オンプレミス 【on-premises】 自社運用 / オンプレ

概要

オンプレミス(on-premises)とは、企業などの組織における情報システムの設置形態の分類で、自社施設の構内に機器を設置してシステムを導入・運用すること。外部の事業者が用意した機材やソフトウェア通信回線を経由して利用する「クラウド」型(システム/サービス)の対義語。

元来このような方式が一般的だったため特に名称はなかったが、2000年代半ば頃から通信ネットワークを通じて外部の事業者の設備を借用する、いわゆる「クラウドコンピューティング」が普及したため、これと区別するために従来方式に後から付けられた呼称(レトロニム)である。

2009年頃から広く使われるようになった。“premise” には「構内」「施設」などの意味がある。クラウドサービスのような外部の資源を利用する形態は「オフプレミス」(off-premises)や「オンデマンド」(on-demand)と呼ぶこともある。

コスト・納期

クラウド型とオンプレミス型を同じ規模や機能のシステムで比較した場合、オンプレミス型のシステムは設備を自社で用意するため、初期投資(イニシャルコスト)が大きくなりがちで、稼働開始までにかかる時間も長くなりがちである。保守や管理、設備の更新も自前でわなければならない。

一方、クラウド型は事業者がすでに所有している設備を利用するため、初期にまとまった費用は必要なく、申し込めばすぐに利用を開始することができる。利用規模に合わせて徐々に増強していったり、あるいは突発的なピークに一時的に大量の資源を借り受けるといった柔軟な対応が可能なため、利用規模に見合った費用で運用することができる。ただし、利用実績に応じて後から精算するため、固定的な費用が中心のオンプレミスに比べ、コストが大きく変動する可能性がある。

オンプレミス型ではある程度以上高額な設備やソフトウェアは資産に計上して減価償却しなければならないが、クラウド型は支払った額がすべて費用として計上できるため、会計上はリースやレンタルに似た効果を得ることができる。

機能・性能

オンプレミス型では機器やソフトウェアに何を利用するか自由に選択でき、制約なく必要な構成にすることができるが、クラウド型は事業者側で仕様や構成があらかじめ決まっていたり、いくつかの選択肢から選ぶ形態であることが多い。

性能や規模については、オンプレミス型では設置した機材の能力がそのまま上限となるため、あらかじめ見積もったピーク時の負荷に耐えられるように用意する必要があり、平常時に活用できない無駄が大きくなる。クラウド型では事業者の許容量の限り必要なだけ性能や規模を随時拡張させられる。

利用者と同じ施設内にオンプレミス型のシステムを設置した場合、構内ネットワークLAN)経由で高速にアクセスできるため体感速度などの点は有利である。クラウド型は遠隔地の設備を広域回線を経由して利用するため応答の遅延データ伝送の待ち時間が生じやすい。ただし、オンプレミスでもデータセンターなどに設備を集約し、遠隔地の事業所から利用する場合には事情は同様である。

信頼性

オンプレミスでシステム障害や災害へ備え信頼性を高めようとすると自社で緊急時以外は使用しない余剰の設備を用意したり、遠隔地に拠点を設けて設備の導入や運用うなど大きな負担がかかる。

一方、大規模事業者のクラウドサービスでは新規顧客などのために常にスタンバイ状態の機材を豊富に抱えており、全国あるいは全世界の複数拠点が互いにカバーし合う運用とすることもできるため、低い費用で高い信頼性を提供することができる。

セキュリティ

クラウド型ではデータが物理的に事業者側に保管され、設備や回線の一部は他の利用者と共用であり、自社とのやり取りはインターネットのような広域回線を介する必要がある。これらの点から、機密情報の漏洩や盗難、システムへの侵入、破壊などが起こりやすいのではないかとセキュリティ上の懸念を抱く人が少なくない。

一方、オンプレミスならデータ、設備、人員が自社施設内で完結しているため外部要因による危険に晒されず安全を確保しやすいと考えられがちだが、大手のクラウド事業者は自社が原因の問題を起こさぬよう専門のセキュリティ技術者やシステムへの投資を惜しまず、民間では最高レベルのセキュリティ体制を敷いている場合が少なくない。自社でこれに匹敵する対応を取れる企業は限られており、単純にオンプレミスの方が安全とは言い難い。

(2020.11.21更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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