Thread

物理層とリンク層にはIEEE 802.15.4(LR-WPAN)規格を使用し、免許不要で誰でも自由に使用できる2.4GHz帯の電波で通信する。伝送速度は最大250kbpsで、通信距離は数十メートル程度である。消費電力を極めて低く抑える設計により、ボタン電池で長期間稼働する小型センサーにも搭載できる。
各機器がそれぞれ中継器として機能し、バケツリレー式にデータを伝送するメッシュネットワーク方式を採用している。一部の機器が停止しても別の経路を自動的に選択して通信を継続できる。Wi-Fiのように単一のアクセスポイントに依存しないことから、接続台数が増えても安定して動作し、住宅内の広い範囲をカバーしやすい。
すべての通信は標準で暗号化され、ネットワークへの機器追加時には認証手続きを経た端末のみが参加を許可される。これらの仕組みにより不正アクセスや盗聴を防ぐ。通信プロトコルにはIPv6を採用しており、インターネットで広く使われるIP技術をそのまま利用できる。Threadネットワークを外部のIPネットワークと接続するには「ボーダールータ」(border router)と呼ばれる機器を使用する。同じIEEE 802.15.4ベースの「ZigBee」と比べ、IPv6を標準採用している点が大きく異なる。
Threadは米グーグル(Google)社などが2014年に設立した業界団体Thread Groupによって策定された。スマートホーム市場では通信規格の乱立により機器間の相互接続が困難な状況が続いていたが、共通基盤として普及が進んでいる。近年では、同社や米アップル(Apple)社、米アマゾンドットコム(Amazon)社など主要プラットフォームが対応する「Matter」規格の下位通信層としてThreadが採用されており、異なるメーカーの機器を一元的に操作できる環境の整備が進んでいる。