高校「情報Ⅰ」単語帳 - 情報デザイン
シグニファイア ⭐⭐
モノが備える特性で、人間に特定の行動を想起させる手掛かりとなるもの。通常は人工物の設計者が意図的に付与したものを指すが、意図せず生じる場合もある。
米認知科学者ドナルド・ノーマン(Donald A. Norman)が提唱した概念で、人間がモノに接したときに知覚される、行動の手掛かりとなる要素のことである。典型的には物体の形状やデザインなど視覚的な要素だが、発する音(聴覚)や表面の質感(触覚)などが手掛かりとなる場合もある。
例えば、ゴミ箱の設計者が上部に小さな丸い穴の空いた形状にデザインすれば、特に文字や絵文字で案内しなくても、それがビンや缶、ペットボトルなどを入れるものであることが伝わる。これは意図されたシグニファイアだが、通路で大きなプラ容器を雨漏りの水受けに使っていたらゴミを捨てられてしまう、といった意図しない(あるいは意図に反する)シグニファイアが生じることもある。
類義語と語源
似た概念に「アフォーダンス」(affordance)がある。モノと人間の間に生じる相互作用の可能性を表し、人間が知覚するかどうかに関わらずモノが宿している性質であるとされる。ノーマンは当初、デザインによって適切にアフォーダンスの手掛かりを与えることの重要性を説いていたが、デザイン上の手掛かりがアフォーダンスであるとする解釈が広まってしまったため、改めてシグニファイアの概念を提唱した。
「シグニファイア」の語は記号学の用語「シニフィアン」(仏語 “signifiant”、英語では “signifier” )から取られたもので、記号学ではある特定の内容を指し示す文字による表記や発話などを意味する。それによって指し示された実際の内容である「シニフィエ」(signifier)と対になる概念である。
構造化データ ⭐⭐
項目の形式や順序など、明確に定義された構造に従って記述、配置されたデータ集合のこと。プログラムによって自動処理するために用いられることが多い。
リレーショナルデータベースのテーブルやCSVファイルのように、一件のレコードの構成、各項目のデータ型や形式、項目の並び順、項目やレコードの区切り文字などが事前に決まっており、同じ構成のレコードの繰り返しとしてデータを列挙したものを指すことが多い。
ソフトウェアによって容易に読み込んで内容を認識させることができ、大量のデータを集計したり分析するのに適している。人間がそのまま眺めて読みやすい形式とは限らず、ソフトウェアによって抽出や集計を行ったり、見やすいよう整形したり、レポートなど別の形式へ変換してから人間に供されることが多い。
一方、Webページや電子メール等のメッセージ、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどで作成した(見栄え重視の)文書ファイル、画像や音声、動画などのメディアデータといった、決まった形式や配置に従ってデータが並んでいるわけではない不定形なデータ群のことを「非構造化データ」(unstructured data)という。
Webページの構造化データ
WebページのHTMLコードは、Webブラウザにその文書の構造やレイアウトを伝達するという意味では構造化されているが、書かれている情報をサイト横断的に同じ形式に従って自動収集・処理できるような構造にはなっていない。
そこで、ソフトウェアが自動処理しやすいようページ内に書かれている内容を特定の規約に則って構造化として記述する手法が提唱されている。同じ情報を人間向けと機械向けに同じページに埋め込んでおき、ブラウザは人間向けのデータを表示し、Webロボットなどの自動処理プログラムは機械向けのデータを収集する。
様々な手法が提唱されているが、現在有力な方式はHTMLのヘッダ領域などにJSON-LD形式でスクリプトの形で情報を埋め込む手法で、Schema.orgという業界団体が情報の種類ごとにデータの記述形式(スキーマ)の標準を提案している。
例えば、ある行事の開催案内のWebページに、Schema.orgの定義する「Event」(行事)のスキーマで構造化を埋め込むことで、巡回してきたロボットに行事名や主催、出演者、開催日時などを伝達することができる。
抽象化 ⭐⭐
対象から細部や具体性を取り去り、本質的に重要な要素や、着目している側面のみを取り出して、一つの概念として定義すること。また、異なる複数の対象に共通する性質や要素を見出し、共通点を組み合わせて汎用的な概念を構成すること。
ソフトウェア開発における抽象化
ITの分野では、ソフトウェアの設計・開発やプログラミングで特に多用される概念で、制御の抽象化とデータの抽象化に分かれる。
例えば、プログラム中の様々な箇所で似たような具体的な処理を行っているときに、これを一つの汎用的なサブルーチンとして独立させ、必要な箇所から呼び出して利用するようにしたり、複数のプログラムで共通する機能をモジュールやコンポーネントなどの形に抜き出すことが該当する。
オブジェクト指向プログラミングでは、ある対象を表すデータ群と手続きを一体のオブジェクト(の雛形であるクラス)として定義するが、これも対象をプログラム上で扱うための一種の抽象化と考えることができる。
複数の具体的な対象を表すクラスから共通するデータや操作を取り出してスーパークラス(基底クラス/親クラス)を定義する場合があり、これを抽象化と呼ぶことがある。宣言だけがあり実装がサブクラス(派生クラス/子クラス)に任されている抽象メソッドを含むクラスは特に「抽象クラス」(abstract class)と呼ばれる。
ブレインストーミング 【ブレスト】 ⭐⭐⭐
集団で行うアイデアの発想法の一つで、参加者が集まって会合を開き、思いつくまま次々自由にアイデアを発言し、互いに刺激し合ってより豊かな発想を促していく手法。
一人では考えつかないようなアイデアを導き出すために行われる会議で、結論を得たり決定を行うことは目的ではない。出た意見やアイデアは会議後に整理したり分析したりして、その後の過程に役立てる。
アイデアをより豊かで創造的なものにするための原則がある。「他の参加者の意見を否定・批判しない」「突飛・奇抜・乱雑・常識外れな意見も歓迎する」「質より量を重視する」「他の参加者の意見から連想したり自分の意見を加えて発展させる」の4つである。
1942年に大手広告代理店グループBBDO創業者の一人として知られるアレックス・オズボーン(Alex Faickney Osborn)氏が著書 “How to Think Up” で提唱したのが始まりとされる。ブレーンストーミングのように集団で創発的な活動を行う技法としては他にKJ法やバズセッションがよく知られる。
KJ法 【KJ method】 ⭐⭐
多数の関連する情報群を分類・分析するための手法の一つ。小さなカードに項目を一つずつ書き出し、グループ化することで情報を整理する。
まず、手元にある情報やデータを小さなカードに一枚一項目で書き出し、広い場所にばらばらに置く。互いに関連が強い、あるいは同じ種類のものを集めてグループ化し、グループの見出しのカードを置く。数が多い場合はグループ同士を集めて大グループを作り、さらに何段階かこの作業を繰り返す。
グループ分けが完了したら、各グループ間の関連性が分かるようにグループを配置しなおし、別の紙にその様子を写しとる。そこに枠や線分、矢印などを書き入れ、それぞれの関連性を明らかにする。この図解を元にテーマを選定したり、文章化してまとめたりする。
1967年に東京工業大学教授で文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したもので、フィールドワークで集めた知見を整理するための手法として開発された。「KJ」は同氏の氏名のイニシャルに由来する。製造業の品質管理の手法を体系化した「新QC7つ道具」の一つとしても採用されており、こちらでは「親和図法」の名称で知られる。
ロジックツリー ⭐
論理的思考のために用いられる作図法の一つで、対象を段階的に構成要素に分解していく様子を枝分かれしていく樹形図の形で示したもの。
物事の内訳や分類、問題の原因などを図示する技法の一つである。左端に大本の事象を書き入れ、そこから構成要素を右側に枝分かれさせる。各要素を細分化した要素をさらに右側に枝分かれさせ、この手順を繰り返して段階的に詳細化していく。
ある要素を構成要素へ分解する際には、細分化された要素をすべて足し合わせると左側の元になった要素全体を表すように心がける。このような分解法は「漏れなく、重複なく」という英語表現の頭文字をとって「MECE」(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)と呼ばれる。
ロジックツリーは様々な場面や対象に適用できる汎用的な技法で、構成要素に分解するものを「要素分解ツリー」(Whatツリー)、事象の原因を探求するものを「原因追求ツリー」(Whyツリー)、問題の解決策を探求するものを「問題解決ツリー」(Howツリー)と呼ぶことがある。組織の目標管理などでは「KPIツリー」もよく用いられる。
イメージマップ 【クリッカブルマップ】
Webページにリンクを配置する方式の一つで、一枚の画像の中で指定した領域ごとに異なるリンク先を設定できるもの。Webブラウザ側で処理する方式とWebサーバ側で処理する方式がある。
クライアントサイドイメージマップ
Webブラウザ側でリンク先を振り分ける方式で、単にイメージマップという場合はこの方式を指す。画像内に様々な形状の領域を設定し、それぞれに別のリンク先を設定することができる。
マップを設定するimg要素にはusemap属性でマップ名を指定する。マップの定義はmap要素で行い、img要素で指定したマップ名をname属性に記述する。map要素は子要素として画像内の領域を定義するarea要素を複数持つことができる。
area要素は領域の形状を指定するshape属性、頂点などの座標を指定するcoords属性、リンク先を指定するhref属性、代替テキストを指定するalt属性から成る。shape属性は「rect」(四角形)、「poly」(任意形状の多角形)、「circle」(円)、「default」(どの領域にも含まれていない外側)を指定できる。
例えば、<area shape="rect" coords="0,0,50,50" href="square.html"> のように指定すると、画像の左上端を原点として(0,0)と(50,50)を対角線とする四角形(この場合は50ピクセル四方の正方形)の領域から「square.html」へリンクする。
サーバサイドイメージマップ
ブラウザ側では通常の単一リンクとして機能するが、Webサーバ側にはURLの末尾に「/click.cgi?103,45」といったように画像内での座標が渡される。サーバ側では座標からどの領域がクリックされたか割り出し、コンテンツを出し分けたり適切なリンク先にリダイレクトを行う。
Webページ側ではimg要素に <img src="image.png" ismap> といった具合にismap属性(値は不要)を付加するだけで実現できるが、リンク先としてサーバ上に振り分け処理を実装したプログラムファイルを用意する必要がある。
アローダイアグラム 【PERT図】 ⭐
複数の要素の間を、それらの関係を意味する矢印で結んだ図。特に、複数の工程や手順の間の前後関係を矢印の向きによって表した図。
プロジェクトマネジメントではプロジェクトを構成する工程の前後関係を一覧して把握するために作成される。このような図を用いて計画や管理を行う手法を「PERT」(Program Evaluation and Review Technique)ということから、「PERT図」(パート図)とも呼ばれる。
複数の工程からなるプロジェクトでは、工程間に「前の工程が終わらないと次の工程が始められない」という依存関係が存在する場合がある。一方で、どちらを先に行っても良い、並列に進めても良いという関係になっているものもある。
PERT図では矢印が個々の工程を表しており、内容と所要時間を付記する。工程間に依存関係がある場合、間に丸印(◯)で表される「結合点」を挟んで矢印同士を連結する。プロジェクトの開始と終了も結合点として表す。すべての工程を配置すると、開始から終了までどの順序で工程を進めればよいか、どの工程を並列に進められるかを一覧できるようになる。
開始から終了までの間には、いくつかの経路が現れることがあるが、経路上の工程の所要時間を足し合わせていくと、それぞれの経路全体の所要時間を求めることができる。その中で最も所要時間が長い経路は、プロジェクト全体の最短工期を表しており、これを「クリティカルパス」(critical path)という。
クリティカルパスに現れない工程をどんなに急いでも工期は短縮しないため、遅延を防止したり工期を短縮するにはクリティカルパス上の工程に注力する必要がある。このようにクリティカルパスに着目してマネジメント活動を行う手法を「クリティカルパス法」(CPM:Critical Path Method)という。
特性要因図 【魚骨図】
製品の品質管理などでよく用いられる図の一種で、対象の持つ特性とその要因と思われるものを階層的に図示したもの。ある事象がどのような要因に組み合わせによって成り、個々の要因がどのような要素に分解されるかを一覧することができる。
表記法にはいくつかのバリエーションがあるが、よく知られる一般的な手法では、特性を図の右端中央に大きく記し、その左に特性に向かう長い矢印を水平に引く。特性の要因と思われるものは図の上下に配し、それぞれ中央の長い矢印に向かって矢印を引く。
さらに各要因について、その要因や構成要素と思われるものがあるときは周辺に記し、矢印に向かって小さな矢印を引く。この作業を段階的に繰り返していき、より小さな要因へ分解していく。最終的には、支流が合流して大河となり海に注ぐように、無数の細かい要因が次第に大きな要因となって特性が生じている関係性が図示される。
特性要因図は中央の大きな矢印を魚の背骨に、そこに集まる各要因の矢印が肋骨になぞらえて「魚骨図」「フィッシュボーンチャート」などと呼ばれることもある。より実用的には、見やすさや付加情報の書き込みやすさなどから組織図やトーナメント表のように上から下に向かって枝分かれする表のような形式で作成されることも多い。
作業などの実施前に、想定される問題とその要因を列挙して対策を講じるために作成するものを「管理用特性要因図」、問題が発生した後に、その原因を検証するために実際に起きたことを元に作成するものを「解析用特性要因図」ということがある。
絵文字 ⭐
小さい簡単な絵(イラスト)に文字コードを割り当て、コンピュータ上で文字として扱えるようにしたもの。様々な表情の顔、身体の部位、道具、生き物、マーク、シンボルなどが存在する。
笑っている顔や親指を立てた手、ハートマーク、自動車といったように、日常的に目にする存在や概念を、一文字分の領域に簡単なカラーイラストとして表現し、それぞれ固有の文字コード(文字の識別番号)を割り当てて英数字やひらがな、漢字などと同じ文字の一種として扱うものを指す。
特定のシステム向けのものは1960年代頃から新聞社で使われているものなどが知られているが、現在のように広く一般的に用いられるようになったのは、1990年代後半に日本の高機能携帯電話(現代でいう「ガラケー」)が文字コード規格を独自に拡張して絵文字を採用し始めたことがきっかけであると言われている。
当時は携帯電話会社(キャリア)ごとに独自のコード体系を用いており同じキャリアの端末同士でしか正確に表示することができなかった(他社の端末に送ると別の絵文字に「文字化け」する)が、スマートフォンの時代になると米大手二社(アップル、グーグル)などが仕様の統一を推進し、国際的な文字コード標準規格「Unicode」(ユニコード)のバージョン6(2010年)から絵文字の採録が始まった。
現在では単に絵文字といった場合はこの「Unicode絵文字」のことを指し、1800以上の絵文字が収録されている。英語圏では以前から「:-)」のように文字を組み合わせて顔を表す “emoticon” (エモーティコン)が使われていたが、Unicode絵文字のことは日本語をそのまま使い “emoji” (読みは本来エモジだが、英語風にイーモジと読む人が多い)と呼ぶ。
ちなみに、日本語文字コードには古くから記号文字(「◆」「※」「〒」など)が存在するが、これは句読点や鉤括弧といった約物から派生したもので絵文字とは区別される(絵文字と一部重複はある)。また、複数の文字を組み合わせて顔などを表現した「顔文字」(^_^;など)や「アスキーアート」も、既存の文字を組み合わせたもので絵を一文字にコード化したものではないため区別される。
Unicode絵文字一覧
<$Fig:emoji|center|false>顔文字 【エモーティコン】 ⭐
文字を組み合わせて人の顔や表情を表したもの。笑顔 (^_^) や泣き顔 (T_T) 、怒り顔 (-_-#) など、様々なものがある。欧米では :-) のように横に倒したものが使われることが多い。絵文字のうち顔や表情を表したものを指す場合もある。
初期のインターネットでは文字しか伝達できないシステムが多かったため、ニュアンスや感情を表現するために文末などに記す用法が広まった。文章だけでは誤解を与えかねない場合などに、語調を和らげることができるという利点がある。
一方、手紙に絵を添えるようにくだけた調子になるため、あまり親しくない人に対して使うと馴れ馴れしい印象を与えることがあるので注意が必要である。一般に、仕事相手への電子メールなど、改まった場では用いるべきでないとされている。
歴史と言語による違い
欧米ではタイプライターの時代から顔に見立てた文字の並びが文書や電報に使用されていた記録があるが、日本では1980年代にパソコン通信で使用されたのが始まりだとする説が有力となっている。
欧米圏では使用できる文字がアルファベットと数字、およびいわゆる半角記号のみであるため比較的シンプルなものが多いが、日本では漢字やかな、キリル文字、ギリシャ文字、全角英数字など様々な文字や記号を組み合わせ、独自の表現が発達した。同様に、中国語圏では漢字を取り入れたものが、韓国ではハングル文字を取り入れたものが独自に発達している。
携帯電話の絵文字・顔文字
日本の携帯電話では1990年代末頃から、記号文字の考え方を拡張して様々な物事や概念を表す絵を一文字に表した絵文字が利用できるようになり、その一部として笑顔や泣き顔などの顔文字も収録された。
当初は各携帯電話・PHS事業者(キャリア)独自の拡張仕様として同じキャリアの加入者同士でしか交換できない機種依存文字だった(他社加入者へ送ると文字化けしたり下駄記号「〓」になった)が、2000年代半ばに各社のメール送受信システムで透過的に相互変換する仕組みが整えられ、共通して利用できるようになった。
Unicodeの絵文字・顔文字
日本の携帯電話の絵文字を参考に、文字コードの国際規格であるUnicodeにも絵文字が採用されることになり、2010年のUnicode 6.0から“Emoji”として登録が開始された。
顔文字も大量に登録されており、Unicode対応フォントで容易に入力・表示できるようになったため、現在では “smiley” “emoticon” といった単語は伝統的な文字を組み合わせた顔文字ではなくUnicode Emojiの顔文字を表すのが一般的になりつつある。
アイコン ⭐⭐
コンピュータの操作画面で、処理の対象や内容などを一定の大きさの小さな絵や図、記号などで表現したもの。ファイルやアプリを画面上で指定する際などによく利用される。
利用者はマウスやタッチパネルなど位置を入力する装置を用いて画面上のアイコンを指定し、コンピュータに実行内容の指示などを行う。例えば、アプリケーションソフトを表すアイコンを開くと起動して操作画面が現れ、ファイルを表すアイコンを開くと閲覧画面や編集画面が現れる。
アイコンは操作画面を画像や図形で構成するグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の主要な構成要素であり、キーボードなどから文字で指示を入力する方式に比べ、文字入力が不慣れな人や命令文などを覚えていない初心者でも容易に操作内容を指示できる。
アイコンの大きさや形状はシステムによって異なるが、システムごとに規定された決まった大きさ(縦横数十ピクセル程度)の正方形に揃えられ、複数のアイコンを縦横に規則正しく並べて表示する場合が多い。脇にファイル名などの文字情報を添えたり、マウスカーソルを合わせると短い説明が表示されたりする場合もある。
どの絵柄が何を表すかはシステムによって異なるが、何の機能や対象を表しているのか直感的に連想しやすいものになるよう工夫されている。しかし、コンピュータに特有な事項や抽象的な事柄などは絵や図に表すのが難しく、慣れていない人が一見しても何のことか伝わらないことも多い。
歯車が「設定」、重なった2枚の紙が「複製」、ゴミ箱が「削除」、フロッピーディスクが「保存」、虫眼鏡が「検索」、左回りの回転矢印が「アンドゥ」(操作の取り消し)など、多くのソフトウェアに共通する機能については慣用的に同じような図柄が採用されることが多い。
ピクトグラム ⭐⭐⭐
情報や指示、案内などを単純化された絵や図形で表したもの。「絵文字」「絵記号」「図記号」などと訳されることもある。言語によらず情報を伝達することができ、街頭や施設内での案内などによく用いられる。
情報や案内を単語や文章で記載するとその言語が読めない人には内容が伝わらないが、様々な場所で共通して使われるピクトグラムを描いておけば、言葉が分からなくても最低限の内容は伝達できる。文字のみの場合よりもよく目立ち、ひと目ですぐに情報が伝わる利点もある。
代表的な例として、公共施設などにあるトイレの男女のマーク、障害者用を表す車椅子のマーク、非常口のマーク、禁煙マークなどがある。その場所における禁止事項や危険についてピクトグラムを列挙した看板などもよく見かける。
図柄は線や図形を組み合わせた単色か二色(背景色を含めれば2~3色)のシンプルなデザインとすることが多い。「赤は禁止、黄色は注意」「青は男、赤は女」といった具合に色の違いに意味が込められている場合もある。
駐車場の「P」マークや案内所の「i」マークのようにアルファベット頭文字をモチーフとする慣例がある少数の事例を除き、文字部分が読めなければ意味が伝わらないデザインにはしないのが原則である。図柄の下などに「立入禁止」のように補助的に内容を表す単語を添えることはある(厳密にはこの部分はピクトグラム本体に含まれないとも言える)。
施設の設置者などが独自にデザインして掲示する例も多いが、社会的に共通してよく使われるものは標準の図柄が国際規格や国内規格で定められている。一般的な案内用のピクトグラムについて国際標準化機構が定めたISO 7001や、危険や警告、禁止などを表す標識を定めたISO 7010、これらを反映して定められた日本国内のJIS規格であるJIS Z 8210(案内用図記号)などがよく知られている。
インフォグラフィック ⭐
互いに関連するまとまった量のデータや情報などを、文字や数字、記号、絵文字、図表、イラスト、グラフなどを組み合わせた一枚の画像としてデザインしたもの。
単なるグラフやイラストではなく、様々な視覚的な要素を組み合わせ、色彩や形状、大きさ、配置などをデザインすることにより、一目で概要を把握できるように表現された画像を意味する。アニメーションする動画や対話的に操作できるソフトウェアの形に仕上げたものもある。
日常的によく目にする例として、鉄道の路線図や交通標識、各地の天気予報を地図に重ねて表示した画像、各地域の統計値を地図に書き入れた図などがある。科学技術の分野では、人工物の構造図や自然現象の模式図などに補助的な線や矢印、注釈、数値などを書き入れた画像がよく用いられる。
補色 ⭐
色相環でちょうど反対の位置にある色の組み合わせのこと。また、ある色の反対側にある色のこと。
様々な色味を、対応する光の波長の連続的な変化に応じて円環状に並べたものを「色相環」(color circle)という。波長が最長の赤の隣に最短の紫を繋いで環状としている。この中で、ちょうど環の反対側にある色同士を補色という。
色相環の色と位置の対応関係は色の表現方法(表色系)によって微妙に異なるため、系によって色の組み合わせも異なるが、絵の具や印刷物など減法混色の系でよく知られるRYB色相環やマンセル色相環では「赤-緑」「黄-紫」「青-橙」の組み合わせがよく知られる。
補色の組み合わせは互いがくっきりと際立つ効果があるため、目立たせたい場所などに使うと効果的であるとされる。ただし、明度の赤い補色同士を直接隣り合わせると目がチカチカしてかえって見にくい状態になることがある。
類似色 ⭐
色相環で隣や近くにある色の組み合わせのこと。また、ある色の近くにある別の色のこと。
様々な色味を、対応する光の波長の連続的な変化に応じて円環状に並べたものを「色相環」(color circle)という。波長が最長の赤の隣に最短の紫を繋いで環状としている。この中で、位置が近い色同士を類似色という。
色相環の色と位置の対応関係は色の表現方法(表色系)によって微妙に異なるが、おおむね赤-赤紫-紫-青紫-青-水色-エメラルドグリーン-緑-黄緑-黄-橙-赤の順に並んでいる。この中で、例えば、「黄-橙-赤」や「緑-水色-青」、「青紫-赤紫-赤」といった組み合わせが類似色となる。
配色で類似色の組み合わせを用いると統一感や安定感が増し、暖色の組み合わせであれば明るさや優しさ、寒色の組み合わせであれば落ち着きや涼しさなどを演出することができる。一方、色相環で反対側にある色同士の組み合わせは「補色」と呼ばれ、対照的で目立つ組み合わせとされる。
色相環 ⭐⭐
様々な色味を、対応する光の波長の連続的な変化に応じて円環状に並べたもの。波長が最長の赤の隣に最短の紫を繋いで環状としている。
光は波長の違いにより人の目にそれぞれ異なった色として映り、赤、青、緑といった人間が感じる色の種類(色味)のことを「色相」(hue)という。波長の変化に応じて連続的に色味が変化する様子を円環状に表したものを色相環という。
色と位置の対応関係は色の表現方法(表色系)によって微妙に異なるが、名前のある主な色で言うと赤-赤紫-紫-青紫-青-水色-エメラルドグリーン-緑-黄緑-黄-橙-赤の順に並ぶ。いわゆる「光の三原色」(赤・緑・青)や「色の三原色」(水色・薄紫・黄)は、概ね各色が120度ずつ離れた配置となる。
色相環で隣や近くにある色同士を「類似色」、中心を挟んでちょうど反対側にある色同士を「補色」という。補色については表色系によって色の組み合わせも微妙に異なるが、絵の具や印刷物など減法混色の系でよく知られるRYB色相環やマンセル色相環では「赤-緑」「黄-紫」「青-橙」などが補色となる。
DTP 【Desktop Publishing】 ⭐
出版物や印刷物の原稿作成や編集、デザイン、レイアウト、組版などの作業をコンピュータで行い、最終的に印刷可能な原稿(版下)の作成まで行うこと。電子化された紙面編集。
見出しや文章、画像、図表などの素材を作成・編集し、それらを紙面に割り付けて構成する作業をコンピュータの画面上で行う。出来上がりの紙面状態を確認しながら編集するWYSIWYG環境を備えたソフトウェアを用いるのが一般的だが、TeXのように専用の人工言語を用いてプログラミングの要領で紙面構成を記述していくシステムもある。
簡易な用途には一般的なワープロソフトなどを用いることもあるが、印刷物の紙面構成を行う機能に特化した「DTPソフト」と呼ばれる業務用のソフトウェアを用いることが多い。
DTPは1990年代前半頃から普及が始まり、パソコンやプリンタ、イメージスキャナなどの高性能化・低価格化や、フォントなどの環境の整備が進んだことにより、現在では商業出版物の編集作業のほとんどがDTPで行われるようになっている。
初期のDTPには専用の高性能ワークステーションや米アップル・コンピュータ(Apple Computer/現Apple)社のMacintoshシリーズがよく用いられ、米アルダス(Aldus)社(当時)の「Aldus PageMaker」(ページメーカー)や米クォーク(Quark)社の「QuarkXPress」(クォークエクスプレス)が人気を博した。
現在ではWindowsパソコンもよく使われるようになり、Aldus社を買収してこの分野に進出した米アドビ(Adobe)社の「Adobe InDesign」(アドビ・インデザイン)がQuarkXPressと競い合っている。出版社や新聞社では内製や特注の専用システムを利用している場合もある。
トリミング 【トリム】 ⭐
刈り込む(こと)、切り取る(こと)、整頓(する)、仕上げ(る)、などの意味を持つ英単語。端から一定の長さや割合を切り取って小さく(短く)する操作などのことを意味する。
写真や画像、図版などでは、全体の中で必要な部分だけを取り出して強調するために、不要な周縁部を切り取って排除する処理や操作をトリミングという。
映像の場合は、主に縦横比(アスペクト比)の調整のために上下あるいは左右を一定の割合で切り落として調整することをトリミングという。映画をアナログテレビ放送する際に左右をカットしてアスペクト比を4:3にする処理などが該当する。一方、写真の場合ように被写体の強調のために一部を切り取って拡大する処理や作業のことは「クロッピング」(cropping)という。
プログラミングやデータベースの分野では、文字列データの先頭や末尾に含まれる空白文字などを削除する操作のことをトリミングという。また、ログなど時系列に蓄積されていくデータなどについて、一定の条件や基準に基づいて自動的に削除する処理のことをトリミングという場合もある。
UDフォント 【UD書体】 ⭐
誰にとっても読みやすく、読み間違えにくいよう配慮した形状にデザインされたフォント。様々な人が目にする可能性がある印刷物や掲示物などに用いられることが多い。
従来の一般的なフォントは健常な成人が読むことを暗黙の前提としており、高齢者や子ども、弱視(ロービジョン)や読字障害(ディスレクシア)など視覚に関する障害や特性を持つ人々、日本語がネイティブではない外国出身者などにとって、読み取りにくかったり誤読しやすい箇所が含まれることがあった。
UDフォントはユニバーサルデザイン(UD:Universal Design)の考え方に基づいて、できる限り多くの人が同じように読み取ることができるよう配慮された字形となっている。文字としての見やすさや分かりやすさ、文として並べたときの読みやすさ、他の文字との判別しやすさ、誤読しにくさを重視してデザインされている。
「このような特徴がある字形はUDフォントである」といった明確な基準や共通する性質があるわけではないが、短いはみ出し部分を除去するなどすっきりしたシンプルなデザインにしたり、「C」「3」などの開口部を広く取ったり、濁点と半濁点を取り違えないよう大きくしたり、「1」「I」「l」などの字形の似ている文字にそれぞれ明確な特徴を与えるなどの工夫が凝らされている。
UDフォントは様々な人が様々な状況で目にする可能性がある場合によく用いられ、家電製品などの電子機器の操作画面、商品のパッケージや取扱説明書、街頭や公共施設、店舗、交通機関などの案内や掲示物、新聞や雑誌などの出版物、手続きや契約関係の書類などで採用が広がっている。教科書にも「UD教科書体」が使われる例が増えている。
フォント 【書体】 ⭐⭐⭐
同じ特徴、様式で一揃いの文字の形状をデザインしたもの。また、コンピュータなどで文字を表示・印刷できるように、文字形状をデータとして表したもの。もとは、同じ大きさ、デザインの一揃いの(金属)活字や文字盤の集合を意味していた。
フォントは字形の特徴によって様々な種類があり、一定の共通した特徴を持つデザイン様式のことを「書体」(typeface/タイプフェイス)という。欧文フォントの書体には、線に強弱があり端に飾りのついた「セリフ体」(serif)や、線が均一の太さで飾りのない「サンセリフ体」(Sans-serif)、手書きに近い「スクリプト体」などの種類がある。
日本語書体には、線に強弱がありトメ、ハネ、ハライの表現された「明朝体」や「楷書体」、均一な太さの「ゴシック体」(gothic)、筆で書いたような字形の「行書体」や「草書体」などの種類がある。なお、書体という語をフォントの意味(“font”の訳語)として用いることもある。
すべての文字を同じ幅で表現したものを「等幅フォント」(monospaced font/固定幅フォント)、文字ごとに最適な幅が設定されたものを「プロポーショナルフォント」(proportional font/可変幅フォント)と呼ぶ。用途に応じて使い分けられるように、同じ字形のフォントで固定幅のものと可変幅のものが両方提供される場合もある(MSゴシックとMSPゴシックなど)。
データの表現形式によっても分類され、文字の形を小さな正方形の点(ドット)の集まりとして表現したものを「ビットマップフォント」(bitmap font)あるいは「ラスターフォント」(raster font)、基準となる点の座標や輪郭線を表す曲線のパラメータの集まりとして表現したものを「アウトラインフォント」(outline font)と言う。
ビットマップ方式は高速に処理でき、小さな表示サイズでは美しく表示できるが、拡大・変形すると形が崩れてしまうため、現在では、サイズによらず同じ品質を得られるアウトライン方式が用いられることが多い。また、プロッタなど特定の用途では、太さの概念が無く、中心線の曲線のパラメータのみで字形を表した「ストロークフォント」(stroke font)と呼ばれる方式が用いられることもある。
アウトライン方式のフォントデータのファイル形式にはいくつかの標準的な形式があり、様々なシステムで同じデータを共通して利用することができる。「TrueTypeフォント」や「OpenType」「WOFF」(Web Open Font Format)「PostScriptフォント」(Type 1フォントやCIDフォントなど)などが有名である。
ゴシック体 ⭐
文字の書体の一つで、線幅が一定で線端に飾りなどが付かないすっきりした形状のもの。名前は横文字(英:Gothic)だが主に日本語フォントの類型を表す用語として用いられる。
装飾がなく線の太さが均一であるようなフォントがゴシック体に分類される。角や端が角ばったデザインのものを「角ゴシック体」、丸みを帯びているものを「丸ゴシック体」と呼ぶことがある。
印刷物では表題や見出し、強調箇所などに用いることが多く、本文など長い文章は明朝体など線幅に変化のあるフォントが用いられることが多い。遠くから視認しやすいため屋内の案内や屋外の看板などにもよく用いられる。
コンピュータでは、解像度の低いディスプレイで線幅が一定しないフォントを表示すると輪郭にガタつきが多く発生し読みにくかったことから、操作画面などの表示のほとんどでゴシック体のフォントが用いられてきた。現在では高解像度の表示装置も増えているため、長い文章を読む表示モード(リーダーモード)などで明朝体などを使用する例も増えている。
なお、欧文の場合は線幅が一定で飾りの無い書体を「サンセリフ体」(sans-serif font)と呼ぶのが一般的である。“Gothic font” と言った場合、中世の古文書に出てくるような、縦横の線幅が極端に異なり角ばった独特の字形をした「ブラックレター」(blackletter)のことを指し、日本語フォントのゴシック体とはまったく異なる字体となるため注意が必要である。
<$Img:Gothic-Font.png|center|>明朝体 ⭐
日本語の文字の書体の一つで、縦線が横線より太く、止め、はね、払いなどを線幅を変えて明確に表現したもの。
中国の明の時代に漢字の活版印刷を行うために整理された字体を元にしているためこのように呼ばれる。日本では明治時代にやはり活版印刷のために漢字と仮名の書体が整備され、書籍や新聞、雑誌などの本文に広く用いられるようになった。
線幅が一定でない字体には楷書体や教科書体もあるが、これらが筆などで人が書いた手書き文字に近い一方、明朝体は縦や横に伸びる画の多くを垂直・水平に寄せ、線幅をなるべく一定に保ってトメを字飾りのように三角の盛り上がりで表現するなど、独特の様式が見られる。
コンピュータでは、初期の解像度が低いディスプレイ装置だと輪郭が崩れやすく見にくかったため、画面表示に用いられるフォントはゴシック体が標準となっている。一方、ワープロソフトやDTPソフトなど印刷用途では明朝体が標準的に用いられ、本文など長い文章に設定されることが多い。
近年ではディスプレイの解像度が高精細化したため、メニューなどの表示に明朝体のフォントが用いられたり、長い文章を読むための表示モード(リーダーモード)などで本文を表示する用途に明朝体が用いられることも増えている。
なお、 欧文の場合は線幅に変化があり飾り付きの書体を「セリフ体」(serif font)と呼ぶのが一般的で、明朝体とセリフ体、ゴシック体とサンセリフ体が字形や用途などでほぼ対応関係にある。
プロポーショナルフォント 【可変幅フォント】 ⭐
フォント(書体)の分類の一つで、文字ごとに適した幅が設定されたもの。各文字の表示枠が文字の実際の幅に合わせて調整され、例えば「i」は狭く、「W」は広く表示される。
各文字の左右の余白の量が概ね同じであり、字間の調整などをしなくても書き文字のようにほぼ一定の間隔で文字が並ぶ。長い文章などを表示・印刷したときに自然で読みやすい。横書きで折返しのある文章では行末や縦方向の並びは揃わず、一行に表示される文字数も行ごとに変化する。
幅の変化は「l」と「m」、「<」と「.」のように英数字・記号において顕著だが、日本語文字でも「っ」「ァ」のような小さなカナ文字はサイズに合わせて幅も狭まっており、フォントによっては「目」「う」「リ」のような文字を細め(縦長)に調整している場合もある。
一方、すべての文字の幅が同じに設定されているフォントは「等幅フォント」(monospaced font)「固定幅フォント」と呼ばれる。初期のコンピュータではあらかじめ一定幅の格子に区切られた領域に文字を表示・印刷することしかできなかったため、文字はすべて等幅だったが、処理能力の向上によりプロポーショナルフォントを扱うことができるようになった。現在でも縦方向の並びが揃っていたほうが見やすいプログラムコードの表示などでは等幅フォントが好まれる。
等幅フォント 【固定幅フォント】 ⭐
フォント(書体)の分類の一つで、すべての文字の幅を一定に揃えたもの。各文字の表示枠が文字の実際の幅に関わりなく同一に設定されており、例えば「i」も「W」も同じ幅で表示・印刷される。
本来、文字にはそれぞれ固有の幅があるが、フォントデータには、すべての文字を均一の枠に収めるように設計された「等幅フォント」(固定幅フォント)と、手書きの場合と同じように文字ごとに幅が設定された「プロポーショナルフォント」(可変幅フォント)の違いがある。
等幅フォントでは同じ幅にすべての文字を収めるため、各文字の左右の余白の量は幅が狭い文字では大きく、広い文字では小さくなる。文字自体の字間の空きはまちまちになるが、文字の表示枠は一定の幅で並び、一行に表示・印刷される文字数も(文字の大きさが同じなら)常に一定となる。
ASCII文字などいわゆる半角文字(半角英数字・記号)は幅が高さの半分の縦長の長方形に収められ、いわゆる全角文字(漢字、仮名、全角英数字・記号など)は幅と高さが等しい正方形の領域に収められる。後者は前者のちょうど2文字分となる。
「Courier」(クーリエ)のように等幅フォントとしてのみ提供されるフォントと、「MS ゴシック」(等幅)と「MS Pゴシック」(プロポーショナル)、「Noto Sans」(プロポーショナル)と「Noto Sans Mono」(等幅)のように同じ字形で等幅とプロポーショナルの両方が用意されているものがある。
主な用途
コンピュータが実用化されてから1990年代頃までは、あらかじめ一定幅の格子に区切られた領域に文字を表示・印刷する仕組みだったため、フォントはすべて等幅だった。文書作成などでプロポーショナルフォントが一般的になった今でも等幅フォントが用いられる場面はある。
等幅フォントは複数行に表示した際に文字が格子状に規則正しく配置されるため、リストや表など縦に項目が並ぶような文書の表示・印刷に適している。「┌」「├」などの罫線用の文字も、等幅フォントでの表示・印刷を前提に用意されたものである。
プログラムコードや設定ファイルなどを見やすく表示・編集できるため、テキストエディタやコードエディタなどでも標準のフォントが等幅に設定されていることが多い。コンピュータのコマンド入力画面(シェルやコマンドプロンプト)も等幅フォントによる表示が標準となっている。
UDフォント 【UD書体】 ⭐
誰にとっても読みやすく、読み間違えにくいよう配慮した形状にデザインされたフォント。様々な人が目にする可能性がある印刷物や掲示物などに用いられることが多い。
従来の一般的なフォントは健常な成人が読むことを暗黙の前提としており、高齢者や子ども、弱視(ロービジョン)や読字障害(ディスレクシア)など視覚に関する障害や特性を持つ人々、日本語がネイティブではない外国出身者などにとって、読み取りにくかったり誤読しやすい箇所が含まれることがあった。
UDフォントはユニバーサルデザイン(UD:Universal Design)の考え方に基づいて、できる限り多くの人が同じように読み取ることができるよう配慮された字形となっている。文字としての見やすさや分かりやすさ、文として並べたときの読みやすさ、他の文字との判別しやすさ、誤読しにくさを重視してデザインされている。
「このような特徴がある字形はUDフォントである」といった明確な基準や共通する性質があるわけではないが、短いはみ出し部分を除去するなどすっきりしたシンプルなデザインにしたり、「C」「3」などの開口部を広く取ったり、濁点と半濁点を取り違えないよう大きくしたり、「1」「I」「l」などの字形の似ている文字にそれぞれ明確な特徴を与えるなどの工夫が凝らされている。
UDフォントは様々な人が様々な状況で目にする可能性がある場合によく用いられ、家電製品などの電子機器の操作画面、商品のパッケージや取扱説明書、街頭や公共施設、店舗、交通機関などの案内や掲示物、新聞や雑誌などの出版物、手続きや契約関係の書類などで採用が広がっている。教科書にも「UD教科書体」が使われる例が増えている。
円グラフ 【パイチャート】 ⭐
数値データを図示するグラフの一つで、円の中を大小の扇形に区切って各項目に対応付け、扇の面積によって各項目の大きさを表すもの。各項目の全体に占める割合を一目で比較できる。
円全体が全項目の値の和(100%)に相当し、各項目を全体に占める割合に従って扇形で示す。時計でいう0時方向から時計回りに配置するのが一般的である。あまりに構成比の小さな項目は細すぎて見にくいため、最下位の位置に「その他」としてまとめる。
各項目が独立している場合は大きい順に並べるのが原則だが、項目間にグループ関係や何らかの順序性がある場合にはそちらに従って配置することがある。例えば、アンケートの回答が「とてもそう思う」「そう思う」「どちらとも言えない」「そう思わない」「まったくそう思わない」であれば、構成比に関わらずこの順に並べる。議会の勢力図であれば、右側に与党系、左側に野党系、中央に独立系とすると分かりやすい。
英語では切り分けたパイになぞらえて “pie chart” (パイチャート)と呼ぶことが多い。バリエーションとして、中心を空けて表題などを書き入れた「ドーナツグラフ」、複数の系列や各項目の内訳などを同心円状に重ねる「二重円グラフ」などがある。ソフトウェアによっては厚みのある円盤状の「3D円グラフ」を描画する機能もあるが、3D化すると扇の面積比が歪むため好ましくないとする考え方もある。
折れ線グラフ ⭐
数値データを図示するグラフの一つで、各項目を点で表し、隣接する項目同士を線分で結んで推移を折れ線で表したもの。時系列の変化などを表すのに適している。
縦軸に量、横軸に時間を取り、各時点における量の大きさを点で示す。隣接する点同士を端から順に線分で繋いでいくことで、すべての点を一つの折れ線で結びつける。線分が右上がりの箇所は増加、右下がりの箇所は減少を表し、折れ線の上下で量の時系列の変化を視覚的に把握することができる。
同じグラフに複数の異なる系列を表す折れ線を重ねて描画したり、折れ線グラフと棒グラフを重ねて描画することもあり、複数の項目の変化を直感的に把握することができる。複数の系列を重ねる場合は実線と折れ線、破線を使い分けたり、線を色分けしたり、点を表す図形(●▲■など)を変えるなどして見分けやすいようにする。
棒グラフ 【バーチャート】 ⭐
数値データを図示するグラフの一つで、各項目の大きさに対応する長さの棒を縦または横に並べたもの。片方の端の位置が揃っており、棒の長さで各項目の大きさを一目で比較できる。
同じ幅の細長い棒(長方形)を並べた図で、棒の長さが各項目の大きさを表している。垂直に伸びる棒を横に並べた「縦棒グラフ」と、水平に伸びる棒を縦に並べた「横棒グラフ」がある。縦棒の場合は下端を、横棒の場合は左端を揃えて並べる。
項目の並び順は図で示したい内容に応じて決められるが、左端や上端から値の大きい順に並べる場合や、年齢のように項目の順序や大きさに従って並べる場合がある。項目が時系列の場合は過去から順に並べることが多い。
バリエーションとして、棒を区切って内訳を示す「積み上げ棒グラフ」、棒の長さを揃えて内訳の比率の比較や変化を示す「100%積み上げ棒グラフ」、一つの項目に複数の細い棒を並べて時系列の変化などを表す「集合棒グラフ」などがある。折れ線グラフなどと組み合わせて複合グラフとする場合もある。ソフトウェアによっては棒の並びを3次元的に描画する「3D棒グラフ」の機能が利用できる場合もあるが、3D化すると棒の長さの比が歪むため好ましくないとする考え方もある。
ヒストグラム 【度数分布図】 ⭐⭐⭐
データの分布を表す統計図の一つで、縦軸に値の数(度数)、横軸に値の範囲(階級)を取り、各階級に含まれる度数を棒グラフにして並べたもの。どの範囲の値が多く、どの範囲が少ないかを視覚的に表現できる。
値の出現頻度の高い階級は高い棒で、低い階級は低い棒で図示されるため、出現頻度の高低やバラつき具合を視覚的に容易に把握できる。各階級の度数を示す棒のことを「ビン」(bin)と呼ぶことがある。
すべてのビンの面積の総和が全体の度数を表しており、各ビンの面積は全体に占めるその階級の度数の割合を視覚的に表現したものとなっている。同じデータ群でも階級の幅の取り方次第でビンの形状や分布は異なるが、どのような基準で区分すべきかについて様々な方法論が提唱されている。
また、手前のすべての区間の度数を足し合わせた累計値をその区間の度数とし、これを右肩上がりの棒グラフの列で示したものを「累積ヒストグラム」(cumulative histogram/累積度数図)という。端からどの区間までが重要かを見極める場合などに利用される。
散布図 【分布図】 ⭐⭐⭐
一つのデータが複数の量や特性の組として表される場合に、二つの値の間の関係を明らかにするために作成される図。縦軸と横軸にそれぞれ別の特性を割り当て、各データについて対応する位置に点を打って作図する。
点の分布する様子を見て、データを構成する二つの量の間に関連があるか、どのような関連があるかを知ることができる。例えば、点が右上がりの帯状に分布していれば正の相関があると分かり、(左上から)右下がりなら負の相関があると分かる。まんべんなく散らばっていれば相関が薄いか無さそうであると考えられる。
全体の傾向から大きく外れた特異点(外れ値)がどこにあるかも容易に知ることができ、これを除外して計算を行ったり、外れた理由を詳しく調べたりすることもある。また、全体に当てはまる傾向を調べるだけでなく、点の集まり具合から二つの量の関係が同じ傾向を示している項目群をグループ分け(グルーピング)するといった使い方をする場合もある。
ユーザーインターフェース 【UI】 ⭐⭐
機器やソフトウェア、システムなどとその利用者の間で情報をやり取りする仕組み。システムから利用者への情報の提示・表示の仕方と、利用者がシステムを操作したり情報を入力したりする手段や方式、機器、使い勝手などの総体を表す。
コンピュータの主なユーザーインターフェースは、ディスプレイ装置などの画面表示、マイクやスピーカー、イヤフォンによる音声入出力、キーボードなどによる文字入力、マウスやペンタブレット、タッチパネル、ジョイスティックなどによる(画面上の)位置や方向の入力、カメラなどによる画像・映像入力、およびこれらの組み合わせによって構成されることが多い。
現代のコンピュータのユーザーインターフェースは大きく分けて、文字による表示や入力を基本とする「CUI」(Character User Interface:キャラクタユーザインターフェース)あるいは「CLI」(Command Line Interface:コマンドラインインターフェース)と、絵や図形による表示、画面内の位置を指示することによる操作を基本とする「GUI」(Graphical User Interface:グラフィカルユーザインターフェース)の二種類がある。
CUI/CLI
CUI/CLIは主にキーボードからコンピュータへの命令(コマンド)を文字により入力し、コンピュータは応答や処理結果を画面に文字で表示する方式である。歴史が古く、慣れれば効率よく操作することができるが、コマンドを覚えなければ操作できないため初心者にはとっつきにくい。
連続して実行するコマンドをファイルに記録して繰り返し一括実行したり、コマンドの出力文字列を他のコマンドの入力に与えるなどの手法で操作の一部を自動化しやすいことから、現在もコンピュータに詳しい人や技術者など専門家がよく利用する。
GUI
GUIはコンピュータの性能・機能が向上し、グラフィック表示やマウスなどが利用できるようになった1980年代頃から普及し始めたもので、専門家でない人やコンピュータに詳しくない人でも直感的に使用できることから、一般に販売されるパソコンや携帯端末などの多くで採用されている。
パソコンでは画面全体を机の上になぞらえた「デスクトップ」という形式で表示し、動作中のソフトウェアに与えられた矩形の表示領域である「ウィンドウ」を並べることができる。ファイルやアプリケーションなどは「アイコン」で表示され、マウス操作やタッチ操作で位置を指し示して操作指示を与える。
近年では、画面に指や専用のペン型の器具などで触れて対象や位置を指示するタッチパネルを利用した操作方式が普及しており、スマートフォンやタブレット端末では標準のGUIとなっている。こうした機器では液晶画面が入出力インターフェースのほとんどの機能を提供しており、いくつかのボタンを除き操作に他の装置は使用しない。
UXとの違い
システムの性能が優れていたり機能が豊富でも、ユーザーインターフェースの設計や実装が不適切だと利用者がシステムの提供する資源を十分に活用することができず、また無用な負担を強いられ作業効率も低下するため、システムの総合的な優劣を決する重要な構成要素の一つと言える。
ユーザーインターフェースという概念は主にシステム側の機能や動作を中心に捉えるものだが、近年では、利用者側の視点から、一連の操作や表示の流れから得られる利用者の体験の総体を表す概念として「UX」(User Experience:ユーザーエクスペリエンス、ユーザー体験)という用語が提唱されている。
なお、コンピュータの分野ではユーザーインターフェースが一般的な用語だが、機械などの分野では「HMI」(Human Machine Interface:ヒューマンマシンインターフェース)あるいは「MMI」(Man Machine Interface:マンマシンインターフェース)と呼ぶことが多い。
GUI 【Graphical User Interface】 ⭐⭐
コンピュータの表示・操作体系(ユーザーインターフェース)の分類の一つで、情報の提示に画像や図形を多用し、基礎的な操作の大半をマウスやタッチスクリーンなどによる画面上の位置の指示により行うことができるもの。
画面上にアイコンやメニュー、ボタンといった絵や図形に補助的な文字情報を組み合わせた操作要素が表示され、これをマウスやトラックパッド、タッチパネルなどのポインティングデバイス(位置入力装置)で選択してコンピュータへの指示を与える。
パソコンなどではオペレーティングシステム(OS)が管理する「デスクトップ」(desktop)と呼ばれる初期画面が表示される。各アプリケーションソフトは「ウィンドウ」(window)と呼ばれる矩形の領域を与えられ、その中で表示や操作を行う。複数のウィンドウを同時に開き、並行して処理を行ったり、即座に切り替えて操作することができる。
スマートフォンやタブレット端末では「ホーム画面」(home screen)が表示され、導入済みのソフトウェア(アプリ)がアイコンとして並んでいる。これをタッチ操作で選択するとアプリが起動して全画面で操作可能になる。複数アプリを同時に起動することはできるが、画面を切り替えて使用するのが一般的となっている。
CUIとの違い
一方、情報の提示も操作の受付も原則として文字によって行うユーザーインターフェースを「CUI」(Character User Interface:キャラクターユーザーインターフェース)あるいは「CLI」(Command Line Interface:コマンドラインインターフェース)という。
利用者はキーボードなどを用いてコンピュータへの指示を文字によって与え、コンピュータからの出力も画面に文字を表示して行われる。LinuxなどのUNIX系OSやメインフレーム(大型コンピュータ)、ネットワーク機器など、訓練を受けた専門の技術者やオペレータが操作する前提のコンピュータ製品で多く用いられる。
パソコン向けOSのWindowsやmacOS、スマートフォンやタブレット端末向けのAndroidやiOSなど、技術者ではない一般消費者や(企業の)従業員が操作することを想定したコンピュータ製品は、情報の見やすさや操作方法の習得のしやすさなどを重視してGUIを中心に構成することが多い。家庭用ゲーム機、デジタル家電など民生用コンピュータ応用製品の多くも、主要な表示・操作方式としてGUIを用いる。
アイコン ⭐⭐
コンピュータの操作画面で、処理の対象や内容などを一定の大きさの小さな絵や図、記号などで表現したもの。ファイルやアプリを画面上で指定する際などによく利用される。
利用者はマウスやタッチパネルなど位置を入力する装置を用いて画面上のアイコンを指定し、コンピュータに実行内容の指示などを行う。例えば、アプリケーションソフトを表すアイコンを開くと起動して操作画面が現れ、ファイルを表すアイコンを開くと閲覧画面や編集画面が現れる。
アイコンは操作画面を画像や図形で構成するグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の主要な構成要素であり、キーボードなどから文字で指示を入力する方式に比べ、文字入力が不慣れな人や命令文などを覚えていない初心者でも容易に操作内容を指示できる。
アイコンの大きさや形状はシステムによって異なるが、システムごとに規定された決まった大きさ(縦横数十ピクセル程度)の正方形に揃えられ、複数のアイコンを縦横に規則正しく並べて表示する場合が多い。脇にファイル名などの文字情報を添えたり、マウスカーソルを合わせると短い説明が表示されたりする場合もある。
どの絵柄が何を表すかはシステムによって異なるが、何の機能や対象を表しているのか直感的に連想しやすいものになるよう工夫されている。しかし、コンピュータに特有な事項や抽象的な事柄などは絵や図に表すのが難しく、慣れていない人が一見しても何のことか伝わらないことも多い。
歯車が「設定」、重なった2枚の紙が「複製」、ゴミ箱が「削除」、フロッピーディスクが「保存」、虫眼鏡が「検索」、左回りの回転矢印が「アンドゥ」(操作の取り消し)など、多くのソフトウェアに共通する機能については慣用的に同じような図柄が採用されることが多い。
CUI 【Character-based User Interface】 ⭐
コンピュータやソフトウェアが利用者に情報を提示したり操作を受け付けたりする方法(UI:ユーザーインターフェース)の類型の一つで、すべてのやり取りを文字によって行う方式。
利用者はキーボードなどを用いて文字列によって指示を与え、コンピュータからはディスプレイ装置に文字を表示して応答を返したり情報を提示する。画面やウィンドウの上部から人間の入力文字列とコンピュータの出力文字列が交互に並ぶ対話式の操作環境が一般的である。
OSの操作などのために用いられる操作環境では、操作が可能になると画面左端などに入力を促すプロンプト(prompt)と呼ばれる短い記号や文字の組み合わせが表示され、これに続けて人間がソフトウェアへの命令やその内容を表すコマンド(command)を入力する。
Enterキーなどで入力内容を決定・投入すると、改行されてコンピュータ側の処理が始まり、結果がコマンドの次行から一行または複数行に渡り表示される。処理が終了して再度入力可能になると改行されて新しい行の左端にプロンプトが表示され、コマンド入力待ちとなる。
初期の大型コンピュータ(メインフレーム)でタイプライターとプリンタを組み合わせたテレプリンタ端末が使用されたのが起源とされ、1970年代にキーボードとCRTディスプレイによるVDT環境が普及すると、メインフレームやUNIX系システムの標準的な操作環境として普及した。現在でもこれらの業務用や技術者向けのコンピュータシステムではCUI環境が好まれる傾向がある。
一方、コンピュータからの出力にグラフィックス表示を多用し、操作をマウスなどで主に画面上の位置を指定して行う操作環境はGUI(Graphical User Interface:グラフィカルユーザーインターフェース)という。現在では、パソコンやスマートフォン、タブレット端末など、コンピュータに詳しいとは限らない一般消費者にも広く普及しているコンピュータ製品のほとんどがGUIによる表示・操作を基本としている。