Wayland
Waylandとは?

Linuxなどのデスクトップ環境では長年、「X Window System」(X11)が画面表示を担ってきた。X11は1980年代に設計されており、ネットワーク越しに画面を表示することを前提とした複雑な構造を持つ。現代の用途では複雑な仕様の多くが使われないまま残り、処理の非効率やセキュリティ上の弱点につながっていた。Waylandはこうした課題を解消するために新たに設計された規格で、2008年頃から開発が始まった。
構造面でX11と大きく異なるのは、仲介層の有無である。X11では「Xサーバ」という専用プログラムが独立して動作し、アプリケーションからの描画データを受け取った上で別のソフトウェアが画面を合成するという多段階の構造をとっていた。Waylandでは「コンポジター」と呼ばれるプログラムが表示管理と画面合成を一括して担い、中間的な処理を省いた設計になっている。処理の階層が減ったことで、映像のちらつきや描画の遅延が生じにくくなっている。
セキュリティ面でも設計が見直されている。X11では、あるアプリケーションが他のウィンドウの内容を読み取ったり、キーボード入力を傍受したりすることが原理的に可能な状態にあった。Waylandでは各アプリケーションが自分のウィンドウにしかアクセスできないよう厳格に隔離されており、アプリケーション間の干渉が制限されている。
既存ソフトウェアとの互換性を保つために「XWayland」という仕組みも用意されている。これはX11向けに作られたアプリケーションをWayland環境上で動かすための互換レイヤーで、移行期のつなぎとして機能する。ただし、すべての機能が同一条件で動作するわけではなく、一部の挙動に差異が生じる場合もある。
GNOMEやKDE PlasmaといったLinuxの主要なデスクトップ環境はWaylandへの移行を進めており、UbuntuやFedoraなど多くのディストリビューションで標準の表示システムとして採用されている。高精細ディスプレイへの対応やマルチディスプレイ表示など、現代のハードウェアが持つ性能を引き出す工夫も取り入れられており、組み込み機器や車載システムでの採用例もある。