EPUB
概要
EPUBとは、Webページ関連の技術を元に開発された、電子書籍のファイル形式の標準規格の一つ。電子書籍の業界団体IDPF(International Digital Publishing Forum)が策定した規格で、同団体は現在はW3C(World Wide Web Consortium)の一部となっている。ISO/IECによって国際標準規格にもなっている。本文や文書の構造はXHTMLファイルに、デザインやレイアウト、見栄えの指定はCSSファイルに記述し、ページ中に埋め込まれる画像などはJPEGやPNGなどの形式でそれぞれ独立したファイルとして用意する。本文で使用するフォントファイル、SVG形式の図表やグラフィック、MathML形式の数式(EPUB 3.0~)を埋め込むこともできる。データの構成や設定についての情報、書籍自体についての情報(メタデータ)はXMLファイルに記録する。
EPUBファイル本体は、これらのコンテンツ群を所定のファイル名やディレクトリ構造で配置して全体を単一のZipファイルに圧縮した構造となっている。ファイル名の末尾の拡張子は「.epub」となっているが実体はZipファイルであるため、圧縮ソフトなどで内容を確認したり取り出すこともできる。
紙面と同じようにページ内の文字などの割付があらかじめ決まっている固定レイアウトと、端末の表示画面の広さや形状などに合わせて表示ソフト側で調整し直すリフロー型レイアウトのいずれかを選択することができる。
2007年に初版(EPUB 1.0)が発行されたが、初期の仕様は横書き(横組み)のみであるなど日本語の書籍には機能的に不十分な点があった。日本語組版に固有の仕様は2011年のEPUB 3.0で大きく反映され、縦書き(縦組み)や縦中横、傍点(圏点)、禁則処理、ルビなどに対応した。
電子書籍フォーマットは端末メーカーや販売事業者(電子書籍ストア)の独自仕様が多かったが、EPUBは仕様が公開されており、端末やストアの違いを問わず流通、表示させることができる。2014年にはEPUB 3.0がISO/IEC TS 30135として、2020年にはEPUB 3.0.1がISO/IEC 23736としてそれぞれ標準化されている。