MIL記号

論理ゲートごとに固有の形状が定められており、AND回路は左側が直線で右側が半円状に膨らんだD字型、OR回路は左側が凹んだ曲線で右側が尖った船型で表される。NOT回路は三角形の頂点に小円を付した形状で、この小円が論理反転(否定)を示す共通の表現となっている。NAND回路やNOR回路はそれぞれAND回路、OR回路の形状の出力側に小円を加えることで表現される。
回路図では各記号の左側が入力端子、右側が出力端子を示す。信号が左から右へと流れる構成で、複数の論理ゲートを組み合わせた回路図全体の処理の流れを視覚的に把握できる。電子回路の設計者は、この記号を組み合わせた論理回路図を記述・参照することで、複雑な集積回路の内部処理やデジタル信号の制御手順を正確に定義あるいは把握することができる。
MIL記号は米軍のMIL-STD-806規格として策定され、後にANSI規格のANSI Y32.14に移行し、さらにIEEEによってIEEE Std 91として標準化された。一方、ISOとIECはこれとは異なる「IEC記号」を策定しており、矩形を基本形状とする別の体系となっている。これは欧州を中心に普及しており、日本のJIS規格はかつてMIL記号に準拠していたが、現在はIEC規格に整合した表記へ移行している。国内の技術資料では、作成時期や分野によってどちらの記号体系が使われているかが異なる場合がある。
もともとMIL記号は、軍事機器の調達や運用における部品の識別・表記を統一する目的で整備されたものである。高い信頼性と汎用性が求められる軍事・航空宇宙分野で採用されたことを契機に、民間の電子工学やコンピュータ技術の領域へと普及した。デジタル回路の入門教材ではMIL記号を採用したものが依然として多く、形状から論理機能を直感的に読み取れるため、学習用途でも広く使われている。