズ(Stanley S. Stevens)が提唱した、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」の4段階に分類する考え方が広く普及している。
間隔尺度は比例尺度についで2番目に高い水準の尺度で、数字の間隔が量の大きさを表すような尺度である。値の差が等しければ同じ間隔が空いていることを意味するが、「0」で表される点は量が0になる原点ではなく便宜上置いたものである。値自体の比には意味がないが、値の差同士の比には意味がある。統計量としては最頻値や中央値、パーセンタイルなどに加え、平均値(相加平均)や標準偏差、相関係数なども使うことができる。
例としては、温度の摂氏(℃)や華氏、西暦や元号で表した年、日付などがある。15℃が20℃になるのと20℃が30℃になるのでは2倍の温度上昇が生じたと言うことができるが、15℃が30℃になったのを温度が2倍に上昇したと言うことはできない。
名義尺度 【類別尺度】 ⭐⭐⭐
統計などで用いられる数値データの尺度のうち、対象や状態を区別するためだけに(便宜上の)数字を割り当てたもの。値は順番や順位を意味せず、値の差や比にも意味はない。
統計的な変数やその値を、情報の性質に基づいて分類したものを「尺度水準」という。1946年に米心理学者スタンレー・スティーブンズ(Stanley S. Stevens)が提唱した、「名義尺度」「順序尺度」「間隔尺度」「比例尺度」の4段階に分類する考え方が広く普及している。
名義尺度は最も低い水準の尺度で、数字は対象や状態を識別する名前の役割しか果たさず、量的な意味合いを一切もたない。値が同じか異なるかを見分けるためだけに使用することができ、順序、間隔、大きさ、比率などを表すことはできず、値の計算にも意味がない。統計量としては各値の度数や出現頻度、最頻値などを求めることはできる。
例としては、電話番号や郵便番号、学籍番号、背番号、国際電話の国番号、総務省の都道府県コードなどがある。例えば、都道府県コードで「10」が群馬県、「20」が長野県だが、群馬県が何かで10位であるとか、長野県の何かが群馬県の2倍であるといった意味はない。
テキスト形式 【テキストデータ】 ⭐
コンピュータ向けのコードなどを含まず、人間が読むことのできる文字のみで構成されたデータのこと。ある文字コードで文字として規定される範囲のデータのみを含む。
コンピュータでは内部的にすべてのデータを2進数の数値の並び(ビット列)として表現しているが、人間の使っている文字を扱えるようにするため、特定の番号と文字を対応付ける「文字コード」(character code)が規定されている。例えば、最もよく使われているASCII文字コードでは、「65」という数値(2進数では「1000001」)が「A」というアルファベットに対応付けられている。
テキスト形式は、この文字コードで規定された自然言語の文字と、表示制御のための少数の制御コード(空白や改行など)のみを含み、人間が容易に読み書きできる形式のデータを指す。これに対し、コンピュータプログラムによって読み書きや処理を行うことを前提に、文字コードの規約を用いずに任意のビット列によって構成されるデータのことをバイナリ(binary)形式、バイナリデータなどという。
広義のテキスト形式は文字のみで構成されたデータ全般を意味するが、これには文字によってコンピュータへの指示などを記述したHTML形式やコンピュータプログラムのソースコードなどが含まれる。狭義のテキスト形式はこのようなコンピュータ向けの記述を含まず、純粋に人間が読み書きするための文字情報だけで構成されたものを指し、そのことを明示するため「プレーンテキスト」(plain text)と呼んで区別される場合がある。
バイナリ 【バイナリデータ】
2値(の)、2進数(の)、2元(の)、などの意味を持つ英単語。IT関連ではテキスト(文字)以外のデータ形式全般を総称してバイナリ形式と呼ぶことが多い。
コンピュータはすべての情報を2進数の「0」と「1」が並んだビット列として表現する。このうち、何らかの文字コード規格に基づいて文字を表すデータを「テキストデータ」(テキスト形式)、そうでないものを「バイナリデータ」(バイナリ形式)と分類する。
バイナリ形式のデータの例としては画像や音声、動画などを記録したメディアデータ、実行可能形式のコンピュータプログラム(オブジェクトコード/バイナリコード)、圧縮データ、暗号データなどがある。
バイナリ形式におけるビット列のパターンと意味の対応関係はデータ形式やソフトウェアの種類ごとに規定されている。その形式に対応したソフトウェア以外では何が記録されているのか分からず、内容を表示したり編集することはできない。
バイナリエディタのように形式を限定せずにバイナリファイルの表示や編集を行うソフトウェアもあり、形式不明のファイルの解析など特殊な用途に用いられる。その場合、データの先頭から順に2進数の4桁を一つのまとまりとして1桁の16進数(0~F)に置き換えて表示することが多い
テキストデータは人間が文字として取り扱うことができるというだけでコンピュータにとってはパターンが限定されたビット列の一種であるため、伝送や圧縮、暗号化などを行う際は文字としての側面はひとまず捨象して、他のバイナリデータと同じように単なるビット列として扱うことが多い。
IT分野以外でバイナリ形式という語が用いられることは稀だが、金融や商取引などの分野で、2つの系列からの選択や、二者択一の予測などの状況を指してバイナリ形式と表現することがある。
KVS 【Key-Value Store】
データ管理システムの種類の一つで、保存したいデータに対し、対応する一意の標識を設定し、これらをペアで格納する方式。標識を指定すると、対応するデータを取り出すことができる。
保存したい値(value)に対して標識となるキー(key)を設定し、両者をセットでストレージなどに書き込む。読み出し時にはキーを指定すると対応する値を取り出すことができる。既存のキーを指定して書き込むと新たな値で上書きされる。
値やキーに指定できるデータの種類は処理系によって異なり、キーは参照や識別がしやすいよう数値や文字列などが用いられることが多い。値には単純なデータ型やバイト列を指定できることが多いが、複雑なデータ構造やオブジェクトなどを格納できるものもある。構造的なデータを一定の決まった手順で文字列やバイト列に変換(シリアライズ)して保存する処理系もある。
一意のキーに値を対応付けて保存するデータ構造は多くプログラミング言語で連想配列、辞書(ディクショナリ)、ハッシュ、マップなどの名称で提供されてきており、キー・バリュー形式はこの仕組みを永続的なデータ管理システムに応用したものと考えることもできる。
伝統的なリレーショナルデータベース(RDB)に代わるデータ管理システムは「NoSQL」(RDBの操作を行うSQL言語を用いないという意味)と総称され、キー・バリュー形式はそのなかでも最も手軽で汎用的な方式として広く浸透している。複数のサーバや記憶装置などに分散してデータを保存できる機能を持ったものもあり、「分散KVS」(distributed KVS)と呼ばれる。
インデックス ⭐
索引、見出し、添字、指数などの意味を持つ英単語。ITの分野では、書籍の巻末の索引のように、多数のものの中から特定の対象をすばやく見つけ出すため識別情報や、整列された所在情報の一覧などを指すことが多い。
プログラミングなどの分野では、同種の複数のものが並んでいるときに、個々の要素を区別するために付けられた通し番号などの識別情報をインデックスという。配列の要素を指し示す添字などが該当する。
データベースやファイルシステム、検索エンジンなどでは、収集・格納された大量のデータをすばやく検索・抽出するために作成された索引データをインデックスという。データ本体を端から順に探すよりも圧倒的に短い手順で目的のデータを探し出せる。
具体的には、見出しとなる識別符号と、データ本体のある所在情報などを対応付け、整列・分類などを行ったあと木構造やハッシュテーブルなど検索に適したデータ構造に格納したものを指すことが多い。
AND検索 【アンド検索】 ⭐
情報を検索する際の条件の指定方法の一つで、複数の条件をいずれも満たすものを検索すること。
条件AとBがあるとき、検索条件を「A and B」と指定すると、「AとBの両方の条件を満たす」という意味になる。条件が3つ以上の場合も同様で、挙げられたすべてを満たすという意味になる。
Web検索エンジンのキーワード指定では、キーワードを半角スペースで区切るとAND検索の指定を意味することが多く、列挙したキーワードすべてを含むページを検索せよという意味になる。例えば、「スクリーンショット Android」と検索すると、「スクリーンショット」と「Android」の両方を含むページが検索される。
一方、挙げられた条件の少なくとも一つを満たすものを検索することは「OR検索」、ある条件を満たさないものを検索することは「NOT検索」という。
OR検索 【オア検索】 ⭐
情報を検索する際の条件の指定方法の一つで、複数の条件のうち少なくともいずれか一つを満たすものを検索すること。
条件AとBがあるとき、検索条件を「A or B」と指定すると、「AとBのいずれかの条件を満たす」という意味になる。条件が3つ以上の場合も同様で、挙げられた条件の少なくともいずれか一つを満たすという意味になる。
Web検索エンジンのキーワード指定では、キーワードを「|」(縦棒、縦線、バーティカルバーなどと呼ばれる)で区切るとOR検索の指定を意味することが多く、列挙したキーワードのいずれかを含むページを検索せよという意味になる。例えば、「iPad|Androidタブレット」と検索すると、「iPad」と「Androidタブレット」のどちらか、あるいは両方を含むページが検索される。
一方、挙げられた条件のすべてを満たすものを検索することは「AND検索」、ある条件を満たさないものを検索することは「NOT検索」という。
NOT検索 【マイナス検索】 ⭐
情報を検索する際に条件を指定する方法の一つで、ある条件を満たさないものを検索すること。
条件Aについて検索条件を「not A」と指定すると、「Aを満たさない」という意味になる。通常は他の検索条件と組み合わせ、得られた検索結果から特定の条件に一致するものだけを除外するために用いられる。
一方、複数の検索条件を列挙して「すべてを満たす」ものを検索する指定方法は「AND検索」(アンド検索)、「少なくとも一つを満たす」ものを検索する指定方法は「OR検索」(オア検索)という。
検索エンジンのマイナス検索
Web検索エンジンのキーワード指定では、キーワードの先頭に「-」(ハイフン、マイナス記号)を付けるとNOT検索の意味になる記法を採用していることが多く、「マイナス検索」とも呼ばれる。
通常は他のキーワードや検索条件と組み合わせて検索結果を絞り込むのに用いられる。例えば、「アリ -シロアリ」と検索すると、「アリ」を含むWebページから「シロアリ」を含むものを除外したページ一覧が表示される。
CSV 【Comma-Separated Values】 ⭐
テキスト(文字)データの形式の一つで、項目をカンマ「,」で区切って列挙したもの。複数の項目をレコードとしてまとめる場合は、改行でレコードの区切りを表す。表形式で項目が並んだデータの保存に用いられる。
表のように項目が縦横に並んだデータを記述することができる形式の一つで、標準のファイル拡張子は「.csv」。表計算ソフトやデータベースソフトなど多くのソフトウェアが標準で対応している。異種システム間のデータ交換などで古くから広く用いられている。
実体は単純な記法のテキストデータであるため、対応プログラムの開発もしやすく、人間がテキストエディタなどで開いて直接読み書きすることも容易である。反面、アプリケーション固有の複雑なデータや動的なデータ(他のセルの参照や関数など)や、画像などのバイナリデータ、データ全体についての情報(メタデータ)などを記録するのには向いていない。
仕様のばらつき
システムによって「項目をカンマで区切る」以外の仕様には細かな差異がある。例えば、改行文字として「CR+LF」(16進数で0D+0A)を用いるシステムが多いが、システム標準のテキストデータの扱いの違いにより、「CR」(0D)のみの場合や「LF」(0A)のみの場合もある。
また、項目を二重引用符「"」や一重引用符「'」で囲むのを原則とする場合と、文字列型のデータのみを引用符で括る場合、項目内にカンマや引用符、改行など区切り文字が出現する場合に引用符で括る場合などがある。項目内に引用符が現れる場合は「,"私は""神""だ",」のように二文字連続とする。
慣例として先頭行を「氏名,住所,電話番号」のように項目名の列挙とすることが多く、アプリケーションで開いたときに最上段に項目名を表示させることができる。各列が何を表しているのか容易に把握することができるが、そのまま表示・編集することを意図しない自動処理用のファイルなどでは省略してデータ本体のみとすることも多い。
同じ用途の他形式
<$Img:CSV-File.png|right|mcmurryjulie|https://pixabay.com/vectors/spreadsheet-icon-spreadsheet-excel-1898557/>CSVと同じように、項目を記号文字や制御文字で分離して改行でレコードを区切る形式は他にもあり、タブ文字(16進数で09)で区切る「TSV」(Tab-Separated Values)形式や、スペース文字(16進数で20)で区切る「SSV」(Space-Separated Values)などがよく知られる。西欧の一部のように数値の桁区切りにカンマを用いる国では、CSVの区切り文字にカンマでなくセミコロン「;」を用いる場合もある。
Microsoft Excelなどの表計算ソフトでは表形式に項目を並べたワークシートを扱うが、標準では各アプリケーション固有のファイル形式(Excelの場合はXLSXファイルなど)でこれを保存する。ほとんどのソフトにはCSVファイルの取り込み(インポート)や書き出し(エクスポート)機能があるため、標準ファイル形式では対応できない他のアプリケーションとのデータ交換などの際にはCSVを利用することがある。
データサイエンス
統計解析や数理解析、コンピュータによる処理などを駆使して大量のデータを解析・分析し、有用な知見を導く手法を研究する学問領域。
現代ではコンピュータや通信技術の発達で大量のデータの記録や蓄積、伝送が可能となった。これを様々な手法を駆使して処理、解析し、学術研究やビジネスなど人間の社会的な活動にとって有用な知見を導き出す方法論を研究するのがデータサイエンスである。
人間の知的活動と機械によるデータ処理を橋渡しするという性質上、様々な既存の学問や技術を横断的に活用する学際的な側面を持っている。統計や数理解析、線形代数、機械学習、データモデリングなどの数理科学やコンピュータ科学の知見、データベース操作やデータ形式の理解、プログラミング、データ加工・変換・処理といったエンジニアリング領域の技法が総合的に求められる。
データサイエンスを修め、あるいは研究する人材を「データサイエンティスト」(data scientist)という。日本では2011年頃からビッグデータ活用の重要性が叫ばれるようになるなか、データ活用を推進する具体的な人材像として2013年頃からデータサイエンティストという職種が認識され始めた。十分な技能を持ったデータサイエンティストは常に人材不足であるとされ、今後もそのニーズは高まっていくと予想されている。
データサイエンティスト ⭐
統計解析や数理解析、機械学習、プログラミングなどを駆使して大量のデータを解析し、有用な知見を得る職業あるいは職種。
企業の事業活動の電子化、コンピュータ化が進み、取得可能なデータや実際に蓄積されるデータの種類や量は飛躍的に増大したが、IT部門はデータの記録や管理のみ、ビジネス部門は表計算ソフトでの集計など定型的な利用のみの場合が多く、十分な利活用がされないまま死蔵される例が多かった。
データサイエンティストは様々な意思決定上の局面やビジネス上の課題を認識し、データによって立証可能な仮説やモデルを組み立て、蓄積された実際のデータ群に対して様々な処理手法や解析手法を適用することで、現実の課題解決に資する有用な知見を提供する。
具体的なスキルとして、対象領域への基本的な理解やビジネス部門との折衝、解析結果のドキュメンテーションやプレゼンテーションといったビジネス領域のスキル、統計や数理解析、線形代数、機械学習、データモデリングなどの数理科学やコンピュータ科学の知識、データベース操作やデータ形式の理解、プログラミング、データ加工・変換・処理の技法といったエンジニアリング領域の技能が総合的に求められる。
日本では2011年頃からビッグデータ活用の重要性が叫ばれるようになるなか、データ活用を推進する具体的な人材像として2013年頃から「データサイエンティスト」という職種が認識され始めた。十分な技能を持ったデータサイエンティストは常に人材不足であるとされ、今後もそのニーズは高まっていくと予想されている。
大学などが専門のコースやカリキュラムを編成する事例が見られるほか、日本数学検定協会の「データサイエンス数学ストラテジスト」やデータサイエンティスト協会の「データサイエンティスト検定」、統計質保証推進協会の「統計検定 データサイエンス基礎」など民間資格の認定制度も相次いで開始されている。
ビッグデータ ⭐⭐⭐
従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しいような巨大なデータ群。明確な定義があるわけではなく、企業向け情報システムメーカーのマーケティング用語として多用されている。
多くの場合、ビッグデータとは単に量が多いだけでなく、様々な種類・形式が含まれる非構造化データ・非定型的データであり、さらに、日々膨大に生成・記録される時系列性・リアルタイム性のあるようなものを指すことが多い。
今までは管理しきれないため見過ごされてきたそのようなデータ群を記録・保管して即座に解析することで、ビジネスや社会に有用な知見を得たり、これまでにないような新たな仕組みやシステムを産み出す可能性が高まるとされている。
米大手IT調査会社ガートナー(Gartner)社では、ビッグデータを特徴づける要素として、データの大きさ(Volume)、入出力や処理の速度(Verocity)、データの種類や情報源の多様性(Variety)を挙げ、これら3つの「V」のいずれか、あるいは複数が極めて高いものがビッグデータであるとしている。これに価値(Value)や正確性(Veracity)を加える提案もある。
コンピュータやソフトウェアの技術の進歩は速く、具体的にどのような量や速度、多様さであればビッグデータと言えるかは時代により異なる。ビッグデータという用語がビジネスの文脈で広まった2010年代前半にはデータ量が数テラバイト程度のものも含まれたが、2010年代後半になるとペタバイト(1000テラバイト)級やそれ以上のものがこのように呼ばれることが多い。
近年ではスマートフォンやSNS、電子決済、オンライン通販の浸透により人間が日々の活動で生み出す情報のデータ化が進み、また、IoT(Internet of Things)やM2M、機器の制御の自動化などの進展により人工物から収集されるデータも爆発的に増大している。
また、人工知能(AI)の構築・運用手法として、膨大なデータから規則性やルールなどを見出し、予測や推論、分類、人間の作業の自動化などを行う機械学習(ML:Machine Learning)、中でも、多階層のニューラルネットワークで機械学習を行う深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる手法が台頭している。
このような背景から、膨大なデータを的確、効率的に扱う技術上の要請はますます高まっており、統計やデータ分析、大容量データを扱う手法やアルゴリズムなどに精通した「データサイエンティスト」(data scientist)と呼ばれる専門職の育成が急務とされている。
データマイニング ⭐
蓄積された大量のデータを統計学や数理解析などの技法を用いて分析し、これまで知られていなかった規則性や傾向など、何らかの未知の有用な知見を得ること。
「マイニング」(mining)とは「採掘」の意味で、膨大なデータの集積を鉱山に、そこから有用な知見を見出すことを資源の採掘になぞらえている。適用分野や目的、対象となるデータの種類は多種多様だが、ビジネスの分野では企業が業務に関連して記録したデータ(過去の取引記録、行動履歴など)を元に、意思決定や計画立案、販売促進などに有効な知見を得るために行われることが多い。
例えば、小売店の商品の売上データの履歴は、それ自体は会計上の手続きや監査などの業務にしか使われないが、データマイニングの手法で統計的に処理することで、これまで知られていなかった「商品Aと商品Bを一緒に購入する顧客が多い」といった傾向が分かる場合がある。これにより、AとBの売り場を統合するといった販売促進施策を行うことが可能となる。
商業分野だけでなく、自然言語処理やパターン認識、人工知能などの研究などでも利用される。分析・解析の手法も様々だが、代表的な手法としては、頻度の高いパターンの抽出や、相関関係にある項目の組の発見、データの特徴や共通点に基づく分類、過去の傾向に基づく将来の予測などがある。
近年では、一般的なシステムやソフトウェアでの解析が困難な巨大なデータセットである「ビッグデータ」を対象とした解析手法や、人工知能の一分野である機械学習、特に先進的な手法である「ディープラーニング」を応用したマイニング手法などが活発に研究・開発されている。
データクレンジング 【データクリーニング】
データベースなどに保存されているデータの中から、重複や誤記、表記の揺れなどを探し出し、削除や修正、正規化などを行ってデータの品質を高めること。
蓄積されたデータを分析したり活用したりする際に、同じ意味を表しているのに表記が微妙に異なっていて同一とみなされない例など、そのままでは自動処理に適さない状態になっていることがある。特に、複数の情報源からデータを集めた場合や、一件ごとに入力者が異なる場合などにこの点が問題となることが多い。
そのような場合に、一定の基準やルールなどを定め、一項目ずつデータを調べて適切な状態に編集、統合、補正などしていく処理や作業をデータクレンジングという。具体的な手法はデータの種類や形式、利用目的などにより様々である。
一般的な例としては、全角文字と半角文字の違いや、空白文字や区切り記号の有無、人名の異体字の誤りや姓名の分割・併合、法人名の表記(株式会社と(株)の違いなど)、住所や電話番号の表記法などが対象となり、それぞれについて表記ルールを決めて修正や削除などを行なっていく。
代表値 ⭐
値の集団があるとき、全体の特徴を一つの値で表したもの。平均値や中央値、最頻値などいくつかの種類があり、特性や向き不向きが異なる。
統計調査などで様々な対象から値を取得すると、様々な大きさの値が集まるが、値全体を要約し、その中心的な傾向を把握することができる一つの値を代表値という。
最もよく用いられるのは「平均値」(average)で、全体の総量が変わらず、すべて同じ値だったらいくつになるかを求めたものである。総量の表し方によりいくつかの種類があるが、最も一般的な「算術平均」(単純平均/相加平均)では、全体の和を値の数で割って求める。
他に、大きい順あるいは小さい順に並べ替えたときに順位がちょうど真ん中の値で代表する「中央値」(median:メジアン/メディアン)や、各値の出現回数(頻度/度数)を数えて最も多く出現する値で代表する「最頻値」(mode:モード)などが用いられる。
平均はすべての値を評価に含めることができるが、少数の極端な値(外れ値)に影響されやすい。中央値は外れ値の影響を受けないが、中央付近の値の変動しか評価しないため時系列の変化を表すのは苦手である。最頻値は値の分布の偏りが小さい(一様に近い)集団が苦手だが、数値で表されないデータ(名義尺度)の集計にも適用できる。
平均値 【平均】 ⭐⭐
値の集団があるとき、全体の量は変えずにすべての値が同じだったらいくつになるかを求めたもの。集団全体の性質を表す代表値として最もよく用いられる。
単に平均値という場合はすべての値を足して個数で割った「算術平均」(相加平均、単純平均)を指す。全体の総和は変わらずすべての値が同じだったらいくつになるかを求めたもので、全体の値の水準を表している。
平均値の算出法として、すべての値(n個)を掛け合わせてn乗根を求めることもある。全体の積が同じですべての値が同じだったらいくつになるかを求めたもので、「幾何平均」(相乗平均)と呼ばれる。他にも調和平均、対数平均、加重平均など様々な算出法がある。
平均値は代表値として最もよく用いられるが、値の分布によっては必ずしも全体の性質を表すのに適さない場合がある。例えば、少数の値が極端に大きい(あるいは小さい)と、その値に引きずられてほとんどの値よりずっと大きい(あるいは小さい)値が平均値となることがある。
他によく用いられる代表値として、大きい順に並べ替えたときに順位がちょうど真ん中の値を求める「中央値」(median:メディアン/メジアン)、同じ値が出現する回数(あるいは区間ごとの頻度)を数え、最も出現頻度が大きいものを取る「最頻値」(mode:モード)がある。
最頻値 【モード】 ⭐
値の集団があるとき、各値が出現する回数を数え、最も多く現れる値のこと。集団全体の性質を表す代表値の一つとしてよく用いられる。
集団の中で同じ値が何回出現するかを調べ、最も多く出現する値が最頻値である。例えば、{ 0, 1, 1, 1, 2 } という値の集合があるとき、この中には「0」が1回、「1」が3回、「2」が1回出現しており、最頻値は3回の「1」となる。
連続値の場合は全く同じ値が繰り返し現れることは稀であるため、度数分布表やヒストグラムを用いて「0以上10未満」「10以上20未満」のように区間を区切って頻度を数え、最も多い区間の中心の値(10~20が最多なら15)を最頻値とする。
最頻値は一つに定まるとは限らない。「0, 1, 1, 2, 3, 3, 4」の場合、最多頻度2回の値が「1」と「3」2つとなり、両者ともに最頻値となる。このように最頻値が複数の場合を「多峰性」(multimodal)の分布、中でも2つの場合を「二峰性」(bimodal)の分布という。最も極端な場合、すべての値が同じ頻度で出現するとすべての値が最頻値となる(最頻値を考える意味がなくなる)。
代表値としては他にも、全体を同じ値に均した「平均値」(average)、順位がちょうど真ん中の値を取る「中央値」(median:メジアン、メディアン)などがある。統計値などがきれいな山型の分布にならない場合には、これらより最頻値で代表させるのが適していることがある。また、平均値や中央値と異なり、「○○という回答が最も多かった」というように数値で表されないデータ(名義尺度)の集計にも適用できるという重要な性質がある。
中央値 【メジアン】 ⭐⭐
値の集団があるとき、最大値から最小値まで順に整列したとき順位がちょうど真ん中である値のこと。集団全体の性質を表す代表値の一つとしてよく用いられる。
値を大きい順あるいは小さい順に並べた時、ちょうど真ん中にある値が中央値である。値が偶数個の場合は中央の値が2つになるため、両者の平均値(算術平均)を中央値とする。例えば、「0, 5 ,1, 9, 7」という値の集合がある場合、大きい順でも小さい順でもちょうど3番目が「5」となり、これが中央値となる。
代表値としては値を均した「平均値」(算術平均/相加平均)を用いることが多いが、平均値は極端な値が含まれる場合にその影響を受けやすいという難点がある。例えば、10軒の家があって9軒は車を1台所有しており、残り1軒が11台所有している場合、1軒あたりの平均所有台数は「2台」となるが、実際に2台以上所有しているのは1軒だけである。
このような場合、中央値は5位と6位の中間、すなわち「1台」となり、大半の家が1台のみである実態をよく表している。ただし、時系列の比較などを行う場合、中央値は中央付近の値の動向しか反映しないため、全体の変化の傾向などを表すのには不向きである。
集団の代表値としては平均値、中央値の他にも、同じ値が出現する回数(あるいは区間ごとの頻度)を数え、最も出現頻度が大きいものを取る「最頻値」(mode:モード)を用いることがある。先の車の所有台数の例では最頻値も「1台」である。
四分位数 【第1四分位数】 ⭐
数値データの集合を小さい順に並べ、同じ数ずつ4等分したときに、区切りとなる3つの値。下から1/4、1/2(中央)、3/4(上から1/4)の位置にある値である。
データを小さい順(昇順)に並べ、同じ個数ずつ4等分する。最も小さい側から1/4となる位置にある数を「第1四分位数」、ちょうど半分の位置にある数を「第2四分位数」、小さい側から3/4の位置にある数を「第3四分位数」という。第2四分位数は中央値に等しくなる。
下から何パーセントの位置にある値かを表す表現である「パーセンタイル」(percentile)を用いると、第1四分位数は「25パーセンタイル」、第2四分位数は「50パーセンタイル」、第3四分位数は「75パーセンタイル」に相当する。
第3四分位数から第1四分位数を引いた値を「四分位範囲」(quartile range)という。この値が小さいほど中心付近にデータが集中し、上位側と下位側のデータが少ないことを表している。四分位範囲の値の半分を「四分位偏差」(quartile deviation)と呼び、散らばり具合の指標としてこちらを用いる場合もある。
四分位数 【第1四分位数】
数値データの集合を小さい順に並べ、同じ数ずつ4等分したときに、区切りとなる3つの値。下から1/4、1/2(中央)、3/4(上から1/4)の位置にある値である。
データを小さい順(昇順)に並べ、同じ個数ずつ4等分する。最も小さい側から1/4となる位置にある数を「第1四分位数」、ちょうど半分の位置にある数を「第2四分位数」、小さい側から3/4の位置にある数を「第3四分位数」という。第2四分位数は中央値に等しくなる。
下から何パーセントの位置にある値かを表す表現である「パーセンタイル」(percentile)を用いると、第1四分位数は「25パーセンタイル」、第2四分位数は「50パーセンタイル」、第3四分位数は「75パーセンタイル」に相当する。
第3四分位数から第1四分位数を引いた値を「四分位範囲」(quartile range)という。この値が小さいほど中心付近にデータが集中し、上位側と下位側のデータが少ないことを表している。四分位範囲の値の半分を「四分位偏差」(quartile deviation)と呼び、散らばり具合の指標としてこちらを用いる場合もある。
四分位数 【第1四分位数】
数値データの集合を小さい順に並べ、同じ数ずつ4等分したときに、区切りとなる3つの値。下から1/4、1/2(中央)、3/4(上から1/4)の位置にある値である。
データを小さい順(昇順)に並べ、同じ個数ずつ4等分する。最も小さい側から1/4となる位置にある数を「第1四分位数」、ちょうど半分の位置にある数を「第2四分位数」、小さい側から3/4の位置にある数を「第3四分位数」という。第2四分位数は中央値に等しくなる。
下から何パーセントの位置にある値かを表す表現である「パーセンタイル」(percentile)を用いると、第1四分位数は「25パーセンタイル」、第2四分位数は「50パーセンタイル」、第3四分位数は「75パーセンタイル」に相当する。
第3四分位数から第1四分位数を引いた値を「四分位範囲」(quartile range)という。この値が小さいほど中心付近にデータが集中し、上位側と下位側のデータが少ないことを表している。四分位範囲の値の半分を「四分位偏差」(quartile deviation)と呼び、散らばり具合の指標としてこちらを用いる場合もある。
四分位数 【第1四分位数】
数値データの集合を小さい順に並べ、同じ数ずつ4等分したときに、区切りとなる3つの値。下から1/4、1/2(中央)、3/4(上から1/4)の位置にある値である。
データを小さい順(昇順)に並べ、同じ個数ずつ4等分する。最も小さい側から1/4となる位置にある数を「第1四分位数」、ちょうど半分の位置にある数を「第2四分位数」、小さい側から3/4の位置にある数を「第3四分位数」という。第2四分位数は中央値に等しくなる。
下から何パーセントの位置にある値かを表す表現である「パーセンタイル」(percentile)を用いると、第1四分位数は「25パーセンタイル」、第2四分位数は「50パーセンタイル」、第3四分位数は「75パーセンタイル」に相当する。
第3四分位数から第1四分位数を引いた値を「四分位範囲」(quartile range)という。この値が小さいほど中心付近にデータが集中し、上位側と下位側のデータが少ないことを表している。四分位範囲の値の半分を「四分位偏差」(quartile deviation)と呼び、散らばり具合の指標としてこちらを用いる場合もある。
正規分布 【ガウス分布】 ⭐
統計学で用いられる確率分布の一つで、平均付近に分布が集中し、平均から乖離するに連れ指数的に頻度が減少していくような分布のこと。自然現象や社会現象の多くがこの分布に従うことが知られており、確率・統計を扱う上で最も重要かつ基本的な分布である。
平均値、中央値、最頻値が同一の左右対称な分布で、横軸が値、縦軸が確率となるグラフに図示すると釣り鐘のように平均付近が大きく膨らんだ形状(ベルカーブという)となる。誤差や個体差など自然に生まれる値のばらつきの多くは正規分布に従って分布する。
ある値xが出現する確率を表す確率密度関数は、平均値μと標準偏差σを用いて 1/√(2πσ)×e-(x-μ)2/2σ2 という式で表される。同じ正規分布でも平均値が異なれば確率が最大になる位置が異なり、標準偏差が異なれば平均への偏り具合が異なる。標本値を線形変換し、平均が0、標準偏差が1になるように調整した分布を「標準正規分布」という。
正規分布の重要な性質として、平均μや標準偏差σの違いによらず、σの倍数で表される区間に値が含まれる確率は常に一定であるというものがある。例えば、平均から標準偏差だけ離れた範囲(μ-σからμ+σまで)に値が含まれる確率は約68.27%、μ±2σの範囲なら約95.45%、μ±3σの範囲なら約99.73%となる。
分散 ⭐⭐⭐
分かれて散らばること。確率・統計の分野では、データの散らばり具合を分散という。IT分野では処理やデータを複数の機器などで分担することを分散処理、分散システムなどという。
統計学の分散
統計学では、あるデータ群のそれぞれの値について平均値との差を取って二乗し、その合計をデータの数で割って平均した値(二乗平均)を分散(variance)という。データ群が平均に対してどのくらい散らばっているかを表す指標として用いられる。
例えば、{10,20,30} という3つの標本の分散は平均値の20を用いて {(10-20)2+(20-20)2+(30-20)2}/3 と表すことができ、約66.7となる。{0,20,40} であれば約266.7となり、すべて平均に等しい {20,20,20} ならば分散は0となる。
分散は算出過程で値を二乗しており元の値とは次元が異なるが、分散の正の二乗根を取って次元を揃えた値を散らばりの指標として用いることがある。これを「標準偏差」(SD:Standard Deviation)と呼び、元の値と同じ尺度で散らばり具合を評価することができる。
分散処理
IT分野では、一つの処理やデータ群に対して複数の機器を動員し、分担して処理する方式を「分散処理」(distributed processing)、「分散システム」(distributed system)、「分散コンピューティング」(distributed computing)などという。
このうち、処理の前後関係に従って異なる機能の機器を連結し、それぞれが特定の工程に専念する方式を「垂直分散システム」、同じ機能の機器を並べて処理を振り分け、並行に処理する方式を「水平分散システム」という。一般には後者を指して単に分散システムと呼ぶことが多い。
標準偏差 【SD】 ⭐⭐
統計における指標の一つで、データ群のばらつき具合を表す値。この値が小さいほど平均付近にデータが集まっていることを表し、大きければ平均から外れたデータがたくさんあることを表している。
標準偏差は分散の正の平方根で、データが平均値から平均でどのくらい離れているかを表している。算出方法は、各値と平均値の差を二乗した値の和を求め、これをデータの数で割った平均のルートを取る(二乗平均平方根)。
例えば、{10,20,30} という3つの標本の標準偏差は、平均値20を用いて √[{(10-20)2+(20-20)2+(30-20)2}/3] と表され、約8.16となる。{0,20,40} ならば約16.33となり、すべて平均値に等しい {20,20,20} ならば標準偏差は0となる。
分散も散らばり具合を表しているが、元の値と平均の差の二乗の平均であるため、元の値とは次元が異なる。標準偏差はその平方根を取っているため、元の値と同じ次元となり、値自体の大きさと散らばり具合の大きさを同じ尺度で比較することができる。日本では学力試験のいわゆる偏差値を算出するのに用いられている。
偏差値
データ系列の値を、特定の平均値と標準偏差になるよう変換したもの。その値が集団内でどの程度の位置に相当するかを表しており、学力試験の得点を難易度に依らず比較できるようにするために求めることが多い。
もとのデータ系列の平均値と標準偏差を求め、定数AとSを用いて という式で変換した値である。これは平均値がA、標準偏差がSの分布だったら元の値がいくつになるかを表している。
偏差値自体は様々なデータに適用することができるが、日本では高校までの学力試験の得点を偏差値に変換した「学力偏差値」が広く普及している。これは平均(A)が50、標準偏差(S)が10になるように調整した偏差値で、テストの満点の違いや難易度による影響を排して集団内での位置を知る指標として利用されている。外国ではAやSが別の値の偏差値が用いられることもある。例えば、米大学入試で用いられる「SAT」はAが100、Sが500の偏差値を算出する。
算出方法から、偏差値50はちょうど平均値であることを表す。元の値の分布が正規分布に従う場合、偏差値25が下から0.62%、偏差値40が下から15.9%、偏差値60が上から15.9%、偏差値75が上から0.62%の位置にいることを表す。試験などでは概ねこの範囲にほとんどの得点が収まるが、試験が極端に難しいあるいは易しい場合など、結果が正規分布から大きく外れた場合には偏差値も大きく外れた値を取り得る。
クロス集計 ⭐⭐
複数の項目からなるデータの集合があるときに、そのうちの2つ(ないし3つ)の項目を組み合わせて2次元の表の形で集計すること。項目間の関係や相関、傾向などを見やすくまとめることができる。
2つの項目でクロス集計する場合、一方の項目を縦軸、もう一方を横軸として、それぞれについて選択肢を並べる。各マス目には、縦軸と横軸の選択肢を同時に満たすデータを数えて集計値として書き入れていく。
例えば、「性別」「喫煙」の2項目のアンケートがあるとき、単純集計では「喫煙○」と「喫煙×」の数を集計するが、クロス集計表では縦軸を「男性」「女性」、横軸を「喫煙○」「喫煙×」として4つの値を集計する。
さらに、飲酒についても同時に尋ね、縦軸を「男性・飲酒○」「男性・飲酒×」「女性・飲酒○」「女性・飲酒×」の4つに分解し、3項目について同時に集計することを「多重クロス集計」という。
代表的な表計算ソフトのMicrosoft Excel(マイクロソフト・エクセル)では、ロス集計機能のことを「ピボットテーブル」(pivot table)、これをグラフ化する機能を「ピボットグラフ」(pivot chart)という。
相関関係 【相関】 ⭐⭐⭐
2つの事象に関わりがあり、一方が変化するともう一方も変化するような関係のこと。特に、何らかの規則性に基づいて双方の変化が連動しているような関係を指す。
「冬の気温と桜の開花日」や「親の身長と子の身長」のように、傾向として片方が増えるともう片方も増える、あるいは逆に片方が増えるともう片方は減るといった関係性が見られるとき、両者の間に「相関がある」あるいは、両者は「相関関係にある」という。
一方、片方が原因となってもう一方の変化が引き起こされる関係性を「因果関係」という。相関関係は因果関係を含む概念で、因果があれば必ず相関もあるが、相関があるからといって必ずしも因果もあるとは限らない。
統計学では2つのデータ系列の分布について、一方の値が高ければ高いほどもう一方の値も高くなる(同じ方向に連動する)関係を「正の相関」、一方の値が高ければ高いほどもう一方の値は低くなる(逆方向に連動する)という関係を「負の相関」という。
2つのデータ系列の間にどの程度強い相関が見られるかは「相関係数」という値で表すことができる。これは両者が線形相関(1次関数で書き表せる直線的な関係)にどの程度近いかを表す係数で、「1」ならば完全な正の相関、「0」ならば相関なし、「-1」ならば完全な負の相関があることを表す。
因果関係 【因果】 ⭐
2つの事象が原因と結果の関係になっていること。一方の事象に起因して、ある特定の機序によってもう一方の事象が生起されるような関係。
「降水量が増えると川が増水する」といったように、ある事象が別の事象の原因となっているような関係である。「降水量の増大」と「川の増水」の間には「降った雨水が川に流れ込む」という機序が存在する。
一方、2つの事象の変化の間に「一方が変化するともう一方も変化する」という傾向が存在する場合、これを「相関関係」あるいは略して「相関」という。相関は因果を含む概念で、因果関係にある事象間には必ず相関もある。逆に、相関があるからと言って両者に因果があるとは限らない。
例えば、河川敷の湿度と川の水位の変化に相関が見られたとして、「湿度上昇によって水位上昇が引き起こされた」あるいは「水位上昇によって湿度上昇が引き起こされた」とは言えない。両者は共に「降水」という共通の原因の結果に過ぎないからである。このように両方に影響する外部の要因を「交絡因子」という。
正の相関 【順相関】 ⭐
相関関係の一種で、2つのデータ系列の間に、片方が増えるともう片方も増えるという関係があること。
2つの事象に関わりがあり、片方が変化するともう片方も変化する関係を「相関」という。正の相関は片方が増えるともう片方も増える、片方が減るともう片方も減るという同じ方向に変化する関係を指す。2つの系列を散布図で表すと右肩上がりの分布になる。
一方、片方が増えるともう片方は減るといったように、互いに逆方向へ変化する関係を「負の相関」という。散布図では右肩下がりの分布が現れる。正の相関も負の相関も見られず、変化の傾向になんの類似性も無い場合は「相関なし」となる。
2つのデータ系列の間にどの程度強い相関が見られるかは「相関係数」という値で表すことができる。これは両者が線形相関(1次関数で書き表せる直線的な関係)にどの程度近いかを表す係数で、「1」ならば「完全な正の相関」、「0」ならば相関なし、「-1」ならば「完全な負の相関」があることを示す。相関係数が0.2~0.4程度の関係を「弱い正の相関」、0.7~0.9程度の関係を「強い正の相関」と呼ぶことがある。
負の相関 【逆相関】 ⭐
相関関係の一種で、2つのデータ系列の間に、片方が増えるともう片方は減るという関係があること。
2つの事象に関わりがあり、片方が変化するともう片方も変化する関係を「相関」という。負の相関は相関のうち、片方が増えるともう片方は減るといったように、双方が互いに逆の方向に変化するような関係を指す。2つの系列を散布図で表すと右肩下がりの分布になる。
一方、片方が増えるともう片方も増えるといったように、互いに同じ方向へ変化する関係を「正の相関」という。散布図では右肩上がりの分布が現れる。負の相関も正の相関も見られず、変化の傾向になんの類似性も無い場合は「相関なし」となる。
2つのデータ系列の間にどの程度強い相関が見られるかは「相関係数」という値で表すことができる。これは両者が線形相関(1次関数で書き表せる直線的な関係)にどの程度近いかを表す係数で、「1」ならば「完全な正の相関」、「0」ならば相関なし、「-1」ならば「完全な負の相関」があることを示す。相関係数が-0.2~-0.4程度の関係を「弱い負の相関」、-0.7~-0.9程度の関係を「強い負の相関」と呼ぶことがある。
無相関 【相関なし】
2つの事象の間に、片方が変化するともう片方も変化するという関係性(相関)が見られないこと。統計解析では2つのデータ系列の間に直線的な関係がないことを意味する。
2つの事象に関わりがあり、片方が変化するともう片方も変化するような関係を「相関」という。片方が増えるともう片方が増える関係を「正の相関」、片方が増えるともう片方は減る関係を「負の相関」という。
2つのデータ系列があるとき、その分布どの程度相関しているかは相関係数という値を算出することにより調べることができる。2つの系列の共分散と標準偏差から求めることができ、-1から1の間の実数で表される。
相関係数が1ならば完全な正の相関、-1ならば完全な負の相関があり、きれいな正比例の関係にある。 という1次関数の形で関係を記述することができる。相関係数が0の場合は両者の分布に関係性が一切見られないことを示している。この状態を「相関なし」あるいは「相関なし」という。
一方、確率変数についても相関の概念があり、確率変数 について という関係が成り立つとき、両者は相関なしであるという。これは両者の間に直線的な関係がないことを表しており、事象が独立であることとは異なる。独立であれば相関もないが、相関がないからといって独立とは限らない。
相関係数 ⭐⭐
2つのデータ系列どの程度強く連動しているかを表す値。-1から1の間の実数で表され、両者の値の変化が正比例の関係に近いほど絶対値が大きくなり、まったく連動していなければ0に近い値となる。
2つの事象に関わりがあり、一方が変化するともう一方も変化するような関係を「相関」という。一方が増えるともう一方が増える関係を「正の相関」、一方が増えるともう一方は減る関係を「負の相関」という。
相関係数は同じ数の2つのデータ系列から算出される統計量の一つで、-1から1の間の実数を取る。値が0ならば両者に相関はなく、1なら完全な正の相関、-1なら完全な負の相関がある。1または-1のときは両者の関係を という形の一次関数として記述することができる。
相関係数は、同数のデータ系列 と から算出した共分散 とそれぞれの標準偏差 および を用いて として求められる。これは平均 と を用いて下記の式のように表される。
<$Fig:correlation-coefficient|center|false>交絡因子 【交絡変数】
2つの事象の間に相関関係が見られるとき、その両方に相関する外部の別の因子のこと。そのような因子が存在する状況を「交絡」という。
2つの事象AとBの傾向に相関が認められる場合、両者に因果関係があり、原因Aによって結果Bが生じている、あるいはその逆であることが疑われる。しかし、AにもBにも影響する共通の別の要因Xが存在する場合がある。このXを交絡因子という。統計モデルにおける変数としては「交絡変数」あるいは「潜伏変数」と呼ぶ。Xを介してAとBが相関している状態を「擬似相関」という。
例えば、月ごとのリップクリームの売上と火災の発生件数に強い相関が認められたとして、リップクリームが火災の原因になったり、火災がリップクリーム購入の動機になっているのかというと、そうではなく、「季節による湿度の変動」という共通の原因によって両者に同じ傾向の変動が起こっている。このとき「湿度の変動」が交絡因子であり、リップクリームと火災は互いに因果関係にない擬似相関となっている。
回帰分析 ⭐
何かの結果を表す数値があるとき、原因と考えられる数値がどのような形で影響を与えているのか規則性を明らかにすること。因果関係の推定や事象の予測、シミュレーションなどのためによく行われる。
調査などで得られた様々な数値の組み合わせのうち、着目している数値(従属変数)が、他の数値(説明変数)からどのように影響を受けているかを関数の形で明らかにする。説明変数が一つの場合を「単回帰分析」、複数の場合を「重回帰分析」という。
例えば、ある飲食店のビールの売上(y)とその日の最高気温(x)についての記録を単回帰分析したところ、y=ax+c という1次関数の形で表されたとする。この関係が分かれば、天気予報を元に仕入れ量を調整することができる。降水量(z)との関係も合わせて重回帰分析することで、y=ax+bz+c という関係が明らかになれば、より精度の高い予測が可能となる。
この例では説明変数と従属変数が直線的な比例関係で表されることを仮定しており、これを「線形回帰」あるいは「直線回帰」という。物事の関係性は単純な比例関係で表されるとは限らず、x2 のような高次の項を含む多項式、指数関数、対数関数、三角関数などが含まれる場合がある。これを「非線形回帰」という。
統計値などから回帰分析を行う場合、各標本は誤差を含んで一定の範囲にばらついているため、数値計算を繰り返して関数のパラメータ(係数)を推定する。代表的な手法として「最小二乗法」がよく知られ、回帰式から得られる値と各標本の実際の値の誤差を二乗して足し合わせた値が最小になるよう係数を決定する。
回帰直線 ⭐
2つのデータ系列を描画した散布図で、分布の傾向に最もよく当てはまるように引いた直線のこと。両者の関係を一次関数として近似している。
測定値などの分布に基づいて、2つの変数の関係を という一次関数で近似することを単回帰分析という。 を説明変数、 を目的変数と呼び、 の値から未知の を予測・推測できるようになる。
2つの変数の関係について、横軸を説明変数、縦軸を目的変数とする散布図で表したときに、分布の様子を直線で近似したものを回帰直線という。回帰分析で求めた一次関数(回帰式)をグラフ上に描画したものである。先の方程式の は直線の傾きを、 はy切片を表している。
回帰直線は実際のデータを表す各点との距離がなるべく小さくなることが望ましい。この条件を満たすため、一般的には「最小二乗法」という計算法で係数 と の値を決定する。説明変数 において、実測された目的変数は 、回帰式から求めた予測値は となる。
両者の差である を2乗し、各点について合計したものを残差平方和という。これが最小になるときの および を算出すると、 と の平均 と 、標準偏差 と 、相関係数 を用いて、 、 として表すことができる。
テキストマイニング ⭐⭐⭐
定型化されていない文字情報(テキストデータ)の集まりを自然言語解析などの手法を用いて解析し、何らかの未知の有用な知見を見つけ出すこと。
「データマイニング」(data mining)の手法を非定型のテキストデータに応用したもので、自然言語の文の蓄積として集められたデータを分析し、鉱山から鉱石などを掘り出す(mining)ように、業務や製品に役立つ情報を探し出す。
目的や具体的な技術は様々だが、多くの場合、文章に形態素解析を行ってテキストを単語やフレーズに分解し、特定の表現の出現頻度やその増減、複数の表現の関連性や時系列の変化などを調べる。
これにより、知られていなかった問題点を見出したり、様々な要素や要因の間の結びつきを可視化したり(共起ネットワーク分析)、顧客や消費者の評判(肯定的か否定的か)や時系列の推移を把握したりする(センチメント分析)ことができる。
対象となるデータの例として、アンケートや報告書などに含まれる自由記述の文章、電子掲示板(BBS)やSNSの書き込み、ニュース記事、OCRでスキャンしてテキストデータ化した過去の書籍、雑誌、新聞の記事などが挙げられる。
円グラフ 【パイチャート】 ⭐
数値データを図示するグラフの一つで、円の中を大小の扇形に区切って各項目に対応付け、扇の面積によって各項目の大きさを表すもの。各項目の全体に占める割合を一目で比較できる。
円全体が全項目の値の和(100%)に相当し、各項目を全体に占める割合に従って扇形で示す。時計でいう0時方向から時計回りに配置するのが一般的である。あまりに構成比の小さな項目は細すぎて見にくいため、最下位の位置に「その他」としてまとめる。
各項目が独立している場合は大きい順に並べるのが原則だが、項目間にグループ関係や何らかの順序性がある場合にはそちらに従って配置することがある。例えば、アンケートの回答が「とてもそう思う」「そう思う」「どちらとも言えない」「そう思わない」「まったくそう思わない」であれば、構成比に関わらずこの順に並べる。議会の勢力図であれば、右側に与党系、左側に野党系、中央に独立系とすると分かりやすい。
英語では切り分けたパイになぞらえて “pie chart” (パイチャート)と呼ぶことが多い。バリエーションとして、中心を空けて表題などを書き入れた「ドーナツグラフ」、複数の系列や各項目の内訳などを同心円状に重ねる「二重円グラフ」などがある。ソフトウェアによっては厚みのある円盤状の「3D円グラフ」を描画する機能もあるが、3D化すると扇の面積比が歪むため好ましくないとする考え方もある。
棒グラフ 【バーチャート】 ⭐
数値データを図示するグラフの一つで、各項目の大きさに対応する長さの棒を縦または横に並べたもの。片方の端の位置が揃っており、棒の長さで各項目の大きさを一目で比較できる。
同じ幅の細長い棒(長方形)を並べた図で、棒の長さが各項目の大きさを表している。垂直に伸びる棒を横に並べた「縦棒グラフ」と、水平に伸びる棒を縦に並べた「横棒グラフ」がある。縦棒の場合は下端を、横棒の場合は左端を揃えて並べる。
項目の並び順は図で示したい内容に応じて決められるが、左端や上端から値の大きい順に並べる場合や、年齢のように項目の順序や大きさに従って並べる場合がある。項目が時系列の場合は過去から順に並べることが多い。
バリエーションとして、棒を区切って内訳を示す「積み上げ棒グラフ」、棒の長さを揃えて内訳の比率の比較や変化を示す「100%積み上げ棒グラフ」、一つの項目に複数の細い棒を並べて時系列の変化などを表す「集合棒グラフ」などがある。折れ線グラフなどと組み合わせて複合グラフとする場合もある。ソフトウェアによっては棒の並びを3次元的に描画する「3D棒グラフ」の機能が利用できる場合もあるが、3D化すると棒の長さの比が歪むため好ましくないとする考え方もある。
折れ線グラフ ⭐
数値データを図示するグラフの一つで、各項目を点で表し、隣接する項目同士を線分で結んで推移を折れ線で表したもの。時系列の変化などを表すのに適している。
縦軸に量、横軸に時間を取り、各時点における量の大きさを点で示す。隣接する点同士を端から順に線分で繋いでいくことで、すべての点を一つの折れ線で結びつける。線分が右上がりの箇所は増加、右下がりの箇所は減少を表し、折れ線の上下で量の時系列の変化を視覚的に把握することができる。
同じグラフに複数の異なる系列を表す折れ線を重ねて描画したり、折れ線グラフと棒グラフを重ねて描画することもあり、複数の項目の変化を直感的に把握することができる。複数の系列を重ねる場合は実線と折れ線、破線を使い分けたり、線を色分けしたり、点を表す図形(●▲■など)を変えるなどして見分けやすいようにする。
散布図 【分布図】 ⭐⭐⭐
一つのデータが複数の量や特性の組として表される場合に、二つの値の間の関係を明らかにするために作成される図。縦軸と横軸にそれぞれ別の特性を割り当て、各データについて対応する位置に点を打って作図する。
点の分布する様子を見て、データを構成する二つの量の間に関連があるか、どのような関連があるかを知ることができる。例えば、点が右上がりの帯状に分布していれば正の相関があると分かり、(左上から)右下がりなら負の相関があると分かる。まんべんなく散らばっていれば相関が薄いか無さそうであると考えられる。
全体の傾向から大きく外れた特異点(外れ値)がどこにあるかも容易に知ることができ、これを除外して計算を行ったり、外れた理由を詳しく調べたりすることもある。また、全体に当てはまる傾向を調べるだけでなく、点の集まり具合から二つの量の関係が同じ傾向を示している項目群をグループ分け(グルーピング)するといった使い方をする場合もある。
箱ひげ図 【箱髭図】 ⭐⭐
数値データを図示するグラフの一つで、長方形の上下に線分を付け加えた図形で一つのデータ系列の分布を要約するもの。箱の上下の線分を「ひげ」になぞらえた名称である。
縦軸に量を取り、横軸方向に系列を箱ひげとして並べていく。各箱ひげは、上のひげの上端が分布の最大値、箱の上端が第3四分位数、箱の中に引かれた仕切り線が第2四分位数(中央値)、箱の下端が第1四分位数、下のひげの下端が最小値となっている。最大値や最小値は外れ値の場合もあるため、ひげの端は最大・最小から1~10%程度の値を用いる場合もある。
一つの箱ひげで一つのデータ系列の分布を直感的に把握することができる。これを系列の数だけ横に並べていくことで、系列間の分布の違いを視覚的に比較することができる。複数の異なる対象の分布を比べるために作成する場合もあれば、同じ対象の時系列の分布の変化を知るために作成することもある。
ヒストグラム 【度数分布図】 ⭐⭐⭐
データの分布を表す統計図の一つで、縦軸に値の数(度数)、横軸に値の範囲(階級)を取り、各階級に含まれる度数を棒グラフにして並べたもの。どの範囲の値が多く、どの範囲が少ないかを視覚的に表現できる。
値の出現頻度の高い階級は高い棒で、低い階級は低い棒で図示されるため、出現頻度の高低やバラつき具合を視覚的に容易に把握できる。各階級の度数を示す棒のことを「ビン」(bin)と呼ぶことがある。
すべてのビンの面積の総和が全体の度数を表しており、各ビンの面積は全体に占めるその階級の度数の割合を視覚的に表現したものとなっている。同じデータ群でも階級の幅の取り方次第でビンの形状や分布は異なるが、どのような基準で区分すべきかについて様々な方法論が提唱されている。
また、手前のすべての区間の度数を足し合わせた累計値をその区間の度数とし、これを右肩上がりの棒グラフの列で示したものを「累積ヒストグラム」(cumulative histogram/累積度数図)という。端からどの区間までが重要かを見極める場合などに利用される。
度数分布表 ⭐⭐
多数のデータを整理する手法の一つで、値を一定の幅ごとに区切った範囲に属するデータの数を数え、表の形にまとめたもの。どの範囲の値が多く、どの範囲が少ないかを一目で確認できる。
数値データの分布を調べるのに用いられるシンプルな表で、データが取りうる値を均等な幅の区間(これを階級という)に分割し、各階級に属するデータを数える。階級と属するデータの数(これを度数という)を2列の表の形でまとめる。
例えば、テストの点数を表にまとめる場合、「0~19点」「20~39点」「40~59点」「60~79点」「80~100点」といった階級に区切り、それぞれに属する人数を数えて「3人」「5人」「7人」「13人」「5人」などのように書き入れていく。
各階級の中央の値「10点」「30点」「50点」「70点」「90点」を、その階級を代表する「階級値」という。階級の幅は任意に決めてよいが、小さすぎると度数の差がつきにくく、大きすぎると度数の変化が大きすぎて分布の様子が分かりにくくなる。
度数分布表をグラフ化したものを「ヒストグラム」(histogram)という。横軸に階級、縦軸に度数を取り、各階級に度数の長さの棒(長方形)を並べて分布の様子を視覚的に表現する。複数の系列を同じグラフに描画して比較したい場合は棒の代わりに折れ線グラフで度数を表現した「度数分布多角形」(frequency polygon)が用いられる。
表計算ソフト 【スプレッドシート】 ⭐⭐
データが並んだ表を作成・編集することができるアプリケーションソフト。表中の項目間で集計や解析を行ったり、グラフに表したりすることができる。
縦横に並んだマス目(セル)の広がる表を用い、各セルにデータや計算ルールなどを入力・設定していくと、ソフトウェアが自動的に計算や処理を実行し、所定の位置に計算結果を代入したり、グラフを描画したりしてくれる。
このマス目の並んだ表のことを「スプレッドシート」(spreadsheet)あるいは「ワークシート」(worksheet)と呼び、一つのファイルに複数のシートを収めることができる。表計算ソフト自体を指してスプレッドシートと呼ぶこともある。
計算ルールには特定範囲の合計や平均を算出するといった単純なものから、数学的な関数や統計関数、財務関数などが利用できる。数値を扱う関数以外にも、日付や時刻を扱う関数、論理式を扱う関数、文字列を操作する関数、特定の条件を満たす値を数え上げる関数など、様々な種類がある。
表に貼り付けるように矩形の領域を設けて内部にグラフを描画する機能があり、特定の範囲のデータを対象にして折れ線グラフや棒グラフ、円グラフ、散布図などを描くことができる。セルの内容を変更すると、追随してすぐにグラフに反映されるようになっている。
行や列の幅や高さを変更したり、先頭のセルに項目名を記載したり、表やセルに枠線や背景色、文字書式、表示形式などを設定して見栄えを整える機能もあり、ファイルとして配布して入力フォームに利用したり、そのまま印刷して資料や帳票などとして用いる場合もある。
製品
パソコン向けの表計算ソフトとしては、米マイクロソフト(Microsoft社)のオフィスソフト「Microsoft Office」の一部として提供される「Microsoft Excel」(マイクロソフト・エクセル)が世界的に最も有名でシェアが高く、「Excel」を表計算ソフトの代名詞のように扱うこともある。
他にも、米アップル(Apple)社の「Numbers」や、オープンソースのLibreOfficeやApache OpenOfficeに含まれる「Calc」などが知られる。米グーグル(Google)社の「Google Sheets」(日本名は「Googleスプレッドシート」)のようにWebブラウザで操作できるネットサービスもある。
行 ⭐
文字が縦あるいは横に一直線上に連なったもの。また、表(table/テーブル)や数学の行列のように縦横に整然と複数の要素が並んでいるときに、横方向・水平方向の並びのこと。縦方向・垂直方向の並びのことは列(column)という。
長い文章を紙面などに記すときに、文字を読み進める方向(縦書きの場合は縦、横書きの場合は横)に並んだ文字の連なりの一本一本のことを行(line)という。
一文が紙幅や画面の表示範囲の幅を超える場合、行の終わりの文字の続きを次行の先頭から開始する「折り返し」が行われる。段落の末尾などでは、行の途中で終わった文の右側を空白とし、次の文を次行の冒頭から始める「改行」が行われる。
表や行列の行
ソフトウェアの表示・操作画面で、碁盤目状の表の形で項目を整理する場合、縦方向に並んだ項目の連なりのことを列(column)、横方向の連なりを行(row)という。
リレーショナルデータベース(RDB:Relational Database)では、一件のデータを複数の属性(attribute)の値の組(tuple/タプル)として表現するが、この一組のデータ群を行(row)あるいはレコード(record)という。各行の同じ属性の要素を集めた集合のことは列(column)という。表の形で表したときに要素の組を横方向に、同じ属性の要素を縦方向に並べるためこのように呼ばれる。
列 【カラム】 ⭐
同種の複数のものを規則正しく順番に並べたもの。また、表のように縦横に整然と複数の要素が並んでいるときに、縦方向や垂直方向の並びのこと。横方向や水平方向の並びのことは「行」(row)という。
表における行と列
ソフトウェアの操作画面やWebページなどで、データなどを表の形でまとめる場合に、縦方向に並んだ項目の連なりのことを列(column)、横方向の連なりを行(row)という。HTMLのtable要素では、各行のtr要素で同じ位置にあるtd要素やth要素が列を構成する。colgroup要素とcol要素で共通の属性やスタイルを指定することができる。
データベースにおける行と列
リレーショナルデータベース(RDB:Relational Database)では、一件のデータを複数の属性(attribute)の値の組(tuple:タプル)として表現するが、この属性のことや、表内のある属性の集合のことを列(column:カラム、コラム)と呼ぶことがある。
データの集合を表(table:テーブル)の形で表した時に、データの組を縦に並べて表示するが一般的であることからこのように呼ばれる。同様に、表であらわすと横の並びになる一件のデータの組のことを行(row)と呼ぶ。
データ列
プログラミングやデータ形式、データ通信などの分野では、ある同じ種類の複数のデータが順番に並んだ構造のデータを「数値列」「文字列」「ビット列」「バイト列」のように呼ぶことがある。
これは表の縦の並びの意味ではなく、日常生活で窓口に並んだ人の列のように「順に並べたもの」の意味である。英語では文字列などを “string” (ストリング)、配列などを “array” (アレイ)、終わりの決まっていない連続的なデータの流れを “stream” (ストリーム)という。
絶対参照/相対参照 ⭐
表などで項目の位置を指定する方式のこと。絶対参照は全体の端(原点など)を基準とする絶対位置を、相対参照は現在選択されている項目の位置を基準に相対位置を指定する。
絶対セル参照
表計算ソフトのセル指定でワークシート内の絶対位置を指定する方式を「絶対セル参照」(absolute cell reference)という。
参照先となるセルの位置は固定されており、参照元となるセルの値を他のセルにコピーしても、常に参照先となるセルの位置は一定となる。列のみ、あるいは行のみを絶対セル参照とし、もう片方を相対セル参照とすることもできる。
Microsoft Excelでは、セル内の関数や計算式などで「$A$1」のように「$」(ドル記号)に続けて列番号(アルファベット)や行番号を記述すると絶対セル参照となる。他のソフトウェアでもこれにならって同じ記法を採用しているものがある。
相対セル参照
表計算ソフトのセル指定で現在のセルからの相対位置を指定する方式を「相対セル参照」(relative cell reference)という。
参照元となるセルの値を他のセルにコピーすると、参照先となるセルの位置も、コピー元とコピー先の位置関係に応じて変化する。列のみ、あるいは行のみを相対セル参照とし、もう片方を絶対セル参照とすることもできる。
Microsoft Excelでは、セル内の関数や計算式などで「A1」のように列番号と行番号を指定すると、それを記述したセルからの相対セル参照とみなされる。これを右隣のセルに複製すると「A2」、下隣に複製すると「B1」というように、相対的に同じ位置関係にあるセルの位置に自動的に書き換えてくれる。
絶対参照/相対参照 ⭐⭐
表などで項目の位置を指定する方式のこと。絶対参照は全体の端(原点など)を基準とする絶対位置を、相対参照は現在選択されている項目の位置を基準に相対位置を指定する。
絶対セル参照
表計算ソフトのセル指定でワークシート内の絶対位置を指定する方式を「絶対セル参照」(absolute cell reference)という。
参照先となるセルの位置は固定されており、参照元となるセルの値を他のセルにコピーしても、常に参照先となるセルの位置は一定となる。列のみ、あるいは行のみを絶対セル参照とし、もう片方を相対セル参照とすることもできる。
Microsoft Excelでは、セル内の関数や計算式などで「$A$1」のように「$」(ドル記号)に続けて列番号(アルファベット)や行番号を記述すると絶対セル参照となる。他のソフトウェアでもこれにならって同じ記法を採用しているものがある。
相対セル参照
表計算ソフトのセル指定で現在のセルからの相対位置を指定する方式を「相対セル参照」(relative cell reference)という。
参照元となるセルの値を他のセルにコピーすると、参照先となるセルの位置も、コピー元とコピー先の位置関係に応じて変化する。列のみ、あるいは行のみを相対セル参照とし、もう片方を絶対セル参照とすることもできる。
Microsoft Excelでは、セル内の関数や計算式などで「A1」のように列番号と行番号を指定すると、それを記述したセルからの相対セル参照とみなされる。これを右隣のセルに複製すると「A2」、下隣に複製すると「B1」というように、相対的に同じ位置関係にあるセルの位置に自動的に書き換えてくれる。
降順 【大きい順】 ⭐
数字やアルファベット、ひらがな・カタカナ、日付、時刻、曜日など順序や方向が決まっている要素の列について、本来とは逆の順序のこと。英語の “descending order” を略した “DESC” “desc” などの略号で示されることもある。
データの並べ替え(ソート)における順序の指定などに用いられる概念で、大きい方から小さい方へ、あるいは本来の並び順における末尾側から先頭側へ「降(お)りていく」順序のことを意味する。
数字であれば9、8、7…と大きい値から小さい値へ、アルファベットであれば「Z」から「A」に向けて、カナであれば「ン」から「ア」に向けて、日付や時刻であれば未来側・新しい側から過去側・古い側に向けて並べる順序である。
一方、小さい方から大きい方へ、あるいは本来の並び順の通りに並べる順序は「昇順」(ascending order)という。「1、2、3」「A、B、C」「あ、い、う」といった本来定められた並び順のことである。
昇順 【小さい順】 ⭐
数字やアルファベット、ひらがな・カタカナ、日付、時刻、曜日など順序や方向が決まっている要素の列について、本来定められた順序のこと。英語の “ascending order” を略した “ASC” “asc” などの略号で示されることもある。
データの並べ替え(ソート)における順序の指定などに用いられる概念で、小さい方から大きい方へ、あるいは本来の並び順における先頭側から末尾側へ「昇(のぼ)っていく」順序のことを意味する。
数字であれば1、2、3…と小さい値から大きい値へ、アルファベットであれば「A」から「Z」に向けて、カナであれば「ア」から「ン」に向けて、日付や時刻であれば過去側・古い側から未来側・新しい側に向けて並べる順序である。
一方、大きい方から小さい方へ、あるいは本来の並び順とは逆に並べる順序は「降順」(descending order)という。「9、8、7」「Z、Y、X」「ん、を、わ」といった本来とは逆の並び順のことである。
オートフィル ⭐
表計算ソフトなどの機能の一つで、規則性のある入力値を、選択した範囲に連続して自動的に当てはめてくれる機能。
表中のある項目(セル)に特定の値を入力して選択状態にし、そのままマウスなどのドラッグ操作で縦あるいは横に選択領域を広げていくと、新たに選択された項目に次々に連続した値が入力されていく。
例えば、1から1000までの整数を順に入力する時、一つ一つ手動で入力していくと大変だが、オートフィル機能を使うと、「1」「2」まで入力して両者をマウスで範囲選択し、端をドラッグしていくと、隣接する空白の領域に「3」「4」「5」…と次々に値を入力してくれる。
規則性はあらかじめ入力済みの項目からソフトウェア側が自動的に推定し、最初の値が「1,3,5」であれば「7,9,11…」のように埋めてくれる。数値だけでなく日付や曜日など順序性のあるデータを入力することができる。文字列など規則性が明らかでないデータの場合は既存の入力箇所のコピーを繰り返し行う(東京,大阪,名古屋→東京,大阪,名古屋,東京,大阪,名古屋…)動作となる。