CRTディスプレイ【CRT display】CRTモニター
概要
1970年代にコンピュータの表示装置として実用化され、印字装置やパンチカードに代わって普及していった。処理結果を即座に確認できる出力装置は画期的で、現在では一般化している、操作と結果出力をリアルタイムに繰り返す対話型の利用方法に道を開いた。
真空管が大きくて重く、原理上ある程度の奥行きが必要なため、ある程度以上の薄型化や小型・軽量化は難しかった。消費電力も大きいため据え置き型の機器しか実用化されなかった。2000年前後から急速に普及した液晶ディスプレイに取って代わられ、2010年代までにはほぼ姿を消した。
表示方式の特性上、同じ内容を長時間映し続けると表示面の蛍光体に表示内容の跡が残ったままになってしまう「焼き付き」という現象が発生した。これを防ぐため、コンピュータを一定時間放置すると自動的にアニメーションを表示し始める「スクリーンセーバー」というソフトウェアが用いられた。
また、近くに磁石や磁力を発生する機器が存在すると、磁力によって電子ビームが曲げられてしまい表示が歪んだり変色する現象が発生した。長時間磁場がかかると内部の金属部品が磁気を帯びてしまい画面が歪んだままになってしまう。これを防ぐため、金属部品の磁場をリセットする「デガウス」(消磁)という機能が内蔵されていた。電源を入れた際に「ブーン」という音がする機種があるが、これは自動的にデガウスを行っているためである。
シャドーマスク (shadow mask)
CRTディスプレイの方式の一つで、蜂の巣状に細かい穴が多数あいた金属板を「シャドーマスク」(shadow mask)という。ブラウン管の奥にある電子銃からビームを発射し、シャドーマスクに開いた穴を通して3色の画素に当てる。
大半のCRTがこの方式を採用しているが、明るさやコントラストの面でアパーチャグリル方式に劣る。ただ、ドットピッチを小さくしやすく、文字を中心に扱う用途には向いていると言われる。また、アパーチャグリルに比べてコストが低く、耐用年数が長い。
アパーチャグリル (aperture grille)
CRTディスプレイの方式の一つで、縦方向にスリットの入ったすだれ状のマスクを「アパーチャグリル」(aperture grille)という。ブラウン管の奥にある電子銃からビームを発射し、アパーチャグリルを通して蛍光体に当てる。
先に実用化されたシャドーマスク方式に比べて、コントラストが高くて画面が明るく、発色がよい。ただし、シャドーマスクよりも価格が高く、耐用年数が短い。画面の上下に「ダンパー線」と呼ばれる2本の細い横線(の影)が入っているのを嫌う人もいる。この方式を採用したものに、ソニーが開発した「トリニトロン」と三菱電機が開発した「ダイアモンドトロン」がある。
