ITP【Intelligent Tracking Prevention】
概要

Web閲覧では、「Cookie」と呼ばれる仕組みを通じて利用者の閲覧履歴や行動データが収集されることがある。中でも、訪問中のサイトとは別の事業者が発行する「サードパーティCookie」は、複数のサイトにまたがる追跡に広く利用され、プライバシー上の懸念が指摘されてきた。
ITPは機械学習を用いてトラッキング目的のドメインを識別し、該当するCookieの有効期限を短縮したり、別のサーバの画像やスクリプトを参照することでドメインをまたいだサードパーティCookie送信が行われるのを検知・遮断することで、継続的な追跡を困難にする。利用者側では特別な設定を行わなくても機能する場合が多い。
2017年にSafari 11で初めて導入され、その後のバージョンアップごとに制限の範囲と強度が段階的に強化されてきた。当初はサードパーティCookieの制限が中心であったが、規制を回避するためにファーストパーティCookieを追跡に利用する手法が現れたことを受け、その有効期限を最大1日や7日に強制短縮する措置も導入された。さらにローカルストレージやブラウザのフィンガープリントなど、Cookieに依存しない迂回的な識別手法も監視対象に加えられている。
ITPの影響はWebマーケティングや計測ツールに及ぶ。ターゲティング広告の精度低下やコンバージョン計測の困難化により、Google Analyticsなどのアクセス解析サービスもITPへの対応を迫られてきた。ログイン状態の維持やアクセス解析にCookieを用いるサービスでは、実装方法の見直しが必要になる場合もある。macOSやiOS、iPadOSではSafariが標準ブラウザとして広く使われており、iPhoneの普及率の高い日本では特に強い影響を受ける。
ITPが開発・導入された背景には、欧州のGDPR(一般データ保護規則)をはじめとするプライバシー保護への機運の高まりがある。Apple社はプライバシー保護を自社製品の差別化戦略として前面に打ち出しており、ITPの機能強化はその一環として位置づけられる。近年では他社のWebブラウザでも似たようなトラッキング防止機能の導入の動きが見られる。