MRDIMM【Multiplexed Rank Dual Inline Memory Module】
概要

モジュール上に「マルチプレクサ」(multiplexor)と呼ばれる中継用の制御チップを搭載しており、内部の複数のメモリ領域へ同時にアクセスし、それらを束ねてCPUへ送り出す。電気的な配線数を増やすことなく、従来比で約2倍のデータ帯域幅を実現している。
実際の製品では従来のRDIMMに比べ実効転送レートで約4割高速化され、レイテンシ(遅延時間)も4割近く削減される。転送レートはMRDIMM-8800で最大8,800MT/s(メガトランスファー/秒)に達し、DDR5-6400を大きく上回る。メモリチップ自体の動作周波数を極端に引き上げずにスループットを向上させるため、消費電力や発熱の増大も抑えられる。
近年のサーバ向けプロセッサは数十から百を超えるコアを搭載するものも珍しくなく、多数のコアが同時にメモリへアクセスすると、演算能力に対してメモリ転送が追い付かない状態が生じやすい。MRDIMMはこの制約を緩和し、機械学習や高性能コンピューティング(HPC)、大規模データベースといったメモリ集約型の用途に適している。生成AIの学習や科学技術計算、クラウド基盤など、大量のデータを高速に処理するシステムへの導入が進んでいる。
コネクタや形状(フォームファクタ)はRDIMMと共通で、対応するCPUであればマザーボードの変更は不要である。ただし、対応するCPUやチップセット、BIOSが必要であり、すべてのDDR5対応サーバで利用できるわけではない。RDIMMやLRDIMMとの混在も通常はできないため、導入にはサーバ製品ごとの対応状況を確認する必要がある。主な目的は転送帯域の拡大であり、用途に応じてRDIMMやLRDIMMと使い分けられる。
モジュール形状は標準的なDIMMと同じサイズの「ロープロファイル」と、「TFF」(Tall Form Factor)と呼ばれる縦長タイプの2種類がある。TFF型は3D積層パッケージングのような高コストな技術を用いずに標準RDIMMの2倍の容量を搭載でき、熱設計の改良により同じ電力と冷却システムでDRAMの温度を最大20℃低下させることができる。MRDIMMはJEDECによって標準化が進められており、主要なメモリメーカーやサーバメーカーが対応製品を開発している。