MACアドレスランダム化【MAC address randomization】MACアドレスランダマイゼーション
概要

MACアドレスとは、端末内の通信装置を同じ物理ネットワーク上の別の機器と識別するための固有の番号であり、装置の出荷時に一意の値が記録されている。従来はこの装置固有のアドレスを常に使ってネットワークにアクセスする運用が一般的だった。
Wi-Fiに対応した機器は、ネットワークに接続していない状態でも周囲のアクセスポイントを探索するために「プローブリクエスト」と呼ばれる電波を定期的に発信しており、この信号には自身のMACアドレスが含まれている。固定のMACアドレスを使い続けると、店舗や駅などに設置されたWi-Fi機器がこの信号を受信・記録することで、特定の個人の移動経路や滞在パターンを長期にわたって追跡できてしまうリスクが生じる。
MACアドレスランダム化はこうした第三者による追跡・捕捉のリスクを低減するために、ネットワークスキャン時や未接続時に実際のMACアドレスとは異なるランダムな値を送出する仕組みである。これにより、物理的に無線信号を受信できるというだけでは、MACアドレスを手掛かりに特定の機器を継続的に追跡することが困難になる。
一方、MACアドレスランダム化はネットワーク管理の観点では問題を引き起こす場合もある。企業や学校のネットワークでMACアドレスを基に正規の機器である確認(MACアドレス認証)や端末管理を行っている環境では、ランダム化により認証が通らなくなる場合がある。これに対応するため、接続先ネットワークごとに固定MACアドレスを使用する設定が必要となることもある。
Androidは6.0(Marshmallow)以降でスキャン時のMACアドレスランダム化を導入し、Android 10以降では接続時にもランダム化が適用されるようになった。iOSはiOS 14以降でネットワーク接続時の「プライベートWi-Fiアドレス」機能として同様の仕組みを標準で有効化している。macOSもmacOS 15 Sequoiaで同名の機能が組み込まれている。Windowsも同様の機能を搭載しており、主要なOSで広く実装が進んでいる。